◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

あなたの日本語はおかしくなっていますよ。

2007-03-02 11:34:45 | めちゃくちゃな敬語
                ちょっと休憩
 昨日の「クローズアップ現代」(NHK総合)のテーマは敬語でしたね。飲食店などでよく聞くおかしな言葉遣いのことを「マニュアル敬語」と称していましたが、私は、あれは業界用語であるととらえています。ですから、私の本の中ではあえて触れていません。テレビ業界用語、例えば、ズーヒルギロッポン、ジャーマネ、若い人はどうか知りませんが、単語を引っ繰り返して言うのが業界人っぽいというのは知られていることで、それと同じなのです。お金のために接客業のお店で働くには、気持ちのうえで‘従業員’になりきる必要があるからそういう言葉遣いをしているのでしょう。
 ただ、「~になります」だけは一般人にまで広まっているのかと驚いたことがあって本に書きました。路上で出身地を聞かれた50歳前後のご婦人が「秋田県になります」と答えたのです。これにはあ然としました。「この仕事に就いて20年になります」という言い方ならいいのですが、普通、出身地を聞かれたら「秋田県です」と答えるでしょう。これまでに何度も言っていますが、変な言葉は広まりやすいのです。
 番組中、井上ひさし氏が言っていた「ぼかし敬語」も、私に言わせれば「勘違い丁寧語もどき」です。「~のほう」などいろいろありますが、あれは敬語ではありません。本でもそういう観点で書いてあります。そして、この「勘違い丁寧語もどき」とセットになっているのが「笑顔っぽい無表情」です。「営業スマイル」というのもありますが、そのレベルには達していない、笑顔のつもりだけど無表情なのです。まあ、現代の生活からすると、これはしょうがないかなぁというところもありますが・・・、それでいいということではない、本当に心地いい言葉遣いというものがあるということに気づいてほしいですね。
 私は、長い間、愚痴を言う代わりに変な日本語をメモしてストレス解消をしていただけなのですが、それではだめだと思うに至り、本を書いたのです。アレルギーの人が、周囲の理解を得られなければアレルゲンを遠ざけることが難しいのと同様、変な日本語アレルギーも、正しい日本語を話せる人が少ない現状ではアレルゲンをいちいち指摘するのも大変なことで、症状は悪化の一途をたどっています。化学物質過敏症の人のアレルゲンである化学物質のように、周り中すっかりアレルゲンに囲まれているという状態に等しいのです。
 よく考えてみてください。化学物質過敏症の人がどんなに苦しんでいても、同じ場所にいて、過敏症でない人には症状が出ません。許容量を超えれば発症する可能性がだれにでもあるということは知識としてあっても、実際、今のところは何ともないのです。ところが、変な日本語は、変だと気づいていない人にも確実に悪影響を及ぼしているのです。聞き手が内容をちゃんと理解していない、誤解が生じているのに、そのことにだれも気づいていないだけ、実際に具合が悪くなっているのに、それを自覚していないだけなのです。あるいは、自覚はあっても、そのことから目を背けているのかもしれません。
 気づいていなくても、誤解しています。間違いを間違いと思わずそのまま覚えてしまう、さらに、その間違いをほかの人にそのまま伝えてしまう、つまり、自覚症状のない伝染病のようなものです。気づかない、あるいは、気づいても対処しない、そうしていつの間にかまん延している、たちの悪い伝染病です。飛行機などの移動手段が病原菌をあっという間に世界に広めるように、テレビやインターネットが同じように変な日本語を世の中に広めています。間違いだと気づく暇もありません。
 アレルギーの人は、そこにアレルゲンがあることを感じ、そうでない人たちに警告を発してくれます。伝染病にかかって症状が出た人は、そこに病原菌があることを知らせてくれます。自分に症状が出ていなくても、危険は迫ってきているのです。気づかないところでいろいろな弊害がすでに出てきているのですから、いつまでも鈍感なままではいられません。いつまでも無関心でいてはいけないのです。一人でも多くの人が「ちゃんとしゃべれ!」を読んで間違いに気づいてくれることを切望しています。気づくことから始まるのです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ちゃんとしゃべれ! あなた... | トップ | そろそろ気づいてもいいころ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

めちゃくちゃな敬語」カテゴリの最新記事