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「歌は世につれ、世は歌につれ」というけれど…

2022-08-11 21:20:01 | トレンド

今朝、FM番組を聞いてたら、面白いデータを取り上げていた。
博報堂が定期的に発表している「ひらけ、みらい。生活総研」が発表をしている、あるデータを取り上げていたのだ。
博報堂 ひらけ、みらい。生活総研:ヒットソング 昭和 to 令和「生活者」展1981‐2021

ヒットソングと言っても、ここで取り上げているのは「使われていることば」だ。
誰々が、〇〇ヒットを飛ばした、という話ではない。
ヒット曲に使われている言葉を分析することで、その時々の生活者の思考や心理、社会背景を考えるということなのだ。

このレポートの中で面白いな、と感じたのは「一人称(わたし・ぼく)と二人称(あなた・君)」という言葉の変化だ。
取り上げている「ぼく・君」という言葉が多様されるようになり、ジェンダーレス化しているという考察だ。
この「ぼく・君」という言葉を多用しているヒットメーカーは、宇多田ヒカルさんや浜崎あゆみさんなのだ。
特に宇多田ヒカルさんは、インタビュー等でもご自身のことを、「ぼく」と話されていたように記憶している。
女性がそれまで男性が使っていた「ぼく」という言葉を普段から使い、曲を書く時もそのまま使っている、という点で「ジェンダーレス化」と言えるのだろう。
決して、男性が女性に近づいて「ジェンダーレス化」している、という訳ではなさそうだ。
最近では、小学校で「〇〇君」という呼び方から「〇〇さん」に統一するような動きがある、という話も聞く。
とすれば、今の小学生が大人になる頃には「ぼく・きみ」という表現の歌は無くなり、「わたし・あなた」になるかもしれない。

また、調査対象が2021年までということを考えると、「コロナ禍」がヒット曲にどのような影響を与えたのか?という点が、気になってくる。
「ぼく・わたし・きみ・あなた」という、関係性の言葉ではなくもっと多様な関係性の言葉が使われるようになるのか?それとも、そのような言葉からより内省的な言葉が使われるようになるのか?
このような言葉の使われ方によっては、「内向き志向」が強まったのか?、「閉塞感を打ち破りたい」という変化が見られたのか?ということから、生活者の「気分」が分かってくるからだ。

もちろん、ヒット曲と言ってもそれらの楽曲を聴く層があり、最近では聴き方についても分析をする必要があるだろう。
例えばCDを購入して聴く層とSpotifyのようなストリーミングで聴く層とでは、音楽そのものの聴き方が違うし、生活のスタイルも違うからだ。
もしかしたら、CDセールとストリーミングとでは、まったく違うヒット曲が登場するかもしれない。
そのようなことも含め、時代の変化と共に「人は使う言葉が変わり、使う言葉が変わることで、その人との関係性も変わってくる」ということだけは言えそうだ。

ヒット曲だけではなく、言葉そのものが時代を映す鏡のようなものであり、共感性や分かりやすさという点でヒット曲という切り口で、生活者の変化を考えるということも、面白いかもしれない。




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