日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「完璧」を目指すのではなく、「修正をしていく」ことが重要になる

2020-08-19 18:35:43 | ビジネス

Huffpostを見ていたら、「新型コロナ」対策で世界中から注目をされた台湾のオードリー・タンさんの記事があった。
Huffpost:オードリー・タンの頭の中。台湾の天才大臣が語る「バグを恐れない」生きかた

オードリー・タンさんの経歴などを読むと、「やはり、頭の良い人は違うな~」と感じられる方も多くいらっしゃると思う。
1歳になる前から言葉を話し、学校へは行かず10代で起業しAppleなどで、役員待遇で仕事をされていたのが20代。
これらの経歴を読むと、確かに凡人ではない!と、実感する。

しかし、オードリー・タンさんが凄いところは、「困っている人、マイノリティーの人たち」に対する考えが、常にあるという点だと思う。
オードリーさん自身がトランスジェンダー(LGBT)である、ということもあるのだが、そのコトを殊更声高にアピールをしているわけではない。
トランスジェンダーだから「困っている人、マイノリティーの人たち」への思いがあるのではなく、オードリー・タンという人だからこそ「困っている人、マイノリティーの人たち」に対する考えを、常に持っているということなのだと思う。
そしてタイトルにある「バグを恐れない」という点では、米国のIT企業と通じるところがあるのでは?と、感じている。

随分前になるのだが、朝のFM番組(だったと思う)で「Googleは100%のプログラムを目指していない」という、話しを聞いたことがある。
多くの日本企業の場合、市場に商品を送り出す時「完璧な=100%な商品」を出すことが求められる。
もちろん、自動車をはじめとする工業製品の場合「完璧な状態」でなくては、日本の生活者は納得しないだろうし、そのような価値観を持っているのが日本の生活者でもあると思う。
そのような厳しい商品を求めるからこそ、日本の工業製品は世界でも類を見ないほどの「高品質・高機能」なモノを市場に送り出すことができたのだ。

その「完璧さ」をITに求めてしまうことによって、日本は「アプリケーションを含むソフトウェア」に関して世界から遅れを取ってしまっているのでは、ないだろうか?
今話題となっているTikTokは、中国の企業だ。
スマホユーザーなら必ず!といってよいほどインストールしているであろうLineは、韓国企業だ。
これらの企業が、ユーザー情報を吸い上げているか否かは別の問題として、今スマートフォンにインストールされているアプリケーションの多くは、日本発のものではないという現実がある。

何故そのような事態になってしまったのか?といえば、上述した「Googleは100%のプログラムを目指していない」ということに繋がっていくのだと思う。
ITのように変化が激しく速い業界では、「100%を目指す」ことは意味のないことなのだ。
むしろ「100%を目指さない」ことで、ユーザーコミュニケーションの切っ掛けをつくり、ユーザーと一緒になって新しいサービスを創り出していく、という考えなのだ。
そしてユーザーとのコミュニケーションを図ることによって、「インテマシー・ロック(イン)」と呼ばれる「顧客の固定化」につなげているのだ。
何故なら、ユーザー側にとっては「自分の意見やアイディアが反映されたサービス」となれば、当然固定化されたユーザーとなるからだ。
意識をしている・していないということではなく、新しいサービスに自分も参加しているという、意識が「固定化されたユーザー」となるからだ。

オードリーさんの「バグを恐れない」という言葉には、「失敗をしてもチャレンジできる社会」という意味も、含まれているのではないだろうか?
日本の社会では、子どもの頃から「失敗=敗者」のようなイメージでとらえられることが多い。
顕著な例は、ビジネスという場面だろう。
仕事の失敗は、出世の道から外れるということを意味している為、ユニークなアイディアよりも失敗の少ない前例的な思考にとどまってしまう。
組織そのものが、そのような体質であるために「人と違う(=マイノリティー)」ことや「失敗した人」を排除し、「成功した」ということだけを大事にしてしまう傾向があるのではないだろうか?
そこには広く社会との繋がりというコミュニケーションを求めず、企業内の価値観で自己完結することを良しとしているようでもある。

昨日の日経にはトヨタ自動車がAmazon系の企業との提携を模索している、という趣旨の記事があった。
日経新聞:トヨタ、「つながる車」の基盤でアマゾン系と提携

自動車メーカーが、自動車という工業製品をつくる時代では無くなりつつある、という一つのステップであるとすれば、今日本の企業に求められていることは、コミュニケーション力とバグを恐れない組織なのではないだろうか?