日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

パーソナルスペースの拡大とSNS

2019-12-04 14:37:54 | アラカルト

拙ブログで時折紹介させていただく、日経のコラムCOMEMO。
特に、大阪ガスのエネルギー文化研究所の池永さんのコラムは、読んでいて楽しく、考えさせられることが多い。
その池永さんが、「うるさいのがキライな日本人」というテーマで、書かれている。
COMEMO:うるさいのがキライな日本人ーめんどうくさい日本人②

②があるということは、①があるということなので、できれば①.②と読んでいただきたい。
そして池永さんのコラムを読みながら、フッと思ったことが今日のタイトルだ。

人に「パーソナルスペース」と呼ばれる、自分にとって心地よい距離感というものがある。
それはとても個人的な距離感なので、単純に女性は半径〇m、男性は✖mと言い切れるものではないし、相手との親密度によってもその距離感は違う。
ただ、傾向として男性の方が広いと一般的に言われているようだ。
Wikipedia:パーソナルスペース

そして池永さんが指摘されている「うるさいと感じる=自分にとって不快と感じる」空間や距離が、どんどん拡大しているのでは?という、気がしたのだ。
池永さんが指摘をされている、保育園で発せられる子どもの声などは「対人的距離感」という問題ではないかもしれないが、パーソナルスペースという空間に、他者が入り込むという視点で考えれば、音や視界なども「パーソナルスペース」の一部だと考えても良いと思う。
その「パーソナルスペース」がどんどん拡大していることで、これまで「不快」と感じなかったモノ・コトに対して「うざい(煩わしい)」と感じるようになったのでは?という気がしたのだ。

逆に考えれば「公共」と感じる空間がどんどん小さくなってきている、ということになるのかもしれない。
「公共」と感じる空間が小さくなったことで、電車やバスの中で泣く赤ん坊やそれをあやそうとする親に対して「うざい」とか「親なら泣き止ませろよ」という、冷たい視線や舌打ちという行動に繋がっていくのではないだろうか?

その反面、「自分一人」という不安がSNSなどの普及によって拡大しているようにも感じている。
しばらく前に、俳優・菅田将暉さん主演の舞台で、スマホアラームが光るなど観劇マナーの悪さが指摘されていた。
J-CASTニュース:菅田将暉の主演舞台で「スマホアラーム」「何かが光っている」マナー違反相次ぎ、主催者側が対応強化

同様に映画館でのマナー違反の指摘もあった。
マネーポストWEB:映画上映中にスマホいじりする若者「2時間は耐えられない」

映画の上映時間は大体2時間程度だと思うのだが、その2時間が耐えられずにスマホをチェックしてしまうのは、SNSなどの「自分と他者との繋がり」に対して、不安があるからなのではないだろうか?
言い換えれば、「他者の眼が気になる(この場合、SNS上でつぶやかれている「自分のことが気になる」ということになるかもしれない)」ということだと思う。
劇場や映画館という「公共の場」に、「スマホをチェックする」という「パーソナルスペースを持ち込んだ」結果、マナー違反を生んでいるということになる。
それは、「パーソナルスペース」の拡大が、皮肉なことに「他者と自分の関係」に不安を与えている、と解釈もできるのではないだろうか?

既に手に入れてしまった、「便利さ(=スマホなど)」を手放すことはできないだろう。
とすれば、パーソナルスペースを少しだけ縮小する努力が、これから先必要なのかもしれない。
それが、「他者との関係(=公共の場という意識)」を豊かにし、本来得られるべきはずの情報を得やすくするだけではなく、取捨選択する力を身に着けることにもなるような気がする。