≪最終一番勝負 第61譜 指始図≫ 7七同歩成まで
[白い騎士のうたう歌]
鏡の国の旅で見たさまざまな不思議なものごとのなかでも、アリスがいちばんあざやかに思い出せるのが、この一齣(ひとこま)だった。何年もたってからでさえ、アリスはつい昨日のことのように、そのときの情景をあまさず思い浮かべることができたんだ――騎士のおとなしい青い眼、そしてやさしい微笑(ほほえ)み、夕日がその髪ごしにきらきら透けて、鎧(よろい)にあたって目も眩(くら)みそうにぎらっとかがやいたこと――首のまわりにだらりと手綱をたれたまま、足もとの草をたべたべ静かに歩きまわっている馬――背景には黒い森影――こうしたものすべてをアリスはさながら一幅の絵のようにながめながら、片手をかざして木によりかかってね。そして風変わりな馬と騎士の一組を見守り、なかば夢見心地で物悲しい歌のメロディに耳をかたむけていたんだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第61譜 吉祥A図、攻略完了!>
「吉祥A図」について徹底調査をしている。それがいよいよ完了しようとしている。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
【13】9八金 → 後手良し
【14】6五歩 → 後手良し
最後に、【15】3七飛 を調査する。
[調査研究 【15】3七飛]
3七飛図
【15】3七飛(図)と打つ手が残っていた。
ねらいは3三香の攻めと、7七飛と後手の攻めの要の「と金」を払う手。
対して、後手の候補手は―――
[マ]7六歩、[ミ]6六銀、[ム]9五歩、[メ]7五桂、[モ]4四銀引、
[ヤ]4四銀上、[ユ]3一銀、[ヨ]4六銀
これらを一つ一つ、調査していこう。
まず、[マ]7六歩 および、[ミ]6六銀 は、「3三香」として、先手良しになる。
研究3七飛図01
[マ]7六歩(図)に、「3三香」と打ちこんで行く。
以下その進行例を示すが、[ミ]6六銀 の場合も同じように進めて先手が勝てる。
「3三香」に、3一銀と引いても、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下後手玉詰み。
したがって3三同桂と取るが、同歩成、同銀に、5二角成とできる。
以下7五桂に、7九桂(次の図)
研究3七飛図02
6二銀右、4一馬(次に3一金と打てば後手受けなし)、3一香、3四歩、4二銀左、8四馬(次の図)
研究3七飛図03
8四同歩、3三金、同歩、同歩成、同銀、3一馬(次の図)
研究3七飛図04
以下、後手玉“詰み”
研究3七飛図01(再掲)
実はこの図では「3三香」以上に速い攻め筋がある。
それは、「8四馬」である。それは次の [ミ]6六銀 で示そう。
研究3七飛図05
[ミ]6六銀(図)でも、同じように「3三香」または「8四馬」で先手が勝てる。
ここでは、「8四馬」を紹介しよう(次の図)
研究3七飛図06
「8四馬」(図)で金を取って、この瞬間、後手玉に“詰み”が生じている。その詰みを受けても、6六馬があるので、後手はもう勝ちようがない。
8四同銀に、3二角成、同玉、3三香、同桂、同歩成、同銀、3一金(次の図)
研究3七飛図07
3一同玉に、3三飛成以下、“詰み”
研究3七飛図08
[ム]9五歩(図)は、先手陣の急所に迫る手である。
しかし、この場合も、「8四馬」で、先手勝ちになる。
「8四馬」を同銀や同歩なら、3二角成、同玉、3三香以下、後手玉が詰むのはすでに述べている通りだが、「8四馬」に、9六歩、同玉、6二銀左と頑張った場合について、見ておこう(次の図)
研究3七飛図09
「5三」を開けたことで3二角成以下の詰み筋は消えた。
しかしここで “3三香” と打って、先手が勝てる。
これには、同桂 と、同銀 がある。
3三同桂、同歩成、同銀に、3四桂がある(次の図)
研究3七飛図10
3一玉なら、2一金、同玉、2二金、同銀、同桂成以下、詰み。
よって3四同銀だが、3二角成、同玉、3四飛、3三歩、3一金で―――(次の図)
研究3七飛図11
後手玉が詰んでいる。
研究3七飛図12
“3三香” を、同銀(図)の場合。
3三同歩成、同桂に、5二角成。
そこで8四銀と後手は勝負してくる(先手玉に詰めろが掛かった)が、3一銀以下、後手玉に “詰み” がある。3一銀、同玉、4二金、2二玉、3三飛成(次の図)
研究3七飛図13
これで “詰み”
研究3七飛図14
というわけで、【15】3七飛 に対し、後手は攻めるなら、[メ]7五桂(図)しかないようだ。
この手には、先手は7七飛と「と金」を払う(次の図)
研究3七飛図15
以下、7六歩(代えて 6七歩 は後述)に、3七飛(次の図)
研究3七飛図16
3七飛(図)と3筋に戻って、再び、3三香の攻め筋が復活している。
ここで 〔A〕4六銀、〔B〕4四銀引、〔C〕4四銀上、〔D〕3一銀 が、後手の考えられる候補手。
研究3七飛図17
〔A〕4六銀(図)として、以下3六飛、7七歩成のような展開になれば「互角」の戦い。
しかし、4六銀に、3三香がある。
以下、同桂、同歩成、同銀に、3四桂(次の図)
研究3七飛図18
3四同銀、同飛、3三香(代えて3一香には、3三歩、同歩、2四銀で先手勝ち)に、1一銀(次の図)
研究3七飛図19
1一同玉に、3二角成、2一銀、3三飛成で、後手“受けなし”になる。
研究3七飛図20
戻って、〔B〕4四銀引(図)。 銀を引いて「3三」に利かせた。
しかしそれでも3三香と打ちこんで行く手がある。同桂なら、同歩成、同銀引、5二角成で、先手優勢だ。後手の桂がいなくなれば5二角成が可能になるのである。
よって、後手は3一銀と受ける。しかしこれにも、先手に有効手がある。8四馬だ(次の図)
研究3七飛図21
8四同銀(図)に、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下、後手玉“詰み”
先手勝ち。
研究3七飛図22
〔C〕4四銀上(図)にも、3三香と打ちこんで行く。
以下3一銀に、この場合は「5三」の空間が開いているので、8四馬としてもその手が詰めろになっていないため無効。
ここは、5二角成、同歩、4一金(次の図)
研究3七飛図23
以下7七歩成、同飛、1四歩、3一金、6九角、2一金、1三玉、4七歩(次の図)
研究3七飛図24
後手玉にはまだ詰めろが掛かっていないが、先手玉もまだ寄らない。8七桂成から飛車を取っても、攻めがうすい。
このままなら、次に先手3七桂や3六桂で後手玉に詰めろが掛かり、それが間に合う。
先手勝勢になった。
研究3七飛図25
〔D〕3一銀(図)と受ける変化。
先手はいったん7八歩と受けておく。以下6六歩に2五香と打つ。
研究3七飛図26
2五香(図)と打って、次に、2三香成、同玉、3三金の狙い筋がある(2六香よりこの場合は2五香が優る。理由は追って明らかになる)
これを4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、4五馬が“絶好の位置”で、先手勝勢になる。
よって、後手は4二銀引と受ける。「3三」を強化した。
対して、先手は6五金と打つ。以下4六銀に、3六飛(次の図)
研究3七飛図27
「2五」に香車を打ったのは、このような変化になったときのためだった。2六飛の狙いが生じている。
この図は、先手勝勢になっている。
図以下、一例を示すと、7七歩成、同歩、6七歩成、2六飛、1一玉、7五金、3五銀、1五桂(次の図)
研究3七飛図28
2六銀に、2三桂不成、2二玉、3一桂成、同玉、5二角成で、先手勝ち。
研究3七飛図29
「研究3七飛図06」まで戻って、そこで後手 6七歩(図)の変化。先手の飛車を3七まで戻すと後手がつらい―――ということなら、このように 6七歩 として封じ込める手は後手としては考えてみたいところだろう。
対して、7五飛、同金、同馬、7七飛、8七桂でも先手が良いようだが、この図ではもっと勝ちやすい指し方がある。
3三歩成、同銀、5二角成の攻めである(3三歩成を同玉は5二角成、同歩、2一竜)
以下同歩に、3一金と打つ(次の図)
研究3七飛図30
角を後手に渡しても、7九角打ちがないのがよい。
以下3四銀、4一竜、3三玉、4八香(次の図)
研究3七飛図31
後手玉は逃げられない。3二竜以下の“詰めろ”になっており、1四歩でそれを防いでも、3五歩と打って、先手勝ち。
研究3七飛図32
[モ]4四銀引(図)と受けた場合。
ここで3三香は3一銀以下、形勢不明の勝負になる。
7七飛が本筋の手で、以下7六歩、3七飛、6七歩、5四歩(次の図)
研究3七飛図33
5四歩(図)では、代えて4五歩(同銀なら3三香)があってそれで先手が良いが、5四歩はさらに良さを求めた手。6二銀左なら、今度こそ4五歩がより効果的になっている。
よって5四同銀と取るが、5三歩が追撃の手裏剣で、同金に、3三香(次の図)
研究3七飛図34
3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩、4四銀、3三桂(次の図)
研究3七飛図35
3三同銀引、同歩成、同銀、5一竜となれば、先手勝勢が確定。
よって、後手は1四歩と抵抗するが、その手には先手1五歩。以下同歩、同香、同香、1四歩(次の図)
研究3七飛図36
まだ後手玉は詰めろになってはいないが、8四馬と金を取れば詰めろになる。
先手勝ち。
研究3七飛図37
[ヤ]4四銀上(図)は、先ほどの[モ]4四銀引 と同様に「3三」を強化した受けの手だが、意味合いがずいぶんと変わってくる。[ヤ]4四銀上 と銀を上がることで、二枚の銀で中原を制圧しようといういうのが後手の秘めたる望みなのである。
図以下、7七飛、7六歩までは同じ。そこで3七飛としたいが、4六銀、3六飛、3五銀上とされて、こうなると互角の勝負(こういう展開が後手の狙い)
なのでこの場合、4七飛 と“途中下車” する手が優る。
以下7五桂に、2六香(次の図)
研究3七飛図38
2六香と打って、5二角成、同歩、2三香成が先手の狙いの攻め筋である(以下2三同玉、2一飛成、2二歩(香)、1五桂以下、後手玉詰み)
後手の有力手は、攻めるなら 〈1〉5六銀、または 〈2〉6六銀、受けるなら 〈3〉6二金 がある。
〈1〉5六銀、3七飛、6七銀不成。
そこで5二角成は7七歩成、9八金、7六銀成で後手の勝ちになる。
よって先手は8八金と受ける(次の図)
研究3七飛図39
8八金(図)と受け、次に5二角成(同歩なら2三香成以下後手玉詰み)に期待する。
それを6二金と受けても、6三歩、5三金、5四歩、同金、5二角成、同歩、2三香不成、同玉、2一竜、2二歩、1五桂、1四玉、2二竜で、後手に受けがなく先手勝ちになる。
したがってここでは後手は攻めるしかない。7七歩成、同金、7六銀成。
以下同金、同桂に、5二角成(次の図)
研究3七飛図40
8七金、同飛、同桂成、同玉、8八飛、7六玉、5二歩、7九金、5八飛成、1五桂(次の図)
研究3七飛図41
先手勝ち。
研究3七飛図42
〈2〉6六銀(図)の場合。
ここで5二角成は、7七歩成、9八金、5二歩と対応され、2三香成としても後手玉に詰みがないので、先手悪い。
よってこの図では、7八歩と受ける。
以下6七歩、8八金、6二金(次の図)
研究3七飛図43
8八金としっかり受けて、後手の早い攻めはなくなった(7七歩成、同歩、7六歩くらいだが5二角成の攻めのほうが早い)
なので、後手は自陣に手を戻して、6二金(図)としたところ。
さて、ここでどうするか。
4六飛と指すのが好手。対して後手は5五銀上としたいが、それは5一竜、同銀、4三飛成で先手勝ちになる。
(注:4六飛がベストの手と見ているが、ここは4五歩、5五銀、3三歩成、同桂、5二歩でも先手良し)
したがって後手は5五銀引と指すしかない。先手は3六飛。これで先手は後手の銀を下がらせて、手順に3筋に飛車を展開できた(次の図)
研究3七飛図44
ここで「4五銀」は、8四馬、同銀、5一竜、同銀、3三金で先手勝ち。
また「3一玉」とするのは、6三歩、5三金、5四歩、4一玉、5三歩成、同銀引、6一竜で先手良し。
後手攻めるなら、「6八歩成」だ。この先を見ていこう。
3三歩成、同銀引、6三歩、5三金、6二歩成、同銀、2三香成(後手に3一玉を許さない)、同玉、8五歩(次の図)
研究3七飛図45
6三歩~6二歩成で、後手の銀を下がらせたので、この8五歩(図)が効果的になっている。
図以下、6三銀、8四歩、5二銀で、角が取られてしまうが、同角成、同金、8三歩成と進めてみると―――(次の図)
研究3七飛図46
先手優勢である。
次に7五馬と桂馬を取る手が有効手になる。6七桂成なら、8六玉で“入玉”をめざす。
研究3七飛図47
途中まで戻って、先手の6三歩に、手抜きして 6六歩(図)の変化。
6二歩成、7八と、同金、6七歩成。これで先手玉に受けがない。しかしまだ詰めろは掛かっていない、という状況。
先手に好手がある(次の図)
研究3七飛図48
3三飛成(図)で、先手が勝てる。
同銀は5一竜で。同桂は3四銀で、先手勝勢。また3三同玉には、3五銀で、やはり先手勝勢である。
研究3七飛図49
戻って、〈3〉6二金(図)。 先手の狙いの5二角成を避けた手。
これには6三歩と打って、5三金、5四歩、同金、9二竜と進める(次の図)
研究3七飛図50
6二歩の受けに、同歩成以下、攻め合いに。
5六銀、3七飛、6七銀成、5二と、同歩(次の図)
研究3七飛図51
5二同竜、7七歩成と進むと、後手優勢。後手玉が詰まないから。
しかし、ここで3三歩成を先に利かすのが正着手で、同桂なら3四金で先手良し。なので3三同銀引だが、そこで5二竜として、7七歩成に―――(次の図)
研究3七飛図52
3三飛成‼(図)
これで後手玉は詰んでいる。3三同玉に、3四金、同玉、5四竜以下。
研究3七飛図53
[ヨ]4六銀(図)はどうなるか。
この手には、7七飛とし、以下7六歩、7九飛と進む(次の図)
研究3七飛図54
ここで(あ)5八金や(い)6七歩は、3三香で先手良しになる。
具体的には、(あ)5八金、3三香、3一銀、5二角成、同歩、4一金(次の図)
研究3七飛図55
これで、先手が勝てる。角を渡しても、後手6八角に8九飛、7七歩成が詰めろではないので、先手の3一金からの攻めのほうが早い。
図で4二銀引なら、同金、同銀、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。
研究3七飛図56
7九飛に、(う)7五桂(図)が先手玉に最も迫っている。
この手に対して同じように3三香と攻めると、角と香を後手に持たれたとき、6八角と打たれて、8九飛、7七歩成が先手玉への詰めろになっているので、今度は後手優勢になってしまう。
なので、ここは7八歩と受けておくのが正着となる(次の図)
研究3七飛図57
7八歩と受けて、先手の狙いは、5九飛~3九飛。このときに「金金香」と持っていれば、3九飛が後手玉への“詰めろ”になっている。
後手は5八金とするが、3九飛で、次の図。
研究3七飛図58
このまま3三香と打ちこめば先手勝ち。
なので4四銀と受ける手が考えられるが、それでも3三香と打ちこむのが明快な寄せ。
対して3一銀なら、5二角成、同歩、4一金として、先手が良い。
3三同桂なら、5二角成(次の図)
研究3七飛図59
先手勝勢。
研究3七飛図60
3九飛に、3一銀(図)の場合。
この手には、2六香と打つ。2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬がねらい。
なので後手は4二銀引と受ける(4二金は6三角成、6二銀右、4五馬で、先手勝勢になる)
そこで先手は6六金(次の図)
研究3七飛図61
6六金と打って、先手の次の狙いは7五金、同金、同馬である。7五桂を取ってしまえば先手玉は安全になるし、桂馬が入れば1五桂が決め手になる。
先手勝勢である。
研究3七飛図62
[ユ]3一銀(図)が後手“最後の候補手”
図から、7七飛、7六歩、3七飛と進む(次の図)
研究3七飛図63
ここで考えられる後手の候補手は―――
〔s〕6六銀、〔t〕4二金、〔u〕6二銀右、〔v〕4六銀
(他に〔w〕7五桂 は上で調べた「研究3七飛図25」に合流する→先手良し)
〔s〕6六銀 には、2六香と打つ(次の図)
研究3七飛図64
対して、7七歩成なら2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬で、先手勝ち。
よって後手は受けなければいけないが、4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、2三香成、同玉、4五馬で、先手勝勢になる。
したがって、2六香には、4二銀引と受ける。
以下3三歩成(同桂なら3四歩、4五桂、8四馬、3七桂不成、6六馬で先手勝勢)、同銀、5二角成、同歩、2三香成、同玉、3一竜(次の図)
研究3七飛図65
7九角には9八玉で大丈夫。先手勝ち。
研究3七飛図66
[ユ]3一銀 と早く銀を引いたのだから、〔t〕4二金(図)は指してみたい手。
以下6三角成、6二銀右、3六馬、6六銀、7八歩、7七歩成、同歩、6五桂、2六香(次の図)
研究3七飛図67
2六香(図)と打って、後手7七桂成なら、2三香成、同玉、4五馬で後手玉は“必至”になり先手勝ち。
それを受ける手として1一玉もあるが、2三香成、2二歩、1二成香、同玉、1五歩として、次に1四歩からの端攻めがあり、先手良し。
また4五馬を防ぐ4四歩には、5四歩がある。
ということで後手は4四銀と受けるが、これには6一竜、5二金に、5四馬がある。以下7七桂成、6四馬(次の図)
研究3七飛図68
1五桂と、2三香成~3一馬の二つの狙いがあり、先手勝勢。
研究3七飛図69
〔u〕6二銀右(図)と引く手のねらいは、次に4二金として4一角を捕獲することである。
ここはしかし、2六香と打って、4二金に、3三金と打つ(次の図)
研究3七飛図70
3三同桂、同歩成、同金は、3四歩がある。
よって後手は図で1一玉とするが、4二金、同銀引、2三香成、7七歩成、同飛、2二歩、3二成香(次の図)
研究3七飛図71
3二同銀、同角成、3一金、3三歩成、同桂、3一馬、同銀、4一金(次の図)
研究3七飛図72
以下3二銀、3一金、2一銀が予想されるが、4二銀で先手が勝てる。4二銀は詰めろではないが次に3三銀成がねらいで、4五桂なら3二歩で後手“受けなし”になる。4二銀は後手5三角の受けを許さない意味もある。
4二銀に、後手3二歩なら、8四馬で、先手勝ち。
研究3七飛図73
〔v〕4六銀(図)は、3六飛、7七歩成、4六飛、7五桂、9八金、7六桂、8九香と進む(次の図)
研究3七飛図74
後手の攻めはいったん止まり、ここで後手の指し手が難しい。
6九金 のような手なら、7八歩、同と、7六飛で先手良しになる(以下8九と、3三歩成、同玉、5二角成、同歩、3一竜)
7四銀 または 6二銀 は考えられる。7八歩なら4二金で勝負しようという意味の手だが、しかし7四銀(6二銀)に、3三歩成、同玉、8二馬という手が先手に生まれて、やはり先手良しになる。
ということで、後手は6二歩とする。これも4二金の角捕獲が後手の狙いである。
対して、先手は、3三歩成、同玉、7九歩とする(次の図)
研究3七飛図75
7九歩(図)は攻める前の準備。次に5二角成、同歩、3一竜の狙い。そのときに後手7九角の筋を消しておいたわけだ。
図以下、4二金、5一竜、2二玉、3三歩、同歩(同桂なら8五角成、同玉なら3六飛)、3二歩(次の図)
研究3七飛図76
3二同金は、同角成、同玉、5二竜以下、“寄り”
3二同銀なら、5二角成(次に3一銀)で、先手勝ち。
これで、【15】3七飛 の調査がおわった。結論は―――
3七飛図(再掲)
【15】3七飛は 先手良し。
「吉祥A図」の調査結果のまとめ
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
【13】9八金 → 後手良し
【14】6五歩 → 後手良し
【15】3七飛 → 先手良し
ついに「吉祥A図」の徹底調査が完了した。
第62譜につづく
[白い騎士のうたう歌]
鏡の国の旅で見たさまざまな不思議なものごとのなかでも、アリスがいちばんあざやかに思い出せるのが、この一齣(ひとこま)だった。何年もたってからでさえ、アリスはつい昨日のことのように、そのときの情景をあまさず思い浮かべることができたんだ――騎士のおとなしい青い眼、そしてやさしい微笑(ほほえ)み、夕日がその髪ごしにきらきら透けて、鎧(よろい)にあたって目も眩(くら)みそうにぎらっとかがやいたこと――首のまわりにだらりと手綱をたれたまま、足もとの草をたべたべ静かに歩きまわっている馬――背景には黒い森影――こうしたものすべてをアリスはさながら一幅の絵のようにながめながら、片手をかざして木によりかかってね。そして風変わりな馬と騎士の一組を見守り、なかば夢見心地で物悲しい歌のメロディに耳をかたむけていたんだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第61譜 吉祥A図、攻略完了!>
「吉祥A図」について徹底調査をしている。それがいよいよ完了しようとしている。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
【13】9八金 → 後手良し
【14】6五歩 → 後手良し
最後に、【15】3七飛 を調査する。
[調査研究 【15】3七飛]
3七飛図
【15】3七飛(図)と打つ手が残っていた。
ねらいは3三香の攻めと、7七飛と後手の攻めの要の「と金」を払う手。
対して、後手の候補手は―――
[マ]7六歩、[ミ]6六銀、[ム]9五歩、[メ]7五桂、[モ]4四銀引、
[ヤ]4四銀上、[ユ]3一銀、[ヨ]4六銀
これらを一つ一つ、調査していこう。
まず、[マ]7六歩 および、[ミ]6六銀 は、「3三香」として、先手良しになる。
研究3七飛図01
[マ]7六歩(図)に、「3三香」と打ちこんで行く。
以下その進行例を示すが、[ミ]6六銀 の場合も同じように進めて先手が勝てる。
「3三香」に、3一銀と引いても、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下後手玉詰み。
したがって3三同桂と取るが、同歩成、同銀に、5二角成とできる。
以下7五桂に、7九桂(次の図)
研究3七飛図02
6二銀右、4一馬(次に3一金と打てば後手受けなし)、3一香、3四歩、4二銀左、8四馬(次の図)
研究3七飛図03
8四同歩、3三金、同歩、同歩成、同銀、3一馬(次の図)
研究3七飛図04
以下、後手玉“詰み”
研究3七飛図01(再掲)
実はこの図では「3三香」以上に速い攻め筋がある。
それは、「8四馬」である。それは次の [ミ]6六銀 で示そう。
研究3七飛図05
[ミ]6六銀(図)でも、同じように「3三香」または「8四馬」で先手が勝てる。
ここでは、「8四馬」を紹介しよう(次の図)
研究3七飛図06
「8四馬」(図)で金を取って、この瞬間、後手玉に“詰み”が生じている。その詰みを受けても、6六馬があるので、後手はもう勝ちようがない。
8四同銀に、3二角成、同玉、3三香、同桂、同歩成、同銀、3一金(次の図)
研究3七飛図07
3一同玉に、3三飛成以下、“詰み”
研究3七飛図08
[ム]9五歩(図)は、先手陣の急所に迫る手である。
しかし、この場合も、「8四馬」で、先手勝ちになる。
「8四馬」を同銀や同歩なら、3二角成、同玉、3三香以下、後手玉が詰むのはすでに述べている通りだが、「8四馬」に、9六歩、同玉、6二銀左と頑張った場合について、見ておこう(次の図)
研究3七飛図09
「5三」を開けたことで3二角成以下の詰み筋は消えた。
しかしここで “3三香” と打って、先手が勝てる。
これには、同桂 と、同銀 がある。
3三同桂、同歩成、同銀に、3四桂がある(次の図)
研究3七飛図10
3一玉なら、2一金、同玉、2二金、同銀、同桂成以下、詰み。
よって3四同銀だが、3二角成、同玉、3四飛、3三歩、3一金で―――(次の図)
研究3七飛図11
後手玉が詰んでいる。
研究3七飛図12
“3三香” を、同銀(図)の場合。
3三同歩成、同桂に、5二角成。
そこで8四銀と後手は勝負してくる(先手玉に詰めろが掛かった)が、3一銀以下、後手玉に “詰み” がある。3一銀、同玉、4二金、2二玉、3三飛成(次の図)
研究3七飛図13
これで “詰み”
研究3七飛図14
というわけで、【15】3七飛 に対し、後手は攻めるなら、[メ]7五桂(図)しかないようだ。
この手には、先手は7七飛と「と金」を払う(次の図)
研究3七飛図15
以下、7六歩(代えて 6七歩 は後述)に、3七飛(次の図)
研究3七飛図16
3七飛(図)と3筋に戻って、再び、3三香の攻め筋が復活している。
ここで 〔A〕4六銀、〔B〕4四銀引、〔C〕4四銀上、〔D〕3一銀 が、後手の考えられる候補手。
研究3七飛図17
〔A〕4六銀(図)として、以下3六飛、7七歩成のような展開になれば「互角」の戦い。
しかし、4六銀に、3三香がある。
以下、同桂、同歩成、同銀に、3四桂(次の図)
研究3七飛図18
3四同銀、同飛、3三香(代えて3一香には、3三歩、同歩、2四銀で先手勝ち)に、1一銀(次の図)
研究3七飛図19
1一同玉に、3二角成、2一銀、3三飛成で、後手“受けなし”になる。
研究3七飛図20
戻って、〔B〕4四銀引(図)。 銀を引いて「3三」に利かせた。
しかしそれでも3三香と打ちこんで行く手がある。同桂なら、同歩成、同銀引、5二角成で、先手優勢だ。後手の桂がいなくなれば5二角成が可能になるのである。
よって、後手は3一銀と受ける。しかしこれにも、先手に有効手がある。8四馬だ(次の図)
研究3七飛図21
8四同銀(図)に、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下、後手玉“詰み”
先手勝ち。
研究3七飛図22
〔C〕4四銀上(図)にも、3三香と打ちこんで行く。
以下3一銀に、この場合は「5三」の空間が開いているので、8四馬としてもその手が詰めろになっていないため無効。
ここは、5二角成、同歩、4一金(次の図)
研究3七飛図23
以下7七歩成、同飛、1四歩、3一金、6九角、2一金、1三玉、4七歩(次の図)
研究3七飛図24
後手玉にはまだ詰めろが掛かっていないが、先手玉もまだ寄らない。8七桂成から飛車を取っても、攻めがうすい。
このままなら、次に先手3七桂や3六桂で後手玉に詰めろが掛かり、それが間に合う。
先手勝勢になった。
研究3七飛図25
〔D〕3一銀(図)と受ける変化。
先手はいったん7八歩と受けておく。以下6六歩に2五香と打つ。
研究3七飛図26
2五香(図)と打って、次に、2三香成、同玉、3三金の狙い筋がある(2六香よりこの場合は2五香が優る。理由は追って明らかになる)
これを4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、4五馬が“絶好の位置”で、先手勝勢になる。
よって、後手は4二銀引と受ける。「3三」を強化した。
対して、先手は6五金と打つ。以下4六銀に、3六飛(次の図)
研究3七飛図27
「2五」に香車を打ったのは、このような変化になったときのためだった。2六飛の狙いが生じている。
この図は、先手勝勢になっている。
図以下、一例を示すと、7七歩成、同歩、6七歩成、2六飛、1一玉、7五金、3五銀、1五桂(次の図)
研究3七飛図28
2六銀に、2三桂不成、2二玉、3一桂成、同玉、5二角成で、先手勝ち。
研究3七飛図29
「研究3七飛図06」まで戻って、そこで後手 6七歩(図)の変化。先手の飛車を3七まで戻すと後手がつらい―――ということなら、このように 6七歩 として封じ込める手は後手としては考えてみたいところだろう。
対して、7五飛、同金、同馬、7七飛、8七桂でも先手が良いようだが、この図ではもっと勝ちやすい指し方がある。
3三歩成、同銀、5二角成の攻めである(3三歩成を同玉は5二角成、同歩、2一竜)
以下同歩に、3一金と打つ(次の図)
研究3七飛図30
角を後手に渡しても、7九角打ちがないのがよい。
以下3四銀、4一竜、3三玉、4八香(次の図)
研究3七飛図31
後手玉は逃げられない。3二竜以下の“詰めろ”になっており、1四歩でそれを防いでも、3五歩と打って、先手勝ち。
研究3七飛図32
[モ]4四銀引(図)と受けた場合。
ここで3三香は3一銀以下、形勢不明の勝負になる。
7七飛が本筋の手で、以下7六歩、3七飛、6七歩、5四歩(次の図)
研究3七飛図33
5四歩(図)では、代えて4五歩(同銀なら3三香)があってそれで先手が良いが、5四歩はさらに良さを求めた手。6二銀左なら、今度こそ4五歩がより効果的になっている。
よって5四同銀と取るが、5三歩が追撃の手裏剣で、同金に、3三香(次の図)
研究3七飛図34
3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩、4四銀、3三桂(次の図)
研究3七飛図35
3三同銀引、同歩成、同銀、5一竜となれば、先手勝勢が確定。
よって、後手は1四歩と抵抗するが、その手には先手1五歩。以下同歩、同香、同香、1四歩(次の図)
研究3七飛図36
まだ後手玉は詰めろになってはいないが、8四馬と金を取れば詰めろになる。
先手勝ち。
研究3七飛図37
[ヤ]4四銀上(図)は、先ほどの[モ]4四銀引 と同様に「3三」を強化した受けの手だが、意味合いがずいぶんと変わってくる。[ヤ]4四銀上 と銀を上がることで、二枚の銀で中原を制圧しようといういうのが後手の秘めたる望みなのである。
図以下、7七飛、7六歩までは同じ。そこで3七飛としたいが、4六銀、3六飛、3五銀上とされて、こうなると互角の勝負(こういう展開が後手の狙い)
なのでこの場合、4七飛 と“途中下車” する手が優る。
以下7五桂に、2六香(次の図)
研究3七飛図38
2六香と打って、5二角成、同歩、2三香成が先手の狙いの攻め筋である(以下2三同玉、2一飛成、2二歩(香)、1五桂以下、後手玉詰み)
後手の有力手は、攻めるなら 〈1〉5六銀、または 〈2〉6六銀、受けるなら 〈3〉6二金 がある。
〈1〉5六銀、3七飛、6七銀不成。
そこで5二角成は7七歩成、9八金、7六銀成で後手の勝ちになる。
よって先手は8八金と受ける(次の図)
研究3七飛図39
8八金(図)と受け、次に5二角成(同歩なら2三香成以下後手玉詰み)に期待する。
それを6二金と受けても、6三歩、5三金、5四歩、同金、5二角成、同歩、2三香不成、同玉、2一竜、2二歩、1五桂、1四玉、2二竜で、後手に受けがなく先手勝ちになる。
したがってここでは後手は攻めるしかない。7七歩成、同金、7六銀成。
以下同金、同桂に、5二角成(次の図)
研究3七飛図40
8七金、同飛、同桂成、同玉、8八飛、7六玉、5二歩、7九金、5八飛成、1五桂(次の図)
研究3七飛図41
先手勝ち。
研究3七飛図42
〈2〉6六銀(図)の場合。
ここで5二角成は、7七歩成、9八金、5二歩と対応され、2三香成としても後手玉に詰みがないので、先手悪い。
よってこの図では、7八歩と受ける。
以下6七歩、8八金、6二金(次の図)
研究3七飛図43
8八金としっかり受けて、後手の早い攻めはなくなった(7七歩成、同歩、7六歩くらいだが5二角成の攻めのほうが早い)
なので、後手は自陣に手を戻して、6二金(図)としたところ。
さて、ここでどうするか。
4六飛と指すのが好手。対して後手は5五銀上としたいが、それは5一竜、同銀、4三飛成で先手勝ちになる。
(注:4六飛がベストの手と見ているが、ここは4五歩、5五銀、3三歩成、同桂、5二歩でも先手良し)
したがって後手は5五銀引と指すしかない。先手は3六飛。これで先手は後手の銀を下がらせて、手順に3筋に飛車を展開できた(次の図)
研究3七飛図44
ここで「4五銀」は、8四馬、同銀、5一竜、同銀、3三金で先手勝ち。
また「3一玉」とするのは、6三歩、5三金、5四歩、4一玉、5三歩成、同銀引、6一竜で先手良し。
後手攻めるなら、「6八歩成」だ。この先を見ていこう。
3三歩成、同銀引、6三歩、5三金、6二歩成、同銀、2三香成(後手に3一玉を許さない)、同玉、8五歩(次の図)
研究3七飛図45
6三歩~6二歩成で、後手の銀を下がらせたので、この8五歩(図)が効果的になっている。
図以下、6三銀、8四歩、5二銀で、角が取られてしまうが、同角成、同金、8三歩成と進めてみると―――(次の図)
研究3七飛図46
先手優勢である。
次に7五馬と桂馬を取る手が有効手になる。6七桂成なら、8六玉で“入玉”をめざす。
研究3七飛図47
途中まで戻って、先手の6三歩に、手抜きして 6六歩(図)の変化。
6二歩成、7八と、同金、6七歩成。これで先手玉に受けがない。しかしまだ詰めろは掛かっていない、という状況。
先手に好手がある(次の図)
研究3七飛図48
3三飛成(図)で、先手が勝てる。
同銀は5一竜で。同桂は3四銀で、先手勝勢。また3三同玉には、3五銀で、やはり先手勝勢である。
研究3七飛図49
戻って、〈3〉6二金(図)。 先手の狙いの5二角成を避けた手。
これには6三歩と打って、5三金、5四歩、同金、9二竜と進める(次の図)
研究3七飛図50
6二歩の受けに、同歩成以下、攻め合いに。
5六銀、3七飛、6七銀成、5二と、同歩(次の図)
研究3七飛図51
5二同竜、7七歩成と進むと、後手優勢。後手玉が詰まないから。
しかし、ここで3三歩成を先に利かすのが正着手で、同桂なら3四金で先手良し。なので3三同銀引だが、そこで5二竜として、7七歩成に―――(次の図)
研究3七飛図52
3三飛成‼(図)
これで後手玉は詰んでいる。3三同玉に、3四金、同玉、5四竜以下。
研究3七飛図53
[ヨ]4六銀(図)はどうなるか。
この手には、7七飛とし、以下7六歩、7九飛と進む(次の図)
研究3七飛図54
ここで(あ)5八金や(い)6七歩は、3三香で先手良しになる。
具体的には、(あ)5八金、3三香、3一銀、5二角成、同歩、4一金(次の図)
研究3七飛図55
これで、先手が勝てる。角を渡しても、後手6八角に8九飛、7七歩成が詰めろではないので、先手の3一金からの攻めのほうが早い。
図で4二銀引なら、同金、同銀、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。
研究3七飛図56
7九飛に、(う)7五桂(図)が先手玉に最も迫っている。
この手に対して同じように3三香と攻めると、角と香を後手に持たれたとき、6八角と打たれて、8九飛、7七歩成が先手玉への詰めろになっているので、今度は後手優勢になってしまう。
なので、ここは7八歩と受けておくのが正着となる(次の図)
研究3七飛図57
7八歩と受けて、先手の狙いは、5九飛~3九飛。このときに「金金香」と持っていれば、3九飛が後手玉への“詰めろ”になっている。
後手は5八金とするが、3九飛で、次の図。
研究3七飛図58
このまま3三香と打ちこめば先手勝ち。
なので4四銀と受ける手が考えられるが、それでも3三香と打ちこむのが明快な寄せ。
対して3一銀なら、5二角成、同歩、4一金として、先手が良い。
3三同桂なら、5二角成(次の図)
研究3七飛図59
先手勝勢。
研究3七飛図60
3九飛に、3一銀(図)の場合。
この手には、2六香と打つ。2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬がねらい。
なので後手は4二銀引と受ける(4二金は6三角成、6二銀右、4五馬で、先手勝勢になる)
そこで先手は6六金(次の図)
研究3七飛図61
6六金と打って、先手の次の狙いは7五金、同金、同馬である。7五桂を取ってしまえば先手玉は安全になるし、桂馬が入れば1五桂が決め手になる。
先手勝勢である。
研究3七飛図62
[ユ]3一銀(図)が後手“最後の候補手”
図から、7七飛、7六歩、3七飛と進む(次の図)
研究3七飛図63
ここで考えられる後手の候補手は―――
〔s〕6六銀、〔t〕4二金、〔u〕6二銀右、〔v〕4六銀
(他に〔w〕7五桂 は上で調べた「研究3七飛図25」に合流する→先手良し)
〔s〕6六銀 には、2六香と打つ(次の図)
研究3七飛図64
対して、7七歩成なら2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬で、先手勝ち。
よって後手は受けなければいけないが、4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、2三香成、同玉、4五馬で、先手勝勢になる。
したがって、2六香には、4二銀引と受ける。
以下3三歩成(同桂なら3四歩、4五桂、8四馬、3七桂不成、6六馬で先手勝勢)、同銀、5二角成、同歩、2三香成、同玉、3一竜(次の図)
研究3七飛図65
7九角には9八玉で大丈夫。先手勝ち。
研究3七飛図66
[ユ]3一銀 と早く銀を引いたのだから、〔t〕4二金(図)は指してみたい手。
以下6三角成、6二銀右、3六馬、6六銀、7八歩、7七歩成、同歩、6五桂、2六香(次の図)
研究3七飛図67
2六香(図)と打って、後手7七桂成なら、2三香成、同玉、4五馬で後手玉は“必至”になり先手勝ち。
それを受ける手として1一玉もあるが、2三香成、2二歩、1二成香、同玉、1五歩として、次に1四歩からの端攻めがあり、先手良し。
また4五馬を防ぐ4四歩には、5四歩がある。
ということで後手は4四銀と受けるが、これには6一竜、5二金に、5四馬がある。以下7七桂成、6四馬(次の図)
研究3七飛図68
1五桂と、2三香成~3一馬の二つの狙いがあり、先手勝勢。
研究3七飛図69
〔u〕6二銀右(図)と引く手のねらいは、次に4二金として4一角を捕獲することである。
ここはしかし、2六香と打って、4二金に、3三金と打つ(次の図)
研究3七飛図70
3三同桂、同歩成、同金は、3四歩がある。
よって後手は図で1一玉とするが、4二金、同銀引、2三香成、7七歩成、同飛、2二歩、3二成香(次の図)
研究3七飛図71
3二同銀、同角成、3一金、3三歩成、同桂、3一馬、同銀、4一金(次の図)
研究3七飛図72
以下3二銀、3一金、2一銀が予想されるが、4二銀で先手が勝てる。4二銀は詰めろではないが次に3三銀成がねらいで、4五桂なら3二歩で後手“受けなし”になる。4二銀は後手5三角の受けを許さない意味もある。
4二銀に、後手3二歩なら、8四馬で、先手勝ち。
研究3七飛図73
〔v〕4六銀(図)は、3六飛、7七歩成、4六飛、7五桂、9八金、7六桂、8九香と進む(次の図)
研究3七飛図74
後手の攻めはいったん止まり、ここで後手の指し手が難しい。
6九金 のような手なら、7八歩、同と、7六飛で先手良しになる(以下8九と、3三歩成、同玉、5二角成、同歩、3一竜)
7四銀 または 6二銀 は考えられる。7八歩なら4二金で勝負しようという意味の手だが、しかし7四銀(6二銀)に、3三歩成、同玉、8二馬という手が先手に生まれて、やはり先手良しになる。
ということで、後手は6二歩とする。これも4二金の角捕獲が後手の狙いである。
対して、先手は、3三歩成、同玉、7九歩とする(次の図)
研究3七飛図75
7九歩(図)は攻める前の準備。次に5二角成、同歩、3一竜の狙い。そのときに後手7九角の筋を消しておいたわけだ。
図以下、4二金、5一竜、2二玉、3三歩、同歩(同桂なら8五角成、同玉なら3六飛)、3二歩(次の図)
研究3七飛図76
3二同金は、同角成、同玉、5二竜以下、“寄り”
3二同銀なら、5二角成(次に3一銀)で、先手勝ち。
これで、【15】3七飛 の調査がおわった。結論は―――
3七飛図(再掲)
【15】3七飛は 先手良し。
「吉祥A図」の調査結果のまとめ
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
【13】9八金 → 後手良し
【14】6五歩 → 後手良し
【15】3七飛 → 先手良し
ついに「吉祥A図」の徹底調査が完了した。
第62譜につづく
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