はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

アムステルダムの猫

2008年09月08日 | ほん
[ 海洋博物館に行った。
 受付に猫がいた。
 台上にねそべっている。黒っぽいシマ猫で、巻貝を置いたような形でうずくまり、まぶたを持ちあげて私どもを見たが、すぐ閉じた。
 この光景は、猫がつねに船乗りとともにあったことを象徴している。
 十七世紀のオランダの大航海時代には、この国の猫も地球のあちこちに行っていた。猫がいなければ航海がなりたたないといっていいほど、当時の船にはネズミが多かった。

 ヤマネコはべつとして、イエネコがヨーロッパにやってきたのは八世紀だそうである。自信のない想像だが、アラビア人による地中海貿易と関係があるのではないか。アラビアは猫を飼うことの先進国なのである。
 日本に猫(ヤマネコでなく)がきたのは、伝説では仏教伝来のときとされている。仏教伝来は、通説では五五二年である。日本の船に経巻を積むとき、ネズミに食いあらされないように、という配慮からだったといわれる。
 とすれば、猫は遠洋航海につきものだったといっていい。
 ついでながら、猫を飼う習慣の起源ははるか前のエジプトにあるようで、中国にもたらされたのも、遠い古代ではない。古くはと書いた。古代は、田にはびこるネズミをとらせるために“”を飼ったらしい。 ]

   (司馬遼太郎 『街道をゆく三十五・オランダ紀行』 より)
コメント
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