〔 九月十三日に猫が死にました。
…いつの間にか見えなくなったかと思ってるうちに物置の古いヘッツイの上で固くなっておりました。車屋に頼んで蜜柑箱に入れて、それを書斎裏の桜の樹の下に埋めました。そうして小さい墓標に、夏目が、「この下に稲妻起こる宵あらん」と句を題しました。九月十三日を命日といたしまして、毎年それからこの日にはお祭りをいたします。
…猫の十三回忌の時に、小さな祠でも建てようかと思ったのを考えなおして、九重の石の供養塔を建てました。そうして雑司ヶ谷の墓地にあった萩を移して周囲を飾りました。 〕
(夏目鏡子述・松岡譲筆録 『漱石の思い出』)
九重の石の供養塔…? んん? 十重なのだが…?
たぶん僕がスケッチをする際に、まちがえて余分に1個多く石を描いてしまったのでしょう。
とおもったが、しかし、ケータイで撮った画像(↓)を見ると、十一重にも見える… 九重でなくてもかまわないのか?
漱石公園は、早稲田の近くにあります。夏目漱石は、イギリス留学から帰国して、その後3度引越しをしています。その最後の住居がここにあったのです。「漱石山房」と呼ばれた洋風の白い建物が復元されています。
この「猫の塔」も、復元されたもので、初めのものは一度戦争で破壊されています。その後、国だか都だかが復元したものが今もあるわけです。ただしこの下には猫の遺骨はすでになく、それはもっと前に雑司ヶ谷の夏目家の墓に移されているそうです。
ここへ行った帰りは、地下鉄に乗らず、JR高田馬場駅まで歩いてみました。歩くと30分以上かかります。この通りには早稲田大学があり、以前は古本屋がずらりと並んでいたのですが、時代の流れで、ずい分古本屋も少なくなっていました。
JR高田馬場駅では、電車が来ると、「鉄腕アトム」のメロディが流れます。手塚治虫がこの高田馬場を拠点に仕事していたからですね。
夏目漱石の孫、夏目房之介(ふさのすけ)氏は、『手塚治虫はどこにいる』などの漫画評論本を書いて、手塚治虫文化賞(特別賞)を受賞しています。 夏目房之介氏の手塚治虫批評などを読みながら僕が思うことは、やはり初期の(『アトム』より前の)手塚治虫というのは、比類なき天才だったんだなあ、ということです。イメージでいうと、巨大な戦艦を3つまとめてひっくり返し、怪力でもってぐるぐる回す、そんなことを紙の中でやっていた…、そんな男だったのだと。
ところで、漱石が猫のために書いた句の「稲妻」というのは、光る「猫の目」のことだそうです。
…いつの間にか見えなくなったかと思ってるうちに物置の古いヘッツイの上で固くなっておりました。車屋に頼んで蜜柑箱に入れて、それを書斎裏の桜の樹の下に埋めました。そうして小さい墓標に、夏目が、「この下に稲妻起こる宵あらん」と句を題しました。九月十三日を命日といたしまして、毎年それからこの日にはお祭りをいたします。
…猫の十三回忌の時に、小さな祠でも建てようかと思ったのを考えなおして、九重の石の供養塔を建てました。そうして雑司ヶ谷の墓地にあった萩を移して周囲を飾りました。 〕
(夏目鏡子述・松岡譲筆録 『漱石の思い出』)
九重の石の供養塔…? んん? 十重なのだが…?
たぶん僕がスケッチをする際に、まちがえて余分に1個多く石を描いてしまったのでしょう。
とおもったが、しかし、ケータイで撮った画像(↓)を見ると、十一重にも見える… 九重でなくてもかまわないのか?
漱石公園は、早稲田の近くにあります。夏目漱石は、イギリス留学から帰国して、その後3度引越しをしています。その最後の住居がここにあったのです。「漱石山房」と呼ばれた洋風の白い建物が復元されています。
この「猫の塔」も、復元されたもので、初めのものは一度戦争で破壊されています。その後、国だか都だかが復元したものが今もあるわけです。ただしこの下には猫の遺骨はすでになく、それはもっと前に雑司ヶ谷の夏目家の墓に移されているそうです。
ここへ行った帰りは、地下鉄に乗らず、JR高田馬場駅まで歩いてみました。歩くと30分以上かかります。この通りには早稲田大学があり、以前は古本屋がずらりと並んでいたのですが、時代の流れで、ずい分古本屋も少なくなっていました。
JR高田馬場駅では、電車が来ると、「鉄腕アトム」のメロディが流れます。手塚治虫がこの高田馬場を拠点に仕事していたからですね。
夏目漱石の孫、夏目房之介(ふさのすけ)氏は、『手塚治虫はどこにいる』などの漫画評論本を書いて、手塚治虫文化賞(特別賞)を受賞しています。 夏目房之介氏の手塚治虫批評などを読みながら僕が思うことは、やはり初期の(『アトム』より前の)手塚治虫というのは、比類なき天才だったんだなあ、ということです。イメージでいうと、巨大な戦艦を3つまとめてひっくり返し、怪力でもってぐるぐる回す、そんなことを紙の中でやっていた…、そんな男だったのだと。
ところで、漱石が猫のために書いた句の「稲妻」というのは、光る「猫の目」のことだそうです。