朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載中の「世界史レッスン」第50回目の今日は、「ギロチンは人道的?」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/02/post_cfe3.html#more
ギロチンがフランス革命で使われるようになったいきさつについて書きました。ただし刃を斜めにしたのはルイ16世の提案だったとの説は省略。なぜならこれを言っているのは処刑人サンソンだけで、わたしとしては真偽のほどはあやしいかな、と思っているので。
白ばら運動のゾフィー・ショルがギロチンにかけられた1943年という年は、フランスでもひとりの女性がギロチンで処刑された。戦争中、望まぬ妊娠をした女性たちに堕胎手術をおこなっていた、というのがその理由だ。
両事件とも優れた映画作品になっている。
前者は「白バラの祈り」--ラストのギロチン・シーンは衝撃的だった。恥ずかしながらわたしは射殺だとばかり思い込んでいたので、なおのことショックが大きかったのだ。
後者は「主婦マリーがしたこと」--ゾフィー・ショルとは正反対で、このマリーは全く信念も何もなく、ただ頼まれてずるずると堕胎に手を貸し、政治的判断で死刑にされてしまう。どちらも歴史に翻弄された女性たちだが、その差は大きい。
ところで前から気になっていたのだが、去年ミュージカル『マリー・アントワネット』を見て、ラストに驚いた。ギロチン台にあおむけになって首をはねられるシーンだったからだ。
舞台上での演出にしても、これはひどいと思ったが、なんと、「アントワネットは民衆にあまりに憎まれていたため、苦痛を増大させようとあおむけで処刑された」という説があると知った!
それでいろいろ手元の文献を読み直してみると、画家の名前の記されていない当時のイラストに、こんなものがあった。処刑後の彼女の身体が棺に入れられようとしているのだが、それがあおむけなのだ(もっともこれは、ひっくり返した後かもしれない)。またサンソンの手記で、死の直前、アントワネットは空を見ていた、と書いてあり、うつぶせだとそれは不可能ではある。
他には証拠らしいものもなく、十中八,九、あおむけなどありえないと思いつつ、しかし可能性ゼロとは言えないのかなあ、と悩む。どなたかご存知の方、教えてください!
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」
☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
☆☆画像をクリックすると、アマゾンへ飛べます。
「マリー・アントワネット」(上)(下)
シュテファン・ツヴァイク
中野京子=訳
定価 上下各590円(税込620円)
角川文庫より1月17日発売
ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8
ギロチンがフランス革命で使われるようになったいきさつについて書きました。ただし刃を斜めにしたのはルイ16世の提案だったとの説は省略。なぜならこれを言っているのは処刑人サンソンだけで、わたしとしては真偽のほどはあやしいかな、と思っているので。
白ばら運動のゾフィー・ショルがギロチンにかけられた1943年という年は、フランスでもひとりの女性がギロチンで処刑された。戦争中、望まぬ妊娠をした女性たちに堕胎手術をおこなっていた、というのがその理由だ。
両事件とも優れた映画作品になっている。
前者は「白バラの祈り」--ラストのギロチン・シーンは衝撃的だった。恥ずかしながらわたしは射殺だとばかり思い込んでいたので、なおのことショックが大きかったのだ。
後者は「主婦マリーがしたこと」--ゾフィー・ショルとは正反対で、このマリーは全く信念も何もなく、ただ頼まれてずるずると堕胎に手を貸し、政治的判断で死刑にされてしまう。どちらも歴史に翻弄された女性たちだが、その差は大きい。
ところで前から気になっていたのだが、去年ミュージカル『マリー・アントワネット』を見て、ラストに驚いた。ギロチン台にあおむけになって首をはねられるシーンだったからだ。
舞台上での演出にしても、これはひどいと思ったが、なんと、「アントワネットは民衆にあまりに憎まれていたため、苦痛を増大させようとあおむけで処刑された」という説があると知った!
それでいろいろ手元の文献を読み直してみると、画家の名前の記されていない当時のイラストに、こんなものがあった。処刑後の彼女の身体が棺に入れられようとしているのだが、それがあおむけなのだ(もっともこれは、ひっくり返した後かもしれない)。またサンソンの手記で、死の直前、アントワネットは空を見ていた、と書いてあり、うつぶせだとそれは不可能ではある。
他には証拠らしいものもなく、十中八,九、あおむけなどありえないと思いつつ、しかし可能性ゼロとは言えないのかなあ、と悩む。どなたかご存知の方、教えてください!
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」
☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
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「マリー・アントワネット」(上)(下)
シュテファン・ツヴァイク
中野京子=訳
定価 上下各590円(税込620円)
角川文庫より1月17日発売
ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8
「白バラの祈り」は、ショッキングなドイツ映画でした。実話で、ギロチン処刑後、本人の写真がでますよね。あの時代まで、ギロチンがあったことに驚きました。ユダヤ人はガス室でした。大量に死刑にするためのドイツ的能率主義だったからでしょうか?ガスは苦しそうですね。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、「カポーテイー」などは絞首刑。日本も絞首刑ですね。アメリカは州によって異なりますが、電気椅子が多い。これも「チョコレート」や
「グリーン・マイル」などで見ても、残酷です。
アントワネット仰向け処刑説は初めて聞きました。サンソンの手記の「直前は、まだ刃の下に行く前のことだと思います。日本のハラキリでも、後ろ首を介添え人が切って成立しました。咽喉から切るなんて、ありえません(自殺ならありますが)。
ギロチンは死刑を人道的に行う配慮でした。戦争の武器にも非人道的武器という定義があって笑ってしまいます。死系も戦争も、人道に反することは自明です。
戦争における「人道的武器」はまるでブラックジョークで、空恐ろしいですが・・・
「白バラ」映画は、レーナ・シュトルツェのを見たことがあります。
ギロチンもよほど研がれた刃でないと、一気に
首を落とすことはできなさそうですもんね。
苦しいだろうなぁ。それで仰向けだったら、歯が
落ちてくる前の恐怖感たるや・・・。残酷。
『マリー・アントワネット』上巻を読み終えたところです。
楽しませていただいております。。
さっき別ルートからscauderhaftな情報が・・・ドイツのカードゲームで「ギロチン」というのがあり、アントワネット・カードなどを使って、どんどんギロチンにかけてゆくんだそうです。誰が遊ぶんでしょう?
ゆうひさん
あ、読んでくださっているのですね、嬉しいな♪お忙しいのにありがとうございます。今度、ぜひ感想聞かせてくださいね!
(マリー・アントワネット関連の書籍のレビューを
見てくださったのでしょうか?)
ソフィア・コッポラの映画を見た後、書店で買えるだけの関連書を購入しました。
その中に、中野さんが訳されたツヴァイクのマリーアントワネットもありました。
まだ一読しかしてないので、読み直したいと思います。
マリー・アントワネットの首飾りというジャンヌ・バロアが
主人公の映画のラストで、アントワネットの処刑
シーンが(なぜか…)あるのですが、仰向けでは
なかったけど水溜りにアントワネットの顔が映った時、
一緒に映った空が青かったです。
仰向けは人道的にもありえそうにない…と思いたいです…。
首飾りの映画というと、ヒラリー・スワンクがジャンヌを演じた作品ですね。わたしも見ましたが、ずっと前なのでアントワネットの処刑シーンは忘れていました。それにしてもあの映画はもう少し面白くできたのに、惜しいことでしたよねー。
ギロチン刑が人道的といわれる理由を知るためには、当時の風俗を理解しなければなりません。
当時は、死刑は民衆の娯楽でした。
死刑が行われるともなれば刑場には万余の人々が詰めかけ、刑の執行をそれはもう楽しみにしていたそうです。
執行人はそんな見物人の期待に応えるため、首切りにわざと失敗して、何度も何度も刃を振り下ろしたと言います。
徐々に肉を削がれ、骨を削られる苦しみは想像を絶します。
そのような恣意的な苦しみの時間を短くするのに、ギロチンは間違いなく効果的だったと思います。
正直、この事実の前には、仰向けかうつ伏せかというのは些細な問題にしか思えません。
また、中国では凌遅と言って、小刀で数千回にわたって体を細切れにする死刑方法があったそうで、洋の東西を問わず、苦しみを与える方法は磨きをかけられてきたという事実を思い知らずにはいられません。
個人的には、自分の親族を殺害されたらそれでも飽き足らないと思うので、死刑制度は大賛成です。
廃止を唱える方は、家族が山形県光市で起こった事件(妻が絞殺された上に死体を強姦され、母を求めて泣く1歳の子供を床にたたきつけた挙句に絞殺し押入れに放り込まれていた事件。犯人は当時未成年。奪ったカネを遣ってゲームセンターで遊び、逮捕後も被害者を誹謗中傷している)のような被害に遭っても赦せるような人だけなのでしょう。
私には不可能です。
死刑をしてくれないなら自らの手で決着を付けます。
事実、ドイツでも息子を殺害した犯人を法廷で射殺した母親には圧倒的な支持が集まったと記憶しています。
死刑は残酷ではありません。
死刑になるような犯罪を犯す人が残酷なのです。
確かに死刑制度反対論者の方たちが、被害者へ一方的な我慢を強いる側面は見られますよね。とても難しい問題ですが・・・