中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

皇妃エリザベートの姑ゾフィ(世界史レッスン第73回)

2007年07月24日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第73回目の今日は、「なんでオレだけ皇帝じゃないの?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/07/post_6591.html#more
 祖父も大叔父も父も兄も息子ふたりも皇帝で、しかも自分にも十分チャンスがあったにもかかわらず皇帝になれなかった、不運なフランツ・カール大公について書きました。

 彼を皇帝にしたくない急先鋒が妻ゾフィーで、彼女は結婚早々に夫の無能を見限り、自分は皇帝の妃ではなく皇帝の母になるのだと決意、着々と準備していたのだった。

 当時のハプスブルク家唯一の「男」と呼ばれただけのことはあり、ゾフィーは18歳の息子フランツ・ヨーゼフに君臨する。ミュージカル『エリザベート』にはこのゴッドマザーの凄さが随所で描写される(「容赦するな!強くなれ!冷酷に!厳しくせよ!」と暇なし檄を飛ばしていた)一方、父であるフランツ・カール大公は影が薄いどころか登場すらしない。

 フランツ・ヨーゼフが母に逆らったただ1度のできごとが、妻選びだった。ゾフィーのお膳立てで従妹ヘレーネと見合いをする席で、彼が見初めたのはまだ15歳の、へレーネの妹エリザベートだったのだ。

 ゾフィは大反対するが恋の力は強く、ついに彼は意志を貫いてエリザベートを手に入れる。しかし若い花嫁にしてみれば、嫁いだ先に途轍もないモンスター並みの姑がいたわけで、ふたりの確執は当時から有名だった。

 ミュージカルでは嫁姑の力関係が逆転する様を、非常にうまく視覚化していた。最初のうちは姑にふりまわされ、泣かされ続けたエリザベートが、女としての自分の美しさに目覚め、それを武器にする術を知った瞬間を、あのヴィンターハルターの肖像画と同じ衣装、同じポーズで舞台上で決めてみせる。

 ヴィーン子でこの肖像画を知らない者はいないので、芝居前半を締めるこのシーンには客席が「うおー!!」という感じでどよめいたのが忘れられない。


☆最新作「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆たまたま書籍出版の双風舎さんがこの本を誉めてくださっていました。うれしいな♪⇒ http://sofusha.moe-nifty.com/blog/2007/07/post_08d8.html#more

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


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3 コメント

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質問 (Akashi)
2007-07-26 11:05:44
すいません、うろ覚えなのですが、質問よろしいでしょうか?フランツ・カール大公は2回も皇帝になるチャンスがあったというのを何かで読みましたが、ほんとうですか?この後もまたチャンスがあったのでしょうか?
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はじめまして (lelele)
2007-07-26 15:37:27
突然ですみません。ひさびさにインパクトがあり、中味もあり、読みやすいという三拍子そろった本に出会ったので、思わずブログで取り上げさせていただきました。朝日出版社さん、いい本をつくりますね。
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Unknown (Akashiさん&leleleさんへ(kyoko))
2007-07-26 20:53:56
Akashiさんへ
 いえ、この後ではなくこの前、虚弱なためとても皇帝位につけると思われていなかった兄に、競り負けていたのでした。運も悪かったのでしょうね。

leleleさんへ
 ご訪問、ありがとうございます♪
 双風舎さんでいらっしゃいますね。ブログのことは担当の編集者さんからメールで教えてもらい、すぐ読ませていただきました。嬉しかったです!!
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