中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「羆嵐(くまあらし)」

2012年04月24日 | 
 仙台の熊牧場で、羆(ひぐま)を飼っていた、しかも動物虐待を疑われるほど劣悪な状態での飼育だったため、ついに犠牲者が出た、とのニュースは痛ましいものでした。

 去年、札幌市内にも熊が出て話題になったのを思い出します。北海道新聞の連載担当編集者さん宅のすぐ真向かいのおうちの前にも糞が落ちていたそうで、近隣はパニックになったとメールがきました。

 道産子にとって熊といえばヒグマ。怖いなんてものじゃありません。本州の人はツキノワグマを連想するようで、「熊ちゃんは可愛い」なんぞと本気で言う人がいてびっくり!!

 ヒグマは無敵です。頭はいいし、足は速いし、木に登れるし、泳げるし、火は恐れないし、死んだふりなんぞ全く通じません。大きいのになると3メートル以上、体重500キロですから、日本における野獣ナンバーワンです。

 そんなわたしでさえ、吉村昭の「羆嵐」を読んだ時には震えあがりました。初めて、アイヌ民族が熊祭をする意味がわかった気がしました。圧倒的に強い野獣は荒ぶる神そのものなのですね。

 「羆嵐」ですが、これは北海道の三毛別で実際に起こった害獣事件を描いたノンフィクション。異様な迫力でぐいぐい読ませます。7人殺され、3人重傷(うち1人は結局死亡)。巨大熊にとって人間は餌にすぎないという冷酷な事実。。。

 ラスト、「くまあらし」という言葉の意味が明かされます。人間と自然の闘いを描いた、これはノンフィクションの傑作です。

 ついでながら、パンダも熊の仲間。中国で先日、パンダが孔雀を襲って殺したという写真を見ました。。。


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5 コメント

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早春 (pascin)
2012-04-24 18:01:30
ひぐまのニュースは北海道に住む私にもショックな事件でした。この時期は今しか採れない山菜目掛けて週末の林道は賑わいます。
この美味しい山菜は鹿が先客!目が慣れてくると辺りはフンだらけ・・それでもめげずにひたすら摘みます。頭上ではウグイスの鳴き声、可憐なエゾエンゴサク、スミレをわき目に無我夢中、自然の中で極上のひとときです!
雪解けが遅かったせいで今年は来月初めにいつもの山奥を目指します!お目当ては行者ニンニク、その日はこれで水餃子に決まっています!
先生にも是非味わっていただきたいお味です。
札幌にいらっしゃる時を心待ちにしています。


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羆嵐 (たまうさ)
2012-04-24 19:28:35
私も『羆嵐』を読み返しました。闇に漂うクマのニオイ、人骨をかじる音を想像して以来、クマのイメージが変わりました。
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Unknown (pascinさん&たまうささん(kyoko))
2012-04-24 22:19:44
pascinさん 
 北海道の初夏の美しさが目に浮かぶようです。最近はずっと真夏にしか帰省していないなあと、郷愁に誘われてしまいます。

たまうささん
 ほんとですね。実に凄まじい描写でした。作中の人間たちの恐怖が読み手に乗り移るかのような。。。
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 (caroediem)
2012-05-01 18:41:14
そんな怖い事件があったのですね・・・あまり日本にいない私はよく浦島太郎子になります・・・
でも、私の最近の熊ニュースは、熊本に遊びに行ってきたことです!中学3年間と高校1年の4年間住んでいて、その高校のときの友人が唯一ひとり繋がっていて、ん十年ぶりに会いました!涙、涙の再会でした・・・そこで発見した各都道府県がつくっている‘ゆるキャラ’。熊本は‘くまモン’で、去年、人気投票(?)が全国一位になったらしい・・・最初は街中にあるので、「なに?この熊?」と、浦島太郎子状態を発揮していましたが、友人に教えてもらい、熊本を去るころにはかなりファンになり、いまや私の携帯待ち受け、ストラップはくまモンづくしです・・・ハハハ・・・
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Unknown (caroediemさん(kyoko))
2012-05-06 18:18:04
 熊本!確かに熊だけど。。。(あはは)
 そういえばベルリン市の紋章も熊です♪
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