中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

スペイン・ハプスブルク家ーー血族結婚による御家断絶(世界史レッスン18回)

2006年06月13日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第18回目は、「血族結婚くりかえしの果てに」。約200年続いたスペイン・ハプスブルク王朝が、度重なる血族間の婚姻によって、まるで血の呪いのごとき5代目カルロス2世を生み出し、ついに御家断絶に至るまでを書いた。⇒http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/10504734

 スペインにオーストリアの血が混じるのは、「狂女フアナ」ことスペイン女王フアナ(彼女については明日のこのブログで書く予定)と、ハプスブルク皇帝の息子フィリップの結婚によるものだ。

 ふたりの間に生まれたカール5世(スペイン王としてはカルロス1世)は、フランドル生まれでスペイン語を解さず、治世40年の間スペインで暮らしたのは十数年のみ。戦争に明け暮れ、スペインを大国に導いた。

 その一方でカルロス1世は美術にも造詣深く、ティツィアーノを優遇したことで知られる。彼の勇姿が今に残るのは、まさにティツィアーノの筆のおかげといえよう。

 息子フェリペ2世(スペイン生まれのスペイン育ち)も引き続きティツィアーノを優遇した。やはり肖像画を描かせているが、軍服姿も凛々しく、長い顔もさほど目立たない、魅力的といってもいいほどの若き武者ぶりである。

 フェリペ2世は王としても有能で、彼のもとでスペインは「陽の沈むことなき帝国」となる。スペイン語で「あくせく働く」ことを「フェリペ2世のように働く」という言い回しがあるほどで、猛烈サラリーマン並みだったらしい。

 そして3代目はダメというジンクスどおり、フェリペ3世は全く影が薄い。狩猟ばかりして、美術にも何の関心もなく、ろくな肖像画も残っていない。

 その子フェリペ4世のあだ名は「無能王」。すでにスペインの栄光は陰りはじめていた。ただし彼は祖父や曽祖父の趣味を引き継ぎ、美術コレクターとしてなかなかの眼を持っていた。宮廷画家にベラスケスがいたのも幸いしている。

 マドリッドのプラドが、パリのルーヴルやザンクトペテルブルクのエルミタージュと並んで世界3大美術館と言われるほどになったのは、まさにこれら王たちの目利きによるものだ。

 さて、そしてフェリペ4世の子がカルロス2世だ。ベラスケスの跡を継いだ宮廷画家カレーニョ・デ・ミランダ描く彼の肖像画の衝撃たるや・・・
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」





コメント (3)
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