恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第一章 或る愚か者の生涯
◆初めて世間の風に当たり、お金を稼ぐ◆
先の続き・・・
私も大学に行きたかったのですが、
兄が戦争から帰って来なければ自分が後を継がなくてはならないので、
上の学校に進むのを諦めて家の手伝いで農業をしていましたが、
戦後まもなく兄が帰って来たので、
一粒の葡萄で家を出ることになったのでした。
弟には「よし、そんなら、今、十万貯金できてるから、
これを持っていき。兄ちゃんの代わりにしっかり勉強してや」
と言って貯金の全部をあげました。
それから、また一からすべてやり直ししました。
ちょっと寂しい気もしましたし、
すっとしたようなヘンな感じもしました。
後年、私の長女が結婚する時にこの弟が百万円も
お祝をしてくれました。
「ぎょうさん祝いしてやってくれやなあ」と言って、
ありがとうと受け取りましたが、
それを郵便局の(当時の金利で七分以上ありましたので)
定期預金に入れて、十年は出さないでほしいと言って、
これをそのままその弟への祝いに返しました。
それが十年すると倍に増えて二百十万円になっていました。