恩師のご著書「講演集」より
講演、四
死に際して、私たちが救われるには
先の続き・・・
一昨年の十二月三十一日のことです。
もう夜十一時過ぎて、やがて除夜の鐘がゴーンと鳴る頃に、
「先生、ちょっと来てください」と電話がかかってきました。
「どうされたのですか」と聞くと、「おばあちゃんが亡くなりました。
早く天上界へ上げてやって下さい」と言われます。
「もう、明日にしましょう」と言うと、
「明日は一月一日ですけど、構いませんか」と
おっしゃるのですね。
「私には一月一日も何もありません。明日行きましょう」と言って、元旦に、
その方を天上界へ送らせてもらいました。
八十何歳のおばあちゃんで、入れ歯をはずしておられるので、頬骨が飛び出て、
その一部がへこんでおり、「まあ、これが人間の顔だろか」と思うような
恐ろしい顔をして、唇は色もありません。
その方にお話しさせてもらいました。
「おばあちゃん、長い間ご苦労様でございました。おばあちゃんのこの世の
修行は、今、終わりました。この世の修行が終わったということは、
おばあちゃんは死んだのです。いかに死にたくない、生きていたいと思いましても、
おばあちゃんはもう完全に死にました。そのことに気づいて下さい。
どれほど死にたくなくても、もうこの肉体は動きません。死んだことに気付いて、
それから、今日まで生きられた八十年間をよく振り返ってみましょう。
おばあちゃんは腹を立てられなかったでしょうか。愚痴を言うことはなかった
ですか。人の悪口を言うのはどうでしたか」と言ってお話させてもらっていますと、
突然頬がふくらんできました。
「よく反省して下さい」と言っておりますと、見る見るうちに唇は紅を塗った
ようになり、頬に血の気がさして、綺麗なおばあちゃんに変貌しました。
もちろん、硬直は解けて、体はフワフワしています。
いかに肉体の硬直が起きて硬くなっておりましても、自分の心に目覚められますと、
即、救われるのですね。
迷うことなしに天上界に救われます。
死んでからでも救われるのです。
まして生きている私たちは、自分の心を正すことによって間違いなしに救われます。