経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

ニッチャーの戦略と知財

2009-05-31 | 企業経営と知的財産
 「中小企業はどのような市場で戦うべきか」
 中小企業の経営戦略における基本的なテーマの1つですが、先日、友人(防虫資材専門商社の経営者)といろいろ議論をして、かなり頭が整理されました。
 「中小企業は大企業が進出しないようなニッチ市場で高いシェアを目指すべきである。」
 これはよく言われる戦略で、現実をみてもかなり説得力のある考え方であると思います。ベンチャーファイナンスを担当していた頃には、「わが社の技術は大企業も凌駕する。この技術で市場の勢力図は塗り換わる。」的なビジネスプランは、十中八九どころか十中十といっていいほど実現しない。成長するベンチャー企業には、大企業の進出しにくい市場をうまく選択して早い段階でシェアを固めてしまう、というパターンが多いのも事実であると思います。
 しかし、このニッチャーの戦略(「第1のニッチ戦略」とします。)にも弱点がある。友人は、市場規模が企業の成長の限界を規定してしまう、という点を指摘していましたが、もう一つ重要だと思うのは、そうしたニッチ市場はニッチなだけあって、トレンド、法制度、規制など様々な環境変化の影響を受けやすい、という点です。知財関係者であれば‘ビジネスモデル特許に強い特許事務所’なんかを想定すればわやりやすいですが・・・。やはりニッチ市場だけに依存していてはリスクが高く、普遍性のある市場を相手にしていかないと事業の継続、安定は覚束ないことが多いと思います。
 そう考えてみると、同じニッチャーでありながらも、市場そのものがニッチでそこで高いシェアを占めるというパターンの他に、大企業が参入するような大きな市場の中でうまく大企業等と提携しながら、一定の地位を確保することに成功しているというパターン(「第2のニッチ戦略」とします。)もある。たとえば、「ここがポイント!知財戦略コンサルティング」でとり上げさせていただいたシードさんは、修正テープを開発した際に将来の市場規模を考慮して、自社製造に拘らずに大企業へのライセンスやOEMを決断された。昨年末に発売された新製品は、事務機器大手の企業を販売パートナーにされています。このように、提携先も含めたグループとして大企業に対抗できる事業体を作り上げれば、大きな市場でも戦えるわけですが、そこで問題になってくるのがその中での中小企業の位置取りです。これが他社でも代替可能な存在であれば、いつはじき出されてもおかしくない。強いグループのメンバーとなり、メンバーであり続けるためには、やはり独自の付加価値を提供できなければならないし、その独自性を継続的に維持できなければならないということになると思います。
 そこで知財というものの出番がくるわけで、第1、第2いずれのニッチ戦略においても、独自性を維持するための方策を考えていかなければならない。それが知財戦略の基本です。その中での知的財産権の持つ意味は、第1のニッチ戦略であれば競合との関係を規定するものですが、第2のニッチ戦略ではグループ内の力関係を規定するという側面も意識することが必要になるのでしょう(それによって権利の取り方などが大きく異なるわけではないかもしれませんが)。
 また、知財サービスのあり方そのものを考えた場合も、出願代理というニッチ市場(?)に限界が生じているとして、考えるべきことは、その部分で持っている独自性・付加価値をどのようにより普遍的なサービスに繋げていくか、であろうと思います。価値評価だ、コンサルだといったコンテンツ云々ではなく、事業領域を広げるのであれば、それがより普遍的なニーズ(企業の競争力の強化、競争優位の構築etc.)に対応するサービスなのかどうかが問題なのです。そうでなければ、それは場当たり的なニッチの綱渡りに過ぎず、なかなか安定的な成長にはたどり着けないのだと思います。


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