経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

発明はヒット商品を生むのか?

2007-02-01 | 知財発想法
 先日の記事でご紹介した「これから何が起こるのか」で、「商品生態系」という、非常に興味深い考え方が示されています。「商品生態系」とは、単位の商品やサービスではなく、顧客ニーズを中心に結び付いた様々な商品やサービスのことであると定義され、市場での競争の構図は、「『商品』対『商品』」から「『商品生態系』対『商品生態系』」へと移行していると捉えています。このような環境の下では、商品として良いものを作れば売れるというわけにはいかない。顧客ニーズに結び付いた商品生態系を作り出していくことが必要だ、とされています。
 確かに、近年の代表的なヒット商品であるiPodにしても、大発明によって生まれた単独の商品としてヒットしたわけではなく、PCやブロードバンドの普及をうまく捉え、ネットワーク化された商品群の中に洗練されデザインでうまく顧客ニーズにはまってヒットした、というものであると思います。

 このような競争環境の変化を考えると、知財の世界でよく語られる「発明がヒット商品を生む」という発想も、少し見直していく必要があるのではないでしょうか。特許の効果を説明する書籍やパンフレットなどで、「特許が支えたヒット商品」として紹介されている商品には、何かレトロなものが多いように感じられるのも、こうした環境の変化が影響しているのかもしれません。
 これからの時代は、
 「発明がヒット商品を生む。」
という単純な構図ではなく、
 「優れた商品生態系から多くのヒット商品が生まれる。その商品生態系の中で、様々な発明が生息している。
という風に捉えるべきことが多くなるのではないかと思います。
 少し視点を変えてみると、
 「知的財産権(特許権)で縄張りをくくった中からヒット商品が生まれる」
のではなく、
 「ヒット商品を生む環境である商品生態系の中での縄張りを知的財産権(特許権)で固めていく
というふうに言い換えることもできるのではないでしょうか。