2024年4月3日(水) こよみと季節 その4
先月から、下記記事を投稿している。
こよみと季節 その1 (2024/3/2) (P82)
こよみと季節 その2 (2024/3/9) (P84)
こよみと季節 その3 (2024/3/28) (P86)
その1では、暦法について、なかでも、太陽暦について、取り上げ、その2では、二十四節季と雑節について触れている。
その3では、五節句について取り上げ、関連する童謡にも触れている。
その4の本稿は、七十二候について記述し、シリーズを締めくくることとしたい。
◎七十二候とは
七十二候は、二十四節季を基本としながら、さらに細分化して季節の変化を表したものだ。中国には、以前から、宣明暦というものがあったが、荒唐無稽な内容も含まれていたようだ。
日本では、我が国の季節の変化に合わせて、江戸時代から改良が行われ、1890年(M6)年に作られた略本暦が広く流布しており、現在も使われている。
二十四節季は、太陽の運行に基づき、一年を、24等分した、約15日の、各節季を定めている。前稿で引用した、二十四節季の図を以下に示す。
各節季を、3等分し、約5日づつ、初候、次候、末候としている。
これらを、春から順に、以下に示す、
◎「春」
主な分野別に纏めると、春全体では、以下のようになる。
自然 5:東風 土 霞 雷 虹
鳥魚 5:鶯 魚 雀 燕 雁
虫 2:冬籠り虫 紋白蝶
草木 5:芽吹き 桃の花 桜の花 葦 牡丹
農作業 1:稲苗
◎「夏」
主な分野別に纏めると、夏全体では、以下のようになる。
自然 3:温風 土潤 大雨
鳥 1:鷹の幼鳥
虫 4:蛙 みみず かまきり 蛍
草木 6:筍 夏枯れ草 あやめ からすびしゃく 蓮の花 桐の花
農作業 4:かいこ 紅花 麦秋 梅の実
◎「秋」
主な分野別に纏めると、秋全体では、以下のようになる。
自然 7:雷 霜 小雨 霧 鎮暑 露 地凍
鳥 3:せきれい 燕 雁
虫 3:ひぐらし 虫戸 こおろぎ
草木 2;菊花 黄葉
農作業 3:綿花 稲実 干し水
◎「冬」
主な分野別に纏めると、冬全体では、以下のようになる。
自然 5:大地 虹 北風 成冬 泉 氷
鳥 1:雉
獣等 3:熊 鮭 鹿角
草木 7:さざんか 水仙 橘の実 芹 ふきのとう 枯れ草 蕗の薹
農作業 2:麦芽 鶏
◎全体の印象
*七十二候には、自然解や生き物に対する細やかな観察眼が目立ち、感心させられるのだが、全体として大きく纏めると、以下のようになるだろうか。
・自然 水関連 土関連 風関連 空関連
・動物 獣 鳥 虫 魚
・植物 木 草 花
・農作業 田仕事 畑仕事
*誤った文章もある
・芒種 次候の、腐草為蛍は、
腐った草が蒸れ蛍が生まれる、
の意だが、これは誤りで、宣明暦でも同じ文言 である。
・冒頭で、中国の宣明暦で、荒唐無稽な内容も含まれていたと書いたが、これは、以下のことだ。
宣明暦 寒露 次候 には、雀入大水為蛤(雉が水に入って大ハマグリとなる)とある。
雉がハマグリになるとは、あり得ないことだ。
一方、略本暦では、この候の 寒露 次候は、菊花開(菊の花が咲く)となっている。
・略本暦が出来た明治初期には、雉の誤りは判っても、蛍に関する正しい知識が無かったと思われる。
*自然現象や生き物に付いての、観察眼だが、以下のように、はじまり(◉)から、長い期間を経て、終わり(*)があるのには驚かされる。特に、終わりは、難しいと思われるのだがーーー。
・雷 春分 末候 雷の音がし始める◉
秋分 初候 雷が鳴り響かなくなる*
・虹 清明 末候 虹が出はじめる◉
小雪 初候 虹を見かけなくなる*
・つばめ 清明 初候 燕が南からやってくる◉
白露 末候 燕が南へ帰って行く*
・虫 啓蟄 初候 虫が出てくる◉
秋分 次候 虫が穴を塞ぐ*