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熊本地震と原発

2016年04月23日 21時45分06秒 | 日記

2016年4月23日(土)  熊本地震と原発

 

 

 熊本地震に関して、先日、下記記事を投稿したところで、主に、地震自身について触れている。

     熊本地震  (2016/4/20)

 今回はその続編で、筆者を含めて多くの人達にとって気がかりな、川内原発の運転継続等についての話題としたい。

  

○鹿児島県北西部にあって、熊本県の近くに位置する、九州電力の川内原発は、東日本大震災後に停止していたのだが、昨年8月、震災後、全国で初めて再稼働している。そして今般、近隣で熊本地震があり、稼働中の原発が地震に見舞われたら?! と危惧されたところだ。

 

 周知の事だが、 原発サイトの重要設備は、活断層の上には設置しないこととなっている。 近年近縁、サイト内の活断層が問題になった原発も複数ある。

そして、川内原発の設備設計では、基準となる地震動が、水平加速度620ガル(震度6強程度)までの地震に耐えられるように設計されているという。

 一方、原発サイトには、複数の地震感知器群が、自動的に地震を検出して運転を停止するシステムが装備されているようで、停止する設定値は、160ガル(震度5強程度)ということで、この値は、耐震限度である基準地震動の25%程度だ。

 

 前稿にあるが、震度階級と地震の加速度(水平)との関係を、改めて以下に引用する。

   震度階級   加速度:単位ガル 

     3       8~25

     4      25~80

     5弱:5-  80~150

      強:5+  150~270

     6弱:6- 270~480

      強:6+ 480~850

     7      850~

 

○熊本地震の震源(下図左 益城町)に近接した原発サイトとしては、下図左に示す3原発があり、今回の熊本地震の、前震、本震時の各地の震度は下図右のようだ。 

   

     3原発                       前震                      本震

 上図での各地の震度や、ネットで原発サイト内での加速度等を調べると、3原発の震度等は以下のようだ。後述の報道発表でも同様の数値である。

   原発  状況    地域の震度    サイトでの加速度

                前震・本震       前震・本震

   川内  再稼働中   震度3      8.6ガル(震度3)  

   伊方  準備中     震度3      10  ガル(震度3)  

   玄海  停止中    震度3      20.3ガル(震度3)

 

 これらから見る限り、結果として、川内原発では、地震は検出しても、自動的に停止するには至らなかったということだ。モニタリングポストでの放射線量も変化が無かったという。

又、稼働中の川内原発を、人為的に、強制的に停止する必要性もなかった、と言える。

 でも、これらは、機器類等が正常に機能していた、と言う事が基本前提だ。往々にして、頼みの安全装置が働かず、事故が起ることもある訳で、地震感知器や運転停止システムの定期点検等は十分だったのだろうか、と疑ってかかればキリはないのだがーー。

 

 大地震発生後、川内原発を稼働させるのは、危険ではないか、停止すべきだ、との意見も多く出たのだが、関係する閣僚(塩川担当相)から、安全性は確保されていて、停止する必要はない、との発言もあった。

 そして、4月18日、地震後初めて、原子力規制委員会の各委員が集まる臨時会議が開催され、会議後、田中委員長から、川内原発は稼働していても安全である、との発表と記者会見が行われている。

田中委員長は、原発の番人として、はっきりと安全であることを公言し、さらに、「科学的根拠がなければ、国民や政治家が止めてほしいと言ってもそうするつもりはない」とも述べた、とある。

 安全性の適合性審査を行って、合格させたという組織の責任と矜持とともに、科学に対する揺るぎない信念が窺えるところだ。

でも、タイミングとしては、極めて遅きに失した感があり、国民の、漠とした大きな不安に対して、地震発生後、速やかに答えるべきであった、と言える。

 

  ○2014年に合格した、川内原発の安全性適合審査時には、サイトの地理的条件に合わせて、周辺の断層の分布や、過去の歴史上の地震・火山噴火等から見た、自然災害(津波、地震等)のリスクを、科学的に評価している。当ブログでも、何度も取り上げて来ているので、詳細は略したい。

上記の評価対象としては、今回の熊本地震の震源となった、布田川・日奈久断層も含まれている。 そして、今回具体的に知ったことだが、これらの断層で、M8.1の地震が生起し、この地震動が川内原発サイトでは、150ガル(震度5)程度と想定したようだ。

原子力規制委:「川内原発を現状では停止させず」方針決定 - 毎日新聞【熊本地震】原子力規制委が臨時会合 川内など4原発は安全 田中委員長「情報発信十分でなく反省」 - 産経ニュース など)

 

 今回の熊本地震の状況を精査することで、自然災害の脅威のリスクに対する、原発の安全性の評価・規制基準を見直す必要が出て来るかも知れない。その場合は、基準自体を変更し、以降はそれで進めればよく、この、客観的な経験データの蓄積が進歩となる。

 客観的に、科学的に実状を把握せず、ただ漠然と、原発の安全性を心配するだけでは、先進国であり、科学技術立国を国是とする国の国民としては、情けないことだ。

 

 東日本大震災での、原発の安全性については、どうしても、大津波被害の調査とそれへの対策が主となってしまい、事故原発サイトでの地震による被害が、マスクされてしまったきらいがある。

筆者もこれまでは、原発サイトでは、地震感知器や稼働停止システムがどの様に組み込まれ、設定値がどうなっているのか、については、あまり調べておらず、殆ど知識もなかったことだ。

 今回の熊本地震は、或る意味では、地震に対する原発の安全性をPRし、認識を深めて貰う、いい機会になったと言えようか。

一方で、原発だけでなく、住宅や建造物全般からみて、立地している土地の断層群が怖いもので、しかも身近にあることを知らしめたとも言えよう。

 

 

 

 


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