2010年8月18日 日本語の表記 その3 人名のローマ字表記
これまで、当ブログで、
日本語の表記 その1 駅名はわかりやすい? (2010/8/1)
日本語の表記 その2 たちつてと (2010/8/8)
と、駅名のローマ字表記や、送り仮名や、五十音のた行、などについて触れてきた。今回は、人名のローマ字表記について、である。
諸外国との交流が盛んになるにつれ、日本語の固有名詞(地名、人名など)を、国際語である英語で、つまり、ローマ字で、どのように表現するかは、かなり重要な事項である。
ローマ字については、国内に、ヘボン式と訓令式(日本式)とがあり、かなりの混乱があることについては、これまで触れてきた。駅名や地名や人名に関しては、実際の発音に近い、ヘボン式表記が実質的な標準(デファクト・スタンダード)になっているが、その中で、長音の表記に関しては、長音記号(マクロン)を、使うやり方と、使わないやり方が、併存しているのが現状である。
人名のローマ字表記に関しては、外務省が定めているパスポートでの人名の表記法が、スタンダードと言える(旅券法 施行細則 5-1,2)。これによれば、ヘボン式を使うこととし、長音記号は使わない、としている。ただし、紛らわしさをなくすために、お段に限り、Oの後に、Hをつけてもよい、としている。
例えば、工藤は、送り仮名は くどう、ローマ字は KUDO、だが、KUDOH、と表記してもよい、となる。
マクロンを使わないで、長音を表記する場合、たとえば、工藤なら、一般的には、
KUDOH Oの後に、Hをつける
KUDOU Oの後に、Uをつける
KUDOO Oの後に、Oをつける
が考えられるが、旅券では、Hの場合しか認められていないのは、なぜだろうか。送り仮名は くどう(くどお でなく)なのだから、それに合わせて、少なくとも、Uをつけるケースは、認めて然るべき、と考えるがーー。
人名のローマ字表記で、長音記号を使わない場合、長音か短音かで、意味が全く別になってしまい、極めて紛らわしくなる、姓の具体例を、思いつくまま、列挙する。
音 ローマ字表記 長音のとき 短音のとき
いい IDA 飯田 いいだ 井田 いだ
おう OGI 扇 おうぎ 小木 おぎ
おお OGATA 大潟 おおがた 緒方 おがた
OKI 大木 おおき 沖 おき
OGI 仰木 おおぎ 小木 おぎ
OZEKI 大関 おおぜき 小関 おぜき
OTO 大戸 おおと 音 おと
ONO 大野 おおの 小野 おの
OHARA 大原 おおはら 小原 おはら
OMURA 大村 おおむら 小村 おむら
OYAMA 大山 おおやま 小山 おやま
こう KOYAMA 高山 こうやま 小山 こやま
KOYAMA 神山 こうやま 古山 こやま
そう SODA 宗田 そうだ 曽田 そだ
とう TOKAI 東海 とうかい 渡海 とかい
とお TOYAHA 遠山 とおやま 戸山 とやま
のう NODA 納田 のうだ 野田 のだ
もう MORI 毛利 もうり 森 もり
ゆう YUKI 結城 ゆうき 由岐 ゆき
これを避けるため、長音の場合、一般には、Hを入れるか、母音を繰り返す(OHGI、OHGATA、YUHKI、IIDA、など)のが、正確になる。しかし、下記のように、Hを入れると、却って違う読みになる危険もある(更に、ハイフン- を入れる?)
OHYAMA おひゃま → OH-YAMA
KOHYAMA こひゃま → KOH-YAMA
TOHYAMA とひゃま → TOH-YAMA
プロ野球選手のユニフォームの背中には、背番号の他、選手の名前がローマ字で書かれている。マクロンなしのヘボン式表記で、長音の場合は、Oの後に、Hが入っている例が多い。
OHTONARI 大隣 おおとなり ソフトバンク Hがないと、お隣?
KATTOH 甲藤 かっとう ソフトバンク Hがないと、カット?
TOHNO 遠野 とおの 巨人 Hがないと、殿?
JOHJIMA 城島 じょうじま 阪神
KANOH 加納 かのう 阪神
OH 王 おう 元ソフトバンク巨人 オーOの1文字だけでは、ゼロと間違えられる?
SHINJOH 新庄 しんじょう 元ニッポンハム
王さん GIANTS時代のユニフォーム
サッカーJリーグの選手名も同様で、例えば、先のサッカーWCで日本代表として活躍した選手では、長音の場合、下記のように、マクロンの代わりに、Hを使う例が多い。
ENDOH 遠藤 えんどう
OHKUBO 大久保 おおくぼ
プロ野球、サッカーJリーグとも、選手名のローマ字表記に関して、組織としての規則がどうなっているのか、調査不十分で、明らかにはなっていない。
現役の頃は、外国人との接触もあったので、仕事上の名刺は、表は漢字で、裏は、ローマ字で作った。自分の場合は、問題ではなかったが、前述のようなケースに該当するので、氏名のローマ字表記をどうするか、悩んだ人もいる。
何時だったか、スイスのジュネーブでの国際会議に出席した時、議事録の出席者名の欄で、自分の名前が苗字に、苗字が名前になっていて、面喰ったことがある。 日本人は、欧米の習慣に合わせようと、自己紹介などで、名―姓の順にすべく、一生懸命になるのだが、中国や、韓国の人たちは、姓―名の順の儘で通しているのは、羨ましく思ったもの。
日本国内のプロ野球では、韓国や台湾の選手の名前は、姓―名の順であるのは当然だが、姓だけでなく、名前まで一緒に呼ぶのは、一般的に、彼らの姓が、一字で短いから、であろうか。
現在、大詰めを迎えつつある夏の高校野球で、人名でなく地名に関することだが、滋賀県代表の北大津高校のユニフォームは、
KITAOHTSU
と、長音のHが入っていた。調べたら、JR大津駅の表示は、JRの原則通り、マクロン表示で、
Ōtsu
である。この高校、珍しく公立高とあって、応援していたのだが、ベスト8に入れず残念!
また、テレビ朝日の番組名が、
熱闘甲子園 (ねっとう こうしえん) NETTOH KOSHIEN
で、ねっとう、のローマ字は、長音のHが入っている。Hを入れずに、NETTOとすると、ネットともなり、紛らわしいのであろう。また、こうしえん、のローマ字の方は、長音の表記にはなっていない。
一方、NHKのHPでの、応援メッセージなどを受け付ける、実況ウエブサイトのアドレスでは
甲子園(こうしえん) Koushien
とあり、送り仮名と同じに、uが入っている。放送局間で、違いがあるのが面白い。先に挙げた、人名の、工藤 の場合に、似ている。
因みに、甲子園球場に近い、阪神電車の甲子園駅の駅名のローマ字表記は
Koshien
となっていて、長音の表記のhや、uは、入っていないようだ。
これまで、当ブログで、
日本語の表記 その1 駅名はわかりやすい? (2010/8/1)
日本語の表記 その2 たちつてと (2010/8/8)
と、駅名のローマ字表記や、送り仮名や、五十音のた行、などについて触れてきた。今回は、人名のローマ字表記について、である。
諸外国との交流が盛んになるにつれ、日本語の固有名詞(地名、人名など)を、国際語である英語で、つまり、ローマ字で、どのように表現するかは、かなり重要な事項である。
ローマ字については、国内に、ヘボン式と訓令式(日本式)とがあり、かなりの混乱があることについては、これまで触れてきた。駅名や地名や人名に関しては、実際の発音に近い、ヘボン式表記が実質的な標準(デファクト・スタンダード)になっているが、その中で、長音の表記に関しては、長音記号(マクロン)を、使うやり方と、使わないやり方が、併存しているのが現状である。
人名のローマ字表記に関しては、外務省が定めているパスポートでの人名の表記法が、スタンダードと言える(旅券法 施行細則 5-1,2)。これによれば、ヘボン式を使うこととし、長音記号は使わない、としている。ただし、紛らわしさをなくすために、お段に限り、Oの後に、Hをつけてもよい、としている。
例えば、工藤は、送り仮名は くどう、ローマ字は KUDO、だが、KUDOH、と表記してもよい、となる。
マクロンを使わないで、長音を表記する場合、たとえば、工藤なら、一般的には、
KUDOH Oの後に、Hをつける
KUDOU Oの後に、Uをつける
KUDOO Oの後に、Oをつける
が考えられるが、旅券では、Hの場合しか認められていないのは、なぜだろうか。送り仮名は くどう(くどお でなく)なのだから、それに合わせて、少なくとも、Uをつけるケースは、認めて然るべき、と考えるがーー。
人名のローマ字表記で、長音記号を使わない場合、長音か短音かで、意味が全く別になってしまい、極めて紛らわしくなる、姓の具体例を、思いつくまま、列挙する。
音 ローマ字表記 長音のとき 短音のとき
いい IDA 飯田 いいだ 井田 いだ
おう OGI 扇 おうぎ 小木 おぎ
おお OGATA 大潟 おおがた 緒方 おがた
OKI 大木 おおき 沖 おき
OGI 仰木 おおぎ 小木 おぎ
OZEKI 大関 おおぜき 小関 おぜき
OTO 大戸 おおと 音 おと
ONO 大野 おおの 小野 おの
OHARA 大原 おおはら 小原 おはら
OMURA 大村 おおむら 小村 おむら
OYAMA 大山 おおやま 小山 おやま
こう KOYAMA 高山 こうやま 小山 こやま
KOYAMA 神山 こうやま 古山 こやま
そう SODA 宗田 そうだ 曽田 そだ
とう TOKAI 東海 とうかい 渡海 とかい
とお TOYAHA 遠山 とおやま 戸山 とやま
のう NODA 納田 のうだ 野田 のだ
もう MORI 毛利 もうり 森 もり
ゆう YUKI 結城 ゆうき 由岐 ゆき
これを避けるため、長音の場合、一般には、Hを入れるか、母音を繰り返す(OHGI、OHGATA、YUHKI、IIDA、など)のが、正確になる。しかし、下記のように、Hを入れると、却って違う読みになる危険もある(更に、ハイフン- を入れる?)
OHYAMA おひゃま → OH-YAMA
KOHYAMA こひゃま → KOH-YAMA
TOHYAMA とひゃま → TOH-YAMA
プロ野球選手のユニフォームの背中には、背番号の他、選手の名前がローマ字で書かれている。マクロンなしのヘボン式表記で、長音の場合は、Oの後に、Hが入っている例が多い。
OHTONARI 大隣 おおとなり ソフトバンク Hがないと、お隣?
KATTOH 甲藤 かっとう ソフトバンク Hがないと、カット?
TOHNO 遠野 とおの 巨人 Hがないと、殿?
JOHJIMA 城島 じょうじま 阪神
KANOH 加納 かのう 阪神
OH 王 おう 元ソフトバンク巨人 オーOの1文字だけでは、ゼロと間違えられる?
SHINJOH 新庄 しんじょう 元ニッポンハム

サッカーJリーグの選手名も同様で、例えば、先のサッカーWCで日本代表として活躍した選手では、長音の場合、下記のように、マクロンの代わりに、Hを使う例が多い。
ENDOH 遠藤 えんどう
OHKUBO 大久保 おおくぼ
プロ野球、サッカーJリーグとも、選手名のローマ字表記に関して、組織としての規則がどうなっているのか、調査不十分で、明らかにはなっていない。
現役の頃は、外国人との接触もあったので、仕事上の名刺は、表は漢字で、裏は、ローマ字で作った。自分の場合は、問題ではなかったが、前述のようなケースに該当するので、氏名のローマ字表記をどうするか、悩んだ人もいる。
何時だったか、スイスのジュネーブでの国際会議に出席した時、議事録の出席者名の欄で、自分の名前が苗字に、苗字が名前になっていて、面喰ったことがある。 日本人は、欧米の習慣に合わせようと、自己紹介などで、名―姓の順にすべく、一生懸命になるのだが、中国や、韓国の人たちは、姓―名の順の儘で通しているのは、羨ましく思ったもの。
日本国内のプロ野球では、韓国や台湾の選手の名前は、姓―名の順であるのは当然だが、姓だけでなく、名前まで一緒に呼ぶのは、一般的に、彼らの姓が、一字で短いから、であろうか。
現在、大詰めを迎えつつある夏の高校野球で、人名でなく地名に関することだが、滋賀県代表の北大津高校のユニフォームは、
KITAOHTSU
と、長音のHが入っていた。調べたら、JR大津駅の表示は、JRの原則通り、マクロン表示で、
Ōtsu
である。この高校、珍しく公立高とあって、応援していたのだが、ベスト8に入れず残念!
また、テレビ朝日の番組名が、
熱闘甲子園 (ねっとう こうしえん) NETTOH KOSHIEN
で、ねっとう、のローマ字は、長音のHが入っている。Hを入れずに、NETTOとすると、ネットともなり、紛らわしいのであろう。また、こうしえん、のローマ字の方は、長音の表記にはなっていない。
一方、NHKのHPでの、応援メッセージなどを受け付ける、実況ウエブサイトのアドレスでは
甲子園(こうしえん) Koushien
とあり、送り仮名と同じに、uが入っている。放送局間で、違いがあるのが面白い。先に挙げた、人名の、工藤 の場合に、似ている。
因みに、甲子園球場に近い、阪神電車の甲子園駅の駅名のローマ字表記は
Koshien
となっていて、長音の表記のhや、uは、入っていないようだ。