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日本スペイン交流400周年  4

2013年07月09日 10時41分58秒 | 日記

2013年7月9日(火) 日本スペイン交流400周年  4 

 

 江戸初期に、スペインとローマに慶長遣欧使節が派遣されて、今年が、丁度400年の記念の年に当たると言うことで、当ブログでは、 

     日本スペイン交流400周年  1 (2013/6/26)  ①

      日本スペイン交流400周年  2 (2013/6/29)  ②

      日本スペイン交流400周年  3 (2013/7/05)  ③

と投稿して来た。

 その中で、慶長遣欧使節に関連する話題①、スペインの大まかな歴史②、スペインの現状についての概況と文化的側面③ について取り上げてきている。

  ますます、スペインに嵌ってしまったついでに、本稿では、前半で、スペインの地方行政組織と言語の公用語について触れたい。 後半では、多言語国家、国際的に見た言語の話者数の分布や国連機関の公用語、等について話題としている。

 

○スペインの地方行政組織

  先稿で触れたように、イベリア半島内では、歴史の過程で、勢力争いが繰り返され、近年では、スペイン内戦、第二次世界大戦、独裁政権時代を経て、今の様な状況になった訳だ。

現在は、首都マドリードの政府を中心として、地方行政組織として17の自治州があり、その下に、50の県があるという。

  世界の一般的なケースでは、民族や言語・文化の違い等から、国内で自治を認めるケースが多いが、スペインの自治州では、民族自決と言う側面への配慮がある一方で、広域行政という一種の道州制を導入している、とも言えるようだ。 

下図左は17自治州を、図右は、州都と県都を示している。(図は、ネット画像より)  

     

 

○スペインの言語

  よく、民族紛争や、宗教対立などと言われるが、筆者を含めて、日本人には、民族や宗教や言語が相違し対立することの厳しさ、深刻さについては、殆ど理解できない様に思える。

 特に、民族(race)については、定義からして難しいが、比較的理解しやすいのは、言語(language)の違いだろうか。

スペインには、以下の、12の民族があると言われている。(スペイン - Wikipedia)(スペイン人 - Wikipedia

  スペイン人カスティーリャ人カタルーニャ人バレンシア人バスク人カンタブリア人アラゴン人ガリシア人アンダルシア人カナリア人アストゥリアス人レオン人 (スペイン人が、カスティーリャ人と、別になっている理由は不明だがーー)

そして、これらの民族を特徴づける重要な要因である、幾つかの言語があるようだ。  前述したように、スペインには17の自治州があるが、これらを、③でも挙げた公用語の面から見ると、以下のようになるようだ。(スペインの言語 - Wikipedia)(地方言語 - Wikipedia) 

  全国公用語        適用州            話者人口      全国公用語:地方公用語

      スペイン語     ほぼ全州で通用   

     (カスティーリャ語)(通用度は州により差)   全人口の89%        

        全国17州の内、以下の10州を除く7州では、スペイン語(カスティーリャ語)のみが公用語

  地方公用語5                      

    カタルーニャ語   カタルーニャ州       910万人    55.0%   31.7%                   

     (バレンシア語)   バレンシア州         (人口比9%)

                  バレアス諸島州

    ガリシア語     ガリシア州            300万人    30.1%   52.0% 

                                                          (人口比 5%)

    バスク語      バスク州              100万人    76.1%   18.8%

                             ナバーラ州            (人口比1%)   89.0%     7.0% 

    アラン語      カタルーニャ州の一部  人口5千人 

  公認地域語2  

      アストウリアス語 アストウリアス州         10万人

    (バブレ語とも)    カスティーリャイレオン州の一部  

     アラゴン語      アラゴン州の一部     1~3万人 

スペイン言語地図 

他に、公認されていない以下の言語もあるようだ。

         レオン語     カスティーリャイレオン州の一部 2.5万人        

     エストレマドーラ語    エストレマドーラ州の一部   数千~2万人

 

 バレンシア語はカタルーニャ語の方言に近いようで、エストレマドーラ語は、ガリシア語の方言に近いとも言われる。 言語学上の分類では、バスク語以外は全て、同根のラテン系言語と言われている。 

殆どの地域の住民は、スペイン語(カスティーリャ語)との、バイリンガルのようだ。

 

  言語の多様性は、歴史の遺産でもあるが、スペインでは、地域の歴史や文化を尊重し、5つの地域公用語と、2つの固有地域語を公認・保護し、他言語国家として運営していくのは、容易ではあるまい。上記にあるように、話者数が、全国で、数千人~数万人規模の言語も大事にしているきめの細かさである。

翻って見た時、我が国では、琉球語や、アイヌ語は、どのように扱われているのだろうか。

 

*スペインでの言語の多様性は、日本で言えば、どのような違いになるのだろうか。以下の、イ、ロ、ハに分けてみた。

  イ:日本国内に住む、外国人(韓国・朝鮮人、中国人、ブラジル人など)の言語と、日本語との違い程度だろうか、

  ロ:それとも、日本語と琉球語の違い程度だろうか。(琉球語については、自分でもよく分かっていないがーー)

  ハ:或いは、日本の標準語と、各地の方言である、津軽弁、名古屋弁、関西弁、鹿児島弁などとの違い程度なのだろうか。

以下は、勝手な想定だが、

  ・バスク語―カスティーリャ語 の違い    ⇒ほぼ イ

  ・カタルーニャ語―カスティーリャ語 の違い ⇒ほぼ ロ

  ・バレンシア語―カタルーニャ語  の違い    ⇒ほぼ ハ

   レオン語―カスティーリャ語  の違い         

位になるのだろうか。

 

*スペインでは、各州の民族的な意識には、かなりの差があるようだ。

  特に、異質な言語であるバスク語を話し、民族的にも異なるバスク州では、以前から、独立の機運が強いと言われる。(スペイン バスク自治州は独立に向かうのか

 また、カタル―ニャ人が多く経済的な強い力を持つカタルーニャ州での、最近の2012年秋の選挙結果では、自治の拡大に向けた動きが強まるようだ。(州の反乱に揺れるスペイン カタルーニャ州議会選挙)

この2州に続いて、ガリシア州、カナリア諸島州でも、言語や民族が異なるようで、民族意識も強いようだ。

また、歴史的にイスラムの影響が濃いアンダルシア州などでも、やや異なる意識をもっている人が多いという。

 自治の意識には、民族や言語等の文化の相違や、経済力の違い、歴史等が、複雑に関係するのだろうか。 

 

○多言語国家

  世界には、複数の公用語を認めている、多言語国家は多い。ヨーロッパでは、スイスが有名だが、周辺を強い国家に囲まれている結果、自国語を持たず、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4国語が公用語になっている。州ごとに、公用語が決められているようで、学校で、他の州の公用語も習うようだ。最近ではこれに、更に、英語が加わっていると言う。(スイス - Wikipedia

 スイスの言語分布

 紫 : フランス語,  黄 : ドイツ語(アレマン語),  緑 : イタリア語,  赤 : ロマンシュ語 

  ベルギーも、自国語を持たず、フランス語とオランダ語(方言 フラマン語)が公用語のようだ。 今回話題にしているスペインは、自国語に加え、複数の公用語を持つ、多言語国家の一つと言えるだろう。

  アメリカ大陸の北米では、カナダが、英語とフランス語が公用語となっている。アメリカ合衆国は、国名からして多民族国家なのに、驚く事に、連邦としての公用語は決めていないようで、事実上、英語が公用語だ。でも、州レベルでは、英語を第1公用語とし、話者の多い、スペイン語を第2公用語としているところもあるようだ。彼の国では、積極的に多言語にすると、収拾がつかなくなる、と言うことかも知れない。  また、中南米では、以前の宗主国の言語であるスペイン語やフランス語に加え、土着先住民の言語も公用語としている国もあるようだ。

  中国やインドでは、国内の少数民族への配慮から、支配勢力の言語の他に、複数の言語や方言が認められているようだ。

 

*国家の連合体であるヨーロッパ連合(Europian Union)の参加国は、今や28で、24もの公用語が認められていているようで、考えるとゾッとする。

  スペインについては、EUでは、スペイン語(カスティーリャ語)が公用語であるが、スペイン国内での地方公用語である、カタルーニャ語(バレンシア語)、ガリシア語、バスク語も、EU内での使用が認められているという。 (欧州連合の言語 - Wikipedia) 

 

○国際公用語

  国際機関である国連では、あるレベル以上の公式会議では、複数の公用語が使える事となっている。以前、仕事の関連で、国際会議には何度か参加したが、小さい作業部会レベルは、全て英だし、大きな会議でも、大抵は、英が使用されたために、通訳の御世話になってイヤホンで聞いたことは少ない。

  ある大きな会議で、某フランス人は、英を使えるのにわざと仏で発言し、その英訳を耳で聞きながら、何と、翻訳の誤りを注意するという場面も経験したことがあり、フランス人とはこういう言う人種か、と思った事である。 

  国連等の国際機関の運営や、オリンピック等の国際的な行事での言語をどれにするかについては、色んな議論がある所だ。建前は、母語として、使われる国(地域)が多い事、話者人口が多い事だが、発足当時の状況下で、関係した国の力関係がかなり反映されたようで、実際の国連の公用語としては、英、仏、露、中が入っている。さらに、政治的には強くなかったものの、地域数や話者人口が多い言語として、発足当時からスペイン語(西)が加えられ、5言語の公用語でスタートしている。

  その後、やはり、話者数の多いアラビア語(亜)が、1973年以降追加されて、6公用語となっているようで、国連の姿としては当然の事であるが、石油パワーの強さを示している、とも言えるだろうか。

 

  各言語の、話者数と、話される国(地域)数とを、下記に、ネットから引用したものを示す。(#397. 母語話者数による世界トップ25言語

 母語言語

母語話者数

百万人

順位

 

国(地域)数

順位

国連

公用語

言語圏連合体

中国語    中  

1213

 1

31

 8

 

スペイン語  西

 329

 2

44

 4

 

英語     英

 328

 3

112

 1

イギリス連邦

アラビア語  亜

 221

 4

57

 3

 

ヒンズー語 

 182

 5

20

10

 

 

ベンガル語

 181

 6

10

 

 

 

ポルトガル語

 178

 7

37

 6

 

ポルトガル語諸国共同体

ロシア語   露

 144

 8

33

 7

独立国家共同体(CIS)

日本語

 122

 9

25

 9

 

 

ドイツ語   独

 90.3

10

43

 5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス語  仏

 67.8

17

60

 2

フランコフォーニー国際機関

  上表にあるように、中国語は、話者数は、だんとつ なのだが、地域的な広がりは少ない。フランス語については、話者数は多くはないのだが、国(地域)数が、英語に次いで多く、一方、文化的な面での関連などから、国際的には重要視される言語となっているのであろう。

 

   つい先日だが、2020年オリンピック候補地選びでの、IOC委員に対する3候補地からのプレゼンテーションが、スイスで行われた。

日本から、今回は、フランス語が流暢な、アナウンサーの滝川クリステルさんも、ローザンヌに赴き、プレゼンし、好評だったようだ。

オリンピックでは、仏、英が公用語で、それに開催国の言葉が加わる。IOC総会では、、西、ロ、亜、独の同時通訳も行われるという。

 

   表中の、言語圏連合体の欄は、旧植民地の宗主国等が、独立後も勢力を温存するために考え出された仕組みについて記している。 イギリス連邦を維持している、イギリスの強かさには感心させられるが、大航海時代の覇者スペインは、やや、影が薄いようだ。


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