2015年4月16日(木) 地球の地図と図法 3
これまで、地球の地図に関連して投稿した記事、
地球の地図と図法 1 (2015/4/5)
では、地図の各種図法による、世界地図やその用途について、
地球の地図と図法 2 (2015/4/10)
では、上空や宇宙から見た地球の姿の把握や、地球の出についてとり上げた。
本稿はこれらの続編であり、地球儀に関する話題である。
3次元の球状の地球の表面を、2次元の平面で表したものが地図だが、地図表現には、次元が少ない分だけ、基本的に無理がある。
このため、前稿まで触れたように、用途向きに、特定の正性質(方位、角度、形状、距離、面積等の正しさ)を確保した、各種図法による地図が工夫されてきている訳だ。
これらの地図に対し、球状の地球の形を、3次元のまま小さくしたような地球儀は、方位、角度、形状、距離、面積等で、最も近似度が高く地球の姿を表していると言われる。
安土桃山時代など、往時を舞台にした大河ドラマでは、地球が丸いこともよく浸透しておらず、ましてや、空に飛び出す手段が無かった時代だけに、舶来品の地球儀を前にして、南蛮貿易の夢を語る織田信長などが良く出て来る。
◇ 地球儀の製作現場
何はともあれ、地球儀の製作現場を、覗かせてもらうこととすべく、ネットを探したら、恰好のサイトが見つかった。 地球儀が出来るまで>>あうん舎エンタープライズ で、下図は、このサイトから引用させて貰っている。
地球儀の完成品は、下図左で、下図右は作業風景である。
完成した地球儀 球径32cm 地球儀の地図の準備作業
この事例では、上図の様に、18片に分れた、地球の経度で20度毎に分れた地図を使っているようだ。
この地図を、球面上に貼りつける場合は、どうしても、接合面がズレたり、シワは不可避だが、これを極力押さえるノウハウが重要という。
◇地球儀に貼る世界地図
地球儀の土台となる球体を作ることも、重要な課題だが、本稿では、球体面上に貼りつける地図を、どうやって作るのか、を見てみる。
地球儀に貼り付ける世界地図は、地球の中心に光源を想定し、三角帽子のように地球全体を取り込んだ円錐面に投射する投影法である、舟型多円錐図法で作るようだ。(地図投影法 / 投影法カタログ / 舟型多円錐図法 )
円錐面に投影する円錐図法にも各種あり、緯度方向の距離が正確と言われるものに、正距円錐図法、正距多円錐図法、舟型多円錐図法等がある。これらでの、光源の位置、投影する円錐面の位置、単円錐と多円錐の違い、等については、筆者には、よく把握出来てはいない。
が、舟形多円錐図法の地図の作り方として、筆者が勝手に思っている方法は、次の様なものだ。
・まず、正距円錐図法で投影された下図の地図(地球全体を円錐面で覆う。光源は地球中心。36経線)(正距円錐図法 - Wikipedia より)を作る。
正距円錐図法の世界地図
そして、この地図の北半球部分を、地球の経度30度ごとの経線面で分けて12分割し、平面上に展開する。
・次に、地球の南北を逆にして、同様に円錐面に投影して、南半球部分の地図を作る。
・そして最後に、南北の地図を繋ぎ合わせると、下図のように、ぎざぎざの細長い地図の集合となる。
この地図は、天頂(極)に近づく程、地図の形がとんがった、紡錘形(舟型)になる。
舟型多円錐図法による世界地図 (12片)
紡錘形に分れたこのような地図は、平面上の世界地図としては、全く変な地図なのだが、球体表面に貼って地球儀にした途端、威力を発揮する図法と言えるだろうか。
上述の製作現場でも、この図法で、経度20度毎に分けた18片の地図を使っているようだ。
上図の紡錘形(舟型)は、数学的にはどの様に表されるのだろうか。そして、この図法による地図を、球面上に貼りわせた後の、地球儀上での、方位、距離、形状、面積 等の正確さ(歪み)はどうなのだろうか。 興味は尽きないのだが、これらについては、機会をみて整理したい。
◇ 地図データの集積
投影法で言う所の、地球の中心等に光源はある筈は無く、勿論、地球の周囲に、投影したものを映す平面も無い。これらは、あくまでも仮想上の仕掛けである。
投影法を云々する前に、実際の地球表面の地形や都市の姿があるだけで、これらを表現した「地図データ」こそが、全ての基本ということだろう。 この地図データを収集・蓄積する、測量や観測などの手段が、前稿の、その2でも少し触れたように、時代と共に進歩・高度化し、地図の範囲も、全世界まで広がり、精度も向上してきていると言える。
この地図データを、地図上に如何に表現するかが、投影法と地図の図法と言えるだろうか。これらについては、次稿以降で、改めて取り上げる予定である。