つれづれの記

日々の生活での印象

アンの舞台とモンゴメリ

2015年04月01日 22時40分01秒 | 日記

2015年4月1日(水) アンの舞台とモンゴメリ 

 

 これまで、小説「赤毛のアン」に因んで、下記記事を投稿して来たが、

      花子とアン     (2015/3/10)

      赤毛のアン     (2015/3/18)

      カナダ国のこと  (2015/3/27)

      クランベリー    (2015/3/29)

本稿は、赤毛のアンの舞台装置と言える、プリンスエドワード島内の、小説のモデルとなった場所や、建物などの話題を取り上げ、合わせて、アンシリーズとして、多くの作品を発表した、作者、モンゴメリと、アンの人気の秘密などに触れて、一連の記事を締めくくることとしたい。

 

○ 舞台となる島

 この物語は、基本的にはカナダのプリンスエドワード島(Prince Edward Island:PEI)を舞台とした、フィクションである。

小説の中では、セントローレンス湾、プリンスエドワード島、ノバスコシア(州名)、シャーロットタウン(PEI州の州都)、ニューブランズウイック(州名)、アルバータ(州名)等、実在の地名が出て来る。

 一方、作者である、L.M.モンゴメリが、このPEIで生まれ育ったこともあり、この島内の実在の地名や建物等をモデルとした、架空の地名等が出て来ることも多いようだ。

 

 物語の主人公のアンにとって、最も重要な“グリーンゲイブルスの家”がある地域は、アボンリー(Avonlea)というところだが、筆者は最初、これも、実在の地名と思って島の地図で探したのだが見つからず、暫くして、これは架空の地名と解った。

このアボンリーのモデルと言われるのは、下の地図の、島の北海岸地域にある、キャベンディッシュ(Cavendish)(赤枠)である。(PEI 観光マップ より)

   

 現在のキャベンディッシュ地域は、下の地図の、右が全体図で、左が、グリーンゲイブルス地域を四角く切り出して拡大した図である。

左図には、小説でのグリーンゲイブルスのモデルとなったという建物(緑枠)もあり、小説のイメージに合わせて、中を改造しているという。

近くには、恋人の小経や、お化けの森等の自然の風景もあり、小説が書かれた時代の歴史村である、アヴォンリービレッジもあるようだ。(以上 キャベンディッシュ & グリーン・ゲーブルズ|カナダ|海外旅行・ツアー |STW より)

         

            グリーンゲイブルスを拡大                          キャベンディッシュ全体 

  島内には、以前、鉄道が敷設されていたが、今は、廃止されているという。  小説の序盤に出て来るが、駅を降りたアンが、マシュウが馬車で迎えに来るのを待っていたブライト・リバー駅のモデルも近くにあるようだ。 

 他に、小説にでてくる、カーモディ、ホープタウン、ホワイト・サンド駅 等も、架空のようで、それぞれに、モデルがあるのだろうか。

 

 一方、キャベンディッシュには、地図に示されているように、モンゴメリの墓地もあり、近郊のニューロンドンには、モンゴメリが生まれた家もあるようだ。 州都のシャーロットタウンでは、今も、毎年、赤毛のアンのミュージカルが上演されるという。

後述する、赤毛のアン後の、多くのモンゴメリの作品には、島内の他の地域や施設が、モデルとなって登場するようだ。

 

 PEIは、小説ともども、正に、架空と実在とが、絶妙に折り重なっているようで、アンのファンにとっては、堪らない場所と言えようか。

 

○ アンシリーズとモンゴメリ

 L.M.モンゴメリは、最初の著作(赤毛のアン)の後、次々と、アンシリーズを発表している。ネット情報では、これらの著作を一覧すると、以下のようだ。(赤毛のアン - Wikipediaによる)

 ここにあるように、モンゴメリの研究者によって、著作毎に、アンの年齢や物語の年代が、きっちり分けられているのは驚くばかりである。

又、邦訳者は、村岡花子であり、①~⑪は、新潮文庫のアンシリーズ番号である。

邦訳名

原題

出版年

アンの

年齢

物語の年代

①赤毛のアン

Anne of Green Gables

1908

11〜16

1877〜1882

アンの青春

Anne of Avonlea

1909

16〜18

1882〜1884

アンの愛情

Anne of the Island

1915

18〜22

1884〜1888

アンの幸福

Anne of Windy Willows

1936

22〜25

1888〜1891

アンの夢の家

Anne's House of Dreams

1917

25〜27

1891〜1893

炉辺荘のアン

Anne of Ingleside

1939

34〜40

1900〜1906

虹の谷のアン

Rainbow Valley

1919

41

1907

アンの娘リラ

Rilla of Ingleside

1921

48〜52

1914〜1918

アンの想い出の日々

The Blythes Are Quoted

2009

40〜75

 1906〜1941

以下はアンとの関連が薄い短編集

アンの友達

Chronicles of Avonlea

1912

アンをめぐる人々

Further Chronicles of Avonlea

1920

  これらの、モンゴメリのアンシリーズの著作は、広義では、小説novelになるが、通常は、児童文学(juvenile literature)のカテゴリーに分類されるようだが、作者の、自伝的な、年代記的な色彩もあるだろうか。

カナダの作家の中に、モンゴメリも含まれてはいるようだが(カナダ - Wikipedia)、手持ちの、「世界文学全集」(新潮社)には、これらの物語は入っていない。

 

 児童文学とは、児童向けに書かれたもの等、という定義があり、

      イソップ物語、白雪姫、ムーミン、オズの魔法使い、

      風の又三郎、ノンちゃん雲に乗る

等、作品は無数にある。(児童文学 - Wikipedia など)

 これらと対比すると、先述の一覧にある、主人公のアンが、11歳の少女から成長し、大人になって、人生経験を重ねて行く、アンシリーズを、児童文学に位置づけるのは、私見では、かなり、無理があるように思える。

 でも、どのカテゴリーになろうと、作品自体の価値は変わらないがーー。 

 

○ アン人気の秘密

 カナダ史と、自然の美しさと、農漁業の島だったPEIを、モンゴメリが、著作を通して、アンの島という、一大観光地にした功績は大きいようだ。

 日本では、以前から、赤毛のアンとその舞台となったPEIの人気は、高かったようだが、昨年のNHKの朝ドラ「花子とアン」の登場で、人気はピークに達し、その後も、日本からの観光客、特に、女性客が続いていると言う。日本からの、赤毛のアン観光ツアーも多いようだ。 

観光客が増えるということは、カナダや、現地PEIの人達には嬉しい事なのだが、“日本では、赤毛のアンが、どうしてこんなに人気があるのか? 理解できない”、という人もいるとか。

 

 確かに、「赤毛のアン」は、PEIという、ごく小さな島を舞台とした、非常に狭い世間での、作者の自伝的な色彩もある作品といえる。言ってみれば、極めて日常的で、local色の強い話題で一杯なのである!

 にも関わらず/だからこそ、筆者には、「赤毛のアン」には、主人公の、成長に応じた、喜怒哀楽の生き生きとした心の動きや、家族や周囲の人達との関係や、自立への勇気や、自然や郷土への愛着などに、世界全体(worldwide)に共通する、普遍的なもの(uiversalなもの)が、感じられるのだ。 この普遍性こそが、人気の秘密と思うのである。

 

 カナダ放送局が制作した、「アボンリーへの道」(Road to Avonlea)という、連続テレビドラマが、1990年代前半に放映され、人気を博し、世界中に広まったようだ。内容は、赤毛のアンなどを題材とし、PEIで起こる、様々な出来事を描いていると言う。

筆者は、このドラマは見ていないが、ネットの某サイト(アボンリーへの道/赤毛のアン)には、ドラマにふんだんに登場する、古き良き時代の「カントリーライフ」を讃えながら、

 このドラマには美しい自然や誰もが持っている素直で純粋な部分、どんなに時代は変わろうとも決して変わって欲しくない大切なものがたくさん詰まっています。
アボンリーの地名は架空のものですがその物語と風景はいつまでも鮮明に私達の心に残ることでしょう。”

と出ている。この記述は、上記に示した、筆者の印象とも相通じるものがあるだろうか。

 このサイトでは、「田舎暮らし」と言わずに、カッコよく「カントリーライフ」と言うあたりは、都会人の郷愁があるようにも感じられるのだがーーー。

 

 ともあれ、今後、赤毛のアンに続く、アンシリーズの他の著作を読み、「道の曲がり角」の向こうでのアンの生きざま、を知る楽しみが出来たのは嬉しいことだ。

 

コメント
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