つれづれの記

日々の生活での印象

オスプレイ騒動

2012年09月22日 21時22分39秒 | 日記

2012年9月22日(土) オスプレイ騒動 

 

[試験飛行]

 先日の19日、日本政府は、防衛・外務両大臣の記者会見で、米軍の新型輸送機オスプレイの安全性は確認された、との安全宣言を行い、米軍の沖縄基地への配備の前段として、岩国基地での試験飛行を認めると発表した。

 19日当日の朝に、日米合同委員会を開いて、以下の様な運用ルール(沖縄配備後も含めて適用されるか)について合意し、安全確保に関する覚書が交わされたと言う。運用上の合意内容としては、報道された情報によれば、

    ・低空飛行訓練は、500ft(約150m)以上の上空で行い、人口密集地上空は避ける

    ・回転翼モードでの飛行は、基地・施設上空に限定する

    ・最も懸念されるモード切り替えの時間を、可能な限り短くする

    ・夜間訓練は最小限にとどめる

などの様だ。

 

 先日の記者会見では、配布資料があったのか無かったのか、あったとしたら、どんな資料が配られたのかはわからない。 

一方、防衛省のサイトには、覚書の内容を含め、該当する資料は見当たらないのだが、防衛上の機密事項ということだろうか?

外務省のサイトには、同様に、資料は見当たらないが、当日の記者会見の様子が、外務大臣だけでなく、防衛大臣の分も含め、逐語的に、テキストの形で詳しく出ているがーー。

 

 これを受けて、昨日朝、日本海上の訓練空域に向けて、岩国基地からオスプレイが飛び立ち、試験飛行が開始され、テレビでも中継された。昨日は、7機が飛行を行ったようで、今日は5機と、一通り終わったようだ。

 当面、岩国基地と日本海上の訓練海域や沖縄間で訓練飛行を行い、10月上旬にも、沖縄に、12機すべてを移動し、中旬には、沖縄で本格運用される見通しと言う。 今後、国内の数か所で、試験飛行を行うルートも公表されているようだ。

 

 

[オスプレイの特徴] 

 オスプレイの最大の特徴は、ヘリコプターと輸送用飛行機の二つを兼ね備えた、夢の航空機 とも言えるもので、実用化されているのは、世界でもこれだけのようだ。

 ヘリコプターは、言うまでも無く、回転翼(プロペラ)が回ることで、上向きの揚力が得られて、垂直上昇や、ホバリングができ、回転翼の軸の角度を少し傾けると、傾けた方向に進むことで、前や左・右方向へのステアリングが可能となる。

 一方、通常の飛行機は、胴体前方に着いているプロペラが回転することで前進する力が得られ、前進滑走することで、固定翼に揚力が発生し、離陸して、空中を飛行することが出来る。

 ヘリと飛行機の二つの機能を兼備えたオスプレイだが、機種としては、全体はV-22と言われ、仕様の大半は共通のようだが、海兵隊用MV―、空軍用CV―、海軍用HV―で、多少の違いがあるようだ。

開発には、莫大な費用と、25年もの歳月を要したと言われ、アメリカとアメリカ軍の威信がかかっている航空機と言えよう。

 

 この最新鋭の輸送機は、ヘリモード、固定翼モードを組み合わせることで、

    ・滑走路が不要       ヘリM  短い滑走路を使った離着陸も可

    ・ホバリングが可能     ヘリM

    ・超低空飛行が可能   ヘリM

     ・高速運行が可能     固定翼M 現用ヘリ(CH46E)の2倍の速度 

    ・多量の貨物積載能力 固定翼M  現用ヘリの3倍の能力     

    ・長距離の運行が可能  固定翼M 現用ヘリの4倍の行動半径 1600km?

などのメリットがあると言われている。

 

 オスプレイと、既存機との性能比較は、上記のようだが、ネットより借用した情報(V-22 (航空機) - Wikipedia)では、下図の様になる。図では、オスプレイV-22と、回転翼機H-60、固定翼機C-130と比較してある。

            

  米国国防省は、世界各地の米軍基地の装備を近代化し、輸送力の向上によって、迅速な作戦展開能力を獲得するために、オスプレイ配備計画を、実行中である。世界全体で、450機程を、配備する計画のようで、既に、2005年から配備を行って来ているという。沖縄への配備も、その一環となるようだ。

 

   

[複雑さと事故の多さ]  

 欲張った機能を持たせると、システムが複雑となって、問題も出て来るのが世の常で、この、オスプレイは、二つの飛行モード 

     垂直離着陸モード(ヘリコプターモード) :回転翼を上向き(垂直方向)

     固定翼機モード             :回転翼を前向き(水平方向)

の、切り替えができることが、最大の長所なのだが、一方では、これが、最大の弱点となる。切り替えには、12秒程掛かかり、その間、機体が不安定になり、かなり落下すると言われ、危険が起こりやすいので、前述の運用ルールでも、出来るだけ切り替えを行わないようにしたようだ。

 これまでは、開発段階だけでなく、本格配備後にも、重大事故は絶えないようだ。量産決定後の2006年から2011年までで、58件もの事故が起こっていると言う。(V-22 (航空機) - Wikipedia

最近の事例では、以下のようだ。

      2010/4  アフガニスタン CV-22  4名死亡 他負傷者  

                           砂塵による視界不良

      2012/4  モロッコ    MV-22  2名死亡、2名重症

                   方向転換時、追い風の中でモード切り替え→操縦不良

          2012/6   米フロリダ   CV-22  5名負傷

                   先行機との高度差不足による後方乱気流 →操縦不良

 

 特に、今年に入って起きている、直近の2件の事故については、防衛省内に、事故についての専門家による分析評価チームを作り、米軍からの情報を得ながら、分析評価を進め、報告書の形で公表しているようだ。

下図は、モロッコの事故の説明図である。

                 

 自分では、報告書そのものは確認して居ないが、日本政府の説明では、どちらのケースについても、機体自体には問題はなく、パイロットの操縦ミスなどの、人的要因が原因であった、としている。

 

 防衛大臣が、色んな場で、何度も繰り返して、このように述べていることに、システムが全く分かっていない! と腹立たしささえ覚えた。機体自体(ハード)とパイロットを含めた全体で、システムは成り立っているのだから、機体自体に問題は無いとは、何と、人を馬鹿にした言い方かと思う。

 人間のやることだから、操縦ミスは必ず起こることで、今回のオスプレイにしろ、原発にしろ、100%安全と言うことはあり得ない。

 要は、操縦ミスの頻度や確率を、如何に少なくするかだ。即ち、モード切り替えや、後方乱気流等についてのマニュアルを更に整備し、訓練を充実させることが肝要だ。今後は、このような訓練を充実させて、全体の安全性を向上させる、と言うべきなのだ。

 更には、操作上の複雑さを減らすために、設計を手直しするとか、或いは、人為的なミスがあっても、それをカバーできるような仕組みを組み込むことも、必要だろうか。後者は、障害物があれば、アクセルを踏んでも進まず、自動的にブレーキがかかる自動車のような仕組みだ。  

 

 

[日本の基地の悩み]

 この所の、普天間基地の移設問題のごたごたで、不満が溜っている中で、事故が多いオスプレイを配備する話が飛び込んできた事で、沖縄の世論の反発は高まっている。

 沖縄では、少し前の2004年の8月に、沖縄国際大学構内へ米軍ヘリが墜落する、あわや、という事故があり、この記憶が、今回のオスプレイの安全性に対する疑念と不安を大きくしている。当時の機種はオスプレイではなかったが、事故後の米軍の対応は、占領軍の様に極めて強権的で、閉鎖的だったようだ。 

 現地の人達にしてみれば、基地反対と言いたいのだが、聞いてはもらえず、主張できる最後のキーワードは、安全性、人の命を守れ、という、いわば人道的な、最低限の要求しかできないのだ。

 

 日米安保条約を結んで、国を守って貰っている日本としては、米国に言える範囲は限定的で、米軍の装備の方向や内容について、日本が、口を挟める余地は少ないだろう。

軍の航空機の事故の詳細については、民間航空機の場合と異なり、軍事機密という、厚い壁もあろう。

 日本国内の米軍基地面積の、70%もが集中している自治体である沖縄や、今回、緩衝策として搬入された岩国としては、今回の決定は、到底納得のいくものではないだろう。

 地元での基地反対の機運や、基地縮小・撤去の空気の中で、今回のオスプレイの配備や、普天間基地移設問題をどのように進めていくか、日本政府としては、地元の声と米国政府との板挟みの中で、ますます難しい舵取りが必要となって来ている。

 

 日米安保条約の相手国のアメリカにしてみれば、日本を守ってあげるために(所詮は占領軍が居座ったのだが)、基地の装備の能力アップを図っているのだから、本来は喜んでいいことなのに、反対とは何事! と憤慨しているかもしれない。

 

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