2012年9月29日(土) 戸籍の話 その2
当ブログに掲載した、前稿
戸籍の話 その1(2012/9/27)
の続編である。
前稿では、戸籍(戸籍簿)、住民票(住民基本台帳)などの関連が、自分でも、かなり曖昧だったのだが、調べて行くうちに、やや、はっきりして来た。日本では、両者は、関連はあるものの、二本立てで管理されているようだ。
国や自治体が行う、住民登録の概念は、本来は、戸籍や住民票を含めた、広義のものであろう。でも、日本では、住民登録とは、住民基本台帳法に基づいて、住民票の管理を行うという、狭い意味で使われる。誤解を避けるために、以下では、狭義、広義を区別している。
◎ここで、戸籍や住民票に関する、用語について触れることとする。
○戸籍に関する用語
戸籍に関する、幾つかの用語については、今回、色々調べて行く過程で分って来たのだが、かなり分りにくいものもある。
「転籍」
登録されている戸籍の所在地を移動すること、本籍を変えること。世帯構成員全員について一括して行われる手続きであることが、今回、よく分かった。 転籍届を提出することで、処理される。
転籍について調べてみて驚いたのだが、現在は、
・転籍先としては、地番のある所なら全国どこでもよい
本籍は、土地で表示され、住所は、建物で表示されると言う。
・転籍する事由は不要で、回数にも制限はない
という。
これまで自分としては、本籍地は、出生地であることが多く、国籍の基本でもあることから、大変重いもので、簡単には変えられないもの、と、思っていたので(以前はそうだった?)、上記を知って、拍子抜けした感じである。
よく出て来る例示では、本籍地として登録されている場所に、
皇居
大阪城
などもあるようだ。
今回、自分が実行しようとしているのは、正に、この転籍手続きである。
「分籍」
分籍とは、結婚前の、特定の世帯構成員の籍を別にすること。 分籍届で、処理される。最近は、若い人が、親とは分れて分籍する人もいるようだ。結婚に伴って籍を移動することは、分籍とはいわない、という(後述)。
「除籍」
結婚や死亡の時などに必要となる除籍には、以下の様に、狭義、広義、二通りの意味があるようで、要注意だ。
「除籍」(狭義)
戸籍に入っている世帯員の特定人が除かれること(戸籍は残る)
・除籍は、籍を除く、という動詞的な意味で使われる
例:結婚に伴って除籍となる
・死亡、結婚、分籍などが理由
・戸籍簿上の表記では、その特定人に、X印が付される
「除籍」(広義)
戸籍に入っている世帯員全てが居なくなること(戸籍が無くなる)
・存在していた戸籍が空っぽという、状態を表す意味合いが強い
・転籍、災害での全員死亡などが理由
・除籍状態の戸籍をまとめたものを、除籍簿と言うようだ。
・除籍簿の情報は、通常、必要性は低いが、遺産相続や、出自を調査する等のプロ向きには、非常に重要な情報のようで、除籍簿の保存期間が、従来は80年だったものが、2010年から、150年にと伸長されているようだ。
転籍は、前記の様に自由なのだが、これを繰り返すと、死亡時の遺産相続などの調査で、結構面倒な処理が必要となり、人生の最後に付けが回って来るようで、やはり、無用な転籍は控えた方がよさそうだ。
「創籍」
これは、自分の造語で、戸籍を新たに創る、という意味だが、提案したい言葉である。
子供の出生によって、この世に、新たにその子の戸籍(個人として)が創られるのだから、創籍という言葉が相応しいように思う。
又、結婚に伴って、親から独立して、新たに戸籍(世帯として)が創られることも、創籍という言葉が相応しいように思う。
婚姻の場合の処理では、一方の配偶者を、元の本籍から外し(除籍というが、分籍とは言わない)、創籍した新たな本籍に移す(転籍とは言わない)ことになる。
後者は、一般用語では、入籍と言われる。
この辺の用語は、分かりづらい。
○住民票に関する用語
「転出」 当該自治体から、他の自治体に転居し出て行くこと。 どちらかの自治体で転出届を行えば、自動的に処理される。
「転入」 他の自治体から、当該自治体に転居し入ってくること。どちらかの自治体で転入届を行えば、自動的に処理される。
「転居」 同一自治体内での転居の場合。 転居届を行う。
上記の様に、3通りの届出の中から、手続きを選ぶようになっているが、処理する役所側としては、やりやすいのだろうが、住民側からすれば、転居地域の範囲とは関係なく、1通り、例えば、住所変更届、で済ませる案もあろう。
◎各国の登録制度
前稿で触れたように、 戸籍は、日本や東アジア地域などの特有の制度であると分ったが、ここで、欧米の、住民登録制度(広義:戸籍と住民票)の概況について調べて見た。
○ドイツの場合
日本の様に、しっかりした制度があるようだが、以下の様に、日本では別建てで管理されている情報が、一緒に管理されているようだ。明確ではないが、登録は、個人単位ではなく、家族単位になっているかもしれない。
・戸籍相当情報
氏名 性別 出生地 生年月日
旧姓 婚姻の有無 国籍
死亡情報(死亡地 期日)
・住民票相当情報
現住所 以前の住所 転入・転出の期日 学位(学歴?)
ネットには、ドイツに長く住んでいる日本人とイタリア人の御夫婦が、現地で子供が生まれた時に、親の出生地証明書の手続きに苦労した話などが、載っている。元々のドイツ人のケースよりも、外国人には、輪を掛けて複雑になる、ということだろうか。
在ドイツ日本大使館のサイトには、現地に住む日本人に子供が生まれた時に、日本の戸籍法に準拠して、出生届をする場合の手続きについて、懇切丁寧な案内がある。世界的に見てかなり特殊であると言える日本の戸籍法だが、現地でも幅を利かせている、という感じだ。
翻って、我が国に住んでいる外国人には、二本立てになっている制度の中で、どのような手続きが必要なのだろうか。 面倒な手続きが必要になるだろうことは予想に難くないが、これ以上は止めにしよう。
○ フィンランドの場合
ドイツとほぼ同様に、我が国での二種の情報が、一緒に管理されているようだ。個人単位に、住民IDコード (PIC:Personal Identity Code)が付与されているという。
・戸籍相当情報
氏名 性別 出生市町村 生年月日 旧姓
国籍 言語
配偶者 子供 両親
死亡
・住民票相当情報
住所情報(居住市 住所 転居情報)
職業 不動産関連情報
○ アメリカの場合
自由の国、移民の国と言われる、アメリカの制度は、流石に、簡略なようだ。
日本の様な、身分関係や婚姻関係などを管理する戸籍制度はなく、日本での、狭義の住民登録制度、外国人登録制度のようなものがあって、運用されている、という。
全国民は、全国的に統一された、社会保障番号(Social Security Number)という9桁の番号を、持っているようで、納税の番号としても使われるという。
登録されているのは、
氏名 国籍 出生地 生年月日 住所
などだけ、の様だ。
選挙の投票権を得るには、改めて投票者登録を行う必要があるようだが、運転免許証の取得時等に手続きできる、という。
学生等、親元を離れて学校へ通っている時は
present adress 現在の住んでいる住所
permanent adress 親元の住所
などと、必要により、安定している親元の住所を利用する時もあるようだ。
プロスポーツの世界では、外国から日本に来た選手が、日本に帰化して、日本国籍を取得するケースも多い。
アメリカに住む外国人に子供が生まれると、その子には二重に国籍が与えられ、一定年齢になると、自分の意思で、国籍を選択できる、と言う。
国際的な人間の往来が盛んになっている昨今、日本在住の外国人から見ても、外国在住の日本人から見ても、権利と義務がバランスした、住みやすい日本にするために、広義の住民登録制度の改善や、外国人登録法の見直しが必要になっているようだ。