ケイの読書日記

個人が書く書評

岸本葉子 「カフェ はじめます」

2016-09-01 09:24:35 | 岸本葉子
 エッセイストの岸本さんの書き下ろし小説。小説というか、素人がカフェを始めるときのハウツー本という感じです。

 44歳のいさみは、小規模だが堅実な会社の事務員。たまたま知り合ったおばあちゃんのお家が、とても可愛いので一目で気に入ってしまう。古いが縁側があり、玄関の所だけ赤い屋根の、和洋折衷のおうち。
 おばあちゃんが、娘さんと同居することになって転居するのを機に、その中古住宅を借りて、カフェをオープンさせようと奮闘する。焼きおにぎりと、自家製糠漬けと、番茶しかメニューにないカフェ。

 なんといっても、食べ物を扱う店だから、食品衛生責任者の資格を取らなければならないし、保健所の検査にパスしなければならない。その事務手続きがなかなか面倒で、行政書士さんに頼むことになり、追加でお金がかかる。
 飲食店ができるように、中古住宅の台所を改装するのに、またまたお金がかかる。もちろん、月々の家賃だって払わなければならない。

 実は少し前、いさみの兄が亡くなり、その遺産50万円が予期せぬお金として入ってきたので、そのお金をオープン資金として考えたのだ。もともと堅実ないさみなので、借金してまでやるつもりはない。
 女子大時代の友人を手伝いに頼んで、『おむすびカフェ さんかく』をオープンさせるも、客足はサッパリで…。

 そうだろうね。カフェを経営してみたいと思っている人、世の中に本当に多いみたい。それだけ多いという事は、それだけ潰れているんだ。テナント料を払えなくて夜逃げした店の経営者はたっくさん。

 小説の最後に、大家さんが家族3人で来てくれ、いさみが「また来て下さい、この店に」と伝えて、この小説は終わる。
 少し明るい兆しが見えたような終わり方だが…また来た時には廃業している可能性大。
 いくらなんでも、焼きおにぎり2個と自家製糠漬け、それに急須に入った番茶で900円というのは高いよね。濡れ縁と赤い屋根の可愛いおうちを愛でながら、ゆっくりできるとは言っても。あまりにもすいているカフェには、入店しづらい。



P.S. 実家の母がリハビリ病院から自宅に戻ってきたので、私も、実家と自分の家を往復して、てんてこまいです。だから、読書の時間がなかなか取れず、更新が遅れますが、ちゃんと続けますので、よろしくお願いします。
コメント (2)
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