ケイの読書日記

個人が書く書評

ポール・アルテ「赤い霧」

2007-05-07 12:04:09 | Weblog
 先日読んだ「死が招く」の中に、この「赤い霧」の事が触れてあったので、早速読んでみる。第1部と第2部に別れていて第1部が特に秀作。


 1887年イギリス、ブラックフィールド村に新聞記者と名乗る男が10年ぶりに帰郷する。昔この村で起こった密室殺人事件を正体を隠して調べなおそうというのだ。

 10年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋でなぜか背中を刺されて死んでいた。
 窓は内側から鍵がかかり、唯一開いていた窓のすぐ下では少年が3人遊んでいて誰も出入りしていないと証言。
 カーテンで仕切られていた部屋の半分には、大勢の少女達が手品が何時始まるのだろうとカーテンをじっと見つめていた。もちろん誰も出入りしていない。


 どう考えても不可能としか思えない状況を、ポール・アルテは特別な小道具も使わずに心理的盲点を利用してトリックを解いていく。見事です!!!
 ただ、紛失したトリックの本を大騒ぎで探すより、プロのマジシャンの意見を聞いたらすぐ解決しただろうに。


 第2部は"切り裂きジャック”を題材にしている。本格だと思って読むとガッカリするかも。犯人はすでに分かっているし犯罪小説とでも言うべきか。

 それにしてもヴィクトリア時代のロンドン貧民屈の貧困層の悲惨な事!!
 貴族がチャリティをせっせとやるのも政府がまったく貧困層対策をやらなかったせいなのだろう。この時代イギリスは世界一の大国「日の沈まない国」だったはずなのに。

 そうそう、この第2部の中にホームズとワトソンらしき人物が登場する。あまり好意的とはいえない描写で。ホームズフリークだったら怒るだろうね。
 ポール・アルテはドイルをあまり評価していなかったのかな。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする