blogギター小僧の径

ギター小僧の私生活

功名が辻

2006年03月26日 | レビュー
『功名が辻』を読んだのは、恐らく高校卒業した後の春休みの頃だ。「嫁に行く直前の女のバイブルだ!」と読後思ったのを覚えている。情けない一豊を内助の功で見事一国一城の主にさせた千代。今年の「大河ドラマ」は過去になく、最高の出来だ。それは仲間由紀恵が出ているという依怙贔屓ではない。昔からアホっぽい顔だなぁと思っていた上川隆也の一豊ははまり役だし、意外にも館ひろしの信長が迫力があっていいし、何より仲間由紀恵の演技の特徴を巧く引き出した演出の尾崎氏は素晴らしい。テレビ朝日の『トリック』で開花した彼女の魅力は、演出を間違えると詰まらないものになってしまう。毎週日曜日が待ち遠しくてたまらない。


最悪だったのが、TBSの日曜劇場『輪舞曲(ロンド)』だ。韓国からチェ・ジウを連れてきて、竹野内豊との競演。その他にも、有名どころを共演させ、鳴り物入りで殴り込みをかけたが、自ら転んで自爆したようなものだ。演出はそれほど悪くなかったと思うが、内容・脚本が最悪だ。暗黒世界のドラマなのだが、脚本家は馳星周も新堂冬樹も読んでないのかね。子供の書いたもののようだ。話題作だったので我慢して観ていたが、第3回までしかもたなかった。

そして、同じくTBSの『白夜行』だが、これは我慢して最後まで観た。山田孝之という男は人気があるのか? カッコいいのか? 隠し子騒動もあったが、モテるのか? 昔、TBSの東芝日曜劇場『愛きらきら』に出てたTOKIOの山口達也を彷彿とさせる。今は山口達也はわりと好きなタレントだが、当時は、なぜこんなヤツがこんな青春ドラマの主人公やってるんだろう、と納得いかなかった。

ベストセラーのドラマ化。所詮無理が生じてしまうのはしかたない。が、原作をバカにしているとしか思えない。あれほどの名作を、こんなくだらないものに仕上げてしまう才能は、どうしたら作られるのだろうか? ぼくがやってももっとマトモなものが出来るはずだ。森下佳子という脚本家を調べてみると『瑠璃の島』『世界の中心で、愛を叫ぶ』もやってるんだね。『瑠璃の島』はよかったが、あれはマグレだったんだろう。やはり、ブサイクの女というのは、百害あって一利なし。あの小説は、子供の頃から、常に主人公の性悪女に騙され、犯罪を重ねるという哀しい男を描いた作品だ。好きな女のために、人生を捧げるという何とも言えない哀愁。それをあのような駄作にしてしまう感覚は、文学に対する冒涜に他ならない。恐らくこのブサイク女は、男を騙すという女を描きたくなかったんだろう。なら、この作品を手がけるな!

書店で、東野圭吾とよくフェアをされている真保裕一の『繋がれた明日』を全4回でNHKの土曜ドラマでやっていた。これはよかった。別に二枚目ではないが、主人公役の青木崇高という青年の眼力がいい。19歳で殺人を犯し、26歳で少年刑務所を出た青年が、世間の厳しい視線の中で生き抜こうとする姿。彼を見守る家族や保護司ら周囲の人々の温かさを軸に、主人公の葛藤、人間のありかたを問う名作。ぼくの2003年の5月の読書感想文は、

奇しくも、真保裕一『繋がれた明日』(朝日新聞社)は東野圭吾の『手紙』と内容がかぶる。真保と東野はよく同時フェアなどをやり比較される。『手紙』と違うのは主人公が加害者で、その家族を含めた苦悶を描いた作品。よく調べられており、東野とは違い良作だ。被害者の遺族や関係者が多く登場する。彼らとの関係の中で「更生」に向けて苦悶する主人公中道隆太の心情が共感できる。凶悪な少年犯罪が目につくよう現代だが、その彼らの「更生」に目を向ける世論はあまりない。保護司の大室がこの作品の中で唯一の良心で、真保の伝えたいことを代弁している。彼の言葉は、更生保護の考え方そのものであり、大変勉強になる。最後の主人公の行動はアニメ出身の真保らしく清く正しい。読後爽やかな気持ちにさせられる。

と書いている。東野圭吾の『手紙』を読んだ後みたいだ。いろいろ言われているNHKだが、これからもいいドラマやドキュメンタリーをしっかり作ってもらいたい。今回のドラマクールはNHKの圧勝だ。石原さとみが出てたので、『N'sあおい』は必ず観ようと思っていたのだが、結局一回も観ずに終わった。