blogギター小僧の径

ギター小僧の私生活

ある編集者の生と死――安原顯氏のこと

2006年03月12日 | 想い
今日やっと文藝春秋を買って村上春樹の寄稿「ある編集者の生と死──安原顯氏のこと」を読んだ。

「ノルウェイの森」などで知られる人気作家、村上春樹さんの直筆原稿が、本人に無断で古書店へ大量流出していたことが分かった。10日発売の「文芸春秋」4月号に、村上さんが寄稿して流出を明らかにした。村上さん以外にも、本人に無断で直筆原稿が売られている作家はいるとみられ、業界のモラルが問われそうだ。(毎日新聞)

流出させていたのが安原顯らしい。一般の人はあまり知らないだろう。通称ヤスケンといわれ、編集者の中では「天才」「スーパーエディター」として崇めている人もいる。ぼくも編集者なので、彼の著作は結構読んでいる方だ。しかし、実はあまり好きではない。単なる我がままオヤジではないか!? 「編集者は週に最低10本の企画を出せ」と言ってる。そんなことできるか!

さて、村上春樹の寄稿文である。とても勉強になった。というのは、文章がである。かなりの名文だ。ホントは怒り狂っていると思うのだが、控えめな筆致で、控えめに批判している。「直筆原稿流出事件」は大問題だ。ヤスケンとしてみれば、(村上春樹は育てられてはいないと言っているが)自分が育てた作家の原稿を売って何が悪い、というところだろうか? この問題についてヤスケンを崇めていたバカ編集者たちはどう思うのか? 

ぼくはヤスケンとは考えた方が違う。もちろん会社から給料を貰っている限りは、会社のことを最優先するべきだが、編集者に関しては、やはり著者優先が鉄則だ。そこが、普通の会社員と編集者の大きな違いだと思う。その点では、テレビ局の人間にも当てはまるだろう。会社よりタレントでしょ。今回のはそのことに反する、編集者にはあるまじき行為だ。

ヤスケンは文章がヘタだ。毒舌というのも才能がいる。人を不愉快にさせるそれは毒舌とは言わない。単なる悪口だ。彼の文章を読んでいると不愉快極まりない。村上春樹は彼と不仲になった理由が思いつかないと言っているが、恐らく兄貴気分のヤスケンが、文章の巧い村上春樹に嫉妬した故ではないか。