外交官の手当足りない? 財政審で議論
(2006年10月13日19時31分)
海外の大使館など在外公館に勤める職員の手当を積み増すかどうかについて、13日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で論議された。外務省が「最近の円安で実質給与は下がっている」として大幅増額を求めるのに対し、否定的な意見が相次ぎ、財政審の西室泰三会長は同日の記者会見で「(増額要求は)断るべきだ」と語った。
外務省は、条件が近い大手企業の海外駐在員に比べ給与が2~3割低いデータを提示。「自宅に外国人を招いてのパーティーなど事実上の外交活動に支障が出ている。借金で経費を賄っている職員もいる」(在外公館課)として07年度は10%の手当増額を求める。
知人の役人で在外公館への出向経験のある人間に聞いたのですが、彼のような他省庁からの人間(書記官クラス)は、赴任前から「外交官の心得」などの研修を配偶者とともに受けさせられ、赴任したらで大使館・領事館に飾る生け花を奥様たちが順番で生けたりと、なにくれと大変だったようですが、キャリアの外交官はけっこう優雅な生活だったようです。
彼が言っていたのは、大使・領事クラスは確かにパーティーが仕事のようなものだけれども、それは全部官費で賄われる。
問題は1等書記官クラスで、確かに情報交換や人脈を広げるために私費で駐在国の役人や他国の外交官を会食に招く人もいなくはないが、最近は外務省キャリアにも「祖父の頃から外交官」というような人は少なく(まあ、そもそも論としてはそういう世襲制の是非もあるのですが)、結構キャリア同士で結婚して、それぞれ別々の国に単身赴任、という人が増えているそうです。 そうすると「私は単身だから」と自宅でのパーティーなどは開かずに、海外赴任手当てをダブルで享受する、なんて人もいるそうです(そうすると一財産できるらしい)。
だったら手当てをやめて、自宅だろうと公式だろうとパーティ費用は官費で精算して監査を入れよう、という流れになってしまうのは当然。
個人的にはそういうインフォーマルな人間関係構築は外交官としては重要だと思うので、透明な「精算」でなく不透明な「手当て」という中で賄うことには反対ではありません。
何でも予算や決裁が必要であとからは監査が入る、というのでは、
ただ、運用する方がサラリーマン根性丸出しで役得としか思っていないのであればダメですよね。
昔の外交機密費の「上納」問題あたりから、外務省職員は外交官の特権性を自ら貶めているような気がしてなりません。
自分で自分の首を締めるってやつですね。
民間企業の海外駐在員との比較を外務省の方から持ち出している時点で既に負けているように思います。
読売新聞の報道でも
しかし財務省は「大企業は東京での給与水準も高く、在外公館の給与が低いとはいえない」(主計局)として、手当の削減を求めている。
と、民間企業との比較を云々されている始末(こっちのタイトルは「やはり高い!ワシントンの大使館給与は国内の1.7倍」ですから、記事のトーンもご想像の通りです)。
財務省相手でも「算盤勘定だけしている奴に国家を背負った外交活動の現場の何がわかる!」と一喝できるくらいの気概と実績があれば、手当ての増額といっても変な公共工事を数箇所削るくらいの予算は通せると思うのですが。
手当ての多寡より、それを問題にされてしまって言い訳に汲々としている外務省の体質(または「信頼の蓄積」が底をついていること)のほうが国にとっては問題なのではないかと思います。
近場の外交問題もキナ臭さを増している昨今、外務省にはしっかりしてほしいものです。