職場が居心地のよい場所だと感じている人は、意外に少ないのではないかと思っています。
だからこそ、仕事は必ずしも楽しいことではないけれど、そこで居心地よく働けることは大事であり、その結果として楽しみがついてくる可能性はある。
以上は本書からの引用。
これは皆思っているけど、「モチベーション」とか「チームワーク」とかいう掛け声や目標にかき消されて言えない人が多いのではないかと思う。
そもそも目標になるということは、自然発生しないからなんだけど、いちど目標に掲げられると、今度は達成度で評価されることになるので、「ふり」をするのが自己目的になってしまう。
逆に、単に「居心地がいい」と感じている人は、制度のスポット的な恩恵に属しているか、開き直っているか、ノーカンな人が多いように思う。
本書は「好きな日に出勤できる」「出退勤時間は自由」「嫌いな作業はやらなくてよい」など型破りな制度でしかも作業効率をあげ、離職率も減らしたことで話題になった、小さな水産加工会社の社長が書いた本だが、この現実を直視する姿勢を貫いた先に現在があるということが大事なのだと思う。
何か原理的・教条的なものからスタートしたわけでも、「○○メソッド」を売り込もうとしているわけでもないところが大事だし、この「制度」がすべての会社にあてはまると主張しているわけでもない。
本書の紹介を見ると、ほかにも東日本大震災で罹災、二重債務などのマスコミが好みそうなところが多いが、一番大事なのは、この現実的な目線だと思う。
経営者が勝手に妄想することで規制をして、従業員を縛るルールを作るのではなく、あくまでも従業員を信頼したうえでルールを作り、問題があれば、自分たちで軌道修正していくということです。はじめから信用されず、疑いの目で見られていては気持ちよい職場にはなりませんし、ルールもうまく機能していきません。
もちろん想像もしない問題が起きたり、トラブルが発生したりすることもあるでしょう。でもそれはその時に考えればいいのです。
そして実際に起きた問題にどう対処するのかを、従業員とともに考えるのです。そうやって成長していくことができるのが人間なのです。
PDCAサイクルの重要性はいたるところで説かれますが、性悪説に立つPDCAサイクルが規制だらけの負のスパイラルになる例は枚挙にいとまがないのに、そのことに注意喚起する人は少ないですね。
それをやると、コンサルや官庁が飯の食い上げになるからでしょうか。
★3.5