全文を読んでみました。首相官邸のHPにも載ってます(こちら)。
マニフェストをちょっと肉付けした、という感じで、政策の優先順位とか具体的な経済対策などに触れていなくてこれから大丈夫かな、と感じました。
冒頭から
いのちを、守りたい。
いのちを守りたいと、願うのです。
生まれくるいのち、そして、育ちゆくいのちを守りたい。
ときます。そして
働くいのちを守りたい。
世界のいのちを守りたい。
地球のいのちを守りたい。
と続き、
私は、このような思いから、平成二十二年度予算を「いのちを守る予算」と名付け、これを日本の新しいあり方への第一歩として、国会議員の皆さん、そして、すべての国民の皆さまに提示し、活発なご議論をいただきたいと願っています。
と出だしを締めくくります。
表現は趣味の問題でしょうからこんな感じでもいいのですが、このまま最後まで抽象的な話が続いてしまいます。
そういう意味で、ある種忍耐の必要な読み物になっています。
二 目指すべき日本のあり方
ここでは、マハトマ・ガンジーが、八十数年前に記した「七つの社会的大罪」をひいて「今の日本と世界が抱える諸問題を、鋭く言い当てている」と始めます。 でも二番目にある「労働なき富」(あなたには言われたくない)8番目の「犠牲なき宗教」(時節柄微妙)などはこのタイミングでどうなんでしょうか。
そして、日本のあり方として
(人間のための経済、再び)
今こそ、国際競争を生き抜きつつも、社会的存在として地域社会にも貢献する日本型企業モデルを提案していかなければなりません。
だから、まずは国際競争を生き抜くためにどういう政策をとるかを語るのでは・・・
(「新しい公共」によって支えられる日本)
人を支えること、人の役に立つことは、それ自体が歓びとなり、生きがいともなります。こうした人々の力を、私たちは「新しい公共」と呼び、この力を支援することによって、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生するとともに、肥大化した「官」をスリムにすることにつなげていきたいと考えます。(人材と知恵で世界に貢献する日本)
こうした教育や科学の役割をしっかりと見据え、真の教育者、科学者をさらに増やし、また社会全体として教育と科学に大きな資源を振り向けてまいります。それこそが、私が申し上げ続けてきた「コンクリートから人へ」という言葉の意味するところです。
「コンクリートから人へ」というのは、公共事業・箱モノ行政でなくセーフティネットなどの国民の利便になるような施策への転換を言うのだと思ってました。
三 人のいのちを守るために
私は、来年度予算を「いのちを守る予算」に転換しました。(子どものいのちを守る)
(いのちを守る医療と年金の再生)
(働くいのちを守り、人間を孤立させない)
確かに国民医療が崩壊し、雇用も落ち込み、自殺者が増加するという状況はとても中国に抜かれてもまだGDP世界第3位の国でえありながら、国民の生命が危険にさらされているのだから、確かに非常事態かもしれません。
予算案にはそれに対する処方箋を期待してもいいのでしょうか。
四 危機を好機に-フロンティアを切り拓く-
(いのちのための成長を担う新産業の創造)
ちょっとこじつけっぽい
(成長のフロンティアとしてのアジア)
環境問題、都市化、少子高齢化など、日本と共通の深刻な課題を抱えるアジア諸国と、日本の知識や経験を共有し、ともに成長することを目指します。
というより、日本には課題先行者としてのモデルを期待されているのではないでしょうか。
(地域経済を成長の源に)
ここはマニフェストにある話。ただ地域経済支援は語られているものの、「成長の源に」どのように繋がるかは不明。
(地域主権の確立)
五 課題解決に向けた責任ある政治
(「戦後行政の大掃除」の本格実施)
(政治主導による行政体制の見直し)
これらもマニフェストとほぼ同じ
(政治家自ら襟を正す)
よろしくお願いします。
六 世界に新たな価値を発信する日本
(文化融合の国、日本)
(東アジア共同体のあり方)
東アジアの中での文化の多様性についての言及がないので、下手をすると「大東亜共栄圏」とどこが違うの、とつっこまれそうです。
(いのちと文化の共同体)
(人的交流の飛躍的充実)
インドネシアからの看護師の問題など足元の問題にも取り組んだほうがいいのでは?
(日米同盟の深化)
普天間基地移設問題については、米国との同盟関係を基軸として、わが国、そしてアジアの平和を確保しながら、沖縄に暮らす方々の長年にわたる大変なご負担を少しでも軽くしていくためにどのような解決策が最善か、沖縄基地問題検討委員会で精力的に議論し、政府として本年五月末までに具体的な移設先を決定することといたします。
ご自身も含め、閣僚の発言についてはこのトーンを軸にする、という確認をしておくべきだったように思います。
(アジア太平洋地域における二国間関係)
(貧困や紛争、災害からいのちを救う支援)
七 むすび
あの十五年前の、不幸な震災が、しかし、日本の「新しい公共」の出発点だったのかもしれません。
だからといって、「新しい公共」を発展させるために、より大きな災害をもたらすことだけはなさらないようにお願いします。