一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

民主党の岡田幹事長の顔色が悪いのが気になります

2009-07-31 | まつりごと

テレビで観ると、岡田幹事長は遊説焼けというよりは顔色が悪そうなので、戦線を広げすぎて過負荷になっているのではとちょっと気になりますが

自民公約「達成度20点」、民主・岡田氏が批判
(2009年7月30日(木)22:09 読売新聞)  

民主党の岡田幹事長は30日、静岡市で記者会見し、2005年衆院選で自民党が掲げた政権公約(マニフェスト)の検証結果を発表した。  
与党が民主党の政権公約を「財源があいまいで無責任だ」と批判を強めていることから、自民党が31日に政権公約を発表するのに先立ち、政権にありながら公約実現が不十分だったと印象づける狙いがある。

 まあ、それはそうなんでしょうが、あまり相手の失点を細かくつっこむと、いざ政権をとったときに自分のマニフェストに自縄自縛になってしまう可能性もあります。 特に今回優勢が伝えられ、政権交代が現実的なものになっている状況では、主要な政策や考え方を中心にして、あまり細かい(十分には練れていない)政策は言わないほうが得策だと思うのですが。

マニフェストも若干総花的と感じる部分もあるのですが、民主党政策集になると、ほとんど陳情を受けた国会議員の役所に対するコメント並の細かいことまで書いてあります。
たとえば  

[登記所の地図整備を推進] 
明治初期に作成された地図をいまだに登記所の公図として用いていたりするために、登記所の地図に記された境界(筆界)と現況が著しく異なってしまっている地域が少なくありません。こうした状況を改善するため、地図整備についての国の責任を明確にし、筆界特定手続きの職権開始制度の導入など正確な登記所備付地図の整備を加速します。  

こんなことまで政策に書くのかよ、というレベルですし、登記制度上の筆界と所有権の対象である境界は根拠法令も違うのでそう簡単にはいかないと思います。
(司法書士協会とかから陳情があったのでしょうか?)

細かいことは置いといて、主要な政策についても、ちょっと踏み込みすぎていて逆につっこみどころを増やしているように思います。  

[地域主権の確立]  
当面の5~10年間は地域主権国家の礎を築く期間とします。地域主権国家の母体は基礎的自治体(現在の市町村)とし、基礎的自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、広域自治体が担えない事務事業は国が担う、という「補完性の原理」に基づいて改革を進めます。 基礎的自治体については、その能力や規模に応じて、生活に関わる行政サービスをはじめ、対応可能なすべての事務事業の権限と財源を、国および都道府県から大幅に移譲します。例えば、人口30万人程度の基礎的自治体に対しては、現在の政令指定都市と同等レベルの事務権限を移譲します。
小規模な基礎的自治体が対応しきれない事務事業については、近隣の基礎的自治体が共同で担う仕組みをつくるか、都道府県が担うこととします。  
自治体間格差を是正し、地方財政を充実させるため、地方交付税制度と一括交付金の統合も含めた検討を行い、現行の地方交付税制度よりも財政調整と財源保障の機能を一層強化した新たな制度を創設します。  

話題になっている道州制よりも小さい基礎的自治体を単位とするようですが(いわゆる「道州」は「広域自治体」に当たるのでしょうか)、そこまで権限をおろしたときに現状と照らすと税収の問題や自治体職員・議会の能力とのギャップが大きいと思います。人口30万人程度と言えば、区役所や区議会に権限と事務を委譲しろということですが、現実的でないような。
また「対応可能な」という部分を言い訳として多用するようになっては困ります。  

[サービサーの強引な取り立て行為への規制]
サービサーによる強引な債権回収が社会問題化していることから、サービサー法を改正し、禁止される取り立て行為を明示するとともに罰則を全般的に強化します。具体的には、①債権回収にあたって債務者の事業の継続・再建、生活の維持、保証人の資力等に留意②保証人に対する債権譲渡等の通知義務を明定③貸金業法に準じ取り立て行為に関する規制内容を明示し罰則を全体的に引き上げる――等の法改正を行います。

②はいいと思うのですが、①については一方でこんなことも  

中小企業向け金融検査マニュアルの弾力化 中小企業金融の円滑化を図るために、担保に偏らずキャッシュ・フローに重点を置いた融資を推奨するとともに中小企業向け検査マニュアルの弾力化措置(利払いが行われている限りにおいては不良債権に分類しないようにする等)等を講じ、貸し渋り、貸しはがしを解消させます。

普通は事業の継続がかかっているから融資を受けるわけで、そういう企業に一旦融資してしまうと債権回収に制限が加えられるとなると、よしんば「不良債権に分類しない」としても融資自体に慎重になると思うんですけど。 
また、国際会計基準(IFRS)とこの「弾力化措置」の関係も気になります。
それに上の③は、裁判所の強制執行などにも適用があるとすると、債権者側のリスクは相当高くなってしまうような。

それぞれの側面で問題があるのは分かりますが、バランスを考えたほうがいいと思います。


現時点であまり細かい政策に言及することは、政権を取ったとした場合、重要と言われる最初の半年間の「成功/不成功」のハードルを自ら高く(そして近く)してしまうので得策でないように思います。 
民主党はそのへんをガチンコでやりたいのかもしれませんが、政策の選択肢は状況に合わせて選べるようにしておいたほうが国民のためにもなると思います。


そうはいっても自民党は相変わらず中でゴタゴタしているようで。

駆け込みで世襲申請 青森1区 公募経て津島氏長男
(2009年7月30日 東京新聞)  

自民党青森県連は二十九日、津島雄二元厚相の引退に伴い公募していた衆院青森1区の後継候補に、津島氏の長男の淳氏(42)を擁立することを決め、党本部に公認申請した。  
県連によると、応募した二十人の中から論文などの書類審査で六人に絞り、スピーチや面接による審査の結果、津島氏の長男を選んだ。  
しかし、自民党は衆院選マニフェストで次々回衆院選から、配偶者や三親等内の親族が同一選挙区から立候補しても公認、推薦しない世襲制限を盛り込む方針。公募手続きを踏んだとはいえ、世襲制限導入前の“駆け込み”となる。  

津島雄二氏の引退はこういう背景があったんですね。 
次の選挙を待つには遠いし、世襲制限がかかる前に世襲してしまえ、ということでしょう。 

なんだか自民党の方も一致団結よりも個々人の生き残りに走っているようです。

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美大出身者は弁護士に「デザイン」について語られたくはないだろうなぁ

2009-07-30 | あきなひ

カブドットコム証券のインサイダー取引に関する調査報告書が公表されました。

調査委員会のメンバーは、創業社長のワンマンぶりに相当な悪印象を持ったようで、かなり筆が走っています。

第7 再発防止策の提言 
 2. 再発防止策
  (1) 社長の意識改革 

こうした状況を打破するためには、当面齋藤氏が社長を務めるとしても、何よりもまず齋藤社長自身がこの限界を意識し、「齋藤商店」という個人商店的な色彩を払拭する改革を断行することが強く求められる。 

また、齋藤社長の経営手法は、美大出身であることが影響しているのか、形式(デザイン)偏重型であって、そのことが実質を軽視する傾向を生んできた。ワンフロア・オープンスペース体制や委員会設置会社へのこだわりなどが、その例として挙げられる。その結果、外形的には組織が整っているように見えるが、その実質は、「組織」による管理というよりは、齋藤社長という「個人」による管理に陥っていた。しかし、いくら稀有な能力の持ち主であっても、個人の能力には限りがある以上、このままでは業容の拡大や企業の健全な成長は望めない。

美大出身だからというのは偏見だと思うし、デザイン=型式というのは「それこそ本質を理解せずに型式論理をあてはめようとする弁護士的な発想」などと反論されそうですね。


それはさておき、形だけ作っても機能をしていなければ意味がない、意思決定の早いフラットな組織もいいが、社長の誤りを是正する仕組みは最低限必要、という指摘は、新興企業にとっては耳の痛い指摘かもしれません。

ただ、ちょっと昔に新興市場に上場した企業は、当時は証券取引所はそんなこと言ってなかったぞ、という文句も言いたくなるところかもしれません。
そのへん、金融商品取引法・証券取引等監視委員会だけに任せるのでなく、証券取引所が自主ルールや上場審査をどう行うかというのも重要だと思います。
特に証券取引所自体が株式を上場しているとなると、収益と公益性のバランスをどうとっていくかについて、自ら明確な指針を出していく必要があると思います。


この件は当初の報道のときから、「普通しないだろ?」ということが引き金になったということで話題を呼んでいました。

本件の特殊性は、第1回目取引と第2回目取引のいずれにおいても、齋藤社長自身の不用意な行為が元社員Aに重要情報入手のきっかけを与えたという点にある。すなわち、第2 の2.で述べたように、第1回目取引については、齋藤社長のメール(会議招集通知)をきっかけに社員Xが重要情報の保存されているフォルダを発見し、そのフォルダを見せられた元社員Aがその周辺のファイルを物色したことが重要情報の入手につながった。また、第2の3.で述べたように、第2回目取引においては、齋藤社長が役職員全員に宛てて送信したメールがインサイダー取引の直接的なきっかけとなった。
 (第5. 2. 社長自身によるきっかけの提供)

それが、この会社の組織体制の特殊性に起因しているというあたりを、報告書は厳しく指摘しています。

こうしたメール文化は、リアルの世界で構築された会社の組織(とりわけ部長等の中間管理職の役割)を無機能化させ、すべての役職員が社長と直に繋がっているといった企業風土を作り出していた。会社が急成長を遂げたために、創業時代の企業風土を引きずっている面があるとともに、信頼の置ける部下が十分育っていなかったため致し方ない面があるとの評価も聞かれるが、かかる企業風土が醸成された背景には、多分に社長の性格が影響を与えているものと考えられる。一言で言えば、社長は部下を信じ切れずにいた。そのため、社長は社内(時にはアフター・ファイブ)の出来事をすべて掌握したいという思いが強く、これがメール文化を生み出し、ひいては管理される役職員の側にも、社長の顔色や社長の評価を気にする風潮をもたらしていた。
( 同 )  


役職員に対するヒアリングの結果を総合的に判断すると、山下会長は、本来ならば齋藤社長の業務執行に対して強く監視・監督を行うべき立場にあったにもかかわらず、齋藤社長と机を並べながら、あたかも社長の協働者であるかのような振る舞いに終始していた。このことは同氏が監査・報酬・指名の三委員会の全ての委員長を兼ねていたことを考えるとガバナンス上致命的と言える。  
第二に問題となるのは、磯崎哲也氏と佐藤丈文氏の2 名が、社外取締役として十分な牽制機能を果たせていたかどうかという点である。  
(第5. 3. 社長を牽制する仕組みの弱さ)  


当社には、人事に関する組織や機能が存在していない。そのためか、当委員会が実施したアンケートにおいても人事制度に対する不満が噴出しており、「この会社は社長のイエスマンのみ旗本として生き残れ、言論統制・文民統制の締め付けが非常にきつい。」、「社長個人の気質としていらだつと手がつけられず、『病院行くまでやれ』、『死んでもらう』、『イヤならさっさとやめろ』などの発言は日常茶飯事的にあり、何か失敗をすると簡単に社内処分が下される。それに怯え全くヤル気がなくなる者もおりイエスマン以外は淘汰される。」、メールが1 日に何百通も飛び交うにもかかわらず「上席からの指示が全てメールで、メールを見落としていると見ていない者が100%悪いということになる。ミスをした場合、その本人の責任だが、上からのフォローなどはなし。」、「このアンケートに真面目に答える(真実・感じたことを忌憚なく伝える)こと自体が、恐怖であると強く感じることを付け加えさせて頂く。」などの声もみられた。また、役職員の評価方法も不明確で、役職員ごとにその評価結果を一覧できる仕組みにもなっていない。他方で、齋藤社長の形式に対する過度なこだわりなのか、役職員に対し様々な外部の認定試験等を受験させ、その結果で能力を評価するといった傾向が強かった。
(第5. 6. 会社に対する忠誠心を失わせる環境)  

調査委員会のメンバーを見ると、大企業をクライアントにしている有名弁護士が名を連ねています。
かなり厳しい筆致とあいまって、さながら「俺たちゃJ-Soxだ、みなし管理職だなんて真面目に対応してんのに」という大企業を代弁して新興企業にお説教をしているような印象でもあります。

でも、これを読んで「だから委員会設置会社にすればいいとか社外取締役を増やせばいいとかいうのはおかしいんだ」と鬼の首を取ったように言う社長さんがいるかもしれませんが、そういうことを声高に言う方の会社の取締役会・監査役会のガバナンスも要注意かもしれません。


 

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「事前運動」などというのはKYか?

2009-07-29 | まつりごと

 このキャラクターをご存知ですか?  


明るい選挙のイメージキャラクター「選挙のめいすいくん」なんだそうです。 
(メタボで昇天してしまったしまじろうでもなければ、浄水器メーカーのキャラクターでもないようです。)  

総務省のサイト「選挙のめいすいくん」を知ってますか?によるとこんなキャラクターなんだそうです。 

明るい選挙のイメージキャラクターとして、平成12年4月に誕生した「選挙のめいすいくん」。「選挙のめいすいくん」は投票箱をモチーフにしているので、頭部の2本の縦線は、投票用紙挿入口を表しています。そして、明るい選挙の実現に向かうために、背中に羽がついています。名前の「めいすい」は、「明るい選挙推進協会(協議会)」の「明」と「推」を引用しています。  


さて、マスコミでは衆議院解散から総選挙まで「40日の長期戦」と言って、各棟の動向や立候補予定者の活動を詳細に報道していますが、そもそも候補者の届出前の選挙運動は「事前運動」として公職選挙法129条で禁止されているはずです。  

東京都選挙管理委員会選挙Q&A(選挙運動と政治活動 )によると  

<選挙運動と政治活動の違いは?>  
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。  ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。

【選挙運動】  
特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること。
【政治活動】  
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。

<選挙運動はいつからできる?>  
選挙運動は、公示日(告示日)に立候補の届け出をしてから投票日の前日までに限りすることができます。それ以外の期間、たとえば、立候補届出前にする選挙運動は事前運動として禁止されています。  

となると、公示日前の現在においては「選挙運動に該当しない政治活動」しかやってはいけないことになります。  

公職選挙法では 

(総選挙における政治活動の規制)
第211条の5  政党その他の政治活動を行う団体は、別段の定めがある場合を除き、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類(政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。以下同じ。)の掲示並びにビラ(これに類する文書図画を含む。以下同じ。)の頒布(これらの掲示又は頒布には、それぞれ、ポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。以下同じ。)並びに宣伝告知(政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。以下同じ。)のための自動車、船舶及び拡声機の使用については、衆議院議員の総選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。
(下線筆者)

とあるので、逆にいえばここにある街頭演説やポスターなども「特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に」した限りにおいては自由にできるということなんでしょう。  

そうはいうものの、実際は総選挙に向けての支持を呼び掛ける活動だとは皆承知のうえなわけで。
選挙:衆院選・兵庫8区 与野党党首、尼崎で火花/兵庫
(2009年7月25日 毎日新聞 阪神版) 

◇公明・冬柴氏、新党日本・田中氏--応援にも熱、聴衆興奮 
衆院選兵庫8区で8選を目指す公明党の冬柴鉄三・元国交相と、民主党が推薦する新党日本の田中康夫代表が同じ尼崎市内で演説した24日。公明と民主の党首も応援に駆けつけ、街は選挙戦に突入したかのようなムード。ともに知名度のある立候補予定者だけに、聴衆も興奮気味だった。  

これについては月曜日のテレビでも光景が放送されてましたが、選挙カー(正確には「街頭演説カー」?)の上で太田代表と冬柴議員が手を振っているところで、ウグイス嬢が「日本一の激戦区兵庫8区での応援をお願いいたします!」と叫んでました。 これ、「激戦区」って選挙を特定しているし、壇上には冬柴「立候補予定者」がいるんですけど、これでもセーフだとすると、アウトになる事前運動ってほとんどないような・・・  

マスコミとしてもニュースの夏枯れ時期をまるまるカバーしてくれる美味しい選挙戦なので盛り上げ側に回っているようです(一応「立候補予定者」という表現を使ってますが)。

マスコミも国民もホンネでは事前運動と承知しているわけで、このへんが日本の法令遵守の独特なところでもあります。  


こうなっちゃうと、摘発する警察も、今回はどこで線引きをするかによってはまた「国策捜査」とか言われちゃうから大変そうですね。 
でも、選挙期間中にブログを公開すると「文書図画の配布」に該当するらしいので(詳しくはこちらこちら参照)、こっちは逆に捕まっちゃうのでしょうか・・・?

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ゲイツ教授の誤認逮捕

2009-07-28 | よしなしごと

アメリカではハーバード大学のアフリカ系アメリカ人研究で有名なアフリカ系アメリカ人(舌噛みそう・・・)の教授が誤認逮捕された事件がオバマ大統領まで巻き込んで波紋を呼んでいましたが、収束の方向に向かうようです。

黒人教授誤認逮捕でオバマ大統領が仲裁へ
(2009年7月27日 20:39 産経新聞)



米ハーバード大(マサチューセッツ州)の黒人の教授が白人警官らにより誤認逮捕された問題をめぐり、地元警察の対応を当初、「愚かな行為」と批判したオバマ大統領は27日までに「悪意はなかった。違う言葉を使えばよかった」と釈明した。  

大統領は教授の誤認逮捕が明らかになった直後の22日に「この国では、黒人とヒスパニック(中南米系)に対し、警察が偏見を持って職務質問を行ってきた長い歴史がある」とし、「潜在的な偏見を取り除く必要がある」と主張していた。しかし、警察側は「偏見を持って今回の捜査を進めたわけではない」として、大統領の発言に強く反発していた。  

ゲイツ教授はAP通信に対して、「この事件は、米国の人種関係の歴史の中で深みのある教訓になりうるし、教訓にすべきだ。私は、警察が目標の実現に向かって私と一緒に邁進(まいしん)する道を選んでくれることを心から期待している」との声明を出した。  

ゲイツ教授はオバマ大統領が“和解”を呼びかけるまでは、米社会で人種間の軋轢(あつれき)を起こす原因となってきた、「偏見に基づく警察の捜査手法が再び行われた」として、提訴する構えを見せていた。  


一方で警察も、人種差別的な意図はなかったと主張しています。
911 caller in Gates arrest never referred to 'black suspects'
(2009年7月27日 CNN.com この記事の中で警察への通報の録音も聴くことができます(こちら))  

オバマ大統領の対応が巧みだったのか、ゲイツ教授が冷静になったのがよかったのか、警察も毅然と主張すべきを主張したのがよかったのか、マスコミも片方に一方的に肩入れできない問題なので「バッシング」にならなかったのかはわかりませんが、「不必要に炎上させたくない」という暗黙の同意があるようで、それだけにアメリカにおける人種問題のデリケートさ、根深さを感じます。


〈追記〉
上の911の録音、気になっていたので聞き返してみたのですが、通報を受けた警官は最初の方で「ヒスパニックか?」って言ってるように聞こえます。
そっちの方は問題になんないのでしょうか?
〈追記終わり〉


事件の経緯と双方の主張はこちらを参照
ハーバード大教授が警官とトラブルで逮捕 黒人研究の権威
(2009年7月21日 CNN.co.jp)  



警察の報告書によると、16日、大学近くにある同教授の自宅のドアをこじ開けようとしている男がいるとの通報があり、警察官が駆けつけた。  自宅から出てきたゲイツ教授に警察官は、住居侵入の通報があったので調べていると説明。これに対してゲイツ教授は「なぜだ、私が黒人だからか」とかみついたとされる。その後もゲイツ教授が、警察官は人種差別主義者だなどとののしるのをやめなかったため、秩序を乱した疑いなどで逮捕したとしている。  

一方、ゲイツ教授側は、弁護士と同僚教授の連名で談話を発表し、中国訪問から帰宅したところ玄関ドアが壊れていたのでこじ開けようとしたと説明した。  

警察側の報告書では、ゲイツ教授に本人確認を求めたが応じてもらえなかったとしているのに対し、ゲイツ教授側は警察官に大学の身分証明書と運転免許証を見せたと主張。逆に、警察官に氏名などを尋ねたが答えてもらえなかったとしている。


 

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『これで古典がよくわかる』

2009-07-28 | 乱読日記

『橋本治と内田樹』のあとに久しぶりに橋本治の本を読んでみようと積読(しまっとく)してあったものを取り出す。   

今のブログブームは、漢文から和漢混淆文、そして漢字かな混じり文に至る中で生まれた日本人の「随筆」好きにルーツがあったんですね。(この本自体は1997年の発行で橋本治はインターネットを全く使わないそうなので当然ブログには言及してませんが)  

「日記は構えて書かなくちゃいけないが、随筆は楽に書ける」という常識を、清少納言という女性は、作ってくれたんですね。それで日本は楽になりました。つまり「男の日記はちゃんとした漢文で書かなくちゃ恥ずかしいが、随筆ならそんなに構えて書かなくてもいいんじゃないのか?」という雰囲気が生まれたということです。  

江戸時代になったら、もうそういうものがゴマンとあります。「メモ」とか「走り書き」とかも含めた「身辺雑記」のたぐいや、自分で勝手に考えた「歴史の考証」とか  

そして、「つれづれ○○」というブログが多いのは、まさに『徒然草』がブログの先達だったからでした。  

吉田兼好、本名卜部兼好は10代の頃から蔵人として後二条天皇に仕えていたのですが後二条天皇がなくなると、職を失います。
しかしブラブラしていられるくらいの経済状態にはあった卜部君は再就職はせず、「つれづれ」状態になって「日くらし、硯(スズリ)にむかひて、心に移りゆくよしなし事(ゴト)を、そこはかとなく書きつく」ることになったわけです。
そして30歳過ぎで出家し(出家すると苗字はつかないが吉田神社と関係が深かったので)「吉田の兼好」と呼ばれるようになります。  

その卜部君は『徒然草』でこんなことを書いています。  

六月の比、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるも、あはれなり。六月祓(ミナヅキバラヘ)、またをかし。  
(中略)
言ひつゞくれば、みな源氏物語・枕草子などにこと古りにたれど、同じ事、また、いまさらに言はじとにもあらず。おぼしき事言はぬは腹ふくるゝわざなれば、筆にまかせつゝあぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。
(第十九段 折節の移り変るこそ)

「こうやって言い続けると、みんな『源氏物語』や『枕草子』なんかで言い古されているのに似てるけど、同じことだからって今ここで言わないわけじゃないぞ、なにしろ、思ってること言わないのは欲求不満になる行為なんだから、筆に任せてつまんない暇つぶしで、すぐに破り捨てちゃうもんなんだから」
(橋本治の訳)  

ブログを書いていて、思っていることを書いてみたんだけど、けっこうありきたりでオリジナリティないじゃん、という経験はしばしばありますが、鎌倉時代の卜部君も同じようなことを考えていたんですね。  

昔の人も今と同じような喜怒哀楽を抱えていたわけで、暗記でなく「昔の人の日本語」に慣れるというアプローチが大事だよ、と本書は言ってます。

ブログも十年一日どころか現代人の「数百年一日」ぶりを示すの証拠くらいに考えて、これからもボチボチ続けていけばいいんですね。

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「予想以上の結果」への準備

2009-07-26 | 乱読日記

地中海料理店カルタゴに行って以来塩野七生『ローマ人の物語』の「ハンニバル戦記」の巻を枕元において寝る前にちょっとずつ読んでたのですが、やっと読了。  

終盤、カルタゴがローマに攻め入られ、最後の決戦となる「ザマの会戦」の直前にハンニバルがローマ軍を率いるスピキオ(・アフリカヌス)が会見したときのハンニバルの言葉が印象的でした。 
ローマを席巻したハンニバルも、イタリア半島で孤軍奮闘していたものの、ローマ軍にカルタゴ領だったスペインを制圧され、地中海の制海権を握られ本国に攻め入られるなかで呼び戻され、劣勢の中での最後の会戦を前に、講和を申し出る(既にローマ側からは一度提示されているのをカルタゴが蹴った後なのですが)ところです。

現在からは予測できない未来があるということであり、良きことはより大きいほうを選択し、悪しきことはより小さいほうを選ぶやり方でしか、それへの対策はないと言いたいのだ。

しかしスピキオは講和の誘いに乗らず、最後の決戦でハンニバルは敗れてしまいます。  

行動経済学では、人間は損失の傷みを過大評価しがちで、リスクに必要以上に備える反面大儲けのチャンスを逃してしまうといわれていますが、ハンニバルは勢いに乗っているスピキオに対し、損失の最小化=ミニマックス原理をとれとうながしたのですが、スピキオはここが勝負所と心得、利得の最大化=一気にカルタゴを破ることに成功したわけです。   

戦争だけでなくビジネスの契約交渉でも、上手くいかなかったときの契約解除とか違約金の話はけっこうするのですが、予想以上にうまくいったときのことを想定していなくて、儲かったはずなのに不満がたまるということがあります。  


さて、今回の総選挙で優勢が伝えられている民主党も「予想以上の大勝」への心構えと備えは十分でしょうか?

比例区の名簿下位の候補者に一定のレベルの人を集められずにさくらパパみたいなのをもう一度出すと見識を問われます。
政権を取ったときの閣僚・副大臣などの人事についても論功行賞でなく、きちんと能力のある人を配置しないといけません。
単独政権が実現したとした場合に、今まで野党勢力として時には共闘していた各党との関係をどうするかも問題です。 
それに、肝心の経済対策と財政問題もあります。  

国民は「せっかく勝たせたんだから世の中良くなるはずだ」と思っているでしょうし、マスコミは「自民党は問題だが野党は批判能力はあるものの政権担当能力はない」というずっとやってきたトーンを変える必要があるのか、このまま楽ができるのかを見計らっているでしょう。

民主党、今回は本気で政権を取るつもりのようなので、その辺の準備もきちんとしておいてもらいたいものです。

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『戦争詐欺師』

2009-07-24 | 乱読日記
ブッシュ政権がイラク戦争へ突き進む中でのネオコン・国防省と国務省・CIAの対立と政策決定の過程をまとめたドキュメンタリー。

911からイラク戦争の間の経緯については、既に現職を退いた人の手記や調査報道がかなり出ていて、それを詳細に分析するとともに著者のインタビューも交えてブッシュ政権の政策決定の過程を丹念に追っています。


改めて感じるのは、政府の意思決定というのも、限られた情報と思い込みを元に行われる、特に大統領に直接情報をあげる人物は限定されていて、そこでのバイアスが意思決定に影響を与えるということです。

まあ、企業も似たようなものですが。


それから、本書で数多く引用されているアメリカの報道機関の調査報道の厚みも印象的です。


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皆既日食

2009-07-23 | よしなしごと


今日は皆既日食。

残念ながら勤務先の周辺は曇りで(見ることができたとしても皆既日食ではなく部分日食だったのですが)、見ることはできませんでした。

周囲では密かに日食観測用メガネを持参したりしている奴が多く、落胆もひとしお。

そういう僕もデジカメを持参。
ただ、国立天文台の日食を観察する方法 によるとサングラスや黒い下敷き等を使ったとしても直接見るのはとても危険だそうです。  

肉眼で直接太陽を見ると、たとえ短い時間であっても目を痛めてしまいます。  
また、下敷きやCD、フィルムの切れ端、すすをつけたガラス板、サングラスやゴーグルなどを使って太陽を見るのもいけません。見た目ではあまりまぶしく感じなくても、光の遮断が不十分なものや、目に見えない赤外線を通しやすいものがあり、気づかないうちに網膜が焼けてしまう危険性があります。

そこで推奨されていたのは、ピンホールを利用するものや、「手鏡で見る」方式。

大きさが10センチ程度までの鏡で太陽の光を反射させ、反射させた光を建物の壁などに映してみましょう。壁からは、鏡の大きさの約200倍以上離れてください。(鏡の大きさが10cmでしたら、壁からは20m以上離れる必要があります。)壁から十分に離れると、鏡がどんな形をしていても、壁に映った太陽の光が丸く見えるようになります。この丸い形が、太陽の形です。日食のときには、欠けた太陽の形が壁に映ります。

そこで、今日はカバンにデジカメと手鏡を入れて出社。

ただ、改めて考えてみたら「手鏡」といえばミラーマン植草先生ですし、それにデジカメとなれば、この装備は万が一満員電車で痴漢冤罪などのトラブルに巻き込まれたときに、手荷物検査をされたら間違いなく怪しい奴なわけです。

ということで、ドキドキしながら会社に出かけたのですが、とんだ肩透かしでした。
(あ、決して悪用はしませんでしたので為念)

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慶應、小中一貫校の開校延期

2009-07-22 | よしなしごと

(何でも「100年に1度」のせいにするのもよくないと思いますけど)「世界金融危機の影響」というのがこんなところまで?


慶応義塾:小中一貫校、開校時期を延期
(2009年7月22日 毎日新聞)

慶応義塾(東京都港区)は21日、横浜市青葉区に11年4月開設を予定していた小中一貫校の開校時期を延期すると発表した。世界的な金融危機の影響で、08年度決算が過去最大の269億円の大幅赤字となったため、大規模事業の見直しを迫られていた。新たな開校時期は未定。  小中一貫校は慶応義塾創立150周年(08年)記念事業の一環で、横浜市から53億円超で購入した約5ヘクタールの敷地に校舎を新設、1学年120人で開校する計画。  

赤字の原因は資産運用の損失のようで、
主要私大13校最新決算、大学の資産運用が転機に、評価損計上が続出!
(2009年7月6日 東洋経済)によると、評価損が365億円に達しているそうです。  

含み損がいちばん大きかった慶應大は、運用資産1135億円のうち、「伝統資産」と言われる国内上場株式や国内外の債券のほか、ヘッジファンドやREIT、ベンチャーキャピタルなど、「オルタナティブ」と呼ばれる資産を約4分の1保有。  

慶應大はオルタナティブ投資の一時撤退や仕組み債購入を今後見合わせることを考えているという。  

評価損だけなら株式会社のように配当をするわけでもないので「塩漬け」という方法もあると思ったのですが、デリバティブなどで価値がゼロになって回復しないとか、追い銭が必要なものもあったのかもしれません。  

また創立150周年の寄付は2009年3月末で275億円も集まったそうなので(募金の経過報告)、赤字を十分埋められるじゃないかとも思ったのですが、2009年3月までの寄付金は2008年度の収益になっているとすると、寄付がなければ542億の赤字、一方で2009年3月末の評価損365億円ということは、経常の収支がトントンとすれば2008年度に177億円損切り済みということでしょうか。  
確かに総資産3692億円のうち現預金が253億円と寄付金額を下回っていますので、既に運用の損切りや上の学校用地の取得などで相当使っちゃってるのかもしれません。  


財政の建て直しが急務であることの象徴として記念事業の取りやめというのはアナウンス効果もあるでしょうが、子供のお受験に少しでもご利益があるかと寄付をしたOBからは文句が出そうですね(OBは「新設校」は眼中にないから関係ないのかな?)。

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『ビジネスで失敗する人の10の法則』

2009-07-21 | 乱読日記

著者のドナルド・R。キーオ氏は1980年代にゴイズエスタCEOの元で12年間にわたりコカ・コーラ社のCOOを勤め、その後投資銀行の会長やバークシャー・ハザウェイの取締役(ウォーレン・バフェットとは50年前オマハで向かいに住んでいたとき以来の友人らしい)などを勤めているアメリカでは有名な経営者のひとりのようです。

本書は長年の講演をまとめて10(+1)の教訓と印象的なエピソードにまとめています。

法則1 リスクをとるのを止める
法則2 柔軟性をなくす
法則3 部下を遠ざける
法則4 自分は無謬だと考える
法則5 反則すれすれのところで戦う
法則6 考えるのに時間を使わない
法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8 官僚組織を愛する
法則9 一貫性のないメッセージを送る
法則10 将来を恐れる
(おまけ)法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う

と、いろんな人が繰り返し語っていることではあるのですが、逆に言えば企業活動も人間の営みなので、陥るところはそんなに変わりはない反面、それを避けるのも難しいということでしょうか。

著者は数多くの講演もこなしているようで、その経験も生かし、自らや他の会社の事例などを印象的に盛り込んでいます。
「あるある」と手元にボタンがあったら押したくなるようなエピソードが満載でもあります。
たとえば、「法則6 考えるのに時間を使わない」では  

企業の合併・買収(M&A)の分野では、何億ドルときには何十億ドルもの案件で競争がはじまり、勢いがついてくると、参加者の間の対抗意識が前面にでてきて、戦い方が白熱し(そう、まさに戦いになって)、なんでもありの勝負になる。何が何でも勝たねばならないと考える。勝利は目の前にあるのだ。そうなると、積み上げた現金も、案件を裏付けるとされていた健全なはずの理由も、多数の利害関係者も、すべて問題ではなくなる。勝つことだけが目標になるのだ。「突き進むのだ、邪魔はさせない」と、とりわけ我の強い人物が叫ぶ。記者会見でスポットライトを浴びる夢があり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の一面トップを飾る夢があるのだ。魅力的な夢が実現すると思えば、金額を引き上げても十分に採算がとれると思い込む。占星術と変わらぬ程度の信頼性しかない予想であったとしても。ジョン・メイナード・ケインズがいう「血気」はほとんどの経営者が認めたがる以上に強烈だ。  

付け加えるなら、これが「法則4 自分は無謬だと考える」トップ主導で行われ、それに(経営者ではないですが)「法則1 リスクをとるのを止める」ご追従の中間管理職と、ファイナンシャルアドバイザーに作らせた数字を「法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する」と、かなり悲劇的なことになったりします。


もともと本書は『コークの味は国ごとに違うべきか』 (参照)と一緒に買った本で、こちらで語られているコカコーラ社はゴイズエスタCEO下でのグローバルな展開とその一面的な方針がその後の地域での適応で苦労した、というあたりに本書でも触れられているかと期待していたのですが、コカ・コーラ社については、1985年の「ニュー・コーク」の失敗について触れられているだけでした。
著者もゴイズエスタ氏のときに退任したようなので、それ以降内部の状況を知る機会はなかったのかもしれません。
また、『コークの・・・』では「(ゴイズエスタは)人気の終盤時に製造販売会社を売買する粉飾まがいの会計手法を用いた」という記述があるのですが(p41)、その辺についても触れられてはいません(そもそも著者は在籍していなかったか、粉飾だとは全然思っていないのかもしれませんが)。  


とりたてて目新しいことを言っているわけではないが、斯界で実績を積んだ人が、豊富なエピソードと魅力的な語り口で引き込む、面白い本だと思います。

その意味では「勝間本」(といっても僕はほとんど買ってないし、立ち読みレベルの知識しかなくて言っていますが)と似ているかもしれませんね(いい意味でも)。

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ニューシティ・レジデンス投資法人の再生計画案否決

2009-07-17 | あきなひ

おとといのニュースですが
破綻REITのニューシティ、債権者集会で米ファンド案否決
(2009年7月15日 22:01 日本経済新聞)

昨年10月に民事再生法の適用を申請した不動産投資信託(REIT)のニューシティ・レジデンス投資法人は15日、米投資ファンドのローンスターをスポンサー(再生支援企業)にする再生計画案が債権者集会で否決されたと発表した。大口債権者の後押しを受けた大和ハウス工業が系列のREITとの合併計画を対抗案として新たに提出したが、ニューシティ側は9月に再び開く債権者集会でローンスター案の可決をめざす考えだ。  
今回の否決を受け、大口債権者側が支持する大和ハウスは、ニューシティが実施する第三者割当増資を引き受けたうえで、系列REITのビ・ライフ投資法人とニューシティを合併させる対抗案を正式に提出した。

ニューシティ・レジデンス投資法人のリリースはこちら
債権者集会の続行期日及び一部再生債権者からの提案に関するお知らせ  

しかしながら、本件対案は、現在継続中の民事再生手続において付議された本件再生計画案の変更や再生スキームの本質的な部分を変更するものであり、再生計画案の変更として法的に許容される限度を超えるものとなりますので、再生計画案の変更により本件対案に基づく再生手続を行うことは法的に許されないものと考えられます。また、本件対案は、現在のスポンサーであるローン・スターとの契約が解除されることを前提とした提案であるところ、そのような状況ではありません。  

したがって、本投資法人と致しましては、現時点において、本件対案に従った本投資法人の再生は法的にも困難と考えており、再生手続廃止による破産を避けるため、現スポンサーであるローン・スターとの協力のもと、来る債権者集会の続行期日までに債権者のご理解を得るべく努力していく所存です。  

倒産手続に詳しいわけではないのですが「ホントかな?」という感じもします。 
「再生計画案の変更」としては「法律的に許されない」(=変更というには同一性を欠く?)のかもしれませんが、裁判所の許可があれば再提出までは禁止されてはいないように思います。そもそも債権者も再生計画案を提出できますし。 
なので「本件対案に従った本投資法人の再生は法的にも困難」は(「現時点では」という巧みな留保がついていますが)正確ではないように思います。 

また、「再生手続廃止による破産を避けるため」というのも飛躍があって、再生計画が可決されないと再生手続は廃止されますが、破産になるには債務超過でなければなりません。  

民事再生法250条
破産手続開始前の再生債務者について再生手続開始の申立ての棄却、再生手続廃止、再生計画不認可又は再生計画取消しの決定が確定した場合において、裁判所は、当該再生債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、職権で、破産法 に従い、破産手続開始の決定をすることができる。

ところが 資産運用報告書 では、投資法人はまだ純資産がプラスなので、再生手続廃止=破産にはならないのではないかと思います。
(そのとき、投資法人はどういう状態になるのかについてはちょっと興味がありますが。)  

現経営陣としてはローンスターの案で行きたいのでしょうが、ちょっと強弁しすぎだと思います。  

そう考えて「本件対案は、現在のスポンサーであるローン・スターとの契約が解除されることを前提とした提案であるところ、そのような状況ではありません。」というところをウラく読みすると、ひょっとするとスポンサー契約に違約金条項とかあるのかなと。 
物件のフォワードコミットメント(将来の取得の約束)による違約金で民事再生になったのに、ここでまたフォワードコミットメントがあったら笑い話になってしまいますが、さすがに監督委員がチェックしているからそんなことはないんでしょうね。

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「リニア」ってくらいだから直線で

2009-07-17 | よしなしごと

もちろんモーターが回転運動でなく直線運動をするからなんですが・・・

中央リニア、直線ルート優位明確に=JR東海が維持費・需要試算
(2009年7月17日(金)02:03 時事通信)

JR東海が、東京-名古屋間で2025年の開業を目指す「中央リニア新幹線」について、長野県が求める迂回(うかい)ルートよりも、同社が想定する直線ルートの方が維持管理費や需要予測面でも優位とする試算をまとめたことが、16日明らかになった。同社は既に建設費について、直線ルートの方が最大で6400億円も安いとの試算を示しており、今回の試算で同ルートの優位性がより明確になる。  

JR東海は、21日に開かれる自民党の「リニア特命委員会」に新たな試算を提出する。国土交通省も、リニア建設には直線ルートが適しているとの見方を強めている。

素人的にもスピードが大事なリニア新幹線を迂回させたり途中停車駅を増やしたりしてもあまり意味がないと思うので、それはそうだろうと。
逆に6400億円もかけずに在来線を利用して山形新幹線タイプの高速鉄道を走らせたり、在来線のままでの高速化はできないのでしょうか。

ちなみにリニア新幹線の総予算の6兆円とか7兆円とかのうち、国の補助金はどれくらいなんでしょうか。
そしてそのカネはどこからでてくるんでしょうかね?

 

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位討と漁夫の利

2009-07-17 | まつりごと

東国原宮崎県知事の衆院選出馬を取りやめは、マスコミからは「名誉ある撤退」とは受け止めてもらえなかったようです。
これも一種の「位討」(こちらのエントリなど参照)といえるのでしょうか。

東国原知事 宮崎のためを強調 開き直りも 出馬断念会見
(7月16日23時5分 毎日新聞)  

自民党からの衆院選出馬断念を正式に決めた宮崎県の東国原英夫知事は16日、県庁で約35分間にわたって会見した。おわびや釈明の言葉を並べ、今回の行動が宮崎のためだったと強調したが、開き直りや強弁とも取れる言葉もあり、国政転身を巡って揺れ続けた知事の心理をうかがわせた。  

「県民にご迷惑をおかけしたことを心からおわび申し上げたい」。16日午後4時から開かれた緊急会見で、東国原知事は冒頭の約9分間を説明に費やした。「地方分権を実行しなければいけないという信念に基づく行動だった」と、県民に理解を求めた。しかし一方では「これまで掛け声倒れに終わっていた地方分権が、三歩も四歩も進んだ」と、“成果”を強調することも忘れなかった。  

開き直りとも取れる発言に、記者が「県民には不信感が生まれている」と指摘したが「宮崎の存在価値、立ち位置をきちんとするために行動した」と反論。「なかなか発言の真意を伝えてくれない」などと、マスコミへの恨み節も飛び出した。  

国政転身騒動は昨年秋に続いて今回が2回目。自信満々だったことも災いして、知事の県政への熱意を疑う有権者も増えている。  

記事のトーンもかなり批判的になってます。  


一方で橋下大阪府知事は漁夫の利を得た感じで、余裕のエールを送ってます。
盛り上がり「その行動あってこそ」=東国原氏衆院選不出馬で-橋下知事
(2009年7月17日(金)02:03 時事通信)  

橋下徹大阪府知事は16日、東国原英夫宮崎県知事が次期衆院選への不出馬を表明したことについて、「バッシング覚悟で行動を起こしてくれたからこそ、今(の盛り上がり)がある」と述べ、一連の行動を評価した。中田宏横浜市長ら首長連合を進めるメンバーと東京都内で会合を持った後、記者団に語った。  

首長連合と東国原氏の連携について、橋下知事は「この選挙ではしない」と改めて明言した。また同日の会合では道州制などに関して、首長連合としての見解をインターネット上で公表することも決まった。   

2番目の段落がポイントですね。  

盛り上がったついでに「地方分権」や「道州制」は、キャッチフレーズだけでなくより具体的な中身の議論をしてほしいと思います。

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政治の壁、民族の壁、言葉の壁

2009-07-15 | よしなしごと
イスラエルの携帯電話会社のテレビCMが物議をかもしているそうです。





イスラエルとパレスチナを隔てる壁を題材にしたことやパレスチナ人の顔が見えないことなどについて、パレスチナ側だけでなくイスラエル国内でも非難が高まっているそうです。

Israeli Cell Phone Company in Hot Water Over Ad Featuring WallIsraeli TV ad fails to amuseなど参照)


昨日紹介した『コークの味は国ごとに違うべきか』にも、スウェーデンの家電メーカーエレクトロラックスがアメリカで展開した掃除機の広告キャンペーンで

 "Nothing sucks like an Electrolux."

というキャッチフレーズを展開して不評を買ったという話が載っていました。
(これ、僕でもまずいと思うのですが、いつごろの話なんでしょうかね。)


それから数年前にトヨタが中国でハリアーを「覇道」というネーミングで売りだして反発を買い改名したということもありました。(参照


上のCMも対立の壁を乗り越える、というような意図で製作したのではないかと思いますが、日々壁を隔てて暮らしている人々の敏感な部分に触れてしまったようです。

"The barrier separates families and prevents children from reaching schools and clinics," he told the agency. "Yet the advertisement presents the barrier as though it were just a garden fence in Tel Aviv."

というとらえ方も言われてみればそうかと思いますが、そのへんの受け止め方のレベルは地元の人でないとわからないものかもしれません。




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ビールの味は国内では同じになってもいいのか?

2009-07-14 | 乱読日記

今朝は日経のスクープが話題になりました。
キリンとサントリー、経営統合へ 持ち株会社統合で交渉

食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を進めていることが明らかになった。両社持ち株会社の統合案を軸に最終調整、年内の合意を目指す。実現すればビールと清涼飲料で国内首位に浮上。世界でも最大級の酒類・飲料メーカーとなる。統合で国内市場の収益基盤を強化、成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。  

キリンとサントリーの統合、公取に打診へ 週内にも  

キリンホールディングスとサントリーホールディングスは13日、経営統合に向けた詰めの協議に入った。週内にも公正取引委員会に統合後の国内シェアが高くなるビール系飲料やワインなどを対象に、独占禁止法に抵触しないか打診する。また、サントリーは90%近くの株式を持つ大株主の創業家一族などに統合への賛意を確認する方針だ。

こういう記事を見ると、段取りを狂わせたのはあんたじゃないか、とかスクープ至上主義の是非について考えてしまうのですが、それはさておき「成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。」というフレーズが、どうも今読んでいる『コークの味は国ごとに違うべきか』にかぶってしまいました。

この本は(まだ読み終わってないのですが)「グローバル化」をドグマティックに信奉することでは企業の成長はおろか業績向上も見込めない、大事なのは、どのような価値が創造できるかの分析と適切な戦術の選択による戦略の策定が必要であるということを説いています。
カジュアルなタイトルなのですが、著者のハーバード・ビジネススクールでの講義をまとめた中身の濃い経営学の本です。

本書で取り上げられているうまくいかなかった事例を見ると、「大事な意思決定ほど不十分な時間とデータに基づいてなされる」という典型のように感じますが、事後的に見ればそうなのであって、意思決定の時点で「十分」てなに?というのは永遠の問題でもあります。
本書は安易な処方箋は提示していませんが、拙速な意思決定の前に冷静になって分析するツールを提供しています。

本書で国ごとの独自性への対応の必要性の例としてコカコーラの世界統一の戦略に対する日本での缶コーヒーや茶飲料の独自の展開について(缶コーヒーの「ジョージア」というネーミングは、ずっと反対を続けていたアトランタの本社へのあてつけでつけられたなどという逸話も含めて)触れられているように、特に飲料品については国ごとの嗜好の差が大きいでわけで、素人にはキリンとサントリーの件についても「世界的な勝ち残り」を目指さなければならない差し迫った(または中期的な)脅威があるようにも思えませんし、規模の拡大と世界進出が成長を約束してくれるとも思えないところがちょっと疑問です。
サントリー自体、日本のビール市場で利益を出すまでに何十年もかけたわけですし。

また、ずっと非上場を貫いてきたサントリーにとっては、より大きな方針転換だと思います。
(けっこう、サントリーのオーナー一族の相続税対策などというあたりに動機があったりするのでしょうか?)

この動機のところはもう少し詳しく知りたいところです。

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