一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ニュース二題+おまけ

2009-03-31 | よしなしごと

考えようによってはこれで著作に専念できるかも。

小泉政権ブレーン・高橋洋一教授を窃盗容疑で書類送検
(2009年3月30日(月)22:28 読売新聞)

高橋容疑者は24日午後8時ごろ、東京都練馬区の温泉施設「豊島園庭の湯」の脱衣所で、区内に住む男性会社員(67)が使っていたロッカーから、現金約5万円が入った財布や、数十万円相当のブルガリの高級腕時計を盗んだ疑い。ロッカーは無施錠だったという。  

男性の通報で駆けつけた同署員が調べたところ、防犯カメラに高橋容疑者に似た男が写っていたため、浴場から出てきた高橋容疑者に事情を聞くと、盗んだことを認めたという。

著書は歯切れが良くて好きなんですが、ミラーマン植草先生同様性癖になっちゃってると止まらないんでしょうか。
現行犯に近いし本人も認めてるのでさすがに「国策」とは言われないでしょう。
「おとり捜査」という主張もあるかもしれませんが、おとりだったとしても引っかかるほうが悪いです。



センバツ球児、ネットで相手侮辱=利府高、高野連が厳重注意
(2009年3月30日(月)13:30 時事通信)

菊地校長によると、部員同士の対話を目的としたブログに23日、部員1人が掛川西高について「変な顔のやつばっか、笑 昭和くさい」などと書いた。

非公開設定にしておけばよかったのにね。



報道ステーションを見ていたら、野中広務に放送倫理会に訴えられて「重大なj放送倫理違反」で謝罪してました。
ケンカを仕掛けるにしても慎重さが必要な相手だと思うんですけど、そのへんの感度が鈍っていることも問題かと。

それはともかくCMを見てびっくりしたのが、債務整理の弁護士事務所のCMが流れていたこと。
貸金業法が改正された今でもそんなに儲かるのか、またはそれほど広告料が安くなったのかいずれにしても驚き。

しかも弁護士事務所が「浜田卓二郎事務所」。
調べてみるとあの最後は埼玉県知事選に落選して政界を引退した浜田卓二郎氏のようです。
HPを見ると確かに見覚えのある顔が出てます。
プロフィールのところに「平成16年12月 弁護士法第5条の規定により弁護士認定を受ける。」とあるので、国会議員や大学教授などを一定期間やると司法修習免除という規定を利用して弁護士になったようです。


世のため人のためにがんばってください。
 

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シャッター通り

2009-03-29 | あきなひ
昨日は高速道路が安くなったということで遠出してきました。

渋滞を予想して早起きしたのですが、混雑もさほどではなし。
確かにスキーシーズンも終わりに近く、桜の開花もここのところの冷え込みでちょっと遅れ気味だったのでちょっと端境期だったのかもしれません。


地方都市といえばここ数年中心部の商店街が郊外のショッピングセンターに客を奪われて「シャッター通り」化していると言われますが、実際かなり厳しい感じの町がいくつかありました。

ただ、さびれたといっても「中心部」というだけに昭和40年代くらいに繁栄を謳歌した名残があるところが多く、中心部のいまやさびれたアーケード街には当時としては立派だったであろう鉄筋コンクリート造の建物が並んでいます。


しかし、今言われている「シャッター通り」が歴史的にずっと中心部だったというのは少ないのではないでしょうか。

江戸時代に遡ると街道沿いの宿場町や城の周りの城下町として発展してきたところが多いと思います。

その後明治時代に鉄道が整備された時は鉄道は蒸気機関車が煤煙を撒き散らすので嫌悪施設と考えられ、駅の多くは町はずれに作られました。県庁所在地では大体お城と駅は離れたところにあることが多いですよね。(品川駅が港区にあって昔の品川宿の近くの京浜急行「北品川」駅のさらに北側にあったりするのもそんなところからきているのかもしれません。)
一方国道は江戸時代の街道をもとに道路整備がされたため、宿場町や城下町はそのまま市街地の中心部になりました。

その後、鉄道の利用客が増えると「駅前」も発展し、商業集積がみられるようになります。
ここで駅前が既成市街地の比較的近くだったところは市が拡大し、そうでないところは中心地をめぐっての競争が生じました。
とくに路面電車などから発展した私鉄が既成市街地の中心を走っているところは既成市街地の方が国鉄の駅前よりも依然として優位を保ち続けるところも多くありました。

昭和40年代になると国道の交通量が増えたために「バイパス」というものが多く作られるようになります。
これは既成市街地から通過するだけの車両を迂回させることを目的としており、既成市街地の発展を維持する効果がありました。

昭和50年代以降になり、新幹線網が広がると駅のポテンシャルがあがり、既成市街地に押されがちだった駅も駅周辺に商業集積ができるようになります。
「駅前再開発」が始まったのもそのころで、結果主だった駅(特に新幹線停車駅)の駅前はどこも駅の両側をつなぐために立体化されたコンコースからぺデス鳥案デッキがつながり、1回はバスターミナル、駅前に再開発ビルが立ち並ぶという似たような景色になることになります。

一方でモータリゼーションの進展によって、バイパス沿いにロードサイド型の店舗(ファミレスとかパチンコ店)が増えるようになり、平成に入ってからはイオンに代表される大型のショッピングモールが建設されるようになり、今に至ります。


なので、「シャッター通り」というのも、駅前でない昔からの市の中心部、昔の中心部と駅前が同じで全体が地盤沈下している、一度は市の中心部の座に輝いたが郊外型店舗に押されている、の3パターンあります。(それから、町自体が新幹線の駅が作られなかったなどで地盤沈下しているところもあるかもしれません。)


最近「シャッター通り」を大型郊外店のせいにするような報道もありますが、議論としてはそれもちょっとおかしいと思います。

大型店が林立する時代の前から商業の中心部が移るということは昔からあったし、今回もその一つにすぎないわけです。
商業者自身も中心部の移動に伴って対応してきたわけで、今回「シャッター通り」問題で対応が難しくなっているというのは、経営者の高齢化や後継者難、将来投資のための貯蓄がないとか融資を受けられないという事情もあるように思います。
確かに大型店は大量仕入れにより安い商品を提供するので競争力は個人商店とは比較にはなりません。ただそれは買い叩きとか不当廉売という独禁法の世界の問題です。
逆に言えば昭和40年代に商業者が繁栄を謳歌していたころの彼らの利潤が適正だったかというと、必ずしもそうとはいえないのではないかと思っています。
(以前書いたかもしれませんが)地方都市で商店をやっていたかなり年長の伯父がいて、その人はほとんど仕事らしい仕事をしていないにもかかわらず(羽振りが良いとまでは言いませんが)それなりの生活をして子供を大学にまでやっていました。
当時は子供心に不思議だったのですが、今から考えると、おそらく当時の商店というのはなんらかの仕入れルートにはいることができれば一定の利ざやは確保できていたのではないでしょうか。


僕は大型店自体は好きではないのですが(逆に魚をスーパーでしか買えなくなったら世も末だと思うくらいです。まあ、毎日買い物をするわけではないのでそういうことを言えるのかもしれませんが)、確かに「シャッター通り」は気の毒な現象だとは思うのですが、だからといって「ある時点の繁栄を保証する」というのは無理があると思います。
その理屈で言えば公共工事+談合で成り立っていた地方の建設業界は保護しなければいけない、ということになります。
これも遠縁だか田舎の親戚の知り合いだかで地方都市の土建業者がいて、昭和50年頃には外車(当時はそういうひとくくりでした)に乗るわスキー場のリフトの権利は持つわ(そういえば一度連れて行ってもらったな・・・)と羽振りがよかったのですが、先のバブル崩壊時に倒産してしまいました。(でもその人の方が先の伯父よりは仕事の中身の是非はさておき働いていたように思いますけど。)


話がそれてしまいました。
どうも遠出をすると、昔どこに行ったなどと話をきっかけに思い出話になりがちです。


行政としては中心市街地が寂れるのは高齢化が進む中で問題かもしれません。
ただそれは大型店の出店を規制したから実現できるものでもないと思います。若い世帯は隣町の大型店まで足を伸ばすだけかもしれないですから。
単に規制だけをするのでなく、中心部の道路や駐車場のインフラ整備とか郊外型店舗に固定資産税課税や開発負担金などで公平な受益者負担を求めるというの行政の本業でがんばってほしいものです。


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イマージュ・ホールディングス(とんだ展開)

2009-03-28 | あきなひ

イマージュ・ホールディングスについてのけっこう前の記事にコメントをいただいたので検索してみたらこんなことになってました。

イマージュHD社長、インサイダーで告発
(2009年3月28日(土)08:05 産経新聞)  

女性用の下着など衣料品通販を行うイマージュの持ち株会社「イマージュホールディングス(HD)」(高松市、東証1部)の社長がインサイダー取引を行い、1億円を超す利益を上げていたとして、証券取引等監視委員会は27日、金融商品取引法違反罪で、同社の南保正義社長(63)=香川県坂出市=と、南保社長の資産管理会社「ジャスティス」を高松地検に告発した。1部上場企業の社長がインサイダー取引で告発されるのは異例。同社によると、南保社長は不正取引を認め、辞任する方針。  

監視委によると、南保社長は平成18年1月、大和証券のグループ会社の役員を通じて、同社が支援していた婦人服専門店「キャビン」(当時東証1部)の業績が回復、提携を解消するとの内部情報を知り、4月19日の公表前にキャビン株50万株を約2億5000万円で買い付けた疑いが持たれている。  

自分の資産管理会社で直接50万株も買い付けたり(大量保有報告には引っかからなかったのでしょうか)あっさり不正取引を認めているところを見ると、ばれないように周到に準備するというよりは「俺の会社だから何やってもいい」というオーナー社長マインドの高い人だったのかもしれませんね。
資産管理会社の社名も泣かせます。  

前のエントリにあるように継続性に疑義ありという状態でしかもオーナー社長がお縄ということだと、先行きは暗そうです。
民事再生という手もありますが、現経営陣の中に債権者に頭を下げて経営を立て直すやる気と責任感のある人がいないとそれすらできないかもしれません。
実際、社長の専横が強い会社だったように見えるのでなかなか難しいのではないかと思います。


ところで前のエントリは最後「下着よりその内側の方に関心が・・・」というオチにしようかと思ってたのですが、今回違うインサイダーのオチがついてしまいました。
前のエントリのときは下ネタで落とすのは安易だからと自粛したのですが、それに続けて「それこそインサイダーか」なんてオチをつけていればよかったですね。
ちょっと残念です。

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『まじめの崩壊』

2009-03-27 | 乱読日記
先日の誤審に対するスタンスとも関係ある話です。


toshiさんのブログで取り上げられていたので購入。

著者は精神医学者でシンクタンクを主宰している人です。

著者は二大精神病である躁うつ病と統合失調症にちなんでパーソナリティ・パターンを「メランコ人間」と「シゾフレ人間」に分類します。

「メランコ人間」は「自分」が主役で他人との密な付き合いを求め、論理性・一貫性にこだわり、自分の中に行動規範を持っている。反面「シゾフレ人間」は周りの世界が主役で、他人と密接な関係を作らず、論理の飛躍を気にせず、自分の中に行動規範を持っていない。

日本人は戦後の高度成長期(=まじめに働けば報われる時代)においては「メランコ人間」が多かったが、1970年代以降(=日本が豊かになり、「まじめ」が批判されるようになった時代)から「シゾフレ人間」が増えてきたといいます。
そして、今の日本の社会現象は「シゾフレ人間」が多数になったことで多くが説明
できるとします。

たとえば以前(メランコ人間が多数の社会)は建前が重視され多少の曖昧さが許容されていた(=それは個人個人の中に善悪の基準があった)のに対し、シゾフレ多数派社会は善悪の基準を周りがどう思うかによって決めるので、マスコミに取り上げられたりすると世論が極論に走りがちになる。
また、従来の警察・検察の「一罰百戒」がシゾフレ人間には効果がなくなる。つまり「一罰百戒」で自分の行為を律するのではなく「九十九は非合法が黙認されている」と考えてしまう。

そういう中でメランコ人間多数派社会を前提に作られてきた世の中の仕組みがシゾフレ人間多数派社会になって機能しなくなりつつあるということに警鐘を鳴らします。

本書の後半部は(あまりに)広範囲の事象に警鐘を鳴らすことに専念しているのでちょっと食傷気味になるところもありますが、切り口としては非常に面白いと思います。

プリンシプルベースの法律の運用が話題になっていますが、議論に当たっては本書のようにそもそもプリンシプルなんかない、という視点も意識しておく必要があると思います。

また、キリスト教・ユダヤ教的背景がないとそもそも「法化社会」は難しいんじゃないかという磯崎さんのブログでの指摘(こちらこちらのエントリ参照)なども意識しながら、メランコ人間が多数だった高度成長期には法律はどのように機能していたのか(個人の道徳観や倫理観+一罰百戒・多少の違法行為はお目こぼし、という状態はどう評価すべきなのかというところも考えると面白いですね。



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SFCGと日本振興銀行

2009-03-26 | あきなひ

倒産直前の悪あがきがかえって逆効果だったようです。

SFCG再建断念
(2009年3月25日(水)08:05 産経新聞)

東京地裁は24日、2月に経営破綻(はたん)した商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)の民事再生手続きの廃止を決定した。同社は今後、破産手続きに移行する。同日記者会見した保全管理人の瀬戸英雄弁護士は、同社が日本振興銀行など数行に債権を二重に売却した額が約700億円に上ることを明らかにした。  
瀬戸弁護士は東京地裁が同社は再建の見込みがないと判断した理由として、債権の二重譲渡や約38億円に上る税金滞納、近く貸金業の免許を取り消される見通しなどを挙げた。  

債権の二重譲渡であるとすると、譲受人のどちらが債務者に対する対抗要件を備えているか(=「自分に払え」と言えるか、つまり債権をちゃんと手に入れられているか)が問題になります。

日本振興銀行はこう言っています。
日本振興銀行、SFCGから譲り受けた債権は約1024億円
(2009年3月24日(火)19:47 ロイター) 

一部報道ではSFCGの債権約500億円がすでに信託銀行などに譲渡済みとされているが、振興銀行は現在までにその事実は確認できないとしている。また、債権の保全措置を取っているとして、二重譲渡があったとしても決算に与える影響は軽微だとしている

でも債務者間との間では既にトラブルになっているようです。
返した数億円どこに 貸し手変更後もSFCGに振り込み
(2009年3月23日9時40分 朝日新聞)

茨城県内のコンサルタント会社(中略)に債権譲渡の通知が郵便で届いたのはSFCGが民事再生法の適用を申し立てた当日の2月23日。「貸し出し債権を昨年12月17日付で売った」。だが、SFCGからの借金は昨年12月25日に完済した。不審に思っていると今度は通知が届いた翌日、日本振興銀行から「借り換え」を勧誘する電話があったという。  

前後して通知が届いたさいたま市の包装資材販売会社も不信感でいっぱいだ。今年初めにSFCGと借金の借り換え契約を結んだのに、通知を見るとSFCGから日本振興銀行に債権が売られた日付は昨年12月17日。「債権を銀行に売り渡した後なのに、SFCGはなぜ借り換えに応じられたのか」  

日本振興銀行によると、通知が遅れたのは、SFCGから12月17、30日、1月26日の3回に分けて同行へ売り渡された貸し出し債権約510億円分。(中略)借り手に知らせる通知について日本振興銀行は「SFCGに委託した」と主張。SFCG側も「通知は経営破綻前の2月20日ごろに発送した」と言う。  

最長で2カ月余の間、借り手の企業は、貸手が変わったことを知らないままSFCG側に返済を続けており、借り手側の弁護団は「少なくとも数億円規模になる。破綻前で資金繰りの苦しかったSFCGが、目先の資金を確保するため意図的に通知を遅らせたのではないか。二重譲渡の発覚を遅らせるために通知を出せなかった疑いもある」と指摘する。  

そもそも火事場状態だったので超過利息問題や事務の不手際も織り込んでビジネスとして債権を相当安く買ったというならソロバン勘定としては成り立ちます。
ダメモトの債権譲渡通知で、払ってくれれば儲けもの、少しでも借り換えの客をつかもうということかもしれませんが、それはそれで商売としていかがなものかと思います。

でも、このバタバタ度合いをみると、自分のSFCGに対する貸付が焦げ付くよりは怪しい債権に切り替えて決算上の損を先送りにするなどという不純な動機があったんじゃないか、と勘ぐりたくなってしまいます。
単に収益事業をしようとしたのに脇が甘かったというなら論外ですけど。 
 

この記事を見て、10年くらい前、バブル崩壊時の話を思い出しました。
勤め先の会社の取引先が倒産したとき、翌日に3つの銀行(それもメガ-当時はメガバンクがいっぱいありました。)が会長名と社長名と専務名のハンコ付きの債権譲渡通知を別々に(内容証明でなく)持参してきたことがありました。 
しかもその通知の譲渡日のところが手書きで、いかにもあらかじめ取り付けておいてバックデートというのがバレバレです。
 
へぇ、銀行ってこういうこともやるんだなぁと妙に感心した記憶があります。
当時は銀行も自分がつぶれるかどうかの瀬戸際だったのでなりふり構っていられなかったのでしょうね(ひょっとして今でもやってるのかもしれませんが。)。


今回も譲渡する方、受ける方どっちもどっちという感じはあります。

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『街場の教育論』

2009-03-25 | 乱読日記

内田樹センセイが「街場の○○」というシリーズで何冊か異なるテーマについて書いている中の一冊。
「街場の」というのは誰でもわかる、というような意味なんでしょう。

ただ、読みやすくはあるものの、わかりやすいかというと必ずしもそうではありません。
ウチダ先生独特の話の進め方や言い回しは、読者にも考えることを求めます。
何か答えが書いてあるのではと考えて読むと、レトリックにだまされた感じがしてしまうと思います。
たとえば「学ぶ」ということについてはこんな風に書いてます。

・・・習ったことを覚えておきさえすれば満点がもらえる試験に受かって仕事を得たら、そこは「習っていないことについて即答すること」が要求される場であったわけですから。
 そのための訓練を日本の学校教育は構造的に怠ってきた、というのが私の年来の主張であります。「どうふるまってよいのかわからないときに、適切にふるまう」能力の涵養こそが教養教育の眼目である、と。
・・・それが「学び」の基本なんですから。
・・・自分が何を知らないのか、何ができないのかを適切に言語化する。その答えを知っていそうな人、その答えにたどりつける道筋を教えてくれそうな人を探り当てる。そしてその人が「答えを教えてもいいような気にさせる」こと。
 それだけです。

大学院の講義をベースにしていて、後半部分は学生の研究発表に対するコメントを各章にしているので、つながりは悪いですが逆に取り上げているテーマは広がります。

何か答えが書いてあるという本ではなく、自分が何がわかっていないか、またはわかっていたと思ったがこういう考えがあったか、と目からウロコを落としてみたい人にお勧めです。

 

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『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

2009-03-24 | キネマ
この映画が公開されたのがちょうど山本直樹『レッド』が出た頃だったので、観ようと思って観そびれていた作品です。

「鬼才・若松孝二監督が私財をなげうって・・・」と解説にあるのですが、残念ながら私は若松孝二監督についてほとんど知りません。

なので、製作の動機なども知らないのですが、映画を観た感想としては、監督は連合赤軍の一連の事件の記録を残しておきたかったのではなかろうかと思います。

「実録」というタイトルのとおりドキュメンタリー的な作りで、特定の登場人物や主義主張への思い入れを極力排しています。
そして、要所要所にそのときの時代背景の説明が入り、そして最後に当事者のその後や海外での赤軍派の活動までまとめています。

『レッド』のとき(参照)に調べた範囲の知識に照らせば、事実関係も概ねいままでの関係者の著作や証言に基づいているように思います。
(エンディングの最後に「参考文献」のあとに映画製作のために取材したと思しき個人名が並んでいますが、その一番最後には「重信房子」とありましたが、獄中の彼女にも取材したのでしょうか。)

監督の主張が出ている場面としては、あさま山荘で機動隊が突入する直前に最年少の少年が叫んだ言葉が唯一のように思われます。
(これはネタバレにしません。)


わたし自身事件当初は小学生だったので政治的背景などはわからずに(「ブント」が「ブ」でなく「ト」にアクセントをおくことを冒頭のナレーションで始めて知ったくらいです)、「君達は完全に包囲されている、武器を捨てて出てきなさい」というセリフだけが刷り込まれただけだったのですが、あの時何があったかを知り、また、どうしてこういうことになってしまったのかについて考えをめぐらす機会としては良かったと思います。

昔の時代のしかも一部の突出した人々の暴走として記憶から排除するのではなく、目的を持った集団が陥る一つの悲惨なケースとして心の引き出しに入れておくのもいいのではないかと。

今でも「連合赤軍」という集団が「株式会社」に、「共産主義革命」という目標が「IPO」とか「上場の維持」(その他「わが社の悲願」いろいろ)に置き換わっただけで、集団が誤った(そして往々にして悲惨な結末を迎える)意思決定をするということがまま見られるのですから。






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誤審

2009-03-23 | よしなしごと

昨日何の気なしにテレビをつけたら、選抜高校野球の開幕戦ををやっていて、思わず見入ってしまいました。

こういう大激戦で、8回の裏に倉敷工業が追いついたところから見はじめました。
ところが9回表に金光が3点とって突き放し、これで万事休すかなと思ったら、9回の裏倉敷が追いつきます。
1アウトランナー1塁から果敢に盗塁を決め、その後3連打で追いつきます。 3点ビハインドでの盗塁は、バッターにゲッツーを恐れずに積極的なバッティングをさせようという意図があったのでしょうか。見事な采配です。
そして同点に追いついた一死一塁から、今度は一転してスクイズを仕掛けます。
ここでは「犠牲フライでいいのにここで勢いを止めかねないスクイズかよ」と思ったのですが、三塁ランナーがホームでタッチアウトになってしまいます。
そのシーンがこれ。


2009/3/21 甲子園 疑惑の判定【正面からのスローあり】


中継のときも スローを見て、キャッチャーがボールをこぼしているように見えたのですが、NHKのディレクターもまずいと思ったのかここで再生をやめ、二度とこのシーンは出てきませんでした。アナウンサーと解説者も黙ってますね。

改めて見てみると、こぼれたボールを一塁手が拾ってランナーにタッチして審判にアピールしようとしたら審判が既にアウトのコールをしていたので知らん顔してそのままボールを持っています。
ここで即座に倉敷がアピールしたら「現行犯逮捕」だったのでしょうが、アピールがちょっと遅かったようです。
また、審判としても間違ったと思っても判定を覆したらその場でサヨナラゲームセットなので、わかっても一旦落ち着いた後に訂正するのは難しいかもしれません。

試合は結局、11回に勝ち越された倉敷が裏に逆転サヨナラ勝ちをしたので結果オーライではありました。


で、この誤審、現在のご時勢ではけっこう非難されそうですし、落球したのに知らん顔していた金光のキャッチャーや一塁手も「スポーツマンシップにもとる」と非難されそうです。
確かに今回のはキャッチャーミットの捕球を確認していればよかったので審判もうっかりしていたとは思います。
でも、野球に限らずスポーツは一定のルールとそれを運用する審判の判定という人間の行為を前提にしている以上見間違いはあるわけで、それは双方のチームは承知していた(承知しているべき)ことなのではないかと思います。判定での有利不利はお互い様なわけです。
それに審判だってボランティアの人なのですし。

なので今回も倉敷は一度は抗議したものの引き下がったのだと思います。

よしんば倉敷工業が結果的に負けていたとしても、「青春の集大成としての汗と涙の甲子園をけがした」などと大騒ぎはしてほしくないものです。
そうしないと高級野球では、隠し玉とかとかは当然のこと、ピックオフプレーやグローブを掲げて捕球をアピールする行為も「高校野球の精神に反する」などとしてできなくなってしまい、結果的につまらない、想像力に欠けた力勝負の野球だけになってしまうのは避けたいです。


最近の証券取引等監視委員会や公正取引委員会の活動に対するマスコミ報道や、反面検察への「国策捜査」議論などを見ても、「審判は間違わない」または「審判は間違ってはいけない」というドグマティックな考え方は世の中をあまりよくしないように思った次第です。


また、4月から新卒者の採用面接が始まりますが、これになると合否の判断の正しさというのは検証すら不能になってしまいます。
不合格にした学生がその後どれくらい成長し活躍したかは全くわからない反面、入社した学生のパフォーマンスが悪いと「誰が採ったんだ?」ということになってしまうので、ややもすると採用側もミニマックス戦略をとって無難な学生ばかりを採ってしまうことになります。
それを見越してか、学生の側もゼミやらサークルやらの代表とか幹事がどうこうということをアピールする人が多く見られます。ホント、構成員の数だけ代表がいるのかという感じです(「代表代行」とかいうのは民主党だけで十分だと思うのですが。)。
採用人数に枠がある以上、有用な人材を採用し損ねるという点で採用面接は「誤審」の積み重ねでもありますので、就職活動中の学生の方は落とされた会社についてあまり思い悩まないほうがいいと思います。


話がとっちらかってしまったので、最後に野球の終盤の采配にからんだネタを。
キューバのフィデル・カストロ元議長、WBC日韓戦の感想「あそこでバントはないな」

3月10日のWBC予選リーグでの韓国戦の話です。 さて、韓国が1点を先制し、日本の攻撃が残り2イニングとなった場面だ。 とても危険な選手で、また日本の象徴ともいえるイチローが、3打席凡退の後にこの日の初ヒットを打った。 すると日本の監督 (原辰徳) は2番打者 (中島裕之)――彼は疑いようのないほど素晴らしい選手だ――に バントを命じたのだ。これでアウトカウントはみすみすと2に増えてしまった。 我が国のファンは野球をよく知っている。彼らならここでバントを命じた作戦はどう考えても失敗だったと 思うだろう。

原典はこちらFidel Castro: A Fair and Constructive Criticism

The game between the teams of Japan and South Korea, Cuba’s two strongest rivals, which was played today, Monday morning, was 1 to 0 in favor of South Korea when Japan had only two more chances at bat.

The dangerous and emblematic Ichiro, who had failed three times, connected a single.

The Japanese manager instructed the second batter –who is, no doubt, a good player- to lay down a bunt, which brought about the ‘out’ number two.

I am sure that our experienced fans, after any elementary analysis, thought that was a mistake.

あのシーンはスポーツニュースで見ただけですが、同感。
そもそも負けても後がある試合だし、今後勝ちあがっていけば何度か韓国と対戦するので、ここで動くならイチローに盗塁をさせて相手に嫌なイメージを植え付けるほうがよかったのではないかと。

しかし、キューバチームは二次予選で敗退してしまって、カストロ議長は相当おかんむりでしょうね。
 

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『イントゥ・ザ・ワイルド』

2009-03-22 | キネマ
カタカナにするととても間抜けな感じになってしまいますがパッケージはちゃんと英語表記になっています(「荒野へ」ではありきたりと思ったのでしょうか)。


大学を卒業した若者が物質社会や家族に背を向け放浪の旅に出てアラスカを目指す、というノンフィクションの映画化です。
「自分探しの旅」といってしまえばそこまでですが、過剰なまでに徹底した主人公の姿勢と孤独の中での心の動きを正面から見すえていて、考えさせられる映画になっています。
舞台となるアメリカの大自然も魅力的に描かれています。





(以下ネタバレ注意(それもモロですので))









予告編や解説などでも予想がつくように、この物語は悲劇的な結末を迎えます。
それも、主人公が孤独から脱しようとしたそのときに。

孤独を選ぶ中では見せなかった焦りが悪循環を引き起こしていく様も、カメラは冷静にとらえます。

結果的に主人公は来たときは凍っていた川が想像以上に広く流れが速かったために帰路を絶たれて餓死してしまうのですが、エピローグとして「死後2週間後にヘラジカ猟に来た漁師に発見された」=つまり別のルートがあったということも残酷な事実として語られます。


でも、最後に映し出される、モデルになった青年の写真の表情がとても晴れやかだったことにちょっと救われます。




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『レッドクリフ Part I』

2009-03-20 | キネマ
久しぶりに三国志を思い出しながら観ました。


三国志は小学生の頃横山光輝のマンガを塾で友達に借りて読んだのが最初で、これは借り物なので途中で終わり、その後大人になってから吉川英治のを読みました。
それから『蒼天航路』も面白かったですね。

三国志は誰に思い入れるかが作者や読者によって異なるのが面白いところですが、
この映画は題名どおりレッド・クリフ=赤壁の戦いがテーマであって、三国志全体を描くわけではないので、かなり割り切った人物造形をしていて、PartⅠでは魏の曹操と呉の孫権の将軍周瑜を軸に諸葛孔明が狂言回し役という展開になっています。

映画としては、壮大な物語・クライマックスの決戦・登場人物の愛憎・派手なアクションが盛り込まれているという意味では、良くも悪くも「スター・ウォーズ」と「ロード・オブ・ザ・リング」を足したような感じです。
娯楽映画としての完成度は高いけど・・・というのが欲を言えばの感想。

スター・ウォーズ同様、これが大ヒットしたら三国志全体を通して映画化する予定があったりすれば楽しみですが。



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「オフレコ」の意味

2009-03-19 | まつりごと

産経新聞の福島香織記者の北京・官邸趣聞博客(ぺきん・かんていこねたぶろぐ)での雑談:オフ懇と匿名取材 というエントリで、はじめて政治の世界での「オフレコ」の意味がわかりました。  

月~木に夕方に官邸内で行われる漆間副長官のオフ懇は、俗にいう「筋懇」といわれるもので、何々筋によると、というふうに匿名で引用してOKという暗黙の了解のもとで話される。このクオートの仕方は、官房長官、官房副長官→政府高官、秘書官→首相周辺などとパターンがほぼ決まっており、政府高官によると、といえば官房長官か3人の副長官のうちの誰か、ということになり、政府のナカの人や議員ら関係者は、誰の発言かほぼ確定できる仕組みになっている。  

したがって、代打ち(番記者以外のかわりの記者)も出席でき、なおかつ問題発言したら、すぐ発言者がわかるかっこうで直後に報じてしまう、この「筋懇」といわれるオフレコ懇談というのは、オフでもなく匿名取材でもない。だから、核心の話などでないのが普通である。いわば雑談の延長、誰もが知っている話プラスちょっとしたサービストーク、理解を深めるバックグラウンドブリーフィングが主流だ。あるいは、お互い記録をとっていないことをよいことに、少々の放言、あるいは、とばし記事を黙認できる、双方にとってこずるい取材・リークの場かもしれない。  

オフ懇をする議員や高官の中には、オフ発言で記事に出ることを想定して発言する人もいるそうだ。その発言が問題になっても、双方に記録がないことを理由に、記者側が発言を誤解したり聞き間違ったと突っぱねることができる。記者の方も、なにげない一言や言い間違いをとらえて、牽強付会して伝えたとしても、それが誤解、誤報だと証明できる記録もないわけだ。双方にとって、そういうメリットがあるから、一見意味のないように思えるオフ懇というものが、えんえんと存続するのかもしれない。  

福島記者は本来漆間番なのですが、ちょうど問題発言のあったとされるオフ懇のときはイチロー(小沢)番に応援に行っていて出席していなかったそうです。
実際にどういう発言があったのかについては、彼女自身が他者の記者に確認しても記憶があやふやで、共同が記事を流したからあわてて記憶を掘り起こした、という社もあるとか。  

そもそも記者クラブのルールというのが存在しているのがいいのかという問題はさておくとして、「書いてもいいが記録を取らないので事実かどうかは確認できない」というルールがあるのなら、それをちゃんと説明して報道したほうがいいですね。 
それから、記者自身の記憶も曖昧なようですが実際の新聞記事が一枚岩というのも妙な感じです。
「自分の記憶ではそんなこと言っていない」という記者がいればそういう報道をするのが筋だと思うのですが、録音がない(あっても出せない)以上記者同士の仲間割れは避けたいという心理が働いているのでしょうか。

個人的には今回の事件が「国策捜査」とは思わない(どちらかと言えば自民党時代からいままで小沢一郎事務所に手入れをしなかった方が国策捜査だったのではないでしょうかねぇ)ので漆間発言自体はあまり関心がないのですが、記者クラブや政治部の記事のこういうあり方というのも、政権政党の交代がしばしば起きることが現実的になってくると機能しなくなるのではないでしょうか。

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「やすらぎ」の騒動

2009-03-18 | あきなひ

なんか穏やかでない適時開示がありました。

調査委員会設置に関するお知らせ
(平成21年3月17日 株式会社やすらぎ(8919 名証セントレックス))

平成21年3月16日付けの「外部調査委員会設置に関するお知らせ」については前代表取締役社長が独断でリリースしたものであり、その後、その委員会構成等について前代表取締役社長の決定は当社取締役会で承認されず、改めて当社取締役会にて下記のとおり、社外取締役及び社外監査役をメンバーとした調査委員会を設置し、調査及び確認を進めることを決議いたしました。

遡って調べてみると今年の2月くらいからの話のようです。

代表取締役の異動に関するお知らせ
(平成21年2月13日) 

経営体制のより一層の強化を図るため、代表取締役を2名体制とするものであります。 

ということで須田力氏が取締役から代表取締役に就任。

主要株主の異動及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
(平成21年2月25日)

・ Prospect Asset Management, Inc.より平成20 年12 月24 日付大量保有報告書等の提出により、須田忠雄が新たに主要株主である筆頭株主に該当するとともに、
・ 平成21 年2月23 日付でProspect Asset Management, Inc.から須田力への株売却に伴い、須田力が新たに主要株主に該当することとなりました。

これによって持株比率はつぎのようになりました。(訂正後のリリースの数字によります。)
    (従来)       (将来)
プロスペクト 20.20% → 10.98%
須田忠男   19.42% → 17.52%
須田 力    7.92%  → 17.10% 

須田忠男氏はやすらぎの会長です。 
ここで須田忠男氏と力氏の保有株数の合計で34.62%と1/3を超えていることをチェックしておきましょう。 
金融商品取引法のTOB規制では、特別関係者と合算した保有割合が1/3を超えることになるような市場外での株券等の買付はTOBによらあなくてはいけないことになっています。 
ちなみに1親等以内の血族は特別関係者になること(同法施行令9条1項)、平成20年1月期の有価証券報告書によると、忠男氏は昭和21年生まれ、力氏は昭和44年生まれで親子なのかなぁ、というあたりもメモしておいて先に進みます。

そして
代表取締役の異動に関するお知らせ
(平成21年3月9日) 

現代表取締役の根岸宏之が平成21年4月15日の定時株主総会をもって退任し、須田力氏が代表取締役執行役員営業企画担当から代表取締役社長になることが内定しました。

これも定時総会での社長交代なので普通といえば普通です。  

ところがこのあとに冒頭の開示で言及された「独断のリリース」が出ます(これは会社のHPのIR情報からは削除されています。)。  

外部調査委員会設置に関するお知らせ
(平成21年3月16日)  

当社取締役会は、平成21年3月10日付けにて、常勤監査役の連名により、法令、社内規程に違反する行為等について詳細な社内調査を行うよう意見書の提出を受けました。決算訂正の可能性に関する事案も含まれており、社長を委員長とする社内調査委員会を設置し、調査及び確認を進めることをお知らせいたします。 
一部の取締役が関与している可能性があることから、第三者の立場より、社内調査委員会による調査範囲および方法、調査結果についての検証、ならびに事象発生の原因究明、および再発防止策の策定についての提言などを行なっていただくため、当社グループと利害関係のない弁護士、公認会計士の3名で構成する社外調査委員会を併せて設置することといたしました。既に、平成21年3月13日付けで下記の構成委員の方々に委嘱し、調査の開始をお願いしております。調査期間は概ね3ヶ月とし、調査の内容及び中間報告等も含め、速やかにお知らせいたします。  

そしてこの翌日、冒頭のリリースと同日付で、定時株主総会を待たずして根岸氏は代表取締役を解任されてしまいます。
代表取締役の異動に関するお知らせ
(平成21年3月17日)  

平成21年3月16 日開催の取締役会にて根岸宏之の業務執行が不適切であると判断したための解任決議によります。これを受けて当社取締役会は代表取締役の須田力を社長に選任し、同人が直ちに代表取締役社長に就任しました。

ちなみに3月10日に連名で意見書を出した常勤監査役は2名(共に昭和19年生まれ)で、麓氏は警察OBで平成16年に監査役就任、斎藤氏は両毛システムズ(地元企業?)から平成16年に入社し平成20年に監査役に就任した人です。  

また、今回新たに設置された調査委員会のメンバーは以下の通りです。
委員長    社外監査役 土井 充(公認会計士)
副委員長  社外取締役 木村 裕(弁護士)
委員      社外監査役 熊谷 聖一(日本経営合理化協会専務理事)
委員     社外取締役 カーティス・フリーズ(プロスペクト・アセット・マネジメントCEO)
調査期間は約1ヶ月となっています。   


さて、常勤監査役から指摘のあった「法令、社内規程に違反する行為等」って何なのでしょうか?


大株主の異動に関することであれば、その当事者でもあるプロスペクト・アセット・マネジメントのCEOのカーティス・フリーズ氏が調査委員になることは(普通は)ないはずですよね・・・
また、委員長の土井氏はシグマ・ゲイン(株)の監査役もつとめていますがこんな会社だったりします。
一方の解任された根岸社長もIPO直後の平成17年にKOBE証券から移ってきた人だったりするので、内紛としても役者がそろっている感じです。  



大株主の異動に話を戻します。


上のリリースによると株式の異動はこんな感じです。

1月20日 プロスペクト17.49% 忠男20.26% 力7.85%
2月23日 
Prospect Asset Management, Inc.が保有する株式の一部を当社の代表取締役である須田力が取得(取引A)
     プロスペクト10.98% 忠男20.26% 力14.37%
2月24日 
当社取締役の須田忠雄が保有する株式の一部を当社の代表取締役である須田力が取得(取引B)
     プロスペクト10.98% 忠男17.52% 力17.10%

取引Aの時点で忠男+力の合計が1/3超になります。
取引AはTOBによってはいないようですので、これがTOB規制違反にならないためには
① 取引Aが市場内取引である 
ところが、市場内での取引ならそもそも売り主は特定できないはずなので、市場内取引にはあたりませんね。(出来高をみても市場内ではなさそうです。)
② 忠男と力は特別関係者でない 
親子なら形式基準でアウトです。
もっともたとえば叔父と甥の関係ということなら形式基準にはあたりませんが、実質基準「株券等の買付け等を行う者との間で、共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、若しくは当該株券等の発行者の株主としての議決権その他の権利を行使すること又は当該株券等の買付け等の後に相互に当該株券等を譲渡し、若しくは譲り受けることを合意している者」(金融商品取引法27条の2 7項2号)にもあたらない必要があります。
ただ、同じ取締役でしかも取引Bが取引Aの翌日に行われたとなると、少なくとも上の「又は」以降には該当しそうですね。  


なんかモロに「こういうのはダメです」という事例のように思うのですが、大丈夫なんでしょうか? 
でもさすがに正々堂々とリリースしているわけですから、なにか根拠があるんですよね。
TOB規制は複雑なので、素人が見落としている例外があるのかもしれません。何か気がついた方がいらしたら教えていただければと思います。

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エスグラント民事再生

2009-03-18 | あきなひ

相変わらず毎月最低でも1件はマンションデベロッパーが倒産するという記録が更新されています。  

民事再生申立自体は先週の話ですし、私はエスグラントという会社自体投資用ワンルームマンションのアグレッシブな勧誘で成長した会社という程度の認識しか持っていなかったのですが社長は20代で創業して2年(48か月と2日らしい)で上場を果たしたとして若手企業家として有名だったようです。 
でも、これほどのの短期間で上場するということは、ターゲットにする市場を選ぶ(名証セントレックス!)だけでなく、最初から「上場審査基準をクリアするような会社を作る」ことを目標にしていたのではないでしょうか。 
それはそれでひとつの起業戦略(実際にそうだったのかどうかは知りません)だとは思いますが。

でも、倒産後にエスグラントコーポレーションのHPを見て「IR情報」→「IRライブラリ」を開くと「このページは運用されていません」といきなり出てしまうのは上場廃止しちまったら関係ねーや、という雰囲気が出ていていかがなものかと思います。 
倒産に至ったことは今更どうしようもないのだから、潔くしていてほしいところですね。
社長もまだ若いんですから。  

で何か情報がないかと検索して見つけたのが目黒で働く社長のアメブロ  
2008年4月1日のエントリが最後になっています。  

この度、当社エスグラントコーポレーションはユニマットグループとの資本、業務提携を行いました。  
今回を持ちまして、私のブログを一旦休止とさせて頂きます。 
これに付きましての主な理由はユニマットグループに入った以上一つは節目、一つはケジメとしたいという事です。 

現在の株主構成は以下のとおり。

杉本宏之(社長)                                 20,418 20.9%
(株)ユニマット不動産                            15,787 16.2%
高橋洋二(ユニマットグループのオーナー)  8,961  9.2%
(株)ユニマットホールディング                    6,826  7.0%
(株)ユニマットライフ                                 6,826 7.0%

ユニマットといえばこのブログで以前話題にさせていただいて(こちらこちら参照)、昔のエントリにもかかわらずアクセスやコメントを細く長くいただいております。
特に初代のオーナーの「シグ片山」で検索するとトップに来るようで、ゆかりの方のコメントを数多くいただいていて、これもブログの一つの役割かと認識を新たにしています。

さて、ユニマットグループオーナーがシグ片山氏から高橋氏に変わってからは、消費者金融事業をシティグループに売却したり、オフィス用コーヒーマシン事業にJTの資本を入れたりして巧みに時代に乗っているという印象がありましたが、今回は目論見がはずれたようです。 
でも、ひょっとすると、自ら既に投資用に仕入れていた物件をエスグラントに売ったり、同社の営業力を使って個人に売ったりして元はとっているのかもしれません(全くの憶測ですが)。 そのあたり、またツッコミどころがあればふれてみたいと思います。

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地デジ選挙

2009-03-17 | まつりごと

生活給付金のつぎはテレビ買取り。

アナログTV買い取り案も、追加景気策で地デジ推進
(2009年3月16日(月)21:46 読売新聞)  

政府・与党は、2011年7月に迫った地上デジタル放送(地デジ)完全移行の実現に向け、総合的な推進策を追加景気対策に盛り込む方向で本格検討に入った。  
16日には河村官房長官が、学校など公共施設の「完全地デジ化」を検討する考えを正式に示し、公明党も、買い替えで不要になるアナログテレビを2万円で買い取るなど1兆円規模の地デジ推進策を発表した。  

公明党の地デジ推進策の柱は、国が指定する販売店で地デジ対応テレビを購入する際、不要となるアナログテレビを持ち込めば、1台2万円で買い取ってもらえるというもの。リサイクル料も国が負担する。

地デジはおろか普通のブラウン管テレビの我が家にとっては朗報なのですが、逆にこれ、買い控えを誘発しそうですね。
追加景気対策は補正予算になって国会の議決が必要になるんでしょうから、いつ成立するか読めないし、下手すれば先に総選挙になってしまうかもしれませんし。

で、総選挙に突入すると、民主党は買い取り金額を2万5千円にするとか言い出しそうですよね。
それに対抗して与党側も金額を吊り上げて、結局テレビの買い取り価格が選挙の最大の争点になったりしたら、かなり寂しいものもありそうです。

 

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『シズコさん』

2009-03-16 | 乱読日記

佐野洋子のエッセイはストレートな視線と物の言い方が好きでよく読みます。
風呂から上がって寝る前に一編読んだりすると、いい気分転換になります。

それらのエッセイとは異なり、この本は母親との関係を真正面からつづった本です。

「一度も好きでなかった」母親との小さい頃からの記憶と、痴呆になり介護施設にはいった母親に対する思い、そして母親が最期を迎えるときになって初めて母親との関係を消化できた過程がつづられています。

肉親は知らなくてもいい事を知ってしまう集団なのだ。家族だからこそ互いによくも悪くも深いくさびを打ってしまうのだろう。

ややもすれば感情過多になりがちな主題にもかかわらず、著者の視線と筆致は相変わらずまっすぐで、そこが本書を凄みのあるものにしています。

 

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