一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ボランティア保険に関する杞憂

2011-06-30 | 東日本大震災

まだ予定ははっきりしていないものの、事前の準備だけはということでボランティア保険の加入をしてきました。

あわせて、僕の世代は破傷風も含んだ3種混合ワクチンの接種をしていないとかで、2回に分けての予防接種の第一弾も完了。
(これで晴れて抗体ができたのなら来年はアフリカとかアマゾンにでも行こうか)

ボランティア保険の補償内容を見ると、掛け金の割には一般の傷害保険より保証が充実しています。

特に驚いたのが賠償責任保険の5億円という限度額。
場合によっては他人にケガをさせたり財産を壊したりということもあるので、後顧の憂いなくボランティアに専念できるようにということなのでしょうが、一般に個人が入る賠償責任保険では多分こんな高い限度額はないと思いますし、保険料は割安だと思います。

そこで、いちいち余計な心配をするのが習い性になっている私としては

これは暴力団などの保険金詐欺の対象にならないだろうか

というのが心配になります。

たとえば被災地にボランティアに行ったものの、家の片づけをしていたら泥に埋まっていた時価1000万円の壷を壊してしまったとかという請求を関係者がグルになって指摘やしないでしょうか。

特に、これは保険自体は民間の保険会社が引き受けいるものの、代理店は「㈱福祉保健サービス」という天下り臭漂う会社で(住所も(社福)全国社会福祉協議会と同じ)ところ。

上記の例のように1000万レベルだとさすがに保険会社の審査担当が出てきそうですが、数万円レベルであれば代理店の申請で通ってしまいそうです。そして代理店が当事者意識が低いのと疑義を呈したりしないし、疑義を呈してもすごまれたりするとすぐ引っ込んでしまいそうなので(そもそも地元の社会福祉協議会の人も皆人を疑わなそうな「いい人」でした)詐欺や民事介入暴力の格好のターゲットになりそうです。
保険会社も「ボランティアに水を差すのか」などと凄まれたら、比較的小額であれば通してしまうかもしれません。


いちいち性悪説に立って心配しすぎなのかもしれませんが、反社系の人はアンテナが鋭く実行力(スキーム構築力)にも富んでいるので、隙あらばと狙っているのも事実です。

杞憂で済めばいいのですが、悪者のせいで保険料が上がるのは、復旧・復興が長期戦の様相を呈している中では結構ダメージになってくると思うので。

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政権運営でゴールの枠をはずしたシュートを打っても何の責任も問われないのだが

2011-06-29 | 法律・裁判・弁護士

結論としてはちょっと違和感のある判決。  

サッカーボール避け転倒死亡 蹴った少年の親に賠償命令
(2011年6月28日12時9分 朝日新聞)  

校庭から蹴り出されたサッカーボールを避けようとして転倒した男性(死亡当時87)のバイク事故をめぐり、ボールを蹴った当時小学5年の少年(19)に過失責任があるかが問われた訴訟の判決が大阪地裁であった。(中略)
 
判決によると、少年は2004年2月、愛媛県内の公立小学校の校庭でサッカーゴールに向けてフリーキックの練習中、蹴ったボールが門扉を越えて道路へ転がり出た。バイクの男性がボールを避けようとして転び、足を骨折。その後に認知症の症状が出るようになり・・・(中略)・・・死亡した。  

少年側は「ボールをゴールに向けて普通に蹴っただけで、違法性はない」と主張したが、27日付の判決は「蹴り方によっては道路に出ることを予測できた」と指摘。「少年は未成年で法的な責任への認識はなく、両親に賠償責任がある」と判断した。そのうえでバイクの転倒と死亡との因果関係について「入院などで生活が一変した」と認定。一方で、脳の持病の影響もあったとして、請求額の約5千万円に対して賠償額は約1500万円と算出した。  

判決文を見たわけではないので詳細は不明ですが、転倒と死亡との因果関係は置くとして、転倒した男性側の過失--サッカーボールが転がってきたらブレーキをかければいいので、一般的に危険なハンドル操作による回避を選択したことやその操作の程度に過失はなかったのか--は問われてもよかったのではないかと思います。 
たとえば転がり出たサッカーボールを避けようと大型トラックが急ハンドルを切ったとしたら、トラックの運転手側に過失ありとされるでしょう。 

また、87歳の男性の自転車走行の安全性を本人の運動能力に関わらず第三者が十全に確保しなければならないものなのか--普通のたとえば家庭の主婦だったらサッカーボールが転がってきても転倒はしなかったのではないか--また、小学5年生が蹴ったボールのスピードとかバウンドの仕方(このへんは判決文を見ないとわからないのですが、ゴールのすぐ後ろに門扉があったとか、フリーキックの練習中なのでむちゃくちゃ遠くに蹴ったとかではないのでしょうから)から、道路に出たときの態様、それがどれくらい危険なものであったのか、というところも検証されるべきだったのではないかと思います。  


訴訟を提起するのは国民の権利であるので、そのこと自体の是非とか、(最近の訴訟の期間短縮を考えると)事件後数年たってなぜ、とかは問うべきではないと思うのですが、少年への影響や早期解決を考えれば、学校の(施設)管理者責任を問うて学校の賠償責任保険(多分普通の学校は入ってるんじゃないでしょうか)を付保している保険会社との間で示談による早期解決を図るというのが現実的な紛争解決の方向のように思います。

原告側に感情のこじれとか弁護士がよほど強硬な人だとかいう事情があるのでしょうか。

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楽しい節電

2011-06-24 | 原発事故・節電・原発問題

電力不足問題、消費電力のピークは暑さがピークになる13時~15時と予測されていたが、実際は16時台が一番電力消費が大きかったらしい。

家庭では子供や主婦が家に戻ってエアコンをつけたり、会社でも外出者が戻ってきてパソコンを起動させたり空調の我慢が限界に達した頃だったりするからだとか。

勤務先でも節電のお達しが来たのだが、前者一律のためにルールが杓子定規にならざるを得ないということはわからなくはないが、目的が「節電」でなく「我慢」「自粛」になってしまっている感じがする。
ゲーム感覚で楽しんでやらないと「やらされ感」ばかりつのって生産性が落ちると思うんだけど。

そこで考えたアイデアをいくつか

  • 部署ごとに時間帯ごとの目標消費電力を設定して内訳は好きにさせる。
    そもそも使用電力の削減といってもピーク時電力のカットが重要なのだから、早朝とか夜間まで照明を減らす必要もないし、また部署の仕事内容やオフィスのレイアウトによって執務環境における空調と照明の影響が違うので、そこは各部署の裁量に任せたほうがいい。電気の子メーターくらい簡単につけられそうだし。
  • いっそのこと勤務時間帯も部署ごとの裁量制にする
    就業規則や労働協約の問題はあるだろうけど、取引先の関係や季節的な繁閑でお盆シーズンは開店休業状態のところとはまとめて休みにするとか、8月は全般的に暇であれば月水金は半ドンにするとかを部署ごとに決められるようにしたらいいのではないだろうか。
    もっと極端には、6時始業12時終業にして空調を効かせて効率よく仕事するとか。
  • 執務室の温度をいくつかに分け、自由に部屋を選べるようにする。
    全社フリーアドレスにするのが前提ですが、若い女性ほど通勤時に薄着でしかも寒がりだったりするので設定温度の高い部屋に集まる→男も集まる→結果的に設定温度の高い部屋の割合が増える、となるのではないかと。
  • 執務室内裸足可とする
    体感温度的には効果あると思うのですが、足が臭い奴の扱いとか靴をはいていると「シークレットシューズ疑惑」にさらされるなど、社内の人間関係に悪影響を及ぼすかもしれない。
  • 役員への説明をポイント制にする
    大概役員室は上の階にあるので、エレベーターを使うのは節電に良くない。なので役員とのアポ1回あたり何ポイントとポイント制にして、それ以上は階段を使わなければいけないようにする。そうすれば説明も効率よく行なうことになるし、メールでの連絡で代替すればITに苦手な役員のスキルアップにもなるはず。
    ただし茶坊主が多い会社は、汗をかきかき「馳せ参じました!」という輩が増えて逆効果か・・・

供給側、需要側とも全然スマートじゃないw

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2020年、20%

2011-06-22 | 原発事故・節電・原発問題

今週号の東洋経済の寺島実郎氏へのインタビュー。
菅直人首相がG8で2020年までの出来るだけ早い時期に自然エネルギーの割合を20%を目指すとした発言について「中途半端」だと指摘しています。  

 そもそも昨年6月に発表したエネルギー基本政策においてさえ、30年には再生可能エネルギーの比率を2割に引き上げるとしていた。・・・つまり昨年のエネルギー基本計画は一方で30年までに原発の比率を50%に引き上げるとしていた。それが今回の事故で後退し、逆立ちしても25%が限度、現実的には20%ぐらいだろう。その差の30%を何で埋めるのか。
 それは化石燃料か再生可能エネルギーしかないわけだからその半分を埋めるとして再生可能エネルギーは35%になっていないとつじつまが合わない。残り15%を化石燃料で賄うとしても、中東情勢も考えれば今よりもさらに化石燃料比率を高めてやっていけるのかどうか。・・・少なくとも30%以上を目標にしてパラダイム転換をしていかなければ、20%目標さえ達成できないのではないか。  

政府が策定した平成22年6月のエネルギー基本計画を見ると  

電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%(2020年には約50%以上)とする5。(現状34%)
(第2章 第1節 2030 年に向けた目標 2)

とあります。  

寺島氏の指摘する原子力比率50%というのは基本計画には見当たらなかったのですが、それが正しいとすると、2030年の時点で水力+新エネルギー(*)で20%、水力(8%)が横ばいだとすると新エネルギーのシェア12%を目指すのが当初の政府の計画だったことになります。

* 基本計画では「再生可能エネルギー」の中に水力発電も入れています(p23参照)。そこで以下太陽光発電などのいわゆる自然エネルギーについては区別のために以下「新エネルギー」と言います。  

一方で2020年の「原子力+再生可能エネルギーで50%」という目標については、今回の事故の影響による原発のシェア低下を供給量の5%(=事故前の原発の発電量の1/5)と想定すると、水力が横ばいとして新エネルギーのシェアを20%にすれば確かに帳尻は合います。  
菅首相もそのへんを念頭において言っているのかもしれません。  

少なくとも昨年のエネルギー基本計画では「2030年までに新エネルギー12%増」という目標は掲げていたわけなので、それが絵に描いた餅でなかったとすれば、思いっきり政策誘導をすれば「2020年、20%」という目標は全く不可能とまでは言えないかもしれません。(ちなみに電気事業連合会のサイトによれば2009年時点では原子力29%、水力8%、新エネルギー1%の合計38%となっていますので原発の発電量が現状維持(福島の分他の原発の稼働率を上げることになりますが)なら新エネルギーは12%増ということで計画を10年前倒しすれば達成できる計算です。) 

ただし、基本計画における新エネルギーがが京都議定書やらなんやらに配慮したお化粧で、「結局新エネルギーは難しいので原発を推進しよう」と経産省が錦の御旗にするためのものだったりすると話は違ってきますけど・・・  


また、基本計画は、その前文にあるように「資源エネルギーの安定供給に係る内外の制約が一層深刻化」しているという認識があり、「化石燃料発電のシェアを減らす」ことも目的のひとつになっています。
とすると、電力の安定供給のためには2030年までにさらにプラス20%を上積みしなければならず、そこまで考えると寺島氏の言うようにパラダイム転換が必要になりますね。  

もっともパラダイム転換といっても「2030年で新エネルギー40%」は相当遠大な目標なので、うち10~15%くらいは火力発電の効率化や先安感があるらしいLNGの利用などに受け持ってもらう必要がありそうです。  


菅首相の思いつきだか腰だめの数字は脇に置くとして、せっかくエネルギー基本計画があるんだから、暫定数値でもいいから土台になるものを早めに提示して現実的な目標設定に向けて議論を深めた方がいいと思います。

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ガス管から水

2011-06-21 | 天災・人災

現象に名前がついているくらいなので「想定外」ではなかったのでしょうが。

ガス管損傷:8300世帯使用できず 水道管破裂で 京都
(2011年6月20日 12時17分 毎日新聞) 

・・・破裂現場周辺の住宅ではガス管から水が噴き出す現象もあった。同局や大ガスによると、水道管が老朽化による腐食で破裂。勢いで砂や小石がガス管を損傷させる「サンドブラスト現象」が起きたとみられる。  

今回の大震災と福島原発事故でインフラの複線化の重要性が再認識された一方で、燃料電池などのガス装置の一部は停電またはブラックアウトの状態では使えないこともわかったのですが、ガス管と水道管が一緒に埋設されているとこのようなリスクがあったんですね。 

停電に備えて単独で起動できるコジェネなどを入れたとしても、機械の中に水が入ってしまったら機械が壊れてガスが復旧したとしても使えなくなってしまうのですが、ガス管までのバックアップはさすがに取りようがありません。  

日本のインフラって、高度成長期に構築したものが更新期を迎えたものの財政事情などで更新投資ができずに実はけっこう劣化しているのではないかちょっと心配になったニュースでした。

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『誰も教えてくれなかった運とツキの法則』

2011-06-19 | 乱読日記

ここのところ体調が優れない割りに(主に夜の)予定がつまっていたので、簡単に読めそうな本ということで選択。

著者クレディセゾンの社長で、西武百貨店から当時の西武クレジット(元は「緑屋」という割賦販売店で、今の渋谷Primeのところに店がありましたね)に転じ、セゾンカードを成長させた立役者のようです。

面白かったのは「ツキ」についての第1章と第2章の前半部分。他のビジネス書でも触れられている教訓を実体験などに即して語りなおした感じです。

ツキの流れをどう感じるか、その精度をどう高めるか、ツキを呼び込むにはどうするか、というあたりの話ですね。歳をとると自分のスタイルというのはある程度出来上がってくるので、著者と自分のスタイルの違いを考えながら読みました。

ツキの流れを見極めることとツキがないときにおいても「勝つんだ」という強い信念をもち続け流れを変えることの重要性はその通りだと思います。

問題は流れを読み間違ったときに信念が蛮勇に変わってしまうこと。

運とツキの流れを見て、勝てると判断した。だから俺は勝てるのだ。そう思っている人間は、どんな困難にもぶつかっていけるのです。そして、100%の力を発揮して、南極を乗り越え、苦しさを逆にエネルギーに変えてしまうのです。

というものの、個人の人生ならともかく、事業の場合は当初のストーリーが破綻しても「後戻りできない」と突き進んで傷口を広げれてしまうということもよくあるので、「勝つんだという信念」と「流れを読む」ことの両立が一番大事なんですよね。
著者もそのへんは百も承知で「麻雀に見る勝ち負けの法則」という囲み記事でこう書いています。

麻雀に強い人の特徴:勝負する手と下りる手を適度に混合する。基本は防御。
著者の解説:運の流れを変えるものが何であるかを経験的に知っている。
麻雀に弱い人の特徴:どんな手でも上がろうとする。安い手でも下りない。

信念を優先させすぎてしまった悪い例が昔の帝国陸軍だったり、ちょっと前のファンドバブルのときの投資をしないとボーナスが貰えないどころか首になりかねないファンドの投資担当者だったり(確かに強気でないとスポンサーを集まらないとか、そういう運用者を雇った投資家の自己責任という部分もあるのですが)。

そこが難しいから幾多のビジネス書やコンサルタントが商売になるわけですが。

 

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『生き残る判断 生き残れない行動』

2011-06-13 | 乱読日記

災害や事件・事故などにおいて、極度の緊張状態の下で人間はどのような行動をとるか、生死をわけた要因はなんだったのかについて、生存者や研究者に取材した本です。

まずは人間は災害に遭うと、まずはいろいろな独創的な方法でその状況を否認します。
そこから立ち直るとつぎに思考を巡らせますが、その思考は平常時とは全く異なったものになります。
そしてそのバイアスのかかった思考によって得た選択肢の中から、生死を分けることになる行動を選択することになります。
本書はそれぞれの段階で何が起きるか、人によってどのように異なるのかを詳しく検討します。

そこでは人々の行動は一般に考えられているようなものとは大きく異なることがわかります。

東日本大震災の後の日本人の整然とした行動が話題になりましたが、大災害に直面するとすべての人がパニックになるわけではなく、逆に礼儀正しい行動や緩慢な動作(それが避難の遅れにつながることもある)が良く見られる特徴であるともいいます。

本書によると、スリーマイル島事故のときの避難や、第二に世界大戦下ドイツによる空襲を受けたロンドン市民もパニックは起こさなかったことが紹介されています。


緊張状態において人間がどのような反応をしがちであるか、そしてそれがどのような結果に結びつくかについて知っていることは、自分が異常な状態にあることを認識し、そこから立ち直りやすくなるためには十分意味があると思います。

そして本書は、一番有効な対策として「十分な準備と訓練」をあげています。
つまり、いざというときに考えるのを停止したり余計なことを考えたり誤った判断をするかわりに、反射的に行動に移せるように日頃から訓練しておくことが身を助けることにつながるといいます。  

・・・軍隊の訓練で、人間性についてのわかりやすい原則、本書の中核をなす教訓を得ていた。それは、極度のストレスの下で脳を働かせる最上の方法は、あらかじめ何度も繰り返して練習をすることである、というものだ。あるいは軍隊が言っているように、「8つのP」すなわち、「適切な事前の計画と準備は、最悪の行動を防ぐ(Proper prior planning and preparation prevents piss-poor performance.)」である。  

「技術とは意識下で何かを反射的に行なう能力のことなのです。考える必要はありません。プログラムに組み込まれていますから。どのように身につけるか?繰り返しによって、しかるべきことを練習することによって、身につけるんです。習得する唯一の方法は--反応の段階で--プログラムに組み込むことです」

具体的には、
・恐怖の対象について知り・リスクについて感情でなく事実やデータに基づいて判断する・起こりうるリスクに対して計画的に準備する
・脳のために予行演習をする(できるだけ家族や近所の人々、職場の人々と一緒に)
ことによって、災害に当たって恐怖を減らし、適切な行動を取りやすくなります。

今回の震災でも、犠牲者や被害だけでなく生き延びた人に焦点をあてて、なぜ生き延びることができたのか、津波を逃れて迅速に避難をすることができたのかを今後の教訓にするような研究・報道を今後に期待したいと思います。  


最後に、企業や行政の側の人間に対する示唆。  

今回の原発事故でも見られたのですが、パニックや法的責任への恐怖は、企業や行政などの専門家が生死にかかわる情報を一般の人々に公開しないことの都合のいい言い訳になっていると著者は指摘しています。  

不確実な情報しか得られないせいで、善良な人々はお互いに助け合うことができない。そうした不安は、また一般の人々と彼らを守るはずの人々との関係に悪影響を及ぼす。難解な法律用語から成る一行一行が不信感を引きおこすのだ。  

この情報統制と不安と不信の連鎖のメカニズムは十分注意すべき問題だと思います。  

また(特にアメリカでは)言いがかりのような訴訟も起きているものの、問題は責任ある立場の人々が法的責任について誤解していることにあるといいます。  

「ほとんどの恐怖と同様に、法的責任に対する恐怖は私の考えでは主として無知に基づいているものだ。(・・・そしてその)無知は、彼らに助言する弁護士の無知と関連している」(危機管理法の専門家でインディアナ州危機管理事務所の元最高顧問弁護士の言)  

実際に、たいていの政府職員はしっかりした訓練を受けて誠心誠意仕事をしていれば、訴訟から守られる。

後段は日本においても同様で、その程度には法律や裁判所の判断は信頼してもいいと思います。(その意味では、東京電力の経営陣に対する法的責任の追及がなされた場合に、今後過度の萎縮の連鎖を招かぬよう、裁判所として冷静中立な判断をしてもらいたいと思います。)  

2009年発行の本ですが、今回の震災の経験をふまえて読んでみると、一層有益だと思います。 

 

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リスク分担とインセンティブのずれ

2011-06-10 | 原発事故・節電・原発問題
関西電力:大企業などに15%節電要請へ…猛暑対策

定期検査中の原発の再稼働に地元の福井県の同意が必要になっていて、県側は安全性の確認に慎重になっているために再稼動のめどが立っていないことが理由です。

この地元合意の条件は当初は情感処理的な意味だったのかもしれませんが、今になっては県知事に安全性確認の責任を負わせることになってしまっているので、知事としては再稼動に合意しにくいという構造になってしまっています。

多分経済界からは「早期復興、景気回復のためにも電力供給の安定を」というような要望が出されると思いますが、原発の地元にとってみれば自分のだけがリスクを負って企業業績や景気回復を支える義理や責任までははないと言うでしょう。

それなら国が安全措置や地元への補助金や万が一のときの補償制度を充実すべ
き、と企業側は主張することになります。

一方で企業は、今回の震災を機にサプライチェーンの見直しをする、といっています。
となると、大規模地震のときにリスクの大きい原発周辺の生産拠点は分散の対象になり、さらに原発の地元の経済にとってはマイナスになります。

「原発を再開するなら地元企業や地元に進出している企業に優先的に供給する」というようなことが出来ればいいのでしょうが、発送電分離をしてもそこまでは出来ないのではないかと思います。(それとも「スマートグリッド」なら「スマート」だから出来るのかな?)
また、企業が「海外に移転するぞ」といっても、もともと生産拠点がない県には脅しは効きません。


このへんの構造的なインセンティブのずれを調整するのが本来の「政治主導」なんでしょうけど、当分無理そうですな・・・


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エコの道は遠し

2011-06-09 | よしなしごと
勤務先でもご他聞にもれず紙コップに変えてマイカップを使っている。

ただ、退勤時にマイカップを洗う列ができたり、皆が水を流すのも無駄な感じがする。(それにろくに洗わない不衛生な輩もいる)

そこで、食器洗い器を導入して全員の分をまとめて洗ったほうが環境負荷が少ないのではと提案した。


ところが、これに対して若手女性社員から反対の声が。

曰く、自分の食器をオジサン連中の食器と一緒に洗うのは嫌だ。

子供の頃から洗濯物を父親のパンツと一緒に洗うのは嫌だと言って育った世代に違いない。


節電やエコと言っても「豊かな生活」で作られた習慣や価値観を変えるのは難しい。


一方で、ブームになれば、建物の築年数や予定居住期間に関係なく10年もの寿命のLED電球を買ってしまうのだから面白いけど。

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犯罪における所有と経営の分離

2011-06-07 | よしなしごと

6億円強奪事件の展開を見ると、実行犯と絵図を描いた奴が違うという構造、実行犯レベルで刑事訴追の遮断ができている、とか、現場で手を汚さない連中が優先配当を受けるという意味では、ストラクチャード・ファイナンスに似ているかもしれない(現場の最劣後の部分の取り分が少なすぎるという意味でもw)

6億円強奪:植木容疑者「金奪った」 関与認める供述  

渡辺容疑者が現金の運搬役だったとみられるが、2人は事件直前まで面識がなかったとみられ、暴力団関係者を含むグループが引き合わせた可能性が高い。  

浮かび上がってくるのが

  • 暴力団関係者(仮にXとする)が警備会社の手薄な状況を知って計画をたてる
  • 実行犯としてお互いに面識のない2人(AとB)をスカウト
  • Xは計画をAとBに伝授するとともに前金と必要な機材(偽のナンバープレート、連絡用の携帯電話等)を提供。
  • ABが犯行を実行。
  • ABは強奪した現金をXに渡し、報酬を足のつかない現金で受け取る(またはしばらくした後に残金を払う約束)

というような構図。
さらに

  • XがABに「もしつかまっても俺のことをバラしたら、刑務所内や出所後にひどい目に遭わせるぞ」というような脅しをする
  • 「出所後に残りの報酬に金利をつけて渡してやる」

などと約束しているという可能性も高い 。

そうすると、ABとしてもXについて証言すれば(本人や家族の)身に危険が及ぶ可能性があるので、ここは刑に服して(空手形になるかもしれないが)出所後の見返りを期待するインセンティブが生じる。 
その結果、Xはあまりリスクを負わずに強奪資金を他に入れることが出来る。

暴力団関係者への締め付けが強くなっている中で、今後この手の犯罪は増えるように思える。

これらに対抗するには、ABにXとのつながりを証言するインセンティブを与えるような仕組みを考える必要があるのではないか。  
具体的には、黒幕Xの情報を提供することで実行犯ABの罪を軽減できるような司法取引と、ABがXからの仕返しを避けて安全に過ごせるような証人保護プログラムが有効だと思う。  

もっとも私はこれらについて映画や小説の中でしか知らないので、たとえば司法取引については検察による有罪証言への誘導や偽証のリスクなどのデメリットもありそうだし、日本のような狭い国の中で証人保護プログラムが有効か、という問題もあるだろう。  

ただ、高度化する犯罪者の手口に対抗するなんらかの道具立ては検討する必要があるように思う。


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おかいもの♪

2011-06-06 | 動画・画像

google デスクトップが掘り出してきた画像。







昔、車両工場を見学したときに撮った、電車のブレーキパッドなんだけど、なんとなく西武百貨店の「おかいものクマ」に見えた。




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「一定の目処」戦略

2011-06-03 | よしなしごと

今日はゴルフ。
4ヶ月ぶりだったので先週末練習に行ったら案の定ボロボロで先が思いやられたのだが、昨日ずっとニュースで「一定の目処」が繰り返されるのを聞いて、ふと思った。

そもそも下手な上に久しぶりなんだから、「ナイスショット」を目指すのでなく、「一定の目処が立つ程度」を目標にしたほうが大怪我しないんじゃないか

実際この言葉、使ってみるとなかなか秀逸で、「力まない」「欲を出さない」「挽回しようと無理しない」というあたりを一言で表わすことができる。
ネタにしながら念仏のように唱えていると、淡々とスコアがまとまる。

これが職責からのプレッシャーをいなしながら地位を維持するノウハウなのか、などと妙に関心。


ただ、1m未満のパットを3つもはずすなど、詰めの甘いところも伝染してしまったようなのが残念。

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渋沢栄一『論語と算盤』、鹿島茂『渋沢栄一』

2011-06-02 | 乱読日記

昨年あたりから再評価されだした渋沢栄一の『論語と算盤』を一読したのですが、そこで語られていることは、いちいちなるほど、と納得するものの、個々の切り口は他の人も語り口を変えながら言っていることも多く、確かに実績としては明治の日本の実業界を作ったといってもいい渋沢栄一とはいえ、今ブームになるほどその時代または論語まで遡る必要があるのか、そこまで現在は寄るすべがない世の中なのか、という点については少し疑問でした。

そこで見つけたのが、鹿島茂氏の書いた渋沢栄一の伝記。
鹿島茂氏は以前取り上げた『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』でその対象への愛情を持った接近の仕方、史料探しの熱意、語り口の明快さに感銘を受けたので、早速購入。


本書は雑誌の連載を元にしていますが、連載も雑誌の廃刊等で中断を重ね、紆余曲折を経て連載開始から18年後の昨年出版されたものです。
「論語篇」「算盤篇」それぞれ500ページ弱の大著。

過去既に数多くの伝記が書かれている渋沢栄一の伝記を何故書くのかについて、著者は前書きでこう語っています。  

では、ここでひとつ問うてみることにしよう。 
ドラッカーのいうような奇跡を日本の資本主義にもたらした渋沢栄一とはどのような人物であり、また彼はいかにして「損して得取れ」という偉大なる「思想」を「事前的」に体得することができたのかと?  

現在から遡って業績を評価するのは簡単ですが、江戸末期に武蔵国の片田舎に生まれた渋沢栄一だけがこの業績を成し遂げたのか、「論語と算盤」の思想はどこで生まれたのか、それは渋沢栄一の業績の原因なのか結果から導かれたのか、はたまたそれ以外の関係なのか、ブームになってバイブルになってしまった『論語と算盤』についての違和感を解き明かしてくれそうです。  

著者は続けます。  

私がこれから示そうとする渋沢伝は、渋沢にのみ可能になったこの「事前性」の由来を、幕臣だった渋沢がパリで出会ったサン=シモン主義という新しい光源の助けを借りて解明しようという試みである。  

ここで奇しくも前掲『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』とつながってきます。 

著者は第二帝政には思い入れがあり、本書でも渋沢栄一からはなれて、しばし当時のフランスの事情について語っています(前掲書の併読はおすすめ)  


さて、「論語と算盤」の思想について、著者は「儒教で育った明治人に共通するものでは決してない」と言います。  

「論語」と「算盤」の関係において、もうひとつ注意しておかなければならないのは、渋沢が、日本における「算盤」オンリーの考え方、つまり利己的な利潤追求は、「論語」オンリーの考え方の反動として生まれてきたという解釈をとっていることである。  

渋沢は、自己本位の利潤追求はかえって、自己の利益を妨げるという資本主義のパラドックスを十分に理解した上で、論語に基礎を置く「算盤」を主張しているのである。  

つまり、明治の時代に一般的だった思想を渋沢栄一が一番よく具現化した、というものではなく、渋沢栄一のオリジナルの思想だということです。  

「論語」と「算盤」の調和というこの思想は、東西の文明が例外的に出会って一つに融合した、「渋沢というメルティングポット」から生まれた一種の奇跡といってさしつかえないからである。  

このへんの鹿島節はいいですね。


もっとも本書は「論語と算盤」の思想のみにフォーカスしているのではありません。

海運会社をめぐる争いから渋沢栄一と岩崎弥太郎の事業に対するスタンスの違いを浮き彫りにしたり、私生活では発展家であった渋沢について触れるなど、その人間像を見事に浮き彫りにしています。  

大部ですがぜひ一読をお勧めします。


最後に、本書で紹介されている息子渋沢秀雄が書き留めた母(兼子、渋沢栄一の妻)の言葉を紹介します。  

「・・・母も晩年には悟ったらしく、論語に性道徳の教訓が殆どないのを知って、笑いながら私にこう言ったものだ。『父様も論語とは旨いものを見つけなすったよ。あれが聖書だったら、てんで教えが守れないものね!』」









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ババ抜き、その後

2011-06-01 | あきなひ

最初は「あれ、またTMKが破産だわい」と思ったのですが。

特定目的会社芦屋シニアレジデンス 破産開始決定 / 負債総額 約99億4400万円

不動産所有の特定目的会社。不動産開発会社である(株)ゼクスが企画開発した介護付有料老人ホーム「チャーミング・スクウェア芦屋」の施設不動産(総数578室)を取得し、直接の運営は外部企業に委託していた。ただ、不動産取得前から課題であった施設入居率の低さは最近においても一向に改善せず、投資に関わる費用が重荷となり経営は安定性を欠いていた。入居者からも今後のサービスの安定、経営の堅実性に対しての懸念が囁かれる中、事業の再構築を意図した債権者から破産を申し立てられ、当措置に至った。

なお、「チャーミング・スクウェア芦屋」は別途運営法人とスポンサーによって今後も運営は継続される。

ゼクスの介護ビジネスのその後は何回か取り上げたことがあります。
馬事公苑の高級施設はグッドウィルともめたあと結局東急不動産が買って、グランクレール馬事公苑というシニアレジデンスになってます(経緯は過去のエントリをご参照)。
そしてその他はジェイ・ウィル・パートナーズが引き継いでいました。
たまたま今月「ジェイ・ウィル・パートナーズ」で検索してくる人が増えたこともあり「ババ抜き」などという失礼なタイトルが当たってしまったのかと思ったのですが、調べてみると、この物件はジェイ・ウィル・パートナーズは買わなかったようです。

チャーミングスクウェア芦屋売却、土地含め115億円で富士薬品に・・・ゼクス  

さらに兵庫県芦屋市の「チャーミング・スクウェア芦屋」については、9月30日に設立される運営会社(法人名は施設名と同じ)ごと、医薬品の製造や配置販売事業、ドラッグストア運営で知られる富士薬品(埼玉県さいたま市)へと譲渡することを発表した。譲渡予定日は、会社分割と同じ9月30日。なお、富士薬品は特定目的会社芦屋シニアレジデンスを100%出資で設立し、土地および建物を115億円(税込)で取得した。決済は9月3日に完了している。  

富士薬品は1930年創業の老舗。平成20年3月期の売上は1367億4200万円。一般家庭を対象にした配置薬事業で全国350万件を顧客として抱えるほか、ドラグストア「セイムス」を展開している。また、ここ数年はM&Aにも積極的に取り組んでいる。  

「チャーミング・スクウェア芦屋」は昨年3月1日に開設した総戸数578室の大型シニア住宅。ただし、山の上に行けば行くほど高級住宅地になっている芦屋市で海岸沿いに建設したことで地元の富裕層が入居に対して消極的になったことやゼクスの認知度が関西ではそれほど高くなかったことから入居状況については苦戦が伝えられていた。  

となると代わりにババをつかんだのは富士薬品という会社だったようです。 

ただ、「事業の再構築を意図した債権者から破産を申し立てられ」「運営法人とスポンサーによって今後も運営は継続される」とあるので富士薬品は債権者で他にエクイティ出資者がいたのかもしれません。 
でも、富士薬品が投資家を必要とする感じもなさそうですし、もともと富士薬品はTMKで買うつもりもなかったのでこれを機に本体で取得して立て直そうとしているのではないかと推測。


ところで、ケアつきマンションはランニングコストがかかるうえに預託金を高くするにも限度があるので、初期投資をできるだけ抑えないと一般的に採算は苦しいようです。
なので、遊休化した社宅などを安く買い取って改装したり、経営が立ち行かなくなった施設を引き受けて運営の効率化によって収益を上げる、または施設は地主などに持ってもらって自分は運営に特化するというようなパターンが多いようです。
今回は既存の施設を買収して参入、というところまではよかったのですが、115億という価格が高すぎたのでしょう。

ただこのビジネス、現状では自社の遊休地の利用とか、既存の経営資源の流用ができるとか、はたまた新規事業としてとりあえずやってみる、というような「特殊解」の事業者が多いようです。ただ、そろそろ収支構造の「一般解」を確立しないと、何が「ババ」かもわからないので新規参入が増えず、結果公的施設への依存が続いて施設不足は解消しない(または税金が際限なく投入される)ままになってしまいます。
なので、富士薬品も本業はしっかりしているようなので、ぜひ再建をがんばってほしいものです。


ところで弁護士に転じ、一時債務整理のTVCMを流していた浜田卓二郎センセイが本件の申立て代理人になってます。
さすが地元埼玉には強いというところでしょうか。

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