一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

歯石除去(つづき)

2006-05-31 | おイヌさま
昨日の犬の歯石除去のつづきです。

歯石除去といっても犬がおとなしく口をあけているはずもなく、麻酔をかけて行います。
麻酔はガスを使った比較的軽いものらしいのですが、事前に血液検査をし(イヌ・ネコの血液検査正常値参照。検査項目毎の詳細の解説と人間の正常値との比較あったて面白いです)点滴と酸素の補給などで体調管理をしながら行うようです。

一方で獣医は人間と違い専門の麻酔医というのがいないので麻酔の事故も多く、麻酔のリスクを負ってまで歯石をとる必要はない、という意見もあります(こちら参照)
確かに心配はしたのですが、見せられた歯茎の状態が確かによくなさそうだったのでお願いすることにしました。

おかげさまで帰ってきてからも食欲もあり、元気でやっています。
見た目にはきれいになりましたし、歯茎の状態は暫く立てば健康になってくると思います(変わらないのであればもう歯石除去はやりません)



実は私は永久歯になってから虫歯になったことがなく、そのおかげで15年くらい前に親不知を抜いた以外は歯医者に行った事がありませんでした。

知り合いの歯医者にそれを自慢したところ、人によって口中細菌のタイプが違うので(「菌相」って言ったかな?)、虫歯になりにくい人は逆に歯槽膿漏になりやすいから、歯石を取った方がいいと脅され、歯石を取りにいきました。

実際に歯石を取ってくれた美人かつ職人肌の歯科衛生士に「久しぶりにやりがいがあります」とお褒めに預かり、除去に4,5回かけたときの自分の歯茎の状態と今回の犬の歯茎の状態が似ていたんですよね。それが決断のきっかけでした。


私のときは保険診療だったのですが、自己負担から総額(5000円くらいだったか)を逆算すると、やっぱり2,3万にはなるんですね。

健康保険さまさま、です。
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@930

2006-05-30 | M&A
阪急ホールディングス株式会社と阪神電気鉄道株式会社の株式交換による経営統合ならびに公開買付けの実施に関するお知らせ

大旦那風の収拾策、ということでしょうか。


さすが天下の阪急、足元を見るとか持久戦に持ち込むという作戦は取りませんでしたね。
価格も時価近くまで買いあがってますし(企業価値評価のレポートは公開されないでしょうが見てみたいです)。

そのあとの株式交換比率が阪神側に不利に設定しているところはちょいと強圧風ですが、この「強圧」は現状で1/3超保有して拒否権を持っている村上ファンドには効果ないので、一般株主へのプレッシャーになりますね。
最後は村上ファンドが売らなくても55:45で多数を取ろう、という作戦かしら。

あと、村上ファンドがTOBに応じたとしても、今度の定時総会での議決権は手元に残るというあたりもちょっとした波乱要因かもしれません。

個人的にはもっとゴリゴリやってほしかったのですが、阪神電鉄の経営陣が持たなかった、ということなんでしょう。
私なら「そんなのは経営陣の身から出た錆だ」と思ってしまいますが、あえてそれを助けるというのがやはり大店(おおだな)の大店たる所以だと思います(株主がどう思うのかはわかりませんが)
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歯石除去

2006-05-30 | おイヌさま

先日犬をワクチンの接種に連れて行ったところ、歯石が溜まっていて歯槽膿漏になりかけなので、歯石除去をしたほうがいい、と言われました。

そんなことあるのか、単なる営業トークじゃないか、という思いを見透かされたように、歯を見せられたら確かに相当鬱血しています。

ということで、週末歯石を取りに獣医さんのところへ。

しかし、犬なのでおとなしく口をあけているわけではなく、麻酔をかけて眠っているうちに歯石を取るとのこと。

食事は前日夜8時まで、水は当日朝8時までと、人間ドックなみ。

で、午前中に持ち込んで、処置+麻酔からの回復を待って夕方引き取りに。

迎えに行くと、犬本人は記憶がないせいか、けっこう平気でいます。

獣医さんの説明によると、一番奥の歯が歯槽膿漏が進行してグラグラしていたので抜歯したとのこと。
抜歯した現物はこちら



予想以上に根っこが浅いですね

ホントに根っこから抜いたのかなとも思うのですが、もともと顎が小さいからこんなもんなんでしょう。
特に小型犬は歯も小さいので歯槽膿漏などに弱いらしいです。

ペットのデンタルケアという概念自体が最近の考えなので、日常のメンテナンスも「毎日歯を磨いてあげる」とか程度しかないそうで、でもそんなの無理だよな・・・

獣医さん曰く、4歳にしては歯石も少ない方だったということなので、また数年したら取りに来ればいいかと思いつつ、会計をしたら

39,375円也

保険がきかないうえに麻酔だ何だということもあるにしても、自転車1台分orz(←まだ引きずってる)

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著作権侵害という主張が野暮になるとき

2006-05-29 | あきなひ

以前コメントをいただいたまついさんのblogで「児童書四者懇談会」なる団体が絵本などの読み聞かせ・お話会が著作権侵害にあたりうるとしてガイドラインを作ったという話を知りました。
ガイドラインの内容はこちら「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」

著作権のことは(も)詳しくないのですが、確かに形態によっては「お話会」も形式的には著作権侵害になるのかもしれないとしても、このようなガイドラインがどんな意味があるかぎ門に思います。
絵本はマスコミに取り上げられてベストセラーになることはめったにないでしょうし、読み聞かせ・お話会で取り上げられた方が「じゃあ買って家でも読もうか」と思う人が多いんじゃないでしょうか。

妙な脚色をされては困るというような著作者人格権の主張ならさておき(それも読み聞かせで目くじら立てるのもどうかと思いますが)、財産権としての著作権は財産の経済価値を高める方向に使わないといけないと思います。
実際、訴えるとしても差止めは出来るかもしれませんが、損害賠償は損害額の立証が難しいと思うのですけど・・・


似たように著作権に関して、権利を硬直的に主張することで妙な展開になっているものとして、新聞記事の二次利用の問題があります。
大手4紙は共同で使用許諾団体を作っているのですが、特に日経新聞は単独でガイドラインを作り、企業内でのネット配信やコピーの配布について独自のガイドラインでかなり厳しい事を言っています。
「日本経済新聞社からのお知らせ」をご参照ください)  

これに加え、日経は2002年8月から記事をコピーして関係部署に配る、記事クリッピング利用について印刷物で、かつ内部配布に限定したケースでは定期契約に応じます。 

イントラネットにも転載したいというご相談がありますが、ネットワーク上への複製は、許諾できません。現時点においては著作権管理面で難しい要素が多いためです。ネット上の記事検索は日経の記事データベース事業(日経テレコン21)をご利用ください。

これについて、一昨年くらいに新聞記事にもして話題になったと思うのですが、そのとき知り合いの会社がイントラネット配信を計画してどうしようかとハタと困って、クリッピング利用の定期契約の料金を日経新聞の営業の人に聞いたところ、そのとき全社で取っている日経新聞を必要最低限(たとえば部で1紙とか)に変えて定期契約した方が得だ、という試算になったそうです。

なんだかこれって新聞社が自分の首を締めてる感じがしませんか?
一方で「各戸口まで配達すること」の意義などを理由にして再販制度の特殊指定の維持を主張していることともバランスがとれないようにも思います。
(法人需要は別なのでそっちは自由価格にしてもいいということなのでしょうか)

まあこれは、新聞社が紙媒体を販売する以外のビジネスモデルを模索している一環なのでしょうが、著作権の主張をあまりに強調し、複製利用を厳格にしすぎると、かえってメディアとしての使い勝手が悪くなってしまうというジレンマに陥りかけているような感じがします。


「著作権を守る」といっても、商売としては最初から守りに入るのではなく、まずは広く認知されることが必要なんじゃないでしょうか。
絵本は知られなければ売れないし、メディアも記事が読まれなければ権威にはなりません(あ、既に権威と思ってるのか・・・)。
お笑い芸人がギャグを真似されたからといって著作権(厳密に言うと著作隣接権かな)を主張するなんて野暮なことはしませんよね。
そもそもどんなに真似(複製)されてもオリジナリティを失わないくらいの強さを持ってからでないと、著作権侵害を争っても、大きなビジネスにはならないんじゃないかと思います。

「著作権侵害」と主張される中には、(売名目的のような言いがかりを除いて、本人が真面目になっているものの限定したとしても)野暮、大人気ない、ビジネスセンスがない、というような主張がけっこうあるような感じがします。

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(企業)倫理ってこういうことか

2006-05-28 | コンプライアンス・コーポレートガバナンス

先日紹介した「インターネット持仏堂」の2巻目で「倫理」についての話が出てきます。

そもそもは「救済」という霊的次元(個人)の問題と「倫理」という政治(関係性)の問題をどうとらえるか、特定の宗教が国家を支配したり国家に公認されていたりすれば解決するんだけどまあ、それは歴史的にはうまくいかなかったわけだし、現在のカルトや原理主義的考えにどう対処していくか、というところから話は展開していきます。

そこで内田先生は

倫理(ehics)とは、誤解を恐れずに一言で言えば(誤解されるだろうなあ・・・・・・)「常識」(commonsence)のことだと私は思っています。

といいます。
すなわち、「常識」というのは根拠を示せ、と言われても示すことができない「地域限定」「期間限定」のもので、<絶対に原理にはなれない>という限定性が「常識」が「倫理」でありうるポイントだとします。

つまり、「倫理」は「どの共同体も固有のルールを持っているが、そのルールを他の共同体に汎用的に適用する事はできない」という限定そのものに担保されているということです。
「私にとっての『当たり前はあなたにとっての『当たり前』ではない」ということ。それが倫理の倫理性を構築しています。

さらに、すべての社会集団に共通の「常識」というものはないが、「常識」を持たない社会集団はない、という「常識」をもつことで、「倫理的なふるまい」が定まります。

同じ倫理コードを共有している人間同士のあいだでは、その共有コードに照らしてその人の言動の正邪理非を論じる事が倫理的なふるまいです。

けれども同一の倫理コードを共有しない人間が相手のときは、おのれのコードを無限定的に適用して、相手の言動の正邪理非を論じないことが今度は「倫理的なふるまい」であることになります。

つまり「倫理」というのは本質的にダブル・スタンダードなのです。
「身内」に対しては強制的に、「他者」に対しては宥和的に機能するという宿命的な「あいまいさ」が「倫理」の身上なのです。


何でこんなことを書いたかというと、ここ数日書いてきたように、個人的には会社法や金融商品取引法によってクローズアップされてきた企業の「内部統制」とか「コーポレートガバナンス」をめぐる動きに依然違和感があったからです。

「内部統制を強化しろ」といわれたので「はいはい、レビューやモニタリングやアルファベット3文字委員会を作りますよ」という企業側の対応もちょいと情けないと思う一方で、「財務諸表の正確性を確保するための内部統制システムについて会計監査人に監査させろ」という金融商品取引法(の「日本版SOX法」と言われている部分)の「正しさの押し付け」ともとれるやり方が企業活動に(特にコストや機動性の面で)与えるマイナス(や、それで本当に粉飾決算なりが減るのか)を考慮しても資本市場全体にとって本当にプラスになるのか、というのが今ひとつ頭の整理がついていなかったわけです。

その中で、上の「倫理」についての考え方を援用すると、企業倫理をめぐる私の問題意識がある程度整理されるように思います。

会社法対応において「情けない」ふるまいをする企業は、会社がどうあるべきという「身内に対して強制的に」働く(企業ごとの)倫理(常識)が弱い、またはそういうものの必要性を認識していない、ということなんでしょう。

一方である事象をとらえて企業全体を「バッシング」する動きや画一的に規制すれば世の中が良くなる、という発想も短絡的なわけです。
(会社法や金融商品取引法は法律であって経典ではないので、とりあえずやってみて不具合があったら修正していくというメカニズムが働くのであれば、規制自体が悪いという事ではないとは思います)


つまり「企業倫理」のありようは、あまりに画一的なものでは機能せず個々の企業にとって「宥和的」である必要がある反面、個々の企業においても、自己の(内部規律としての)行動原理だけにこだわるのでなく、自分の属する(または参入したいと思う)集団の「常識」を尊重することが求められる、ということなんだと思います。
(消費者金融をめぐる与謝野担当大臣の発言と、厳しい取り立てノルマを科していたアイフルのの例を考えるといいと思います。)


それこそ「そんなこと常識じゃないか」と言われるかもしれませんが、「内部には強制的に、外部には宥和的に」という部分が「腑に落ちた」もので。

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ひき逃げ事件への対応について佐賀県警に学ぶ

2006-05-27 | コンプライアンス・コーポレートガバナンス

佐賀ひき逃げ事件、警察本部長が謝罪
(2006年 5月25日 (木) 12:39 読売新聞)  

佐賀県唐津市厳木(きゅうらぎ)町で、厳木小広川分校5年家原毅(つよし)君(11)がひき逃げされ、重傷のまま放置された事件で、県警の御手洗伸太郎本部長は25日の定例会見で、「結果として容疑者は逃走し、家族や周辺住民に不安感を与えてしまい、申し訳なく思う。今後は事件の解決に全力を尽くしたい」と謝罪した。  

御手洗本部長は会見で、道交法違反(ひき逃げ)などの容疑で24日に逮捕した唐津市船宮町、土木作業員坂口三之治(さのじ)容疑者(53)をいったん取り逃がしたことについて釈明。「不幸に不幸が重なった。(職務質問した)白バイ隊員は無線で連絡しようとしたが応答がなかったため、携帯電話で連絡した。しかし、現場の位置をうまく説明できず、その場を離れざるを得なかった。やむを得ない対応で、責任を問うのは酷だ」とした。

この事件について朝のテレビなどで警察がむちゃくちゃ非難されてましたが、今ひとつ理解できません。

警察は現場の証拠などから容疑者は比較的早期に特定し、指名手配をしました。
問題はその容疑者が白バイの職務質問にかかったにもかかわらず、本署に問い合わせる間に逃亡されてしまった、という点です。

ただ、もともと白バイ警官のは交通違反などを取り締まるために単独で行動してい(る事が多いはず)です。
交通違反の反則切符を切ったり、違反者を追いかけたりはするもの、基本的には強行犯などの逮捕を主な任務にはしていないはずです。
また、現行犯でもなく、凶器を保持しているような危険性もなく、現に逃亡しようとしているというのでもないのに、警察官が「何となく怪しい/似ている」という理由で被疑者の本人確認もせずに手錠を掛けるということは逆に警察権力の濫用であり、人権侵害になってしまいます。
つまり、(結果としては残念でしたが)白バイ警官もは責任を問われるほどの落ち度はないように思われます。

そもそも警察の組織としての使命は、犯罪予防、治安の維持、犯罪捜査、犯人の検挙というあたりにあります。
今回の容疑者は単なるひき逃げ犯人と推測され、連続殺人犯とか逃亡中の強盗などと違い他人に危害を加える可能性は低かったと思われます。
計画的な犯行ではないので、指名手配をした以上は捜査の網にかかるのは時間の問題だったのではないでしょうか。
佐賀県警としては重点捜査対象とはしていたでしょうが、佐賀県警のすべての人員を投入する(たとえば主要な交差点に警官をはりつけ、山狩りをする)までの必要性は認めていなかったと思います。
そして、結果的に犯人は逮捕されました。
それが勤務先の社長に諭されての自首であろうとなかろうと、逮捕された事実には変わりがないと思います。

5/21に事件が発覚し、2日後に被疑者を特定、3日後の5/24に逮捕されたというのは、ひき逃げ事件としても早い方なのではないでしょうか。

これで警察のどこに落ち度があったのでしょうか?

語弊があるかもしれませんが、テロや凶悪犯でもないひき逃げ事件で指名手配がされた場合に、少しでも似ている人は任意同行を求められたり身柄を拘束されたりしても仕方がない、という社会のコンセンサスがあるのだとしたら、そう言う考え方のほうが危険だと思います(少なくとも僕はそういう風に警察権力が行使されるのは好きではありません)。

ここ数回内部統制のエントリを書きましたが、内部統制は「どんなに利益が上がろうと悪い事は行わない」という反面、「何が悪い事か」についての基準や運用の一貫性が求められると思います。
そしてその一貫性は、法令や会社の価値基準に基いたものである必要があります。
世の中の価値基準の変化にも敏感である必要はありますが、そのときにならないとペナルティがわからない、というのではルールとしては不適当です。
いわんや、外部からの根拠のない非難に対していちいち過剰反応し組織内からスケープゴートを出すようでは、かえって組織の求心力は失われてしまいます。

今回、佐賀県警本部長が被害者の感情やマスコミの煽りに対し、情感処理として事実行為としての謝罪しながらも「やむを得ない対応で、責任を問うのは酷だ」と言明し、部下も含めた理由のない非難に反論することは、組織の責任者として立派な対応だったと思います。


ひるがえって、民間企業の話をすると、最近各社が「内部統制の構築について」というリリースを出していますが、中には「レビュー」とか「モニタリング」とかアルファベット3文字名の委員会などが満載で、いかにもコンサル会社に(大枚はたいて)作らせたものをそのまま使っているようなところが見られます。

※たとえば

各部門が実施すべき具体的なアクションプランとその達成度を測る指標としてのKPI(Key Performance Indicator)を各部門で策定、設定し、

なんてのがありました。(以前からあったとしたらごめんなさい、ですが)いきなりこんなこと言われて社内がついてくるのでしょうか?

まあ、もともといきなり会社法で「構築しろ」と言われてしまったという事情もあるのですが、組織の目的とかあるべき姿が伝わってこない「よそ行き」の内部統制を構築しても仕方ないんじゃないかと思います。
こういう「よそ行きの内部統制をとりあえず作っとけ」という経営者がいるような会社は、何か非難を浴びると、すぐトカゲの尻尾切りをするんだろうな、と、佐賀県警の記事を見ながら思った次第です。

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「コポガバ」

2006-05-26 | コンプライアンス・コーポレートガバナンス
内部統制については、会社法と金融商品取引法のほかに東京証券取引所から上場企業に対し「コーポレートガバナンスに関する報告書」の提出が求められています。


ところでこの報告書、業界の方は「コポガバ報告書」と縮めて言うようです。


でもこれ、ちょいと早口言葉風なので滑舌がよくないと言いにくいかもしれません。
また、役員会で流行らせたあげくに年配の役員の方が「コポカパ・・・」なんてつまったりすると、入れ歯が外れたかと周囲が心配しますので、あんまりいい略称とは思えないんですが・・・



また、「コポガバ」なんていうと「ドルガバ」や「コパカバーナ」と勘違いされるかもしれませんしね(しないか・・・)

※「コパカバーナ」といえばバリー・マニロウの歌が有名ですが(古!)歌詞を改めて見てみると、(日本語訳はこちらをご参照)買収者の出現にゆれる共同経営者を暗示しているとも取れなくないですね
(おあとがよろしいようで)
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町工場に学ぶ内部統制

2006-05-26 | コンプライアンス・コーポレートガバナンス
昨日の内部統制の話の続きです。

会社法と金融証券取引法で会社には内部統制の構築が求められています。
神田先生の『会社法入門』の表現を借りれば、会社法上の内部統制構築は、「経営の適正の確保と取締役の免責(従業員等による不正が生じても内部統制システムが構築・整備されていれば取締役は個人責任を免責される)」にあるのに対し、
金融商品取引法上の「内部統制報告書」は財務報告(情報開示)の観点からのものとされそれぞれは若干異なります。

金融商品取引法の内部統制は2008年4月以降の事業年度に適用されるので、当面は法施行後最初の取締役会で決議する必要のある会社法の内部統制が問題になりました。
そろそろ3月決算の会社についておおむね出揃ったところですね。

会社法の内部統制ですが、大会社および委員会設置会社においては取締役会で「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」が義務付けられます。(348条3項4号・4項、416条1項1号ホ・2号)

では具体的には何をしなければいけないか、というと
 一 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
 二 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
 三 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
 四 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
などを決めなさい、と施行規則(98条)で定められています。

何か大層なことを決めないといけない感じです。


そこで、話を単純にするために(会社法では義務付けられてはいないのですが)街場の零細企業を例に考えて見ましょう。

旦那が腕のいい職人兼営業マンで取締役社長、奥さんが専務取締役、あとは職人1人とパート・バイトが2人で商売をしている町工場を考えます。

社長は腕がいいのですが、親分肌で、他の仕事仲間に頼まれると無理なことでも引き受けてしまうことがあります。
特にお酒が好きで、酒が入ると気が大きくなって、面倒見モード全開になってしまいます。
専務は会社の経理事務や電話番をしています。なので、会社の実印や預金通帳と銀行印は専務が管理しています。
工場は家から比較的近く、毎日2人で納品用のトラックに乗って自宅から通っています。


これってよくある町工場のパターンですよね。
実はこれで十分、内部統制は機能しているんです。

上記施行規則に即して言えば

一 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
 電話番をしていれば、どんな仕事をしているかは大体わかります。

ニ 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
 お金と印鑑は専務が管理しているので知らないうちに仕事仲間に金を貸すとか保証人になるということはありません。

三 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
 奥さんは経理事務を一手に引き受けているので、社長は営業と加工作業に集中できます。

四 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
 車で夫婦で通勤するので、「仕事帰りに一杯」という場合も、一度車を家に置いてから、ということになります。なので酔払い運転にはなりませんし、誰とどこに飲みに行くかもわかります。
 ※バイトのA君は外国人でビザ問題は見てみぬふりをしています、これは近所の町工場はみんな同じなので、摘発されることはないだろうし摘発されたら仕方ないと割り切っています。


内部統制の構築、以上終わりです。簡単ですね。
(上の例では違法のリスクを承知でグレーゾーン(これは厳密にはクロなんですが)に踏み込んでの経営判断までしています。なかなか立派なものですw)


結局(街場の零細企業も含めて)普通の会社は、会社が傾いては困るので会社法施行前でも何らかの形でチェック&バランスが効いた体制をとっているはずです。
それを会社法のルールに則って整理しなおしていけばいいわけですね。

今回非常に立派な内部統制制度を開示している企業は、今までも先進的な内部統制制度を持っていたのだと思います。
これを機会にコーポレート・ガバナンスのあり方を見直す、というのもいいでしょうが、どこかのコンサルが持ち込んだしくみをそのままはめ込んでも、ろくなものにならないと思います。特に、出来もしない事を約束するのは最悪です。
他社の内部統制を参考にしながら、自分の会社にはここが足りないな、というところがあれば、ちょっとずつ身の丈にあわせて改善していけばいいわけです。


結局神田先生のおっしゃる通り、内部統制構築義務が取締役の善管注意義務として明文化された中でも経営者が現状の会社のあり方に自信が持てるか、という「責任」の問題に帰着するわけですね。


こんなこと、僕が今更言うまでもなく業務に携わっておられる皆さんはご承知のことと思います。ただマスコミなどの論調が「今までと違ったしっかりした内部統制を構築しないといけない」と新会社法に合わせて「背伸び」を期待しているように感じられるのであえて書いてみました。





あ、そうそう、もともと社長が愛人に経理事務を任せていたり、ボンクラ息子が仕事もしないのに小遣い代わりに給料もらってあげくの果てにキャバクラの領収書を会社に回しているような会社は、これを機会に反省しなきゃだめですよ^^

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内部統制と左足ブレーキ

2006-05-25 | コンプライアンス・コーポレートガバナンス

「分数を大きくするには分子を増やすか分母を減らせばいい」という小学校の算数を実践した社会保険庁の事件がありました。これについて
年金不正免除で社保庁長官「法令無視の指示はない」
(2006年 5月24日 (水) 12:37 朝日新聞) 

衆院厚生労働委員会で24日、各地の社会保険事務所が国民年金保険料の免除手続きを勝手に行っていた問題が取り上げられた。この中で、村瀬清司・社会保険庁長官は、自身が保険料の納付率向上を強く指示したことが不正を生む引き金となったのではないかとの指摘に対し、「法令を無視してやれという指示を出したつもりはない」と反論した。

ということですが、社会保険庁自身数値目標を掲げて納付率の向上の目標設定をしている(しかもうまくいっていなくて組織全体にプレッシャーがあった)のは事実のようです。

社保庁改革法案審議入り 国保期限を短縮 年金納付率向上盛る
(2006年 5月19日 (金) 03:04 産経新聞)  

・・・十七年度の国民年金保険料納付率は三月末現在(十七年四月-十八年二月分)66・7%で、前年同期に比べ3・8ポイント改善したものの、同年度の最終的な納付率は未集計の十八年三月分を上乗せしても、社保庁が掲げた十七年度の目標値69・5%を達成するのは困難な見通しだ。
十九年度には80%まで回復させる計画を立てているが、法案に盛り込んだ対策を実施しても納付率の改善にどれだけつながるかは不透明。野党側は追及の構えを強めており、国会審議では年金制度の抜本改革の是非が再び焦点となりそうだ。

つまり、徴収率向上は経営課題の中でも優先順位が高く、トップが「法令を無視してやれという指示を出したつもりはない」(確かにいまどきそんなことを言う人はいないでしょう)といっても、事実上人事考課に反映したりすると、現場はどうしても無理をしてしまいがちになります。


これが上場企業になると、公表した決算予想数字を達成できない場合は(特に新興市場企業においては)「期待はずれ」で株価の下落につながりかねません。
さらに、人事制度で目標管理制度を導入していたりすると、決算予想数字(をブレークダウンした部門目標)を達成するために現場にプレッシャーがかかることになります。

よく、期末セールとして「契約(や引渡し)を3月中にしてくれれば安くしますよ」という誘いを受けたことがあると思います。
期末恒例の決算対策の安売りなら(独禁法や景品表示法などに反しない限りは)いいのですが、これが「バックデートでもいいですから」とか「内金は立て替えときますから」となると 損保ジャパンのような保険会社では違法行為になるでしょうし、法令違反にならない業種だとしても「財務報告の信頼性」の面からは問題になりますね。(さらに「契約・未引渡し」で売上計上するのが公正妥当な会計慣行に拠っているかという議論もあります)

こういう風に、現場レベルで違法なことに踏み込んでしまう機会や動機付けはけっこうあるわけです。
 これを防ぐために、昨今話題の「内部統制」が求められるわけです(会社法と金融商品取引法でそれぞれ求められる趣旨は若干異なるようですがそのへんは省略)。

教科書どおりにいけば、「行為規制のガイドラインを作り周知徹底させるとともに、きちんと守っているか、抜け道はないかをモニタリングして、随時フィードバックさせる」ということになります。
ただその一方で、目標達成のためには一定のプレッシャーをかける必要もあるわけで、そのバランスはけっこう難しいんですよね。


昔、自動車雑誌で、オートマチック車の運転方法で「左足ブレーキ」を推奨する評論家がいました(今も流行っているのかな?)。
この方法は右足をアクセルから踏みかえるよりも素早くブレーキを踏める、というメリットがあります。

ところが、実際にやってみると、慣れるまでが大変でした。

左足の力加減がわからないもので、つい強く踏みすぎて「カックンブレーキ」になったり、逆に踏み遅れるのが怖くて常に左足をブレーキの上に軽く乗せているのと、常にブレーキを踏んでいるかのような状態になってしまいます。

これを内部統制にたとえれば、「カックンブレーキ」はガイドラインが厳しすぎたり、それを修正したら今度は緩すぎたりとそのくり返しで業務が混乱するような状況でしょうし、「常時ブレーキ」は常に現場の箸の上げ下ろしまで法務セクションや弁護士の確認を求める、という効率の悪い(コストの高い)組織運営にたとえられると思います。
また、これは組織内部だけでなく、取引先(後続車)にも迷惑をかけることにもなります。

もともと定着率が低く、組織への求心力も期待できない従業員を高い歩合制で雇ってガンガン営業させているような企業であれば、性悪説にたって現場の暴走をおさえるための内部統制を引いているでしょうけど(アイフルの例などを見ると必ずしもそうとはいえないか?)、長期雇用、固定給を前提とした多くの企業は、慣れるまでに時間がかかると思います。


左足ブレーキは結局慣れる前にやめてしまいましたが、内部統制はそうもいかないのがつらいところです。

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神田秀樹『会社法入門』(岩波新書)

2006-05-24 | 乱読日記

遅ればせながら神田秀樹先生の岩波新書『会社法入門』を読みました。

会社法の改正の歴史や欧米における会社法の役割の変化という広い視点から俯瞰しながら、体系的にかつわかりやすく新会社法の説明をされています。
具体例(特に株式の部分)が秀逸です。


私は新書はあとがきから読むことが多いのですが、

今回の会社法を日本語として読むだけでは、実際のイメージをつかむのは難しい上、その内容もよく理解できないと思われることである。

という部分を読んで、最初に安心しました^^


そして、講義なら小声でぼそぼそっとおっしゃるのであろう細かい突っ込みや鋭い指摘が要所要所に配されていいて、楽しめたり関心したり興味をそそられたり、というおまけまであります。
※詳細はご覧になってのお楽しみということで、個人的にとてもウケたところを1つだけご紹介させていただきます。(一番下に書きますので、ご覧になりたくない方は飛ばしてください)


すでにろじゃあさんtoshiさんもご推薦の本書ですが、
会社法ってなんだ?という人から、七面倒くさい条文とか規則とのにらめっこからちょっと気分転換したい人まで幅広くお勧めできると思います。






 










(株主と債権者の利害調整、という項で)
なお、余計なことをひとことだけ述べておきたい。読者は、これらの例を見て、株主とすれば借金をしたほうが得だと思うかもしれない。(中略)借金によるこうした効果を「テコの効果」(レバレッジ効果)と呼ぶことがあるが、実際には、そのような「うまい話」はまずない。そのことはここでは立ち入らない。

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「一寸の虫に五寸釘」を地で行く愚

2006-05-23 | 余計なひとこと

今朝のテレビでやっていたニュース
兵庫労働局汚職:キャリア組が「流用」 懲戒免の元係長暴露--人事院の公開審理
(毎日新聞 2006年5月22日 東京夕刊)

厚生労働省兵庫労働局の裏金事件で懲戒免職になったノンキャリアの元係長が処分を不服として人事院に審査を請求し、公開審理の場で、キャリア官僚による飲食や個人流用、風俗店での接待など実態を暴露した。同省はキャリア組を停職・減給処分にとどめており、元係長は「裏金で飲み食いした上司の官僚が残り、裏金を作った部下だけが懲戒免職になるのは不平等で納得できない」と訴えている。

事件を巡っては、厚労省が昨年7月、99~04年度に事務用品の架空発注などで約5億9000万円を不正支出したとする内部調査結果を公表。詐欺罪などで起訴された主任2人を含めて計7人の職員を懲戒免職としたが、当時、同局に出向していたキャリア官僚8人は「管理責任」を問われただけだった。

審査請求したのは懲戒免職になった職員2人。このうち裏金の保管役だった元係長は今月11、12の両日、人事院近畿事務局(大阪市)であった公開審理に出席。職業安定部長(00、01年度)の友人の外郭団体職員が2年間に約10回は神戸を訪れ、宿泊費や福原(神戸市)のソープランド代を支払った▽局長(00、01年度)は裏金で買ったパソコンを自分の娘にプレゼントした▽局長(02、03年度)は管内巡視の際、高級温泉旅館での宿泊を要求し、裏金で支払った--など、キャリア官僚たちによる流用を証言。厚労省から出向していた兵庫県の課長の接待費や、キャリア官僚たちが休日に楽しむゴルフ代金まで裏金で支払っていたことも明らかにした。

兵庫労働局は昨年10月、不正支出の一部約2億5000万円の支払いを元係長に請求。今年2月には自宅や預金通帳を仮差し押さえした。元係長は「住宅ローンも残っているのに、私に『死ね』ということか」と嘆いている。

厚労省側は公開審理で裏金がキャリア官僚によって個人的に使われていた事実を一部認めた。しかし、元係長の処分について、裏金の出入金の差額から「少なくとも約2300万円着服したのは明らか」と妥当性を主張している。毎日新聞は元係長が名前を挙げた官僚に取材を申し込んだが、同省地方課は「審理中なので一切コメントできない」としている。

対外的なポーズのための懲戒だとしたら、処分とセットで口封じのためのセーフティーネットを用意しておくのが普通だと思うのですが、「少なくとも2,300万円の着服は明らか」とはいえ懲戒免職に加えて「明らか」な額の10倍の2億5,000万円もの請求をされたら誰でも刺し違える覚悟になりますよねぇ。

「元係長」の証言が事実だとすると、この係長は裏金の管理やキャリア官僚のtake careなど兵庫県労働局の「大人の常識」を一手に引き受けていたキーマンだったのではないでしょうか。

この係長がいなくなってしまったために、懲戒処分の匙加減がわかる人がいなくなり、今回のような過剰な懲戒処分に走り、挙句の果てに返り討ちにあってしまったように思います。


拙blogのタイトルは例えであって、実際にやっちゃいけませんぜ・・・


なくなってしまった5億円以上に、組織として自律してもおらず、適正な状況判断もできない組織が行政を司っているというところに非常な不安を覚えます。

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「ニート」は若者の問題か

2006-05-22 | よしなしごと

ニートは扶養控除外 自民が検討
(2006年 5月22日 (月) 02:00 共同通信)

自民党税制調査会(柳沢伯夫会長)は21日、少子化対策としての子育て支援減税の財源を確保するため、所得税の扶養控除(1人当たり38万円)に年齢制限を新設し、成人したニート、フリーターを対象から外す方向で検討に入った。

少子高齢化による労働力の減少を補うため、ニート、フリーターを抱える世帯の税負担を増やすことで、若年層の本格的な就労を促進する狙いもある。

今日のニュースでも話題になってましたが、「ニート」の問題というのをどう考えるべきなのか、まだよくわかりません。

「ニート」というのはWikipediaによると

厚生労働省の定義によれば「15歳から34歳までの非労働力人口のうち

    1. 学卒
    2. 学籍はあるが実際は学校にいっていない人
    3. 未婚で家事・通学をしていない人
    4. 既婚者で家事をしていない人

とされている。また、英国同様単に「就学及び就業をしていない者」の意味で用いられる場合もある。
(フリーターや失業者に対し)ニートは就労に向けた教育・雇用・職業訓練等のいずれにも参加せず、職を得る動きを見せない点が異なっている。

とされています。

また、NPO法人「育て上げ」ネットによると([ ]部分を加筆)

NEETとはNot in Employment, Education or Trainingの略で、「職に就いていず、学校機関に所属もしていず、そして就労に向けた具体的な動きをしていない」若者を指します。現在、日本にはNEETに分類される若者の数は68万人と言われています。労働政策研究・研修機構副統括研究員の小杉礼子先生はニートを四つ類型化しています。

Ⅰヤンキー型
 反社会的で享楽的。「今が楽しければいい」というタイプ
Ⅱひきこもり型
 社会との関係を築けず、こもってしまうタイプ
Ⅲ立ちすくみ型
 就職を前に考え込んでしまい、行き詰ってしまうタイプ
Ⅳつまずき型
 いったんは就職したものの早々に辞め、自信を喪失したタイプ

 また、東京大学社会科学研究所助教授の玄田有史先生はNEETを以下のようにとらえています。
失業の理由
 需要・・・経済状況・産業構造の問題【主に年齢のミスマッチ】
      ⇒[対策としては]景気回復など
 ミスマッチ
  ①技術・技能の問題【スキルのミスマッチ】
    ⇒[対策としては]能力開発など
  ② 希望するものがない・何をしたいのか分からない【こころのミスマッチ】
    ⇒大きな課題
支援について(仕事と個人の関係からとらえる)
 個別単位の支援・・・若者全体への支援ではなく、あくまでもその人、個人への支援[が効果的?]
 主役は「地域」・・・バーチャルな情報ではなく、自分で足を運び五感で実感する[ことが重要?]
 各機関の名目以上の連携・・・この層への支援はNPOが進んでいる。また名目だけの連携はいらない

冒頭のニュースを初めとして、最近でも次のような話題があります。

教育と雇用の連携が重要 若者の人間力国民会議
(2006年 5月 9日 (火) 11:23 共同通信)
起業精神衰え保守志向に 06年度新入社員の意識調査
(2006年 4月26日 (水) 20:53 共同通信)


ざっくり言うと、ニートの問題の捉え方として

①個人の意欲・資質の問題(教育・動機付けによって改善可能)
②雇用のミスマッチの問題
③社会政策の問題(セーフティーネットが必要)
④原因はさておき国力に影響するのでどうにかせにゃならん

というような異なる切り口の議論がされているように思います。

上のニュースは①に主眼を置いているものですが(最初の記事は④を念頭にムチでインセンティブを与えようとしています)、NPOなどは②も重要視しているようです。最近、公務員の中途採用の年齢制限を上げる、というのもこの手の話だと思います。

ただそれが問題になる、というのは背景に③または④といえるくらいの数が増えている、ということがあるのでしょうか。
上記Wikipediaによると「おとなニート」は推定39万人ということですが、労働者人口全体の中でその数字がどれくらいの意味を持つのか、正直わかりません。

「格差社会」論同様に、総論では「なんとなくよくないな」という雰囲気で議論されているような感じもします。
でも、「格差」や「ニート」がすべていけない、というわけでもないと思います。
「努力しようがしまいが格差がない社会」、というのもいいとは思いませんし、「楽して暮らしたい」という気持ちは誰しも持っているでしょうから。
ひょっとすると、それだけ社会に余裕があるのかもしれませんよね。

現状がどうなっていて、何が問題なのか、というところをすり合わせるのが大事だと思います。


逆に、ニートが社会にとって既に有意な問題だとして、しかもその主な原因が雇用のミスマッチ(正社員の採用の絞込み)などにあるとした場合、問題は若年層だけにとどまらないのではないかと思います。
つまり「既存の企業の正社員が過剰に保護・優遇されているために若年層の雇用が制限されている」という世代間の問題になるのではないか、ということです。

たとえば25歳のニートの息子を抱える55歳の年収800万のサラリーマンがいたとして、その人が特段のスペシャリティがないとしたら、企業としては父親の代わりに息子を年収400万で雇用する方が合理的かもしれないわけです。
ニートが少子化問題につながり、それが日本の将来に影響する、というのであれば、「子育ての終わった労働者の雇用は保護せず、若年者の雇用を促進する」という社会政策が選択肢として浮かんでくる可能性もあります。
また、終戦直後の日本企業で高齢の役職者が公職追放になったり会社自体が財閥解体などにあった結果、若手が否応なく責任ある仕事を任され、それが戦後の経済成長の活力につながったように、ひょっとすると「オジサンパージ」が若年層の就労意欲を高めるのに有効かもしれません。

極端に言えば

年寄りを間引くのが一番のニート対策

という可能性がある、ということです。
※多くの人(特に団塊世代)は「俺は間引かれる対象にはいらない」と思うので、けっこう通ってしまったりして・・・


などと考えると、オジサンとしては「ニートはけしからん」などと軽々に言わない方がいいかな、などと考えてしまいました。

PS 
ホントは若い人がバリバリ働いてくれて、オジサンはとっとと年金暮らしができればそれもいいんですけどね・・・、あ、そうか、そんなオジサンはだれも面倒見てくれないか(^^;

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「インターネット持仏堂」

2006-05-21 | 乱読日記

いきなりですが、これは名古屋駅の「うなぎ三昧」という駅弁

昨日、名古屋でのお通夜に参列し、とんぼ返りの新幹線でいただきました。
味噌カツにしようかなとも思ったのですが、どーんとカツが載っているやつは、ビールのつまみには不向きかと思い、今回はこれにしてみました。
鰻重と肝とう巻きと巻寿司がセットになって1050円。
肝やう巻きがビールのつまみにもなり、なかなか満足度は高かったです。

最近駅弁を食べる機会があまりないのですが、他の品も工夫を凝らしていて美味しそうでした。


車中で読んだのが「インターネット持仏堂」の2巻もの『いきなりはじめる浄土真宗』『はじめたばかりの浄土真宗』の後者の最後の半分

これは内田樹先生が自分のサイト内に立てた「持仏堂」に住職として釈徹宗さんという大学講師でかつ実際に浄土真宗本願寺派の住職のかたを招き、2人がサイトで交換したやりとりを本にしたものです。

内田先生のことなので、当然話は浄土真宗にとどまらず宗教全般に広がり、釈師も浄土真宗の若手研究者兼僧侶として浄土真宗の教義にとらわれずに広い視点から語っています。

釈師のあとがきから

 その内田・大家さんは、今回あえて親鸞思想や真宗教義の情報を仕入れて語ろうとはしませんでした。あくまでおじさん的思考で宗教に取り組んだのでした(このあたりが並ではない)・・・
 
 教義にしばられない内田樹の発言や論旨には、当然、非浄土真宗的要素にあふれています。私は「本願寺出版が出す本なのにいいのかなぁ。あはは」と何度か笑っちゃいました。・・・
 
 でも、まあ、考えてみれば仏教とは常に教条化を拒みつづける体系でなければなりません。・・・
 そもそもの仏教の言説は教条的ではなく、戦略的です(言葉で語ると必ずそれに囚われてしまうことへの警戒を怠らないのです。・・・)一神教的性格をもつ、と言われる浄土真宗にとって、このような言説戦略を活用する事はついつい避けられがちです。どうしても「正統」な理念・解釈を前面に押し出してしまいます。しかし、ときにその枠組みを揺さぶってこその仏教、なのではないでしょうか。

このように、釈師は誠実な議論をする人で、レヴィナスを軸にしながらに変幻自在に議論を展開する内田樹先生とがっぷり四つに組んでいます。
あ、「がっぷり四つ」というよりは議論の往復のたびに新たな切り口が出て話が展開するのでレスリングの体の入れ替え合戦のようなものでしょうか。

間に入る仏教や浄土真宗の解説もためになります。

加えて、釈師は仏教全般に造詣が深く、更に非常にニュートラル、というか誠実な議論をする人で、上にもあるように浄土真宗の弱点や過去の論争なども含めて説明しており、浄土真宗(ウチはそうなんです)の理解も少しはできたかな、と思います。


この本での議論からいくつか「種」を見つけたので、今水をやっているところです。
うまく芽が出たらエントリにします。

とりあえずは頭だしを。


PS 家に帰って香典返しをあけてみたら、「清めの塩」がはいってないんですね。昔はよく入ってたのに。
最近のはやりなのでしょうか。
この本で「真宗は清めの塩は使わない」(※)とあったので、入っていたらニヤッと笑って使わずにおこうと思っていたのに、残念・・・

※「真宗は日柄・方角などの習俗・俗信、占いやまじないに迷わないことをモットーとしております。」とのこと







 

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ポピュリズムとか「反ポピュリズム」というポピュリズムとか

2006-05-20 | よしなしごと

ホントは先日のエントリに続いて仏教の話を書きたかったのですが、ちょっと生臭い話が続いてそちらに話がそれてしまいました。

※もっとも、現世における「善悪」は霊的次元における「救済」の基準とは別物で、現世的な論理によっては判定できない(人間の側から救済をコントロールはできない)ので、決して「ナマグサ」がいけない、というわけではないらしいのですが、まあ、そのへんも含めて後日・・・

で、ナマグサついでに気になった話をいくつか

まずは ろじゃあさんbunさん がとりあげられている、今週号の週刊現代の、「大銀行の「隠れサラ金」ビジネスを許すな」という記事への与謝野経済財政・金融担当相のコメント。ろじゃあさんの記事から孫引きさせていただくと

メガバンクと消費者金融が(業務・資本提携して)一心同体になってしまっている現状は、私個人としては驚きです。銀行の仕事は利益追求だけではないはずです。社会にしっかり目を向け、お金をどう振り分けるか。それが銀行の本来の仕事のはず。社会的意義のあることをやるのが、銀行の使命でしょう。

小説の『金色夜叉』では、ありませんが、高利貸は昔から存在します。しかし、私はひっそりとやるものだと思っていた。最近のように消費者金融が盛んにテレビコマーシャルを流し続けているのには、違和感がある。消費者金融の高金利については法整備を進めていきますが、メガバンクが消費者金融と提携していることは、各行の人生観が問われる問題です。われわれ(金融庁は)とやかく言いませんが、(メガバンクのやり方は)私の趣味には合っていませんね。

メガバンクは、経営危機を6兆円にものぼる国民の税金による公的資金を投入してもらって救われた、税金を使わせてもらったことを真剣に考えれば高利な事業はできないはずだ。

一応「(金融庁は)とやかく言いませんが、」ということで、行政機関の長としての発言ではないとしても、相当違和感があります。
「税金を使わせてもらったことを真剣に考えれば高利な事業はできない」というあたりは、そもそも公的資金投入の目的として「金融システムの維持」に「(与謝野大臣の考える)公益的な企業活動」を加えるつもりだったら、優先株でなくもっと企業活動をコントロールする資金注入の方法をとったほうがよかったわけです。

また、消費者金融と上限金利問題は、銀行の公的資金投入とは別問題で、公的資金注入をした立場からは銀行が収益を向上させ公的資金を返済できたことをまず評価(自画自賛?)すべきです。
「高利貸はひっそりと・・・」といっても逆に「サラ金」だけに消費者金融を独占させるのは消費者保護にならないでしょうし、そこまで銀行に行為規制をするのであれば、公的資金を投入したまま国営化したほうがいいと思います。

要するに、原因を分析せず、解決策も提起せずに現象面をあげつらって感情的に非難する、しかも属性にレッテルを貼る、というところが私が不快に思った点ですね。


こういうのを「ポピュリズム」というんでしょうか。


ただ、「ポピュリズム」と言う言葉もちょっと違和感があるんですよね。

(と、ここで話が変わります)

以前書いた山口県光市の母子殺害事件についてのエントリ(こちら)にTBいただいた 「元検弁護士のつぶやき」で矢部善朗さんが 宮崎学氏主催「緊急!「人権派弁護士」批判に答える。」参加(Kawakita on the Web)という記事を紹介されていました。
※以下一部加除しながら孫引きで引用させていただきました。

これを見ると

・2005年11月28日に最高裁から2006年の2月7日または3月14日に口頭弁論を開くと当時の弁護人へ通知。
(口頭弁論が開かれるということは二審判決が覆るということなので)当時の弁護人は最高裁に口頭弁論の延期を申し込む。
・2005年12月6日に当時の弁護人が安田氏に弁護を任せる予定の旨を最高裁に通知。  ・その直後に最高裁は2006年3月14日に口頭弁論を開くことを決定。延期を認めず。

と、(前任の弁護士の読みの甘さ・無責任さはさておき)安田弁護士の選任に対してかなり厳しい運営がなされているようにも見えます。
安田弁護士の主張の詳細はこちらの記事をご覧いただくとして、気になったのがそこで語られている最近の「ポピュリズム」について。  

<宮台真司氏>
最近の多くの問題がポピュリズム戦争になっていることを指摘。特に昨年の総選挙以降、その傾向に歯止めがかからなくなってきている。

 <中村順英氏(日本弁護士連合会前副会長)>
刑事弁護人の活動は被害者の感情を逆撫でするような面があり、善玉(被害者)と悪玉(加害者)の二項対立が煽られる。
犯罪への恐怖心が異常なまでに煽られている。
悪党と決めたら煮るなり焼くなりどうにでもしてよいと考えるような感情が蔓延している。
司法がポピュリズムに抗し難くなってきている。

<二木啓孝氏(日刊ゲンダイ記者)>
共謀罪や今回の件を含め嫌な感じがするのが「天井を低く」なっているということ。
天井を低くすれば皆が頭を垂れるだろうという流れになっている。
頭を垂れろという倫理観のバックグランドがポピュリズム。
そのようなポピュリズムを醸成しているのは活字よりも映像のもつ訴求力の強さ。
作っている方も正しい正しくないは自覚しておらず、ウケるかウケないかしか気にしていない。

ここで指摘されているような面は確かにあるのですが、私は「ポピュリズムだ」と批判する人の根底にも「私は正しいが、大衆の誤解に乗っかって私を非難する奴は怪しからん」という感情を感じてしまいます。
そもそも「多くの人がなんとなくそう思う」というのは結構重要なことなんじゃないでしょうか。国政の根幹を成す選挙制度自体がそうですし、「ポピュリズム批判」をする人ほど「市民の声を聞け」と言ったりしますよね。

私が思うに「ポピュリズム」の問題点は根拠なく感情を煽ることにあり、それへの反論(抵抗)として大事なのは、その主張の前提となる事実を正確に認識することであり、多様な論点(反対意見やその結果が何をもたらすか等)を提供する、というプロセスなのだと思います。

「ポピュリズムだ!」と観念的に批判するだけでは、ポピュリズムに対する有効な反撃にはなっておらず、それを声高に叫ぶことは逆に「『反ポピュリズム』というポピュリズムだ」という(出来そこないの早口言葉みたいですが)水掛け論的な批判を惹起するだけのように思います。
(その意味では上の与謝野大臣の発言などにはいちいち突っ込むことが大事だと思いますw) 

この集会でも「宮台氏の語るポピュリズムに抗するための処方箋」、として

・国家は社会をサポートする存在であり、社会をサポートできない国家はねじ伏せられる。それが近代社会の本義であり、その手段が憲法。
・フランスはデモ・暴動・ストで民主制は不完全さを補完するような文化的リソースがある。
・アメリカの場合は、宗教的結社の伝統。優勝劣敗路線ではあるが、それに伍するNPO・NGO・寄付・ボランティアの伝統の厚みがあるから社会が回る。
・日本にはそのようなものはないので、ルールを踏まえればなんでもあり、になると本当に何でもありになる。自分たちが連帯して国家をねじ伏せたという共通の経験を我々は持っていないので、それをどうカバーするのかということを戦略的に考えなければならない。

という言われているのですが、このような語り口を見ると、これ自体が「日本はここが弱いので気をつけないといけない」というそれこそポピュリズムに特徴的な煽りの言い回しのようにも思えてしまいます(宮台真司って以前は「大きな物語」に対する「小さな物語」の役割を語っていたように思うのですが、「大きな物語」に宗旨変えしたんでしょうか)。


長々と書いてしまいましたが「絶対的な正しさの持つ危うさ」というあたりから、やっと次につながりそうです。

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村上ファンドのシンガポール移転(村上ファンドvs阪神電鉄 番外編)

2006-05-19 | M&A
昨日の記事で揶揄してしまったのですが、村上ファンドの「運用機能のシンガポールへの移転」(プレスリリースはこちら)についてちょいと考えてみました。

外国に移転、と聞くとまず思い浮かぶのがTBSなどの放送局の株の外国人保有規制です。
また、既に組成済みのファンドには日本の金融機関や機関投資家も出資しているという噂ですが、運用先の外国人への変更が投資家の内部規則に引っかかったりしないのでしょうか(年金とかいたらうるさそうです)

そういうデメリット(ほとんど無いのかも知れませんが)を考慮しても移転する動機としては

① 運用会社を移転することに税制上のメリットがある
② 日本に比べて当局の規制が比較的緩い
③ 将来的に(日本にとっての)外国人の投資を集める場合の手法の自由度が高い
④ その他日本国内にいるとまずい事情がある

というあたりでしょうか。

①についてはisologさんが詳しく分析されていますが、運用会社を移すだけでは税務上のメリットが非常に大きいというほどでもないのかな、という印象も受けます。

②は、シンガポール当局の規制がどの程度なのかは知らないのですが、日本で金融商品取引法が制定されると、投資事業組合などにも規制が広がるので、業務執行組合員に金融庁検査が入るのをきらった、という事情があるのかもしれません。

③これもよくわかりませんが、これが理由なら移すのは投資ヴィークルの方で運用会社を移転させるほどではないような感じもします。(または至極真面目に中国にほとんどの生産拠点のある日本企業を買収して切り売りし、中国企業の部分を香港あたりでIPOさせるなどというウルトラCでも考えているのでしょうか)

となると④もあるのかな、ということになりますね。
これについてはいろいろ言われているようですが、私は真偽のほどはよくわかりません。
ただ、今のところ日本株投資が主力で、しかも1200億円も突っ込んでいる阪神電鉄株問題の交渉が佳境ななかで、村上氏が家族ぐるみでシンガポールに移住(かどうかはわかりませんが、家族でシンガポール便の飛行機に乗っていた、という目撃談あり)というのはちょいと不自然な感じもするわけです。


それやこれやで、阪神電鉄側にも「引き延ばし」という選択肢があるのではないか、なのであえて自分から6月の定時株主総会という期限を切って退路を立つ必要もないのでは、と思った次第です。
逆にいえば、村上ファンドにここまで買われるということは、ある意味グータラな経営をしていたわけで、今更定時総会までに白黒つけるなんてかっこつけても仕方ないとも言えますよね(あ、グータラな経営をしていたから危機管理能力がないのか・・・)

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