最下段に小さく
「(注意)本公国は当社の株主等への一般的な情報提供を目的としたものであり、当社の株式又は新株予約権への投資勧誘を意図するものではありません...」
とあるけど、ライツオファリングの説明と会社の成長(=投資先として有望)を語っています。
懐かしい名前が出てきましたが、ゆかしともお友達なのでしょうか。
東大医学部卒社長の540億円の「賭け」(YUCASEE media)
日本では1000億円超の過去最大のライツ・イシューを実施するJトラスト。最大の焦点でもあるのは、発行済み株式の約5割を保有する藤澤信義社長(43)が総額で約540億円もの権利行使を行うかどうか。個人で用意する金額としては大バクチとも言われるが、そうした注目が集まる中で開催した24日の投資家向け説明会で「自分のことより会社の成長を優先させる」と語り、安定株主への譲渡や株を担保にしても借入などを行うべく交渉を行っていることを明らかにした。
藤澤信義氏といえば、このブログでも、2009年のレナウンの経営をめぐる争いを取り上げた中で登場しています。
レナウン
レナウン、その後
(2009年当時は、まだ日本振興銀行も木村剛氏も元気だったんですね )
当時藤沢氏はネオライン・ホールディングスという会社を経営していたのですが、ネオライン社はその後変転を経て昨年Jトラストの連結子会社になっています。
そのときに筆頭株主になったのかと思ったら、その前から骨がらみだったようです。
ネオラインホールディングス株式化会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
なお、今回の取引を行うことで、下記7「藤澤氏からの借入について」記載の筆頭株主であり代表取締役を努める藤澤氏からの多額な借入が解消されます。また、当社とネオライングループとの関連当事者取引の解消にも繋がります。
今回のライツイシューはノンコミットメント型なので資金調達が主眼という感じでもないですし、藤澤氏にとっては、上場した新株予約権を上場後売却すれば、原価はタダなので安くしか売れなくても全部利益になるという構図ですね。
新株予約権が上場した後、株価を刺激するネタが出たりするのでしょうか。
生温かく見守りたいところです。
PS
ちなみに記事には「東大医学部卒社長」とありますが、正確には藤澤氏は「東京大学医学部保健学科」を卒業されたようです。
そのへんの記事の省略の仕方もゆかし「らしさ」かもしれませんが、受け止める側としては、経営者や運用者を学歴で判断していては金融資産1億円は難しいような気がします。
<参考>
ライツ・オファリングについて(Jトラスト)
以下wikipedia
藤沢信義
JTインベストメント(「ネオライン・ホールディングス」から転送)
Jトラスト
『裏切りのサーカス』を観て、改めてジョン・ル・カレを読んでみようと思った。
そこで、代表作の『寒い国から帰ってきたスパイ』と、「スマイリー三部作」の一作目『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』が上の映画の原作だったので二作目『スクールボーイ閣下』から。
1970年代冷戦華やかなりしころの国際情勢についての記憶はほとんどないので、ドキュメンタリー番組や本による後付けの知識しかないのだが、それら以上にリアリティを感じる出来になっている。
綿密な取材と経験に加え、人間性への深い洞察と現実を見据えるシニカルな視線が、作品を魅力的なものにしている。
特に『スクールボーイ閣下』はベトナム戦争時の香港からベトナム・タイ・カンボジア・ラオスが舞台になっており、「悪所」であったころの香港の描写、タイ・ラオス国境の緊張感など、現在へのつながりを考えるのも一興。
『スクールボーイ閣下』には、有名な
“A desk is a dangerous place from which to watch the world.”
オフィスの机は、世界をながめるには危険な場所である。
というくだりが登場する。
IBMのCEOだった時のガースナーも机の上に掲げていたという。(参照)
それ以外にも箴言・警句がちりばめられていて楽しめる。
こんなくだりも。
年寄りは他人の話をするとき、薄れた鏡のなかにそのイメージを追いながら、自分自身のことを語るのが常である。
気をつけよう。
オープンなネットワークと製造技術のデジタル化でモノづくりの仕組みが変わっていくというのは、実家が零細町工場だった身としては感慨深いものがある。
サプライチェーンといえば聞こえがいいが、昭和の町工場はそれぞれの技術や製造設備で作った部品や半製品を順々に後工程の会社に納品し、最後に最終製品を製造する企業におさめるという、言ってみれば食物連鎖のようなピラミッドを形成していた(今でも大半はそうだと思う)。
実家は最終納品者からの仕事が比較的多かったのだが、その分頂点の企業も大きくなく、ロットも小さい仕事になる。
さらにそこから業容拡大しようとすると、機械設備や要員(営業・製造)への投資が必要でさらには手狭になると工場の拡張が必要になる。それは経営規模の小さな(大概は家族経営の)町工場にとっては大きな賭けになってしまう。
当然のことながら賭けに連続して勝つことは難しいため、零細企業から中小企業へのハードルは高いことになる(ひょっとすると中小企業から大企業に成長するハードルより高いかもしれない)。
本書の提示する世界-中規模ロットやカスタム品のマーケットの可能性-はそんな日本の町工場にとっても魅力的なものだと思う。
商品スペックと簡単なコミュニケーションがメールを介してできればそこに参入することはできるし、その程度の英語力についていえば、日本の英語教育も馬鹿にしたものではないと思う(自分の経験上)。
また、日本でも「ビット」と「アトム」を横断するコミュニティができる素地はあると思うし、それがいちばんだと思う(既にあるのかもしれないが)。
ただ、本書で紹介されるような「こういうことができたら面白い・便利だ」と思ったらとりあえずやってみる人々がいて、それらがネットワークになって何かを生み出していく、というダイナミックな広がりができるには、日本のビジネスマンは忙しすぎるのかもしれない。
「ボランティアで協力すると言っても残業が・・・」という声が聞こえてきそうだ。
「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が流行りだが、仕事と家庭生活・余暇のonとoffだけでなく「趣味と仕事の間」というのを許容、それ以上に推奨することが必要かもしれない。
労務管理や人事評価の手抜きのための方便でもある「副業禁止」や「職務専念義務」は、そろそろお蔵入りにしたほうがいいかもしれない。
そして、グローバルな「MAKERS」のネットワークを前提にすると、通関手続きとかEPA・FTAにおける原産地証明のルールとかも変える必要が出てくるのかもしれない。
いろいろな方向に考えが広がる刺激に富む本でもあるし、読んでいて自分も元気になるのがとてもいい。
首相の号令で「右向け右」で改革が進んでいますという進軍ラッパもいいが、実際に機能するかをきちんとモニタリングしたほうがいいと思う。
(以下引用部下線は筆者)
子育て支援拡充へ新制度、政府の会議が今夏に指針
(2013/4/26 日本経済新聞)
政府は26日、2015年度に施行する新たな子育て支援制度の細部を詰める「子ども・子育て会議」の初会合を開いた。(中略)
新制度の実施主体となるのは市町村だ。都市部や過疎地などでそれぞれ異なるニーズに合わせ、どのような子育て支援を提供するかを5カ年の事業計画にまとめる。この計画作りを手助けするのが、政府の子ども・子育て支援会議の最初の役割だ。計画の各項目の作り方や手続きなどを夏までに指針として示し、市町村に参考にしてもらう。(以下略)
認可保育所:月内にも株式会社の参入全面解禁へ 厚労省
(2013年5月2日 毎日新聞)
厚生労働省は、約2万5000人の保育所待機児童の解消に向け、認可保育所への株式会社の参入を月内にも全面解禁する方針を固めた。当初は2015年4月から解禁する予定だったが、安倍晋三首相が女性の就労支援を成長戦略の中核に据えたことを踏まえ、大幅に前倒しする。
厚労省が2日の規制改革会議で表明し、認可権限を持つ都道府県や政令指定都市、中核市に通知する。
株式会社は児童福祉法上は今でも認可保育所に参入できる。しかし、企業の経営状況に保育所の存廃が左右されかねないことや、既存の社会福祉法人への配慮などから、株式会社の参入を認可しない自治体も多く、株式会社が運営する認可保育所は12年4月現在、376カ所と全体の2%にも満たない。
15年4月の子ども・子育て関連3法施行後は、自治体は株式会社であることを理由に認可を拒めなくなるが、これを前倒しする。
それはそれで早く進めてもらえばいいのだが、厚生労働省が規制改革会議に提出した資料
待機児童の速やかな解消に向けて
(平成25年3月21日 厚生労働省雇用均等・児童家庭局)
の参考資料p3(全体の14枚目)をみるとこのようにある。
③ 認可制度の改善等により保育需要の増大に対応
◇ 認可制度の見直しにより、大都市部の保育の需要増大に対応
・欠格事由に該当したり、需給調整が必要な場合を除き、質を満たしたものを「認可するものとする」(認可の恣意性の排除)ことで、大都市部の保育需要に機動的な対応が可能。
株式会社であることを理由に認可を拒むことはできないが、需給調整を理由に認可を拒むことはできることになる。
そうすると、市町村・東京都の特別区においては、新規参入による競争激化を懸念する既存の社会福祉法人が市議・区議経由で圧力をかける可能性は否定できない。
またそれ以上に問題だと思うのは、認可・需給調整含めて市町村・区単位になっていること。
特に東京都では、区境いに住んでいると居住地の住所と最寄駅が違う区にあることは往々にしてある。(たとえばマンション名では「吉祥寺」とつけられているのが多い練馬区立野町とか、東横線の駅が近い世田谷区下馬など。)
それに、通勤の問題がクリアされれば母親の勤め先に近い場所での保育所ニーズもあると思う。
保育所への補助が基礎自治体単位だから需給調整も基礎自治体単位でやりましょう、というのでは、潜在的なニーズを掘り起こすことができないのではないか。
「家の近く、しかも同じ市区町村内で働く」という人が少数である以上は、保育所も越境通所を前提に考えるべきで、越境児童については居住地の自治体が補助金予算を融通するなどの方策をとるべきではないか。
そこに至る前でも、自費負担をすれば認可保育所に入ることができる、という仕組みをつくれば、需要はより顕在化し「需給調整」もより現実的なものになるのではないか?
「金持ち優遇」という批判があるかもしれないが、そういうニーズがあるのはいわゆる富裕層ではなく、育児しながら就業を続けたいというワーキングマザーだと思うので、彼女たちが自腹を切ってまで通所したいというのであれば、それを否定する理由はないように思う(本来は自腹を切らずに通所できるのが一番なのだが)。
規制「改革」というなら、制度の枠組みから見直してみるべきではないだろうか。