真南に針路を取ってパタゴニアの大自然をめざそう。でもその最後の楽園でも環境破壊という現代の課題から逃れることはできない、というドキュメンタリー映画。
あらすじ・映画の背景はこういうもの。
趣味で自作していた登山用具の優れた機能が評判になり、サーファーやクライマー仲間を集めて工房を設立したイヴォン・シュイナードは、1968年のある日、友人のダグ・トンプキンスが南米大陸の南端部(参照)パタゴニアの山に登らないかと誘われた。
2週間後には二人は中古のヴァンと16ミリのカメラを手に入れ、サーフボードや登山道具を満載して南米を目指して旅立った。
帰国後二人はそれぞれ「patagonia」と「THE NORTH FACE」という小さな会社を設立することになる。
それから40年後、イヴォンとダグによる旅の記録映像を偶然見て衝撃を受けたアメリカの青年ジェフ・ジョンソンが、自分も彼らの旅を追体験しようとパタゴニアへ旅立った。
(詳細は公式サイト参照)
(以下ネタバレ注意)
映画はジェフ・ジョンソンの旅を追いながら、イヴォンとダグの記録映像や二人へのインタビューを交えて進みます。
そして40年の歳月を埋めるように、パタゴニアでイヴォンとジェフが合流し、山の頂を目指します。
しかし40年の歳月は、パタゴニアの大自然にあっても環境問題が切り離せないという現在も浮き彫りにします。
サーフィンやロッククライミングを楽しむことを人生の中心に置くジェフとその友人たちのライフスタイルと、旅の途中で知り合った人々との交流が前半の中心ですが、後半はパタゴニアの人びとの自然を守ろうという思い、そしてそれぞれの会社が世界を代表するアウトドア用具メーカーになった後70歳を過ぎてもアウトドア生活を楽しみながら環境保護に取り組むイヴォンとダグの生き方が描かれます。
この手の映画はややもすると企業=環境破壊=悪という紋切り型の図式を強調して、「同好の士」に支持されればいいや、という風になりがちです。その結果逆にそれ以外の人からは「定職を持たずに経済活動もしないで海や山で遊んでばかりの連中が自然保護を叫んでいる」とこれまた紋切り型の批判を受けることになります。
ただこの作品は、イヴォンとダグの間での環境問題に対するスタンスの微妙な違いや、イースター島のモアイ像と環境破壊など企業以前の問題(人間の原罪?)も取り上げられていて、教条的になることを免れています。
何より、旅とアウトドアライフの魅力、そしてイヴォンとダグの人間的魅力が味わえるのがこの映画の醍醐味です。
インタビューでのジェフの言葉
前に進むのが進歩だとしても、前が崖だと気がついたときには、後ろを向いて歩くのも進歩なのではないか。
タイトルはパタゴニアに向けて真南に進路を取れ、とともに、このセリフも象徴しています。
面倒なことを考えないで旅と大自然を楽しみむこともできますし、環境問題だったり人生における仕事の意味やワークライフバランスの意味を考えながら観ることもできる映画です。