一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「亡くなられたお客様、ご遺族の方の状況を十分に考慮し」

2006-10-11 | あきなひ

アイフルも「命担保」の生保打ち切りへ 大手4社そろう
(2006年10月10日(火)19:07 朝日新聞)

これに先立つこと金融庁から 「消費者信用団体生命保険への対応について」 というのも出てました。 
この中で、生命保険会社に対しては次のような要請がなされています。 

社団法人生命保険協会に対し、消費者信用団体生命保険加入時の被保険者同意の取り方、保険金支払時の遺族等への確認の取り方等を内容とする消費者信用団体生命保険に係る業界ガイドラインを策定し、その周知徹底を図ることを要請した。  

特に「保険金支払時の遺族等への確認の取り方」というのは下のような事件への配慮でしょう。 
遺族がアイフル提訴 死体診断書求められ苦痛  
(2006年3月24日 神戸新聞) 

訴状などによると、女性は「アイフル」など消費者金融四社から計約二百万円の借金を抱え、二〇〇四年八月、自宅で首をつって自殺した。  
〇五年六月、アイフルから長女に「ご依頼書」とした書面が送られ、債務の残金など総額約六十三万円を保険で回収するため、手続きに必要な死体診断書などの提出を求められたという。  
長女側は、「利息制限法の上限を超える高金利での貸金を行い、さらに同保険契約は命を担保にするなど公序良俗に違反する」と主張。  
さらに、金銭貸借の契約書と保険加入の同意書が同一であるほか、加入先の保険会社名や内容の説明がなく、契約は無効としている。  
長女は「かさぶたに塩を塗るようなもの。憤りを感じ、黙っていてはいけないと思った」と心境を語った。  

取立て態様が違法だったというのならともかく、「故人が保険に加入しているのを知らなかった、サラ金苦で自殺したのに保険金で回収するために協力せよ」ということ自体で損害賠償、というのが認められるかはわかりませんが相続放棄を前提にして保険契約の無効を訴えるのは意趣返しとしては有効かと思います(でも、原告適格あるのかな?)。

で、そもそもこの保険、グレーゾーン金利までカバーしているのか、そうだとすると、グレーゾーンの部分は遺族は不当利得として返還請求できるのかな、などと思い 「消費者信用団体生命保険 重要事項に関するご説明」(ユニマット・レディズのサイト)を見ると  

2.保障内容について 
(1)保険期間 
信用供与契約締結時から信用供与契約解約時または満71歳に到達するまでの期間 
(2)保険金額 
債務残高に応じて定まり、債務の借入および返済に応じて変動します。詳細はCFJ株式会社にご確認ください。なお、保険金は、債務の元本および所定の利息の一部の合計額と同額が支払われますが、300万円が保険金の上限額となります。したがいまして、債務の元本および所定の利息の一部の合計額が保険金の上限額を超える場合には、超過部分につきましては、保険金は支払われず、債務が残ることになります。 
(3)保険料 
契約者であるCFJ株式会社が負担します。  

微妙な書きぶりですね。
グレーゾーン部分については保険対象外のように読めます(保険会社的にはトラブルを避けるためにはそのほうがいいんでしょう)。 
また、保険期間が71歳までということは、70歳を越えると消費者金融でも借りにくくなるようです。  


ただ、冷静に考えてみると、そもそも保険をかけること自体は債務者に一方的に不利益なんでしょうか。 
保険料はコストとして結局利息の中に入っているので、考えようによっては不慮の事故があったときに保険金が下りたほうが借金を遺族に残すよりいい、ということもあると思います。

親が住宅ローンの団体信用保険に加入しているのを知らなかったといって、保険金支払手続に協力しない子供はいないと思います(そんな事いったら住宅ローンなんてみんな命担保だし、リバース・モーゲージなんかありえない、ということですよね)。 


問題は保険の建て付けが債務者の自殺による回収を働きかけさせるようなものであることにあり、そこをまずは改善すべきなのではないかと思います。 

たとえば保険の条件で自殺の場合は保険金が出ないことにしておけば、消費者金融側も過酷な取立てを控えるのではないでしょうか(偽装事故など、考えればきりがないですが、少なくとも偽装を具体的に示唆すれば取立て側の自殺教唆の立件もしやすくなるかと)。 
また、団体保険であれば、上限71歳というのも撤廃することも可能かと思うのですが(お年寄りの年金払込み前の当座の資金繰りなどに助かりますよね)  


一律やめる、というのは本当に消費者のためになるのか、ちょいと疑問が残ります。  

「命担保」などと煽るマスコミの心性は「目玉売れ、腎臓売れ」と迫る回収担当者とどこか共通のところがあるように思えてしまうのですが・・・


ところで先日いち早くこの保険をやめた武富士のリリース「消費者信用団体生命保険」取り扱い中止のお知らせ (平成18年9月29日)は含蓄があります。 

今後の取り扱いにつきましては、お客様が亡くなられた場合には、お客様、ご遺族の方の状況を十分に考慮し、適法に対応させていただきます。  

亡くなられた「お客様」の状況まで考慮する、というのは死亡理由の如何によって取立て方を変えることを想定しているんでしょうか。 
さらに「適法に」というのは、保険に入ってないんだから、死亡退職金や個人で加入した生命保険金もしっかりいただきますよ、ということでしょうか。   


世間の風向きが厳しいから大人しくしてはいるが、甘く見てはいけないぞ、ということですね。

コメント (5)
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