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玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

「叫び」は警告に使えるか

2012年07月13日 | 日記
 マイケル・マドセン監督の映画「十万年後の安全」を観た。原題はInto Eternityで“永遠の中へ”という意味。原発から出る高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマにした映画だ。
 フィンランドのオルキルオト島では、世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場の建設が行われていて、映画はその掘削現場に潜入して撮った映像と、地層処分に関わる専門家へのインタビューで構成されている。
 処分場は十万年間保持されるように設計される。プルトニウムが無害となるのに十万年かかるからだ。マドセン監督は十万年後の人類に、その危険性を確実に伝える方法があるだろうかと問う。インタビューに答え、「イエス……」と言いかけて絶句してしまう専門家の姿。誰も分かるわけはないのだ。
 十万年といえば、キリストが生まれてから今日までの約五十倍の年月である。十万年前はホモ・サピエンスの前のネアンデルタール人の時代である。言語で警告しても、十万年後の人類がそれを解するとは思えないし、なにか隠されたものがあれば掘り出そうとするのが人間の本性だ。十万年後の人類が放射線測定器を保有しているとは限らない。
 言葉では無理だから、画像で伝えるという発想もある。専門家の一人はムンクの「叫び」を警告に使用したらどうかと提案していたが、十万年後の人類がムンクの絵に考古学的興味を覚えたら大変なことになる。
 映画では地殻変動については言及されない。地震のないヨーロッパならではのことと思うが、六万年後に来ると言われる氷河期はどう影響するのだろう。氷河の重さは地層を変形させることさえあるのだから。
 マドセン監督は高レベル放射性廃棄物について、「原発に賛成であろうが反対であろうが、立ち向かわなければならない問題だ」と言う。放射性物質を無毒化することができない以上、地層処分はいずれ日本でも現実の課題となってくるだろう。地震大国の日本に、安全な永久処分場をつくる場所があるとも思えないが……。

越後タイムス6月25日「週末点描」より)

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