玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

諸刃の剣

2012年09月27日 | 日記
 沖縄県の尖閣諸島国有化に端を発した、中国における反日デモ等の報道が連日続いている。ニュースを見ていて感じたことは、デモの参加者に若者が多いことと、その言動があまりに過激であることだった。
 なかには、「日本に原爆を落とせ」だの、「日本人を皆殺しにしろ」などという、正気を疑う言葉が掲げられていて、これだけでも連日伝えられた反日デモの異常さを窺うことができる。
 若者が多いということは、それだけ若者の間に現状への不満が鬱積していることを示しているし、過激なスローガンは彼等が自らの理性をコントロールできていないことを示してもいる。自らの首を絞めるような略奪行為にいたっては論外である。
 中国当局が千二百円の日当を出してデモの参加者を募ったなどという報道もあるが、あり得ることだ。ナショナリズムを煽ることで、国内の矛盾を覆い隠し、国威発揚につなげることができる。歴史上こうしたことは、何度も繰り返されてきた。かつての日本においても……。
 今回、日本国民の冷静な対応は特筆に値する。鈍感なわけではあるまい。あの異常な行動に対して、「相手にする必要はない」と考えているのに違いない。ナショナリズムは諸刃の剣であり、振り上げた拳はいずれ自らの上に落ちてくる。独善的で排外主義的なナショナリズムが破綻しなかったためしはないのだ。
 柏崎からの進出企業に被害はなかったようだが、柏崎出身者で仕事上、暴動の影響を受けた人はいる。次号で現地レポートをお伝えしたい。
 ところで、今年は日中国交正常化四十周年の年であったはずだ。観光交流にも大きな期待が寄せられたというのに……。田中角栄も周恩来も草葉の陰で泣いていることだろう。

越後タイムス9月25日「週末点描」より)

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スケールの勝利

2012年09月27日 | 日記
 三日から五日までエネルギーホールで個展「赤ふん遊戯」を開いた関根哲男さんの“おすすめ”に従って、十日町市を中心に開催されている「大地の芸術祭」を見物に行ってきた。
 まず十日町市の温泉施設「キナーレ」でボルタンスキーを見ろということだったので、「キナーレ」へ。回廊の内部全体を使った巨大なインスタレーションであった。三十メートル四方はあろうかという中庭に、二十トンもの古着が山積みにされ、それをクレーンが摘んでは落とし、摘んでは落とししている。
“No Man's Land"と題されたそれは、心臓音のような音響効果と相俟って、強烈な印象を残す。「誰もいないところ」だな……。津波で人のいなくなった瓦礫の山のようでもあり、強制収容所における虚殺の後始末のようでもある。文句なしに凄い。
 もうひとつ凄かったのは、十日町市の旧清水小学校体育館に積み上げられた、美術評論家・故中原佑介の蔵書の山。天井近くまで、ボックスに入った三万冊の本がピラミッドのように積み重ねられている。“こんな本の展示の仕方があったのか”と思うと同時に、これは“バベルの図書館”であり、知の構築物もまたいつかは崩れることを寓意しているのかとも思った。
 スケールの勝利である。“No Man's Land"が小さければ、UFOキャッチャーにしか見えないだろう。三万冊の本もあれだけ高く積まなければアートにならない。現代アートはスケールで勝負する時代に入った。
 関根さんの「赤ふん群像」は旧松代町の小荒戸集落に展示されていた。集落全体に四十五体の歴史上の人物に赤ふんをつけた像が配置されている。しかし、それでも小さい。赤ふんを着けたカッパの眼が、少し悲しそうに見えた。

越後タイムス9月10日「週末点描」より)

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新潟弁で書かれた『苦海浄土』

2012年09月27日 | 日記
 新潟市寺尾の新村苑子さんの『律子の舟』││新潟水俣病短編小説集Ⅰという本ができたので、納品に出掛けてきた。熊本の水俣病に関しては、石牟礼道子の『苦海浄土』を代表として、数々の文芸作品や演劇・映像作品がつくられているが、新潟水俣病に関しては、佐藤真監督の映画「阿賀に生きる」があるのみであった。
『苦海浄土』が熊本弁の圧倒的呪力と詩情をもって完璧な作品となっているために、逆にそれが高い障壁となって、これまで文芸作品の成立を拒んできたという事情がある。ようやく新潟水俣病をめぐる新しい文芸作品を刊行することができた。それにしても“新潟水俣病”という病名は違和感を感じさせるもので、『律子の舟』にもそれがどこまでも“仮の名前”であることが指摘されている。
 福島潟にある「新潟水俣病資料館」まで足を伸ばし、館にも本を置かせてもらった。館の正式名称は「新潟県立環境と人間のふれあい館」というので、平成七年の被害者の会・共闘会議と昭和電工との解決協定締結(協定で館の設立が条件とされた)を受けて建設されたものだという。
 館内には阿賀野川に棲む生き物やジオラマが展示され、新潟水俣病三十年の歴史を、映像やパネル展示、資料で紹介している。ただし、資料は館内閲覧のみで、貸し出しもコピーもできないという。コピーくらいできるようにした方がよいと思うが……。
 隣りには、加藤登紀子が館長をつとめるビュー福島潟が建っている。せっかく来たのに時間がなくて、立ち寄ることができなかった。自然豊かで風光明媚なところである。また今度訪れようと思いながら、福島潟を後にした。
『律子の舟』はA5判252頁。定価1,500円(税込み)。問い合わせは玄文社(電話・FAX0257-21-9261)まで。

越後タイムス8月24日「週末点描」より)

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蚊への抵抗力

2012年09月27日 | 日記
 暑い。今年の夏も暑い。しかし今年、市の市民節電所モニターに応募したこともあり、クーラーは極力使用しないようにしている。事務所は風が通らず西日があたるので、夏の間は使わず、風の通る部屋に仕事場を移した。
 日中は書類が飛んでしまうほど風が通るので、快適に仕事ができる。しかもクーラーを使わないから節電もできる。七月の電気料は昨年よりかなり減少した。もっと早く実行しておくべきだった。
 寝室にもクーラーはない。家のつくりが風がよく通る構造になっているので必要がない。窓を開け放って寝れば、何も問題はない。しかし、蚊が入ってくる。蚊を防止するには、網戸をつけるか、蚊とり線香を焚くかすればいいのだが、面倒臭くて何もしない。
 ある夜、めちゃくちゃに蚊に刺され、一晩中痒くて眠ることができなかった。寝ぼけ眼でキンカンを塗って痒みを止めようとするが、あとからあとから蚊が襲ってきて、拷問のような一夜を過ごした。
 では、翌日対策を講じたかというと、面倒で何もしなかった。その後、不思議な現象が現れた。蚊にいくら刺されても、大して苦痛を感じなくなったのだ。蚊にたくさん刺され続けると、耐性が出来て痒みを感じなくなるのだそうで、自分にもそんな耐性ができたのだ。
 今夏の大きな収穫だが、手足は蚊にやられた跡だらけ。蚊は病原菌も運ぶので、こんなことは人様にお薦めできることではない。

越後タイムス8月10日「週末点描」より)

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タイムスデジタル化

2012年09月27日 | 日記
 今年三月に、市立図書館から本紙「越後タイムス」をデジタルデータ化したいので許可してほしい旨の連絡があった。創刊から約一年後の明治四十五年五月五日号からで、欠号もあるようだ。
 戦前のものは特に原紙の劣化が激しく、マイクロフィルム化はされたが、フィルムリーダーが老朽化して利用できない状況だという。時代とともに記憶媒体が変化したため、マイクロフィルムの利用価値は失われてしまった。
 CD化したところでCD自体が百年保つかどうか分からない。幸い、最近ではCDではなく、もっと大容量のUSBメモリというものがあるし、ファイル形式もPDFという共通性の高いものがあるから、これなら長期保存が可能になる。
 以前からネット上に「越後タイムス見出し一覧」がアップされていて、それを見て、紙面をコピーして送ってくれないかという問い合わせが結構ある。今までは図書館まで足を運んで閲覧して探し出し、コピーしてもらって送っていたが、データを提供してもらえば、図書館に行かなくても処理できる。
 データをいただけるということなので、迷うことなくOKした。しかし、百年分のデータである。どんな大容量のUSBメモリでも、何本も必要となると思っていたが、データ量は八ギガバイト弱で、八ギガのUSB一本で済むという。電気店で千二百円で売っている。
 データを受け取って、百年分のデータが、いかに週刊紙とはいえ、たった千二百円のこんな小さなメモリ一本に収まってしまうことに驚きを禁じ得なかった。データは戦時中の休刊をはさんで、昭和六十二年十二月十三日号まである。これで自宅に居ながらにしていろんな調べ物ができることになった。

越後タイムス7月25日「週末点描」より)

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