玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

キジの声

2012年07月13日 | 日記
 まち中なのに、「ケーン、ケーン」とキジの鳴く声が一週間ほど続けて聞こえていた。このあたりでは、スズメやカラスの鳴き声はすることはあっても、キジの鳴き声を聞くのは、今までになかったことだ。時々、キジバトの「デデッポッポー」という声が聞こえてくることはあるが……。
 キジの姿は刈羽の林道や里山などでよく目にする。「あっ、キジだ」と思った時にはもういない。逃げ足が速いのだ。特にオスの美しい姿をじっくり見たいと思っても、素早くどこかへ行ってしまう。
 これを「けんもほろろ」と言うのだそうで、“けん”はキジの鳴き声の「ケーン」から、“ほろろ”はキジの羽音からきているのだという。嘘みたいな本当の話だ。
 近頃キジの姿を見ることが多くなったような気がする。鳴き声もよく聴く。きっと個体数が増えすぎて、ナワバリを追われた一羽がまち中に逃げてきたのだろう。一週間ほどで声が聞こえなくなったところからみると、飛ぶのがあまり上手でないキジにとって、まち中で暮らすことはむずかしいことなのに違いない。
 ところで、江戸時代までの日本人が食用とした肉で一番大きな割合を占めていたのが、キジ肉だという。今はあまり食べる習慣がないが、実は大変美味しいのである。キジ鍋はカモ鍋に劣らず絶品で、冬にはおすすめだ。
 炊き込みご飯にしても、鶏肉よりもはるかにコクがあって美味しい。キジ肉とキジ卵でつくる親子丼というのもあり、卵が濃厚な味で贅沢な一品らしいが、未だ食べたことはない。大型の禽類の中では一番美味しいと思うが、スーパーでは売ってないし、取り寄せると結構高いので、めったに口に入らない。
 近所にしばらくいたはずのキジは、ひょっとして誰かに捕まえられて食べられてしまったのかも知れない。

越後タイムス6月8日「週末点描」より)


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