玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

幻の古浄瑠璃

2008年09月29日 | 日記
 一昨年、飯塚邸で開いた「傾城阿波の鳴門」とはまるで違った、シンプルでテンポの速い鶴澤淺造さんの弾き語りで、古浄瑠璃は進行していった。初段は、弥彦に住む長者の道楽息子が家来を連れて柏崎の遊郭に遊びに来るが、荒くれ者と喧嘩になり、家来が斬られるという筋である。
 言ってみれば、大衆向け娯楽人形劇で、鶴澤さんの言うように「文学性は低い」。しかし、人形の動きがスピーティーで大変面白い。人形がすぽっと編み笠はかぶるは、立ち回りはあるは、首はすっ飛ぶは、大スペクタル人形劇なのであった。
 越後猿八座の十人のメンバーとの交流会に参加した。鶴澤さんと西橋八郎兵衛さん以外の八人はプロではない。今年二月から、西橋さんの指導の下で、人形遣いの練習を積んできた人たちで、六十代の人もいれば、二十代の人もいる。皆さん口を揃えて「やっていて楽しい」と言う。
 月に四日間、一日四時間集中して練習を続けているという。さぞかし辛い練習だと思うのだが、「辛いことなんかない。面白くてしょうがない」というのである。皆さん仕事を持ちながらも、自発的に参加してきた人たちで、「こんな面白いことはない」というのは本音だろう。
 それが舞台から伝わってきた。うまくやろうとか、そんなことは考えず、とにかく“楽しんでやれ”という感じで、それが人形の生き生きとした動きに表れていた。来年六月の本公演までには、皆さんの技術も格段に向上していることだろう。とても楽しみである。
 「越後國柏崎・弘知法印御伝記」の復活上演は、国内のみならず世界を射程に入れたプロジェクトで、鶴澤さんによれば、すでにポーランドとドイツから公演の打診が来ているという。そんな公演が最初に柏崎で行われることは大変光栄なことである。
 ところで、鶴澤さんは文楽以外では“鶴澤淺造”の名をつかうことが許されないので、“越後角太夫”の名前で、この幻の古浄瑠璃復曲に取り組んでいる。

越後タイムス9月26日「週末点描」より)


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おおきな箱

2008年09月20日 | 日記
 社会保険庁から会社宛に「ねんきん特別便」が送られてきた。被保険者が十人未満の事業所への発送は今年六月から始まり、九月十日に完了予定だそうで、ぎりぎりの到着であった。
 しかし驚いたのはその荷姿であった。なんと長さ四十センチ、巾二十六センチ、高さ九センチのダンボール箱に、たった六通の「特別便」が入っていた。いっぱいに詰めれば、二百~三百通は入るだろうしろものである。
 最初は「何だろう?」と思い、「社会保険庁社会保険業務センター」の名前があったので、「年金記録の喪失等で国民に迷惑をかけたお詫びの品だろうか」と本気で思ってしまった。「なにかおいしいものでも入っているのでは」という期待は、当然のようにはずれた。
 社会保険庁は、いったい何を考えているのだろう。全国に十人に満たない事業所は無数にあるだろうに、二百~三百人規模の事業所に合わせて、共通の箱をつくったのだろうか。こんな大きな箱を大量につくったのでは、資源の無駄だし、輸送費用だって余計にかかってしまう。
 もっときめ細かく、規模別に荷姿を変えるべきだ。まったく民間であれば絶対にあり得ない発想で、今更ながら“お役人”の頭の中がどうなっているのか疑ってしまうような「特別便」であった。まあ、そういうきめの細かい仕事ができないから、年金記録の問題が起きてしまったのだろうが……。経費は、全て我々の税金で賄われているのだから、看過すべきことではないだろう。
 ところで、加入記録はたったの一行。ものすごく分かり易くて、資格取得年月日も加入月数も間違っていなかった。めでたし、めでたし。

越後タイムス9月12日「週末点描」より)


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