玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

上海で行方不明

2007年02月26日 | 日記
 未だに上海の毒気が抜けないせいか、風邪をひいてしまうわ、体調はイマイチだわで、今週も暮れていく。水野竜生氏の個展についての連載は、五回続けるつもりでいる。いくらでも書きたいことは後から後から出てくる状態で、かなりハイな状態になっている。
 栗林苔雪さんが、柴野の行方不明事件のことに来週触れるので、前もって言い訳をしておきたい。外灘の和平飯店でオールドジャズを楽しむオプションがあって、まずはバンドという細長い公園で一旦解散。上海の夜景を楽しんで十五分後に集合ということになった。トイレに行きたくなって、一人で行動。有料トイレで用を足して、公園に戻ると、暗くて集合場所がどこだったか分からない。知っている顔がひとつもない。
 細長い公園を行ったり来たりして、ツアーの一行を探したが見つからない。一時はどうしようかと思ったが、和平飯店は道をはさんで目の前にある。そのことは確認済みだったので、慌てずに目的地を目指した。ところが、公園と外灘のビル街の間の道路は広く、横断歩道などはない。
 “地下道を探すしかない”と思って、それらしきところに降りていくと、料金所があって、どうも地下通路ではないようだ。係員の女性に日本語も通じなくて断念。再び地上へ。
 “絶対に地下通路はあるはずだ”と確信して、反転。しばらく歩いてそれを見つけた。地下道を通ってなんとか和平飯店の正面にとりついたのだが、いくつかある入口も銀行の入口で、警備員がいるだけ。“そうか、正面とは限らない”と思って、建物の側面に廻ったら大きな入口があって、そこがオールドジャズバンドを楽しむツアーの一行の居場所だった。
 皆さんに心配させて申し訳ないことをしたと思っている。その後、オールドジャズを心ゆくまで楽しんだといいたいところだが、演奏のあまりのゆるさに耐えられず、一緒に参加した友人と、その場をトンズラしたのだった。

越後タイムス2月16日「週末点描」より)


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モクズガニだった

2007年02月10日 | 日記
 上海ガニはモクズガニだった。鵜川などで獲れるモクズガニが上海ガニの仲間ということは知っていたが、見た目も同じ、味もまったく同じであった。オレンジ色のカニミソの味が若干違っているように感じたが、調理法の違いによるのだろう。モクズガニは茹でて食べるが、上海ガニは蒸して食べる。
 蒸す方が、うま味が逃げないから、美味しいに決まっている。絶妙の蒸し加減で、カニミソのうまかったこと。モクズガニも調理法を確立すれば、柏崎の名物になり得ると思った。モクズガニはツメに毛が生えていて気味が悪いとか、小さくて食べにくいとか言われるが上海ガニもまったく同じことだ。
 水野竜生氏の個展激励ツアーで、上海料理を堪能することができた。中国料理はやはり本場で食べるに限る。調理法はどんどん進化していて、味にバラエティがあるし、野菜料理も多く、脂っぽさはほとんどない。上海料理は味付けがあっさりしていて、日本人に向いている。
 豚肉も食べた。牛肉も食べた。アヒルも鶏もハトらしきものも食べた。小龍包もおいしかった。売店で買って食べた煮玉子も、中国風おでんもめちゃくちゃ安くておいしかった。中国人は飛んでいるものは飛行機以外、四つ脚のものは机と椅子以外は何でも食べると言われるが、それは広東料理の話で、上海料理に悪食はない。
 坊主がその匂いにたまらず垣根を跳び越えて来るという、山海の珍味でつくった“仏跳牆”というスープも絶品だった。でも、もう少し悪食に期待する気持ちはあった。今まで食べたことのない食材を味わってみたかった。
 というわけで、お土産にレトルト食品の“狗肉”を買ってきた。ワンちゃんの肉である。まだ食べていない。もうじきゲテモノ食いの二人の娘が帰省するので、一緒に食べることにしている。期待に胸がワクワクしている。

越後タイムス2月9日「週末点描」より)


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上海へ

2007年02月10日 | 日記
 この号が出る頃には、まだ上海の空の下にいる。インターネットで記事を送る方法もあるのだろうが、面倒くさいので書いてから出掛けることにする。水野竜生氏の上海美術館主催個展激励ツアーに参加するため、生まれて初めて日本を離れることになった。海外が初めてという人間が八十人ものツアーの代表というのは恥ずかしい限りだが、成り行き上やむを得ない。
 ところで、今回の激励ツアーでいろんな人に声を掛けたが、非常に不思議な傾向が見られたので報告しておきたい。独身者はともかく、配偶者のいる男性と女性とで大きく対応が違っていたのである。
 多くの男性は上海旅行をするにあたって、「妻に相談してから決める」とか「妻の許しを得なければ」などと、まことに優柔不断な対応だったのに対して、女性の方にはそんな遠慮は見られなかった。「夫に相談して」などという女性はほとんどいなかった。
 まるで、“男女共同参画社会”が既に実現されているようにも思われるし、逆に女性の自由度の方が大きくなっているようにも思われる。しかし、必ずしもそうではあるまい。普段束縛の多い女性が“旅行くらいは自由にさせてもらうわ”と思っていて、夫もそれを認めているということだろう。
 逆に男性の方は、普段好き勝手に遊び歩いているため、海外旅行ともなれば、さすがに申し訳なくて“妻の許可を得て”ということになってしまうのではないだろうか。多分この推理は当たっているだろう。
 まあ、そんなことは抜きにして、水野氏の個展をしっかり観てくることにしよう。そればかりでなく、上海蟹をはじめとする上海料理を食べたことがないので、実は食べ物がとても楽しみなんです。

越後タイムス2月2日「週末点描」より)


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