玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

稲作と年度

2013年04月18日 | 日記
 四月に入ってようやく春が来たという感じがする。里山ではマンサクの花が咲き、フキノトウが顔を出し、キクザキイチリンソウやカタクリも花弁を開こうとしている。庭先ではレンギョウも黄色い花をつけ、ハクモクレンも蕾を大きくしつつある。ソメイヨシノはまだかなと思っていたら、週末の高温でほころび始めた。
 春は年度の始まりでもある。小中高大学では入学式が行われ、新入生らは緊張の中にも新しい生活への期待を大きくしているだろう。企業もまた新入社員を迎え入れ、彼等もまた「これから社会に出る」という大きな人生の節目を実感しつつあるだろう。
 ところで一月から十二月を年度とせず、四月から翌年三月までを年度とする習慣はいつ頃始まったのだろう。調べてみると、明治十九年にお役所が始めたものだそうで、稲作の盛んな日本では、苗代への種まきの時期にあわせた徴税を行うためであったという。
 学校の年度は、当初は九月から(収穫の終わる時期にあわせたのだろうか?)だったそうだが、徐々にお役所の年度に合わせるようになっていったのだそうだ。春が来て稲の種をまく、そんな時期に新年度が始まるのは、まことに稲作の国・日本にふさわしいことであったのだ。
 東京大学は一年前、秋入学への移行を打ち出した。世界では七割の大学が秋入学制度になっていて、それにあわせないと、国際化の中で置いていかれるし、学生のレベルアップも図れないという理由からだった。しかし、高校が現行のままであれば、新入学生に半年間のギャップが生じてしまう。
 全部の学校を秋入学制度に移行すれば問題はないのだろうが、それは事実上不可能に近い。結局東大は秋入学を断念し、秋からの授業開始という方向に舵を切ることになりそうだ。
 やはり新年度の開始は春がふさわしい。農耕の始まる時期だからだ。そういうことが忘れられてしまうことのないように願っている。

越後タイムス4月10日「週末点描」より)

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