玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

映画館がない

2006年12月29日 | 日記
 年内通常号は今号で終わり。これから新春号に取り組むことになる。一息ついて今年一年を振り返ってみると、比較的平和な年だったなと思う。大きな事件も災害もなく、じっくりと紙面づくりに取り組むことができたと言いたいところだが、相変わらずの多忙で、充実した紙面を提供できなかったことが悔やまれる。
 思い残したことがひとつある。クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」を観ることができなかったことだ。どうしても観たかったのだが、映画館を失ってしまった柏崎市民にとっては、三条市か新潟市にまで行かなければならず、時間をつくることができなかった。
 アメリカ人のつくった戦争映画の中では、フランシス・F・コッポラの「地獄の黙示録」が最高だと思っている。優れた戦争映画は、優れた戦争文学のように、我々に重い問題を突きつけ、多くのことを考えさせる。日本兵二万一千九百人が命を落とした硫黄島の戦いをテーマにした「父親たちの星条旗」は、より日本人にとって切実な映画であることだろう。
 評価は圧倒的で、「イーストウッドの最高傑作」とか「前世紀と今世紀を含めた中で最高傑作の一つ」とか言われている。あのマカロニ・ウェスタンの名優・イーストウッドが監督としての経験を積んで、どんな傑作を作り上げたのか、「地獄の黙示録」をも超えるというその作品を見ないわけにはいかない。
 しかし、もう一本ある。硫黄島の戦闘を日本人の側から描いた「硫黄島からの手紙」が、日本では今月九日に封切りとなる。投降することもなく、無意味に死んでいった日本兵の気持ちを、最初イーストウッドはよく理解できなかったというが、そこのところをどう描いているのか興味がある。アメリカ人が今まで第二次大戦であれ、ベトナム戦争であれ、他国人の側から戦争を描いたことなど、映画史上一度もないからである。
 年内は、新春号に専念したい。なんとか新年に入ってから「硫黄島からの手紙」を観たいと思っている。それまで上映しているんだろうか。

越後タイムス12月8日「週末点描」より)


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