10月11日付け朝日新聞朝刊の社会面には、連載記事「「安倍発言」を歩く」 2017衆院選」の第1回が載っていた。
見出しは「こんな人たちに… 見えた分断」。
7月1日に安倍首相がJR秋葉原駅前で都議選の応援演説をした際の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言を引き出した、「帰れ」「やめろ」コールに加わった60代の女性の話が載っている。
選挙演説はいつから国民が政治家に「声をあげ」る場所になったのか。
選挙演説は、選挙の立候補者の人物や主張を有権者に広く知ってもらうためのものである。反対派が政治家と団体交渉する場ではない。
そして、選挙演説はただの街頭演説とは違う。その妨害は法律で禁止されているというのに。
と思っていたら、12日付け朝刊の政治面には、「首相 聴衆に「法律守って」 9条改正への抗議 「選挙妨害」の声に呼応と題して、こんな記事が。
「女性による抗議が、公職選挙法に定める「選挙の自由に対する妨害」にあたるとの考え」
とあるところを見ると、朝日新聞としては、安倍首相はそう考えているが、そうでない考え方も有り得ると見ているということなのだろうか。
公職選挙法には次のようにある。
これを読めば、個別具体的な事例をどう判断するかは別として、一般論としては、選挙演説の妨害が法律違反であることは、誰の目にも明らかであろう。
朝日新聞は、何故この条文を引用しないのだろうか。
(同じ新潟での首相発言を取り上げた産経新聞のネット記事では、条文を引用している)
私は朝日新聞の購読者だが、「こんな人たち」発言を批判する記事はたくさん見たが、その原因となった「帰れ」コールについて、選挙妨害だと指摘する意見を見た覚えがない。
これでは、また同じような事態が繰り返されかねない。
選挙は民主制の根幹であり、その自由は最大限に尊重されなければならない。
安倍首相に反対する人がいるのはかまわない。大いに反対意見を表明すればよい。だが選挙演説を妨害してはならない。他人の発言の場で、その発言を封じてはならない。
そんな単純なことが理解できない人を批判することを「分断」だと朝日新聞が煽るのなら、私は「分断」した批判者の側に付きたい。
それは結局、選挙を尊重するか、直接行動を尊重するかの差であろうから。
見出しは「こんな人たちに… 見えた分断」。
7月1日に安倍首相がJR秋葉原駅前で都議選の応援演説をした際の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言を引き出した、「帰れ」「やめろ」コールに加わった60代の女性の話が載っている。
10日、安倍晋三首相は福島市で演説していた。
「みんなで安心できる日本をつくっていきたい」
千葉県のヨガ講師、60代の由美子さんはテレビで演説を聞いて思った。
「だけど、『こんな人たち』の声は聞かないんでしょ……」
由美子さんは当初、フルネームでの記事掲載をログイン前の続き了承していたが、政権を批判した知人に脅迫状が届いたという話を聞き、怖くなった。
政治への関わりはさほどなかった。7月、東京・秋葉原で首相のあの言葉を聞くまでは。
シングルマザーだった30代のころ、息子2人を育てるため、朝から晩まで働いた。清掃員や飲食店員など三つの仕事を掛け持ち、「生活に必死だった」という当時、投票に行った記憶はない。自身の年金は月額にして3万7千円程度。必死で税金を納めてきたのに、年金だけでは暮らせない。休日返上で働いていた宅配会社勤務の息子も残業代をカットされた末に退職した。
そんなとき、首相が7月1日に秋葉原で都議選の応援演説をすると知人から聞いた。初めて「政治がおかしい」と思いをぶつけたいと考えた。「無駄かな」と気持ちは揺れたが、首相に直接声を伝えるチャンスは今しかないと決意し、向かった。
選挙カーの首相がマイクを握った。プラカードや横断幕を掲げた人たちが、首相への「帰れ」コールを始めた。その後も「やめろ」コールが途切れなかった。由美子さんは遠巻きに見つめた。すると、通りすがりのサラリーマンや子連れの人も足を止める。「おかしいじゃないか!」「もうやめてくれ!」。いつしか由美子さんも声をあげていた。
そのとき、首相が自分たちのほうを指さして声を張り上げた。
「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」
由美子さんは言葉を失った。「やっと声をあげたのに。この人は私たちの暮らしを守ってくれないんだ」。空しくなった。
「やめろ」コールを続けた内装業の井手実さん(37)は「国民は言いたいことがたくさんあるけど、全部は伝えられない。だから『安倍やめろ』で意思表示した」という。
〔後略〕
(貞国聖子)
選挙演説はいつから国民が政治家に「声をあげ」る場所になったのか。
選挙演説は、選挙の立候補者の人物や主張を有権者に広く知ってもらうためのものである。反対派が政治家と団体交渉する場ではない。
そして、選挙演説はただの街頭演説とは違う。その妨害は法律で禁止されているというのに。
と思っていたら、12日付け朝刊の政治面には、「首相 聴衆に「法律守って」 9条改正への抗議 「選挙妨害」の声に呼応と題して、こんな記事が。
衆院選で街頭演説していた安倍晋三首相が12日、新潟市内で聴衆の女性から憲法9条の改正について抗議され、「選挙は民主主義の原点だから、しっかりと法律を守っていこうじゃありませんか」と呼びかける一幕があった。女性による抗議が、公職選挙法に定める「選挙の自由に対する妨害」にあたるとの考えを述べたとみられる。
首相が同市内の商店街で街頭演説をしていた際、聴衆の前方にいた女性が「憲法9条が平和を守ってきた。どうして変えるのか」などと叫んだ。それでも、首相が演説を続けたところ女性は大声で訴えつづけ、聴衆の男性が「選挙妨害するな」と声を上げた。聴衆から男性に拍手があがり、首相は「皆さん、ありがとうございます」と述べ、法律を守ろうと呼びかけた。
首相は7月の東京都議選で、東京・秋葉原で街頭演説をした際、聴衆の一部から「帰れ」コールを受け、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と反論して批判を浴びた。
(永田大)
「女性による抗議が、公職選挙法に定める「選挙の自由に対する妨害」にあたるとの考え」
とあるところを見ると、朝日新聞としては、安倍首相はそう考えているが、そうでない考え方も有り得ると見ているということなのだろうか。
公職選挙法には次のようにある。
(選挙の自由妨害罪)
第二百二十五条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
〔後略〕
これを読めば、個別具体的な事例をどう判断するかは別として、一般論としては、選挙演説の妨害が法律違反であることは、誰の目にも明らかであろう。
朝日新聞は、何故この条文を引用しないのだろうか。
(同じ新潟での首相発言を取り上げた産経新聞のネット記事では、条文を引用している)
私は朝日新聞の購読者だが、「こんな人たち」発言を批判する記事はたくさん見たが、その原因となった「帰れ」コールについて、選挙妨害だと指摘する意見を見た覚えがない。
これでは、また同じような事態が繰り返されかねない。
選挙は民主制の根幹であり、その自由は最大限に尊重されなければならない。
安倍首相に反対する人がいるのはかまわない。大いに反対意見を表明すればよい。だが選挙演説を妨害してはならない。他人の発言の場で、その発言を封じてはならない。
そんな単純なことが理解できない人を批判することを「分断」だと朝日新聞が煽るのなら、私は「分断」した批判者の側に付きたい。
それは結局、選挙を尊重するか、直接行動を尊重するかの差であろうから。