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片山さつき議員によるクマラスワミ報告に関する質問主意書とその答弁書を読んで

2012-09-30 12:12:18 | 現代日本政治
 しばらく前に、片山さつき参議院議員が、クマラスワミ報告に対する日本政府の対応について質問主意書を提出し、それに対する答弁書を受領したとの記事を見た。

 質問主意書は次のとおり。

従軍慰安婦問題に係る国連特別報告書に関する質問主意書

弁護士の戸塚悦朗氏は、一九九二年二月、国連人権委員会で従軍慰安婦問題を「日本帝国軍のセックス・スレイブ」だとし、NGOとして初めて提訴した。彼は、一九九二年から一九九五年までの四年間に、国連に対して合計十八回のロビー活動を行い、一九九六年にはついに国連人権委員会で特別報告書(クマラスワミ報告書)が提出・採択された。本報告書採択の際の政府の対応につき、以下、質問する。
一 クマラスワミ報告書には、「本報告書の冒頭において、戦時下に軍隊の使用のために性的奉仕を行うことを強制された女性の事例を軍隊性奴隷制(military sexual slavery)の慣行であると考えることを明確にしたい」とある。これにより、国連の報告書に「セックス・スレイブ」という言葉が入った。当時、外務省は、クマラスワミ報告書が採択される前に、四十ページにわたる反論文書を提出した。ところが、これがなぜか突然、撤回された。なぜ、報告書採択直前になって急遽撤回に至ったのか。その理由・経緯について説明するとともに、政府の見解を明らかにされたい。
二 クマラスワミ報告書採択当時の橋本政権においては、社民党が与党であった。日本政府は、クマラスワミ報告書へ反論する代わりに、「もう日本は謝っている。財団法人女性のためのアジア平和国民基金も作っている。」という旨の文書に差し変えてしまった。これにより、この見解が日本政府の国際社会に対する立場になってしまった。政府がこのような対応を採った理由・経緯について説明するとともに、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。


 なんか文章がヘン。
 「弁護士の戸塚悦朗氏は、」以下の彼の活動のくだりは質問内容と直接関係ない。何故彼の名を挙げる必要があるのか。
 また、「橋本政権においては、社民党が与党であった」という記述も唐突。社民党の圧力により撤回、差し変えが行われたのではないかと問いたいのだろうとは思うが、文章がこなれていないため、意味不明。
 そもそも「一」で問うている「急遽撤回に至った」「理由・経緯」の説明及び政府見解と、「二」の「差し変え」た「理由・経緯」の説明及び政府見解とは、同じことを聞いているに等しいのではないか。

 ちょっと検索してみたら、「救う会」会長の西岡力がブログでこの質問主意書と似たようなことを書いている。

 日本人弁護士戸塚悦朗こそが「慰安婦=性奴隷」という国際謀略の発案者だった。戸塚は自分のその発案について次のように自慢げに書いている(『戦争と性』第25号2006年5月)。

〈筆者[戸塚のこと・西岡補]は、1992年2月国連人権委員会で、朝鮮・韓国人の戦時強制連行問題と「従軍慰安婦」問題をNGO(IED)の代表として初めて提起し、日本政府に責任を取るよう求め、国連の対応をも要請した〉〈それまで「従軍慰安婦」問題に関する国際法上の検討がなされていなかったため、これをどのように評価するか新たに検討せざるをえなかった。結局、筆者は日本帝国軍の「性奴隷」(sex slave)と規定した。〉

 この戸塚の規定が国際社会での反日謀略のスタートだった。日本人が国連まで行って、事実に反する自国誹謗を続けるのだから、多くの国の外交官が謀略に巻き込まれるのは容易だった。彼の国連ロビー活動は、92年から95年の4年間で海外渡航18回、うち訪欧14回、訪米2回、訪朝1回、訪中1回と執拗に繰り返された。戸塚らの異常な活動の結果、96年に戸塚の性奴隷説が国連公式文書に採用された。

 国連人権委員会の特別報告者クワラスワミ女史が人権委員会に提出した報告書(『戦時における軍事的性奴隷問題に関する朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国および日本への訪問調査に基づく報告書16』)に「戦時下に軍隊の使用のために性的奉仕を行うことを強制された女性の事例を、軍隊性奴隷制(military sexual slavery)の慣行であると考えることを明確にしたい」と書かれた。

 同報告書は、吉田清治証言や女子挺身隊制度による慰安婦連行説を事実認識の根拠としている。事実認識が間違っているのだ。外務省は同報告が採択される直前に40頁にわたる反論文書を人権委員会に提出した。ところが、突然、反論文書は撤回され、事実関係には言及せずすでに日本は謝罪しているとした弁解文書に差し替えられた。当時は社会党が与党だった。これ以降、外務省は事実関係に踏み込んだ反論を一切しなくなる。これが米議会決議に飛び火した。


 さらに、「続・慰安婦騒動を考える」というサイトの今年8月19日付けの「誰が外務省の反論を封じたのか?」という記事には、ニコニコ生放送での片山と西岡と池田信夫が出演した番組における、次のような会話が掲載されている。

西岡力: さすがにこの時は、外務省はですね、クマラスワミ報告に対して、採択する直前に40ページに渡る事実関係に踏み込んだ反論文書を出したんです。ところが、それが突然撤回されちゃうんです。で、これはぜひ(片山さつき)先生にも国政調査権を使ってですね、なんで文書が撤回されたのか。当時橋本政権ですね。社会党が与党ですよ。

片山さつき: (メモを取りながら)「自社さ」ね、はい。

西岡: で、戸塚(悦朗)弁護士なんかが書いてるものだと、外務省は事実関係で反論してきてケシカランと。日本国内で論議しなきゃならない、日本の政治家が動かしてると書いてるんです。ある面で外務省だけの責任ではなくて、政治の責任ね、外務省もそこでは頑張って、さすがに吉田清治の証言が引用された文書を国連で採択されることについては反論したわけです。でもこの文書、非公開ですよね。ないことになっちゃってる。

で、それで、その文書の代わりに、日本はすでに謝ってますと、アジア女性基金も作りましたという文書に差し替えた。それ以降、日本政府の国際社会に対する公式的立場は・・・

池田信夫: ずっとそれですよね。抵抗しないで、もうこれは終わってるんですっていう話ですよね。

西岡: そしてそれがですね、アメリカに飛び火したわけですよ。


 ここで西岡に言われたとおりに、片山が国政調査権を行使したということなのだろうか。

 で、次のような答弁書が返ってきたという。

参議院議員片山さつき君提出従軍慰安婦問題に係る国連特別報告書に関する質問に対する答弁書

一及び二について
 国際連合人権委員会が任命したクマラスワミ特別報告者による報告書(以下「クマラスワミ報告書」という。)が、平成八年二月に、国際連合に提出されたことを受け、我が国は、同年三月に、クマラスワミ報告書に対する日本政府の見解等を取りまとめ、同委員会の構成国を中心とした各国(以下単に「各国」という。)に対して働きかけを行うとともに、国際連合に提出した。
 また、同委員会において「女性に対する暴力撤廃」と題する決議が、同年四月に採択されたが、その過程において、当該決議の案文がクマラスワミ報告書に言及していることから、我が国の立場についてできるだけ多数の国の理解を得ることを目指し、我が国が、同年三月に、「女性に対する暴力及びいわゆる「従軍慰安婦」問題に関する日本政府の施策」と題する文書を改めて作成し、各国に対して働きかけを行うとともに、当該文書を国際連合に提出した結果、当該文書が国際連合の文書として配布されたものである。
 当該文書においては、平成五年八月四日の内閣官房長官談話にも言及しつつ、女性のためのアジア平和国民基金を通じた取組等について説明し、また、我が国の立場として、いわゆる従軍慰安婦問題を含め、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、我が国として、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これらの条約等の当事国との間では、法的に解決済みであって、クマラスワミ報告書における法律論の主要部分につき、重大な懸念を示す観点から留保を付す旨表明している。
 なお、同委員会が任命した特別報告者による報告書を同委員会で採択する慣行はなく、通常は、当該報告書に関連する同委員会の決議において、当該報告書が言及されるものと承知している。


 ざっと読んだだけでは、何が書かれているのか理解しがたい人も多いのではないだろうか。
 あるブロガーが誤読しているのを見かけたが、むべなるかな。

 最初に挙げられている、平成8年3月に取りまとめられた「クマラスワミ報告書に対する日本政府の見解等」(ややこしいので以下「文書A」とする)が質問主意書の言う「四十ページにわたる反論文書」であり、同月に「改めて作成」された「女性に対する暴力及びいわゆる「従軍慰安婦」問題に関する日本政府の施策」と題する文書(ややこしいので以下「文書B」とする)が質問主意書の言う「「もう日本は謝っている。財団法人女性のためのアジア平和国民基金も作っている。」という旨の文書」なのだろう。
 答弁書の「当該文書においては、」以下は文書Bの説明である。これによると、文書Bは「クマラスワミ報告書における法律論の主要部分につき、重大な懸念を示す観点から留保を付す旨表明している」とのことなので、必ずしも質問主意書が言う「反論する代わりに、「もう日本は謝っている。財団法人女性のためのアジア平和国民基金も作っている。」という旨」ではないと言いたいのだろうか。

 しかし、片山が問うているのは、
一.文書Aを「急遽撤回」した「理由・経緯」の説明及び政府見解
二.文書Aを文書Bに「差し変え」た「理由・経緯」の説明及び政府見解
であるはずである。
 片山のブログ本体のコメント欄や記事が転載されたBLOGOSのコメント欄でも指摘されているが、これでは答えになっていない。

 答弁書を読む限りでは、文書Aと文書Bはそれぞれ別々の目的に作成されたものであり、文書Aを撤回して文書Bとしたわけではないと読める。
 しかし、撤回や差し変えを明確に否定しているわけでもないのである。
 隔靴掻痒の感がある。

 国会議員の質問主意書に対する答弁書が、木で鼻をくくったような官僚的なものであることはしばしばあるが、これほど答えになっていないものも珍しいのではないか。
 悪く言えば、議員をなめている。鼻であしらっていると言える。
 片山議員のブログの記事はBLOGOSで時々見るが、それらを読む限り、決して支持したくなるタイプの政治家ではない。しかし、こんな連中を相手にしなければならないという点には少しだけ同情する。

 yuri_donovicさんというブロガーが、この問題についての1996年5月7日の参議院法務委員会での本岡昭次議員(1995年社会党を離党して民主改革連合(日本労働組合総連合会を支持母体とする参議院のみの政党)に参加、のち民主党に合流)と川田司・外務省総合外交政策局国際社会協力部人権難民課長との問答を掲載しており、大変参考になった。
 勝手ながら、興味深い箇所をコピーさせていただく。

 それでは、国連人権委員会の問題についてお伺いします。

 三月十八日から第五十二回国連人権委員会が開かれました。私も、一週間国会を休ませていただいて、これに参加してきました。そして、そこでは、旧日本軍が戦争中に行った慰安婦問題これに対する審議が行われました。この慰安婦問題は、人権委員会で軍事的性奴隷というふうに位置づけられて、そして日本の法的責任が厳しくそこで求められるということになり、クマラスワミ女史の報告も決議として採択されるようになりました。その採択は四月十九日に行われて、この外務省の仮訳によりますと、この女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者の作業を歓迎し、報告をテークノートするということで、無投票でコンセンサス採択されたということになっております。

 この無投票でコンセンサス採択と言っておりますが、このクマラスワミ報告は全会一致で採択されたと。日本も反対しなかったということは、賛成したというふうに理解してよろしいですか。

○説明員(川田司君) お答えいたします。

 先生ただいまの御指摘の決議は、いわゆる女性に対する暴力撤廃に関する決議であると考えておりますけれども、この決議は家庭内暴力など今日の社会においていわゆる緊急の課題となっている女性に対する暴力の撤廃に関するものでございまして、いわゆる従軍慰安婦問題についての決議ではございません。このような女性に対する暴力の問題、我が国も大変重要な問題と考えておりまして、この決議に賛成いたした次第です、といいますか、コンセンサス採択に参加したというのが事実でございます。

○本岡昭次君 それであるならば、なぜ事前に、女性に対する暴力に関する特別報告者により提出された報告の追加文書Ⅰ、アドⅠについて日本政府の見解〔引用者注・文書A〕なるものをわざわざ関係諸国に配付して、この従軍慰安婦問題について日本政府の立場を説明して、それが拒否されるようになぜ各国に求めたんですか。

〔中略〕

クマラスワミさんが述べている事柄に対して徹底的に反対していますね。大変な言葉でもって反対しておりますね。なぜここまでやらなければならなかったんですか。女性に対する暴力全般ならもっと素直に臨めばいいじゃないですか。

〔中略〕

 そこで、この文書を私は日本語に訳された文を読んだんですが、これは大変なんですよ。このクマラスワミ報告を拒否せよ拒否せよというのが三回も書いてあって、特に私は唖然としたのは、「実際には特別報告者の議論は恣意的で根拠のない国際法の「解釈」にもとずく政治的発言である。」と書いてある。「国際社会がこのような議論を受け入れるならば、国際社会における法の支配にたいする重大な侵害となるであろう。」、どういうことですか。ここまで書かにゃいけなかったんですか。そして、結論として、「そこで人権委員会が、事実の不正確な記述と国際法の間違った解釈に基づく「法的」議論を提起しているこの追加文書を拒否し、また「慰安婦」問題と女性にたいする暴力一般の問題について日本がとった行動を適切に認めることを繰り返し強く希望する。」という文書を事前に配付したんですよ。そして、国連に配付した文書は全然そういうところがない。全部削除されてしまって、国民基金でやりますからどうぞ日本を認めてくださいというような文書になってくるわけなんですね。

 それで、そうすると日本政府は、ここに書いてあるように、クマラスワミ女史が一応調査をしてそして公式に人権委員会に出した、附属文書であっても公式の文書ですね、その文書を政治的発言というふうに決めつけて、そしてこれを受け入れたら「国際社会における法の支配にたいする重大な侵害となるであろう。」と言ったんですよ。それで、これが留意であろうと何であろうと、テークノートという言葉の解釈は私もいろいろ調べましたから後でやりますけれども、一応それは記録にするにしろ留意するにしろどんな言葉にしろ、消すことのできないものとして国連の中に残ったわけでしょう。そのことに対して日本が今言いましたように議論を展開したという、このことは消せないでしょう、これ。何カ国にもお渡しになったんですよ、二国間というけれども、こんな文書を。これ責任は重大ですよ。私の言っていることに間違いありますか。

○説明員(川田司君) 日本政府の立場でございますけれども、二月六日に官房長官が明らかにしておりますが、いわゆる従軍慰安婦問題に関するクマラスワミ特別報告者の報告書第一附属文書の法的に受け入れられる余地はないという考えに基づきまして、そのような立場で人権委員会に臨んだわけでございます。先生お持ちの資料につきましても、基本的にはそういった考え方に立って作成した文書でございます。

○本岡昭次君 そうすると、国連は国際社会における法の支配に対する重大な侵害になるものを採択したんですか、みんなで。だから、日本政府はその直前までアドI、附属文書の一、従軍慰安婦問題が書かれてあることの削除を徹底して三日間求めてあなたも頑張ったんでしょうが、抵抗したんでしょう。だけれども、国際社会の中に受け入れられることなく、アドIもアドⅡも一つの文書としてクマラスワミ報告は、コンセンサス採択にしろ何にしろそれは支持されたことになったわけじゃないですか。

 そうすると、国連は、何ですか、人権委員会はこのクマラスワミさんの政治的発言を受け入れて、そして法の支配に対する重大な侵害とまで日本が言い切ったものを受け入れたという、この関係はどうなるんですか。日本はこれからどうするんですか、これ。国連の人権委員会から脱退するんですか。

○説明員(川田司君) お答えいたします。

 クマラスワミのいわゆる第一附属文書が採択されたということでございますけれども、それは先ほどから申し上げますとおり、この報告書はテークノートされたにすぎないわけでございます。

 私どもの考えとしましては、このテークノートといいますのは、記録にとどめるとか記録するとか留意するとかいうことでございまして、いわば評価を含まない中立的な表現でございます。したがって、採択されたというのは必ずしも適当ではないと思います。

〔中略〕

○本岡昭次君 しかし、先ほど言ったように、拒否すべきものであると言い、そして先ほど私が何回も引用しましたように、国際社会における法の支配に対する重大な侵害であるから削除しなさい削除しなさいと言っても削除できなかった。それで、審議もするなと言って求めたけれども、審議は行われた。韓国、中国初め十カ国から、またNGOも二十数カ国がこれを歓迎した。日本のこの立場を支持した国は一国もなかった、全く日本は国連人権外交において孤立化したというこの事実は認めますか。

○説明員(川田司君) 先ほど来申し上げていますけれども、クマラスワミ特別報告者の報告書といいますのは、家庭内暴力を扱った報告書本体、それから第二附属文書、それからいわゆる従軍慰安婦問題を扱った第一附属文書から成るわけでございます。

 この件につきましては、人権委員会におきましていわゆる女性に対する暴力撤廃に関する本会議の審議において議論されたわけですけれども、私どもの承知する限り、いわゆる従軍慰安婦問題ないしこれを扱いましたこの報告書第一附属文書に言及した国は、我が国のほかは、韓国、中国、フィリピン及び北朝鮮の四カ国であったと理解しております。また、このうち特にフィリピンは我が国の取り組みを評価する発言をしたわけです。また、この問題に何らかの形で言及したNGOは、本会議で発言したNGOというものは全部で五十四団体あったわけですけれども、このうち約十団体であったと理解しております。

 女性に対する暴力に関する討議の焦点は、報告書本体及び第二附属文書にある家庭内暴力の問題、あるいはまたセクハラ等社会における女性に対する暴力の問題といった現代社会の直面する問題であったというふうに承知いたしております。

○本岡昭次君 〔中略〕

 そうすると、配付直前に撤回した、幻の文書になっておるんですが、この資料、これが最後に撤回されて別のその文書が出された、ごく穏やかなものが、重大に留保しますという言葉で。なぜこの最初に出した文書をきちっと国連に正式の文書として、印刷直前までやって、私の聞くところでは、アラビア語の訳までできておったけれども、だめだと引き取って別のものを出したと。なぜそこまでしなければならなかったんですか。

○説明員(川田司君) 先生お持ちの資料は、基本的には二国間の話し合いといいますか、二国間で我が国の立場を説明する際に使う資料として作成したものでございます。ただ、国連人権委員会の場におきましては、こういった大部の資料を配付するのは必ずしも適当でないということで、もっとわかりやすい文書ということで簡単な文書を作成したわけです。

 ですけれども、この国連人権委員会で配付した文書も、基本的にはその最初の文書と内容的には同じものである、基本的には簡単にしたものであるというふうに理解いたしております。

○本岡昭次君 いや、そうはなっていないじゃないですか。最後は重大に留保するという言い方、片一方は拒否する拒否する拒否するということでもって審議さえさせないというふうな立場での臨み方が、何で最後重大な留保ということなんです。やっぱり国際社会の中で日本も、こういう文書を出すとこれは大変なことだということであなた方はやわらかい文書に書き直したんでしょう。そこは認めなさいよ、はっきりと。

○説明員(川田司君) 国連文書として配付した文書の中でも、そのクマラスワミ特別報告者の法的議論については我が国として受け入れられないということを述べておりまして、基本的には同じ内容でございます。

○本岡昭次君 そうしたら、あなたは最後まで、今でもこのクマラスワミのアドIの附属文書、日本の従軍慰安婦問題の書いてあるところは、恣意的で根拠のない国際法の解釈に基づく政治的発言、国際社会がこんな議論を受け入れたら国際社会における法の支配に対する重大な侵害になると、今もあなたはそう思っていますか。

○説明員(川田司君) はい、基本的にはそのように考えております。


 今回の片山議員の質問主意書に対する答弁書が、この川田課長による答弁に沿ったものであることがわかる。
 文書Aと文書Bはそれぞれ別々の目的のために作成されたものであり、基本的には同じ内容であると。

 しかし、本岡議員の認識では、文書Aを撤回して文書Bに差し変えたとなっている。
 実際、秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)を見ると、当時そのように報道されてもいるようだ(p.277~279)。

 果たして撤回なのかそうでないのか。
 また、文書Aが公開されていないのは何故なのか。

 片山議員にはさらなる追及あるいは調査を期待したいところだが、ブログの記事にしても、質問主意書と答弁書を掲載したのみで論評一つなく、その後も何の続報もないところを見ると、これは期待できそうにない。