「1Q84」は、大人のためのファンタジー小説だと思う。
この作品でも春樹ワールドは炸裂する。
空気さなぎ
リトルピープル
フカエリ
特に「空気さなぎ」なんてネーミングは村上春樹にしか思いつかないだろーな。
そして、「読んでいるとビールが飲みたくなる」描写、料理とセックスの細やかな描写は相変わらず。
しかし、大人向けファンタジーに似つかわしくないものが数多く登場することが、今までの「ねじまき鳥クロニクル」や「海辺のカフカ」と「1Q84」の違いだろうと思う。
宗教法人「さきがけ」はまんまオウム真理教で、その他「さきがけ」の母体であった「タカシマ塾」はまんまヤマギシだし、「証人会」なる宗教団体はエホバの証人だ。
これ等の宗教団体と共に、DVの悲惨な情況が絡んで来、はたまた生生しいまでの幼児性愛の描写も登場し、それ等は全く春樹ワールドに馴染んで来ないし、最後まで馴染まぬままだった。
天吾が居て、青豆が居て、フカエリが居て・・・その強烈なキャラだけで物語は興味深く進行するはずなのに、何故に余計なリアリティを加えてしまったのだろう?
あ、そうそう、リアリティの極致は「NHKの集金人」だ!
それと、青豆の周辺の人々に関しては細かく描写されているのだけど、天吾のそれに関しては中途半端でありすぎるのも割り切れない。
青豆の友人「あゆみ」は行きずりの男とのSMプレイの果てに殺される(しかし、本当はリトルピープルが殺した)のだけど、天吾の彼女は?変り種編集者の小松は?フカエリの保護者である戎野さんは?・・皆、忽然と消えてしまって、多分リトルピープルによって殺されたであろうことは想像が付くものの、その説明に乏しい。
そして何よりも、この小説の何かの象徴のように描かれた天吾の母親は一体何者なのかが最後まで明かされることなく終わってしまって、「一体何だったの?」状態に陥ってしまった。
何て言うのか、読後にモヤ~ッとしたものだけが残った奇妙な小説だった。
例え大人向けであってもファンタジーを面白がるには頭が立ちすぎてしまったのか、自分。
何でか自分でも分からないんですけどね。f^_^;
村上春樹にはワールドがありますから、そこで楽しんで遊べる人でないと。
カメにとってのディズニーランドと一緒ですね。ハハッ