旧愚だくさんブログ

愚だくさんブログ過去記事蔵です。

別倉発電所と辰野金吾

2009年11月09日 | カメ的世界遺産・足尾

先ずは10月25日毎日新聞記事から・・

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旧別倉発電所:辰野金吾の設計 河東名誉教授が調査で発見--日光 /栃木

 ◇東京駅や日銀本店手掛ける近代日本建築家の第一人者

 ◇堂々の外観「残してほしい」

 古河電工日光事業所(日光市清滝町)の旧別倉発電所が、東京駅や日本銀行本店を設計した辰野金吾(1854年~1919年)が設立した辰野葛西建築事務所の設計によることが、小山高専の河東義之・名誉教授の調査で分かった。河東名誉教授は「耐震の問題があり保存は厳しいと思うが、残してほしい建物」と話している。

 旧別倉発電所は1904(明治37)年12月に完成したレンガ積みの平屋。床面積は約165平方メートルで高さは約5メートル。赤レンガの外壁と窓回りに用いられた古典様式が特徴。現在も創建時の位置にあり、前身の日光電気精銅所の創業に先立って建設された構内最古の建物。外壁の一部が改築され、外部がコンクリートで耐震補強されている。

 旧発電所は約1・5キロ離れた細尾発電所の建設に必要な電力を供給するために建設され、完成後は取り壊す予定だった。だが、堂々とした外観から保存され、精銅所建設の電力も供給した。

 日光市の「足尾銅山の世界遺産登録推進検討委員会」委員長を務める河東名誉教授が、辰野の功績をたたえる建築学会発行の雑誌に辰野が手掛けた建物一覧を発見。「工場・倉庫」の項目に「足尾銅山別倉原動力所」との記載があった。

 辰野は工部大学(現東京大工学部)で、日本に近代建築を導入したジョサイア・コンドルについて学び、1879(明治12)年に卒業。英国留学を経て、同大教授に就任。1903(同36)年に退官し、弟子の葛西万司と辰野葛西建築事務所を設立。日銀の支店や朝鮮銀行本店、駅舎、ホテルを設計し、現存する多くの建物は重要文化財に指定されるなど、近代日本の建築家の第一人者となった。

 別倉発電所の設計について、河東名誉教授は「葛西の父親が古河家の相談役を務めていた縁で、手掛けたのではないか」と話している。【浅見茂晴】

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・・で、昨日の記事に書いた細尾第一発電所よりも2年早く竣工された別倉発電所に付いて調べてみたら、どうやら現(株)古河電工敷地内にあるらしく(道理で姿が見えないわけだ)、その写真は栃木県教育委員会が出した研究紀要の中にようやく見付け出すことが出来た。

別倉発電所

↑窓のアーチ部分の装飾が、細尾第一発電所と同じ!

別倉発電所は、東京駅などを設計した辰野金吾によるものであると判明したのだけど、その2年後に建てられた我が(我がかいっ!)細尾第一発電所にも、辰野の影響が色濃く残され、辰野自身の設計でなくても手掛けた事務所は同じだった可能性は大きいと思う。

そこで、辰野金吾設計による著名な幾つかを挙げてみると・・。

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↑東京駅(竣工当時)

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↑旧岩手銀行本店本館

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↑旧第一銀行神戸支店

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↑みずほ銀行京都中央支店

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↑大阪市中央公会堂

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↑奈良ホテル本館

何と奈良ホテルも辰野金吾によるものだった!
こうして思うに、木材と瓦屋根の典型的日本建築であるはずの奈良ホテルなのに、第一印象が「和洋折衷」であるのは、破風の処理が西洋風だからかなぁ・・。

それにしても、上に挙げた5つの赤レンガ建築と別倉発電所、ひいては細尾第一発電所と似通ったものを感じる・・大いに。
やはり、窓廻りの古典意匠がポイントかな。

そして、別倉発電所に付いて調べるうちに、古河電工敷地内には他にも幾つかの近代産業遺産が残されていると分かった。

分かった・・・からには観たい。

しかし、足尾銅山施設は(株)古河機械金属の所有で、コチラの方は足尾歴史館の長井館長を始めとする有志達の篤い思いを受けて公開に積極的だけど、(株)古河電工の方はどうだか分からない。
本気で観たけりゃ社員になるしかないのだろうか・・・って、今のご時世じゃ中年女性を新規で雇っちゃくれないだろうな。

でも観たい・・・。

細尾第一発電所の前身とも言うべき別倉発電所の雄姿をこの目にしたい。

何とかせねば。

<追記>
冒頭に挙げた毎日新聞記事を書いた記者さん、この間の勉強会にも取材にいらしてましたねぇ。
「僕は足尾には全く詳しくないんです」
と何度も言っておられたが、トンでもねえぜ!
これだけの記事を書くには相当な予備知識が必要であろう。
もっと色々なことを根掘り葉掘り訊いておけば良かったと後悔。