民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

満蒙開拓平和記念館を見る

2015-09-17 16:07:55 | Weblog

阿智村にできた満蒙開拓平和記念館を見学してきました。長野県は全国で一番満州移民を送り出した県です。したがって、満州で死んだ人、置き去りになった人も一番多いのです。そんな満蒙開拓について、これまで語られてきたのは「ひどい目にあった」という、主として敗戦後の帰国時のひどさであったように思います。欠落していたのは、そもそも満州移民なるものは植民地拡張主義にのっかった現地民からの土地の収奪によって成立したものだという視点です。ひどいめにあったとは語り継いでも、ひどい目にあわせたとは口を閉じて語らないのです。だから、満州移民の資料館でどんな展示をするのか興味がありました。結果どうであったかというと、満州が日本の植民地国家だったことをはっきりのべ、その上での移民の人々の暮らしや敗戦時の対応、逃避行などをきちんと描いてありました。行政が造った記念館ではないことが、こうしたしっかりした歴史観に裏打ちされた展示を可能にしたのでしょうか。ソ連との国境付近にまで移民の村を作り、いざという時の人間の盾にして置き去りにする。政治家と軍人の考える国を守るという建前の行き着きた先が、集団自決やシベリヤ抑留でした。

 ついでに近くにある「伊那谷道中 かぶちゃん村」という伊那谷の民俗を題材にしたテーマパーク(こういっていいんでしょうか)も見てきました。企業がもうけ仕事にやっている展示だからと思い、あまり期待しないで中に入ったのですが、どうしてどうして、きちんとした展示や解説がなされていて感心しました。ただ、開館時のままの展示がいつまでもつのかや、今後施設を維持していけるのかなどが心配になりました。