私が今勤めているのは歌人の記念館だということで、有名無名の歌人が出版した歌集が贈呈されてきます。多くは自費出版だと思いますが、短歌をやる人が少なくなったとか高齢化したとか聞きますが、自分の作った短歌を本にする人がこんなにいるんですから、小説に比べたらずっと普及している、普及というのもおかしいですが、素人が創作に励むという点では俳句や短歌は勝っていると思います。
で、贈られてくる本をパラパラとみるのですが、心ひかれる物もあります。先日同時に来た女性の作者の2冊の歌集です。作者名も書名もメモしてこなかったのでここであげませんがゴメンナサイ。一人は40代キャリアウーマン独身、母親との二人暮らし。歌人には名の知れた作者みたいです。もう一人は、多分60代主婦。夫を亡くし義母との二人暮らし。地方に住む普通の人です。共通するのは、女の二人暮らし。違うのは娘か嫁かです。そうすると、想像だけで景色が見えてしまうようですが、次のような歌が気になりました。
さびしさに母を捨てたりしないやうわれに重たき靴をはかせる
「本ばかり読んでゐるかい」姑問へり 咎められたるニュアンスに聞く
長生きはよいことでしょうか と誰かに聞いてみたい思いにかられます。娘にとっても嫁にとっても母は軛です。もちろん父も同じ軛ですが、一般には早くなくなります。それなのに、価値として在宅介護が良いというのでしょうか。経済的に仕方ないから、何とか家庭でお願いしますというならわかりますが、家庭でみることがよいとなぜいうのでしょうか。